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GAMEPLAY
 全部で18ミッションを収録しており、総プレイ時間は10時間程度とあまりボリュームは無い。アイテム集めを熱心に行なわないならば8時間位でもクリア出来るだろう。

 ゲームの舞台は香港のみでその場所が変るのみ。ミッションのタイプは部隊戦闘の激しいアクションを採用した"Total War"と、個人で進めて行くステルス行動も可能な"Infiltration"に分けられると話している。Total Warの方は仲間兵士との共同戦闘ミッションとなるが、指示を出す事は出来ないので普通に戦って行くだけという感が強い。死んだ仲間はすぐには補充されない事も有るが、区切りの地点に来ると応援が着たりとあまりその死を気に掛ける必要も無い設定であり、アクション物として仲間の状況を気にする必要が無いという点ではプラスだが、部隊の連帯感の様な感覚は当然生まれにくく単なる環境程度にしか感じられないのはマイナス要素。

 Deus Exと来れば高い自由度だがその点はこのゲームでも考えられており、プレイヤーに特定の行動を強制するような真似は極力避けるようなデザインを心掛けたとされている。例えば通るルートの選択では、メイン以外にダクトを抜ける・床下を通る・上方に渡されたパイプ上を通る、といった自由度を持っている。或いは監視カメラと砲台に対しては、セキュリティをハッキングして解除してしまう・そのまま強引に突破してしまう・EMP Grenadeで解除する・EMP系の武器で機能停止させる・通常武器で破壊する、といった選択が可能。
 しかしあくまでも戦闘が中心のゲーム性なので、DE程の深く幅広い自由度は存在していない。 PRGの成長要素やAugmentationの選択が無いという仕様なのでFrostの能力はプレイヤーが誰でも一緒であり、能力に応じた選択肢という概念が含まれていないのがその原因。「ステルスタイプのキャラクタなので別ルートを好んで探す」といった事が起きないので、どこを通るのか・どうやって障害を解決するのかというのは単にその時の状況(HPが低いとか)や気分次第になる。Augmentationの能力にもDEの様な特殊で多彩な物が用意されておらず、その能力をアイテム類と組み合わせてさまざまな解決方法を生み出すという深さも持っていない。
 DEを思わせるような複雑な構造を持ったマップはほとんどなく、そもそもPS2メインという事で マップはそれ程広くない物が多い。また会話による変化やプレイヤーの取った行動における先の分岐要素も無い。以上の様な点は戦闘中心のゲームなので決して悪い事では無いが、若干の物足りなさを感じるのも確かである。DEの様な複雑さを期待する人は注意した方が良い。


 基本的にこのゲームでは「どうやって戦うか」という面での自由度が高いというデザインであり、他の一般的なFPSとの差別化の意味でゲームの大きな売りともなっている。まずは武器自体の数が多い上にその特性もバラエティに富んでおり、更には各武器がAlt Fireという使い方も出来るようになっている。そこにSecondary Weaponとして4種のGrenadeの他にSpiderbotやShieldのアイテムが加わり、その上にAugmentationの能力を使う事も可能という設定なので、直接的な戦闘というカテゴリーだけでも非常に多彩な攻撃方法が行える。
 シチュエーションによってはこれ以外に、別ルートを通る事によって敵の上方や後方に出て攻撃する方向を変える・別ルートから設置式の武器を奪っての攻撃・Icepickを撃ち込んでロボットを乗っ取り遠隔操作して戦う・セキュリティパネルをハッキングして監視用の武器を使っての攻撃、等が可能。DEには無かった要素としてVehicleを使っての攻撃も含まれている。この非常に多彩な方法から自由に選択して戦えるという点は、PSBにおいて最も面白く魅力的な点であるのは間違いない。

 戦闘のシステムの方は、移動しながら撃っても弾がブレるようには見えない(連射するとリコイルは有るが)というアクションFPSのバランス。ズームすると命中率が上がるかの様な記述もあるが、そんな事をするほどでもないレベルの命中率である。弾薬数も豊富。Healthは拾って補給する方式だが(稀にDEでは御馴染みのMedical Botも居る)、これも結構多い方である。難しい点としてはGrenade系の投げる武器については狙った場所に着地させるのが結構難しく、投げて敵に近付いた瞬間に手動リモート爆破を決めないと効果的ではない。シールドも思った場所に落とすのは慣れるまでは困難。またあまりにも選べる手段が多い為に、瞬間的な操作がややこしい事になっている。ショートカットキーは武器が11・2ndが7・AUGが5と結構な数で(この他にサイクルキーでの選択も可能)、これを戦闘中に的確に選択してやるのは大変。一応TABキーを押してInventryを出せばそこでポーズが掛かった状態から自由に切り替えが可能になるが、止めてばかりでは戦闘の連続性を損なうのであまり好ましい手段ではない。

 こちら側に武器が豊富な分敵の数は多目で次々とスクリプトで出現して来たりもするので、多くの場合は激しくスピード感のある戦いになる。Reflex BoosterやBalistic ShieldをONにして多数の敵の中に突っ込んで行って戦ったり、ロボットを使って豪快に薙ぎ倒して行く等爽快感も高い。武器は弾薬が多いので派手に撃てるし、効果としてもショットガンのSticky Bombやロケットの分割発射など良く出来た物が含まれている。基本的に一切のBlood表現が無いので、撃っている・当っているの感覚は武器サウンドと被弾アニメーションに頼る事になるのだが、この感覚については武器によって出来不出来の差が大きい。
 自由にセーブが行なえない仕様だが、唯一のセーブ可能な装置はマップ内に普通2個程度しか設置されておらず、次のポイントまで10分以上の間が空くというケースも珍しくない。更にはセーブポイントは必ずしも明確に分かる場所に有る訳ではない。普通ならばこれが問題になったりするものだが、PSBではこれをゲームの背景設定に合わせた上手いやり方で処理している。FrostのHPが0になった場合には彼は床に倒れるのだが、この状態から5秒以内に緊急治療用のNano Boostを使用すればHPとCell Energyがフルの状態でその場に復活が可能である。Nano Boostは2個まで所持可能なので、次のポイントに達するまでに最大で2回は死亡してもそのまま続行出来るというようになっている。

 敵の種類はそれ程多くなく、一般兵士が最もポピュラーで他はElite兵士が何種類か。Eliteの中にはFrost同様にAUGの能力を使って来る者も存在している。他には巨大な物から小型までBot系の敵も出て来るようになっており、集団で登場しEMP攻撃をして来るSpiderbotなどは特に強敵。

 AI面ではちゃんとカバーを使ったり、逃げてからGrenadeを投げて来たりという面も見せるが、それ程複雑な計算を行っているようには見えない。どちらかと言うと数で勝負という感もあり、敵味方合わせると20人近くでの戦闘になったりもするので、あまり負荷は掛けられないというのもあると思われる。その他では近くの死体に気が付かない・スナイパーライフルで近くの味方が撃たれても無反応・一度戦闘状態になった後にこちらが逃げると元の巡回状態に戻ってしまう、と単純な作りである。アクションFPSの敵としては合格点だが、特に優れた要素は見受けられない。


 ステルスでの行動は行えるが奥は深くなく、戦闘重視なのであまり重要視されていないと考えるべきだろう。別ルートを通る事で敵と戦わずに通り抜けたりは出来るし、CloakのAUGを使えばそのまま敵の目の前を通り過ぎてしまえる。ただプレイヤーの戦闘能力が高いという点は誰がプレイしても変らない為に(ステルス向きのキャラが作れる訳ではないので)、あえて戦闘を避けるという意味が大して無いという風になっている。

 探索は確かに重要で、HPとBio Cellの最大値を上げる為のboosterやNano Boost等の重要なアイテムは結構探さないと見付からない場所に隠されていたりする(通常では見えない箱の上に乗せられていたりとか)。よって探索しないほど不利になるとは言えるが、徹底して探し回らないとデッドエンドになる可能性が有るというバランスではない。メインのルート上に明確に置かれているアイテム類を取るだけでもクリアは出来るというバランスである。


問  題  点
 まずはゲームのデザインから必然的に生じる歪とでも言える点だが、プレイヤー側がオーバーパワー気味の状態になっている。難易度バランスとして手応えが少ないの意味。

 「プレイヤーの採れる選択肢を常に多く保つ」というのがこのゲームの基本概念である。よって武器の弾切れを防ぐ為にそれは豊富に有るし、AUGの特殊能力も頻繁に発動が可能なようにEnergy Cellの数も多い。普通のFPSの場合には武器のセットしかないから、その時点で持っているであろう武器と弾薬数に応じて敵との戦闘の難易度バランス調整を図れる。しかしPSBでは武器セット・Secondary・AUGという異なった攻撃方法のセットを常にしかも豊富に持たせるようにするというデザインなので、プレイヤーの持つ合計の破壊力は普通のFPSの何倍にもなってしまう事になる(全部同時に使えるという意味ではない)。その他では「アイテムを探し回らなくてもクリア出来るようなバランスにしているので、探し回るプレイヤーにとってはより有利な状況になる」というのもあるし、「botやVehicle系はアンバランスに思える位に強い」というのも影響している。
 物凄く簡単という訳ではないし、死ぬと長時間戻るか貴重なNano Boostを消費しないとならなくなる・EMPの攻撃には非常に弱いという設定により緊張感は持たせているが、他のFPSとの比較という観点からは平均より下の難易度に入るゲームなのは間違い無い。難所と言えるのは途中のボス戦の一箇所のみという感じである。

 強力な特殊能力(武器)は滅多に使えないというのではなく、むしろ頻繁に使えるようにするという考えで製作されている以上は、自由度と爽快感との引き換えにどうしても発生してしまう仕方がない問題点と言える。よってこのプレイヤー側が強いという点そのものについては特に非難されるべきものではないのだが、難易度が一つだけで変えられないというのは問題点として差し支えないと考える。手に入るアイテムの数を少なくする・回復力を抑えるといった修正で簡単にもっと高い難易度を設けられたはずであり、ここは手抜きと言うか明らかに失敗している箇所になっている。


 ゲームの序盤が面白くない。私は購入したゲームは取り合えずすぐに一度インストールして動作確認はしてみる事が多いのだが、実はこのゲームはその際に序盤をちょっとやった時点では「外れた」と感じて数ヶ月放りっ離しにしておいたという過去がある。徐々に武器や能力が加わって行くという設定上最初は普通のFPSに近く、それだといろいろな意味でこのゲームはやはり弱い。例えばメインとなる武器のCarbineの出来が悪い(撃っている手応え無し)といった点。それに関連して進行に連れての新武器の出し方がちょっと遅いという感も有る。もっと早くから種類を多くした方が面白くなったのではないか。

 同様にラストも物足りない。ボス戦は途中の一箇所しかなく、最後はちょっと呆気なく終わってしまう。ボリュームも少ないという印象。10時間程度という数字的な長さの意味ではなく、例えばプレイ時間が少ない事が気にならないような濃密な内容を持ったゲームなら良いのだが、これは終わった時の印象として短いという感想を持ってしまう。

 戦闘のバリエーションは豊富だが、成長要素が無い・AUG選択も出来ない・難易度が変えられない、といった点からリプレイ性は今一つ。前の2つは仕方が無いとして、難易度さえ変えられたなら攻撃方法のバリエーションは非常に多いだけにリプレイ性は結構高くなったと思うのだが。

 ストーリーもありきたりであまり面白くない。何人かの味方キャラクタは登場してストーリーに絡んでは来るが、展開の変化もそれ程無いし先が見えてしまうような普通の物語で終わっている。

  リロード・USE・Pickupが同じキーを併用するので、場合によっては思ったような動作が出来ないという問題あり。

 当たり判定が開いた穴や窓枠に有る事があり、見分けが付かないので空間を通して投げたり撃ったりしようとして自爆になってしまうケースが発生する。

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