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ZONE
 マップについては全18のエリアが含まれるという話だったのだが、想像していたのとは結構違っていた点も多かった。まず確かにマップは18個存在しているが、その内1/3は地下の様な一般的なFPSのインドアスタイルのマップとなり、それらは特別に広いというデザインでもない。その中のイベントやデザインは別として、構造自体はスタンダードなマップとなっていて多数のNPCが住んでいる地下版のエリアという位置付けではない。
 次にアウトドアのマップは平均して1km*1km程度の広さを持つという話だったが、全てがそれ程広い訳ではなく狭い物は一辺が数百m程度のサイズとなっている。実測した訳では無いが広大でどこまでも広がっているという感じではなく、柵やバリケードによって先には進行出来ない箇所も含まれている。それとこれは予想されていた事では有るが、放射能やAnomaliesによって対策されたスーツを着込んでいないと自由に入り込めない地域も多い(同様に動物達が群生しており入り難い箇所も有る)。それと詳しくは書けないが、エンディングによってプレイするマップの数は変って来るので、全ての人が18個のマップをプレイ出来る訳ではなくなっている。
 マップの接続は切り替え地点に行くと切り替えを行なうかどうかの選択が出る方式。切り替えポイントはマップ上に表示されるが、中にはストーリーが進行しないと現れないポイントも存在する。接続地点が実際に地形上繋がっている事はむしろ少なく、接続点を超えると地図上ではかなり距離を置いた次のマップの入り口の地点に飛ばされる事の方が多い。また有機的に各マップが相互接続している訳ではないので、場合によっては目的のマップに到達するには4,5個の接続点を通過しないとならないケースも有る(ゲーム上はその辺は考えられており、そういう移動を強制するようなシーンは無いが)。

 Zoneと呼ばれるゲーム全体の広さに関しては、正直言って想像していたサイズに比較して大分狭いという印象。ただ理には適っているというのも確かである。プレイヤーがVehicleに乗って移動出来る要素が途中でカットされてしまい、且つそれに変る移動手段も用意されないと聞いていたので(例えば既に到達しているキャンプ間は実際にマップ内を移動しなくても移動出来る等)、そうなると移動が相当面倒になるのではないかと危惧していたのだが、そこまでのストレスは感じないようになっている。また実際のプレイに関して言うなら、全てのマップを端から端まで探索してみようとは思わない程度には十分に広い。それをやろうと思ったら40時間以上掛かるのではないか。私も結構ゆっくりと見て回った方だが、それでもアクセス出来ていない箇所が幾つも残ってしまった位だ。つまりまとめると、想像していたよりは狭くて失望させられた部分も有る。けれども探索が大変なレベルの広さを持つが、一方で移動に過度のストレスを感じない程度にはまとめられており、バランスという観点からは上手い調整が成されているという結論。

 これは想像でしかないのだが、Vehicleがカットされて移動手段が徒歩しか無くなった時点で、大幅にマップを小さくすると同時に地上のエリア数を減らすという改造が成されたのではないかと思う。例えば地下のマップについては改造を明らかにする前の発言では存在について言及が無いように思え、もし地下が有るなら存在自体を秘密にする必要があるとは思えないので、「Zoneは18個に区切られておりその内幾つかは地下に存在している」というようなコメントが出ているのではないか? つまり元々Zoneは地上に18個存在しており(地下エリアが別に存在したのかは不明だが)、それが規模の縮小に伴って地上分の数が減らされてしまった。しかしマップ数を縮小したという事実はマイナスイメージを伴うので、ストーリーを重視する構造に改造した際に地下のエリアを増やして数字上は18個という帳尻を合わせたのではないだろうか?
 そう考える理由としては、現在のマップだとVehicleで移動するには狭い上に、どうも通れるルートが制限されていてあまり有効にVehicleが活動出来るようには見えない。ゲームの全体マップを見ると、ここにはかつてエリアが存在していたのではないかと思える、建造物等が書き込まれたり道路が繋がっている箇所が何個も存在している。マップの端の方に何でこんな場所にと感じる行き止まりの関所が数ヶ所見受けられ、これは元は別のマップへの切り替え地点だったのではないかと思わせる。過去のSSには製品版では見られない様な場所の物も有る。解凍ツールでデータの中身を見てみると本編には登場しないと思える記載も一部見付かる。

FACTION

 マップ内には様々な種類のNPCが存在しており、中には組織(Faction)を構成していたりする者もいる。以下はその一覧。

Military  政府から派遣された軍の兵士達で、検問による立ち入り禁止区域の警護や犯罪の取締りを行っている。他のFactionと仲良くする事は無いが、必ず攻撃を仕掛けて来るという訳ではない。
Bandits  金儲け目的の盗賊達の名称。一つの大きな組織を形成している訳ではなく、もっと少人数単位で群生しているギャング団の様な存在。存在地域が広いので様々な場所で遭遇する。装備類は一番原始的で力的には他の組織よりも劣る。
Duty  初期のZone内の探索において生き残った軍の兵士により形成されたFaction。Militaryとは別にZoneの秩序を守り、外界から保護する事を目的として活動している。よってその秩序を乱そうとするFreedomとは仲が悪く戦争状態にある。
Freedom  革命思想を持った集団で、Zoneの持つ秘密の全てを世間一般に公開し、またアクセスも可能にするべきという考えで動いている。その為にZoneを守ろうとするDuty, Army, Mercenariesのいずれとも仲が悪い。
Monolith  Zoneの持つパワーを神秘な物と捉え、その中心部にはMonolithと呼ばれるそのパワーの源が存在すると謳い、それを崇拝している一種の宗教的な集団。活動地域はZoneの最深部にまで及んでおり、ほとんどの者は放射能にやられて異常な行動を示すようになっている。Zoneを荒そうとする他のStalker達とは仲が悪い。
Mercenaries  外部の何等かの組織に雇われて仕事をしている傭兵集団。高性能の武器を持ち、その戦闘能力も極めて高い。基本的に他の全ての人間や組織に対して敵対しており、また極めて攻撃的な姿勢を示すので近寄るのは困難となっている。
Loners  どの組織にも属さない一匹狼。それ故に通常は大きな力を持っていないが、中には最深部にまで到達している伝説的な人物も存在するようだ。Loner同士でグループを組んで行動している事は多い。

 事前の情報では、プレイヤーは何等かの組織に協力して行動しても構わないし、単独行動するのも自由。特定の組織と仲良くなる事で特別な武器やアイテムを入手可能になるとされていたが、実際にはFactionとの絡みという要素は大幅に制限されている

 もう少し詳しく解説すると、仲良くなる為にプレイヤーが交渉出来るのはFreedomとDutyだけであり、その他のFactionは敵として固定されているか、若しくは中立状態で攻撃すると敵になるという設定になっている。よって自由に仲間になるFactionを選ぶという事は出来ない。またFactionその物の一員となるという要素はなく、仲良くなるというレベルに留まっている(ただし一応仲良くなる事で武器を買えたりは可能になる)。
 どちらのFactionに付くかという選択が可能で、その選択や結果に応じて変化が生じるという箇所は一つしかなく、味方に付くFactionによる変化という要素はほとんど残されていない。2つの組織の戦闘中に味方に付いて相手側を攻撃して援護してもそれで仲間として認めてくれる訳ではなく、味方に付いたFactionが味方にはなれない設定の物ならばやはり敵として自分も攻撃されてしまうようになっている。

 Zone内におけるFactionの生息範囲というのも相当限定されており、全てのマップに渡ってそれぞれの勢力が分布しているという構図ではなく、或る特定のマップには特定のFactionしか存在しないというケースの方が多い。何処のマップでも活動しているのは実はLonersで、彼等は基本的には個人行動だが10人以下程度の規模で徒党を組んで様々なエリアに存在しており、それ故に様々なFactionと戦いになっているのが見られる。
 確かに仲の悪いFaction同士が遭遇すると戦いになってしまうのであまり混在させられないのかも知れないが、何も遭遇したら必ず戦いになるという設定にする必要は無い訳で、単独や数人程度のグループが各種エリアをうろついている程度の動きは欲しかった。

 表示がEnemyとなる状態の影響度合いについてもハッキリしない面が多い。近くに仲間が居ても気が付かれないように殺せば問題は起きないのは確か。しかしグループで居る場合との戦闘では、そのグループとだけ敵対状態になりその他の区域に居る同じFactionとは関係が悪化しないケースも有れば、離れているのに敵対してしまうケースにも遭遇した。各Stalkerの行動は連絡用のPDAが存在している上にランキングの機能も有るので、その機能を考えると離れた場所の仲間に情報は伝わっても不思議ではないのだが、それならマップが切り替わる他のエリアには影響が無いというのはおかしな話になる。



A−LIFE
 このゲームが最大の特徴としているのが、ゲームの世界が生態系のシミュレーションになっているという要素である。一つのレベル内にはプレイヤー以外に多数のStalkerが存在しており、彼らは単独或いはFaction(組織)を組んだりして独自の考えによってマップの中を行動している。更に動物やモンスターもその生態系の一部として組み込まれている。全員がプレイヤーが干渉するまでマップ内の指定された場所に突っ立っているのではなく、それぞれの思考ルーチンに応じてマップ内で自発的に行動している。よってプレイヤーの与り知らぬ場所で、自分の抱えるミッションを達成しようとする各Stalkerの行動や、対立した組織同士の多対多の戦闘が起きたりしている事になる。動物やモンスターもその性質に応じて、普段は眠っているが腹が減ってくるとうろつき回って餌を探す物もいれば、自分のテリトリーに入って来た相手に対して好戦的に攻撃したりする物もいる。なのでモンスターや動物間での戦いが起きる事も有るし、テリトリーに入って来たStlakerとの戦いになるケースも有る。こういったランダムに動いている一つの生きた世界をシミュレーションとしてバックグラウンドで動かすというのがA-Lifeと呼ばれている人口世界となる

 この世界を実現させる事が何年もの間延期となった最大の理由であり、完成の為に予定されていた多くの要素がカットされたが、これだけはゲームの核となる部分なので削れないという事で残されている。ただし完全なるシミュレーターではなく、その機能には変更が加えられている。「完全なるシミュレーターにするにはマシンの処理パワーが足りない」、「ストーリーを展開させるのに完全に自由では都合が悪い」というのがその理由。
 具体的にはどうなっているのかと言うと、Zone全体にはモンスターや動物も含めて1000体以上のAIが配置されているのだが、その処理はプレイヤーの現在地点から遠くなるほど遅くなるというシステムになっている。仮に一度に50人といったStalkerが各所において同時にリアルタイムでの戦闘を行うとCPUのパワーが足りなくなるので、これによって負荷を抑えるように設計されている訳だ。またストーリー展開に関わるような箇所に於いては、時間が経過するほど予期せぬ自体が起こってしまう可能性が高くなるので、プレイヤーがそのエリアに入るまではAIの動作を停止させるという処理も行っている。
 このA-Lifeの処理については実際にツールを使ってのデモも行われており、まずはレベル内のAIの存在場所を表示させるコマンドでマップ上にその位置を表示。次にKillコマンドで全てのAIを殺してしまう。その状態で時間の進みを早くすると周辺区域から徐々に移動という形で動物やモンスター、最後にはStlakerが入ってくるようになり、それは1000体程度に達するまで続けられるようになっている。よって一度クリアされたようなレベルであっても、後に時間を置いて戻ってみると内部のAIは増えているというシステムになっており、そこでまた新たなミッションを請け負ったり、取引をしたりが可能になる。


 肝心のA-Lifeの出来栄えを検証する前に、それ以前の問題点としてこの条件を適用されているマップの数自体が少ないという件に触れておこう。A-Lifeはいわゆる”自然の状態”に置かれたマップにて機能する物となり、ゲーム上特別な状態に設定されているマップでは基本的に機能しない。ではその様なマップは幾つ存在しているのかという点についてだが、まず地下のインドア用マップは通常のFPSの様なデザインであり、その地下に一般のNPCが多数生息している様な状態にはなっていないので除外される。これが全体の1/3を占める。そして地上マップ12個の内で自然の状態に置かれているのは半分程度しか存在せず、他はゲーム進行上の設定として内部の状態に変化が起き難いようにされてしまっている。これだけ少ないと言う理由は、再度書くがVehicleの廃止に伴ってマップの数やサイズが減らされたからではないかと思えてならない。

 自然状態に置かれたマップにおける働き振りはどうだろうか。まずFactionに関しては以下の様にダイナミックな動きというのは少ない

*エリア内にランダムに各Factionが入って来る訳ではなく、エリアに出現する可能性のあるFactionは限定されている
*設定として最初から或るFactionの拠点とされている場所には、そこをクリアした後もそのFactionがRespawnしてやって来るようになっている
*完全にクリアされた場所にはLonersの集団が居座るケースが多い
*Factionのメンバーは通常自軍のエリアを離れようとはせず、遠出して他のFactionを攻撃に向うというのも一部を除いては無いように見える
*元々そのエリアには存在しなかったFactionのメンバーが、グループでそのエリアにランダムに出現するという事は起きない(Loners以外)

 クリアされた地域を先にLonersが押さえるか、再度元のFactionが抑えるか(または奪回するか)については確かにランダム性があるようだ。しかし全く別のFactionが戦争にやって来て抑えてしまうというケースは確認していないし、恐らくは無いと思われる。ゲーム途中のイベントで別のFactionがやって来れば、その後はそのFactionと元の物との間で争いが生じたりはする。

 NPCのZone内での動きやランダム性として確認出来る要素は以下の様な件になり、こちらはそれなりには機能していると言える

*殺害するターゲットが他の戦闘等で死んでしまい、自動的にクエストが達成されてしまう
*クエストの依頼人が達成前に死んでしまい、報酬が貰えなくなる
*2つのグループの局地での戦闘に於いては、どちらが勝つのかは決まっていない
*時間を置いて来ると、そこを押さえているグループが変っているといった状況の変化は起きる
*そのエリアのリーダーの様な重要なNPCとされている人物が死んだ場合、代わりに新たなリーダーが出現したりする
*以前遭遇したNPCに別のエリアで会ったりする事が有る(NPCはエリアを越えて移動可能)
*LonersかBanditsクラスの比較的弱い部類の抑えるエリアだと、ミュータント等の襲撃により全滅状態になる事有り
*Lonersはマップ内の広い範囲をうろついていたりしており、他のFactionのエリアに入り込んでしまい戦闘になったりは起きる

 一度クリアされた地域が再度埋まるまでのRespawn速度は基本的にはゆっくりなので、前半に一度クリアした場所に相当後にやって来ても、元居た相手が多数増えているというケースは起きないので不自然さは感じない。しかし一部のエリアはプログラム的に幾らでも指定されたタイプのNPC(大抵はBandtis)が湧く様に設定されているらしく、その地域では延々と同じパターンで戦闘が繰り返されていたりとスクリプトを思わせる箇所になっている。他にはプレイヤーが誘導して戦争状態にする事は可能。例えばどこかのグループと戦闘になった後に、敵を他のグループの地域まで引っ張って来て銃撃戦に巻き込めば大人数を巻き込んでの戦争になったりする。この様にして事前に敵の人数を減らしたり、その後死体を漁ったりという事が出来る。

 ミュータント系の動物については割とアナウンス通りに動いている様に見える。

*近くを移動しても必ず襲って来るとは限らない(腹が減っていなければ襲わないそうだが確認手段が無い)
*動物同士の喧嘩は見受けられるし、死体を食べているという状況には遭遇する
*群生地帯は存在するが、比較的行動エリアは広いので偶然に近くのNPCやFactionとの戦闘状態になったりが発生する
*定期的に(腹が減ると?)移動して近隣のNPCを襲ったりする行動を起す
*雨になると行動パターンが変化し、大木の周りに移動したり、雨宿りの場所を探しているのか盛んに走ったりという動作が見られる


 全般的にはA-Lifeは確かに動作してはいるのだが、想像していた程にはダイナミックな動きをしていない。代表的な例としては睡眠の要素が削られたからなのか夜になっても警備を交代したりといった動きが無く、固定された箇所にずっと居たりするNPCの数が相当多いのが顕著に目に付く。Lonersの集団以外のFactionの動きが活発では無いのも大きな問題点。
 またその働きの有無以外の問題として、プレイヤーがA-Lifeが機能している事を具体的に認識する様なデザインになっていないというのもある。ゲームの構造がZone内をランダムに徘徊したりしないでも進めて行けるように改造されてしまった為に、重要なクエストだけを追って周囲に目をくれないスタイルのプレイヤーには、A-Lifeが動作しているのかいないのかが実感出来ない様になってしまっている。

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