GAMEPLAY |
ゲームの開発段階において革新的とされていた幾つかの要素は削られている。また他の項で分析した様に残された各種要素である、ランダムに変化するゲーム性・高い自由度・ゲーム内世界のシミュレーションといった点については期待されていたレベルの完成度に達していない。本来ならばその時点でゲームとしては失敗や落第の烙印を押されても仕方が無いはずなのだが、全く意外な事にとでも言うのか、実は純粋にゲームとしては非常に面白い作品となっている。これには期待通り(以上)の出来だった部分も含まれているが、予想外に出来が素晴らしいという項目が重要な役割を果たしている。 意外な出来の一つ目はストーリーである。元々このゲームは自由にZone内を放浪するゲーム性に重点が置かれており、ストーリーを設けてユーザーを導く様な形に方針転換したのは途中からである。そういった点からも元々ストーリーの面白さについては大して期待していなかったのだが、実際にはプレイヤーをグイグイと引っ張るような面白さを感じさせるだけの出来となっている。主人公である"The Marked One"とは一体何者なのか・腕に記された"S.T.A.L.K.E.R."の文字の持つ意味とは・Zone最深部に存在するという"Monolith"とは一体何か・2006年に発生してZoneを生み出した事故の真相とは何なのか、といった謎への興味で最後までプレイヤーを惹き付けるだけの魅力を持っている。ストーリーは自分が殺す事になっていたStrelokとは何者なのかを追う形式で進行するが、その内に彼が小さなグループで特殊な目的を持って行動していた事が分かって来る。残りのメンバーを探す過程で意外な事実が判明したり、謎を呼ぶ要素が出て来たりと展開が上手くて飽きさせない。最後はやや整合性に欠ける部分も感じられるが、一応謎の解決という点では納得出来るレベルの終わり方をしているし、あまり凝っていない物が多いFPSゲームのストーリーとしては上級に属する部類の出来だろう。 これは別の面から見ると、ストーリーへの興味でプレイヤーを引っ張る力が強いので、逆にそれが寄り道しないで進めてしまうという状態を生み出して、A-Lifeを十分に体験させないままに多くのプレイヤーをクリアまで持って行ってしまうというマイナスにもなっているとも言える。 第二に各マップ間を自由に移動可能というデザインは、リアリティを生み出すという点からは予想以上に効果的であった。このゲームは昔で言う所のHUBシステム、ゲームを進行させるのに様々なマップ間を行ったり来たりしないとならないという構造を持っている。しかしSTALKERでは昔の様な制限された形式ではなく、Zoneの大部分を自由に移動可能というデザインになっており、その点が面白さに繋がっている。これまでのスタイルではマップ間を移動は出来ても、それぞれのマップはイベントによって状態が変化するだけの静的な凍り付いた世界であり、クリアを意図するプレイヤーがマップを辿る順番は変えられない(変えても意味が無い)ので、単にリニアにマップが進行する単純さの目先を変えるという意味合いしか持っていなかった。 一方でこのゲームではA-Lifeの出来はともかくとして、プレイヤーが好きな様にマップを訪問すればそこには生きて動いている世界が存在しているというのは感じられる様になっていし、回り道をするのが完全に無意味という事にもなっていない。またゲームの終盤に訪れる特別な切り替えポイント(そこからは戻れなくなる)以外はマップ間の移動に物理的な制限は無く、放射能への防備が無いとか特別な障壁により進むのが困難という箇所以外は好みでどの様にでも訪問する事が可能である。またその移動可能エリアは相当に広い。一般的なFPSの様に受動的な進行形式ではなく、世界だけを与えられて好きなように進めなさいとするゲーム性は新鮮で非常に魅力的である。この辺の能動的に動けるという要素が生み出す「ゲーム内空間に自分が実際に存在している」という感覚は、プレイ前の想像以上にゲームへの没入度が上昇するという事から面白さへの大きなプラスとなっている。自由に世界内を進めて行けるアクションゲームがこれまでに無かった訳では無いが(Outcast等)、このゲームの持つゲーム内世界で自分が自由意志で行動しているという感覚は比類の無いレベルに達している。 その他の意外な出来の良さはOpen Worldの項目に書いた、絶妙な難易度調整によるサバイバル感の演出。それによって緊張感を持ってプレイを続ける事が出来るようになっている。残りの戦闘と敵のAIについてはCombatの項目で詳しく解説する。 期待はしていたが想像以上に出来が良かったのはゲーム内世界の視覚面での表現力であり、これは「その中に実際にプレイヤーが存在しているという感覚をどれだけ持てるか」という面と、「その世界の描写にどれだけのリアリティが感じられるか」という面の双方から評価されるが、そのどちらも高いレベルで実現されている。現実感を感じられるゲームとしてはFPSの歴史的に一二を争う位の出来と思える。 その要因としてはまずゲーム内の建物等のオブジェクトの作り込みや書き込みが非常に細かいというのが大きい。Zone全体では相当広大な面積を持っており、それなりに各種オブジェクトの量は多くなっているのだが、安易な使い回しが無く似たような風景がほとんど無い。また多くのプレイヤーが訪れるとは思えないしここでは戦闘も起きないだろうと思える場所までも、相当な精度でオブジェクトが作り込まれている。その異常なまでの細かさは或る意味偏執的な執念を感じさせるほどだ。 次にデザインのベースとしてあくまでもリアリティ重視という立場を取っている事から、建造物の配置やデザインがゲーム的ではない。通常のFPSではマップのデザインはゲームプレイ重視であり、プレイしていて面白い配置や形状が優先される。要はマップ内の構造がリアリティを感じさせるよりも、その中でプレイ(主に戦闘)していて面白い構造なのかの方が重要視されるという意味。しかしこのゲームではリアリティを感じさせるかどうかが重視されていると思われ、モデルとなった建造物や風景を出来るだけそのままの状態で配置するという事にこだわっている様に見える(マップの60%は実際の写真からそのまま興したそうだ)。よってゲームプレイとしてのバランスはともかくとして、マップ内に置かれた建造物等のリアリティは非常に高く、実際に存在している世界の中を歩いているかの様な感覚を覚えるまでになっている。 グラフィックス的には発売が延びてしまった為に非常に高度というレベルではないし、最高レベルに設定するにはハイエンドクラスのPCが必要になるので誰もがそれを体感出来る訳ではない。しかし私もMedium程度の設定でプレイしたが、そのレベルのおいてでもゲーム内の風景が醸し出す印象は非常に優れている。テクノロジー的な面でのグラフィックスの素晴らしさでは劣っているかも知れないが、画的に現実感を感じさせる様な表現力という面ではこのゲームのデザイナーは非常に優秀である。特に各所に存在する廃墟の表現は素晴らしいと言う他無い。 加えてリアルタイムで変化する時間帯や、ランダムに変化する天気の効果も大きい。夜でも常に真っ暗になったりする訳では無いし、偶に晴れても強く日光が差す様にはならない等、思っていたほど表現的には変化は激しくないのだが、それでもマップによって雨が降ったり雷が鳴ったりと状況がその都度変化するというのは、リアリティを感じさせるという観点からは効果大。同じマップでも時間帯や天気によってプレイ感覚が異なるというのも、ゲームプレイとしては変化は大きく無いが、プレイしている時の感覚としては大きな効果を挙げていると感じた。 リアリティを重視している事からゲーム内の操作はリアルタイムで行なわれるようになっており、例えばPDAへのアクセスについてはポーズは掛けられない。よって内容を確認したりマップを見ている最中でも敵に襲われる可能性を持っている。またMedikitの適用についてはショートカットキーが用意されているが、他の急を要する操作でもあるAnti- Radiation Drugの適用はInventory画面を開かないと実行出来ない。その為に放射能で危ないという時にInventory画面でDrugまでマウスカーソルを持って行くのが間に合わず(ゲーム中に比べると動きが遅い)死んでしまうケースにも遭遇する。 ステルス要素も含まれているが、難易度が高くてそれで行動するのは難しい(特にパッチ前の段階ではセーブしたデータをロードすると敵がこちらを検知した状態になってしまうというバグが有ったようだ)。サウンドとライトのメーターは常時表示されているのでこれが低い状態で行動すれば良いのは分かるが、その判定基準が曖昧でプレイヤー側からするとどこまでがOKなのかが認識しにくいのが最大の問題。他の仲間との距離が相当離れている状態においてナイフで殺しても気が付かれる事もあれば、反対に付近に仲間が居る時に消音ピストルで殺しても気が付かれなかったりする。基本的に雨が降っている時や夜だとやり易いようだが、これだけ曖昧だとあえてやろうという気にはならない。どうしても気が付かれずに殺したい相手がいる時位だろう。 ステルスに限らないが死体の認識についてもよく判らない点は多い。死体は相当長い時間残る様になっており、消えるまでの時間は死体の数によるのか時間を計っているのか不明。キーとなるNPCの場合には最後まで死体は消えないようだ。しかしNPCの認識時間は死体の残っている時間とは一致せず、時間が経過すると周囲に死体が転がっていても無視されてしまう。その時間は相当短い様なので、死体を引き摺って移動する操作は用意されているがそれがどの程度有効な作業なのかが判然としない。 一種のイベントとしてArenaが存在し、ここでは観客の賭けが行われている中にプレイヤーがその対象として参加するという設定になっている。勝負はそれぞれ特定の条件下で行なわれ、自分の今持っている装備ではなく所持武器やアイテムを指定された状態での戦いとなる。条件は公平ではなく、敵側の方の人数が多かったり優秀な武器を持っていたりする。勝利すると賞金が貰えるが、段階的に難しくなる設定になっており何時までも挑戦が出来るようにはなっていない。一度最後までクリアしたら終わりである。 物理エンジンはODE physics engineをベースに改造を施した物を使用している。物理エンジンは確かに働いてはいるのだが、適用されるオブジェクトの数が少ないのでかなり地味に感じられる。動きそうに見える箱類でも大抵の物はその場から動かない。当初の話では相当凝った物を導入するような話だったが、やはり物が派手に動いてしまうのはAIの移動ルートの計算が複雑になるといった障害から省かれたのではないか。ラグドールについては良く言えば余り派手な動きを見せないで現実的、悪く言えばこちらも地味であり近距離からショットガンで死体を撃ってもほとんど動かない。 |
COMBAT SYSTEM編 |
戦闘に関する基礎的な要素から紹介。 *視点は一人称固定 *武器のモード切替有り(FullAuto, SemiAuto, Burst) *弾薬の種類切り替え有り(JHP, Armor Piercing等) *Iron Sight有り *CrouchはToggle設定も可能。更に姿勢を低くするLow Crouch有り。 *命中精度は照準のサイズで判別可能。姿勢を低くする程小さくなり、走ったりすると広がる。 *銃身のリコイル有り *Lean可能 補足しておくとCrouch動作は途中のアニメーションがカットされて瞬間的に切り替わる感じで慣れるまでは不自然さを感じる。ProneではなくLow Crouchという動作になっている理由は、別にこのゲームに限った事ではないのだが地面とのアニメーションの整合性が取れないから。地面が複雑な形状をしている場合、そこにキャラクタをProneさせるのは非常に難しい。実際の人間なら状態に合わせて体が湾曲するが、それを全ての場合においてアニメーションで処理するのは困難。直線的に寝転ぶ形状しか表現出来ないと、地面の山部分を支点としてシーソーの板の様になってしまったり、複数の山の上に伸びて跨った様になってしまう。かと言ってProneする時に地形的に可能かを一々計算するのでは面倒だし上手くない。よって形状に関わらず常に可能なLow Crouchの様にするか、Prone自体を不可能にするかが選択される事になる(業界としては将来的に物理エンジンで表現可能になるとはされている)。 HPは数値ではなくバーで表示され、時間と共に自動的に回復して行くようになっている。治療にはFirst Aid Kitを使用するがこれは三種類用意されており、Scientists用のRadiationを同時に治療出来るタイプも存在している。携帯してプレイ中に適用するタイプでその数自体には制限は無い。適用もダイレクトにキーを押せば戦闘中でも動きに制限を受けずに可能である。ただしどれを使うのかは指定出来ない(Inventoryを開いて直接指定してやる必要が有る)。 出血の要素が組み込まれており、攻撃を受けると出血のマークが表示される。そのダメージ度は色によって変化し、所持しているBandage(包帯)を適用する事で止血可能(Medekitでも良い)。これも同様にダイレクトに適用キーを押せば使える。治療を行なえば回復するが、逆に放って置くとダメージが広がってしまう。 Armorの仕様は一般的なゲームとは異なっており、これは大きく戦闘に影響している。普通はArmorの100といった値は”防御力”ではなくて”耐久力”を示している。例えばArmorの効用が10のダメージを受けた際にその内の70%を吸収してくれるという場合(Armorは7減るがHPは3しか減らない)、この70%という”防御力”は現在のArmorの表示値に関係しないし、ゲーム全体を通じても変化しない。つまりこの場合の画面上のArmorの表示値とはイコール”耐久力”であって、これが0になった瞬間にその”防御力”は70%から0%に落ちるという方式である。 しかしこのゲームではArmor自体の”防御力”が落ちて行くというシステムを使用しており、”耐久力”がイコール”防御力”となっている。画面上のバーの値はどの程度防御力が落ちているのかを示しており、細かい数値はInventory画面にて確認可能である(V1.0000では劣化しない仕様だった)。よってバーが少ない状態とはArmorがもう長くは持たないというのと同時に、防御力そのものも落ちている事を意味する。バーがフルの状態では70%を吸収してくれたのが、50%>30%といった感じに減って行きHPに直にダメージが入る割合が増えて行くという意味。 Armorの修理は行なう事が出来ず使い捨てになるが、その分劣化速度は遅くて通常はかなり長持ちする。その代わりにマップ内に置いてある事は稀であり、ショップで購入は可能だが相当重いのでスペアを携帯するのは困難となっている。 Armor(Suit)は10種類以上存在しているがその能力が個別に異なっており、他のゲームの様に防御能力は全て同じで、数値が100の物は50の物よりも2倍長持ちするというシステムではない。防御項目はBurn(火)、Impact(打撃? 落下?)、Electric Shock(電撃)、Rupture(ミュータントによる引っ掻き傷)、Radiation(放射能)、Chemical Burn(酸等の化学物質)、Explosions(爆撃)、Bulletproof Cap(防弾)に細かく分かれていて(Impactの意味はハッキリしない)、スーツの種類によって特性も異なる。例えば科学者用のスーツは防弾性能に劣るが放射能に強いので強度の汚染地域でも活動が容易。逆に戦闘用のスーツは防弾性能は高いが放射能やAnomaliesからのダメージには弱いのでそういった地域には近付けない。強度に勝るExoskeletonは頑強だが重いので走れなくなる等。 なおバーの表示はあくまでもそのArmorの損傷度を%で示しているだけで、同じ%の状態でもArmorの性能によってその防御力は異なる事になる。逆に言えば優れたArmorでも80%損傷していたら、それより劣るArmorの20%損傷の状態の物に劣るというケースも出て来る。 |
COMBAT |
戦闘面での大きな特徴となるのは以下の2点。 1.銃の命中率が悪い 銃の命中精度は相当低くなっており、良い武器を使っても劇的に向上するようにはなっていない。最も照準を安定させるにはLow Crouchの状態にしてSemiAuto(単発モード)で撃つか、同じ様にIron Sightにする事だが、通常の戦闘の間合いに於いてはこの状態でもそれ程は当たらないようになっている。同様に敵側の射撃も的確には当らないようにはなっているが、FPSの中でも有数の命中率が低いゲームと言える。勿論接近すれば命中度は上げられるが、それは同時に敵にも当て嵌まるのでそう簡単には出来ない。 特にゲームの初期は手に入る武器の質が低いので、特にピストル系は本当に当らないという感じになっている。またSniper Rifleは結構先でないと手に入らないし、弾数も極めて少なくなっている。それとSniper Rifleを使ったからといって簡単に当るようにはならない。 2.敵のArmorが固い Armorの防御力が非常に高く、通常弾(JHP)でボディーを撃って倒すには結構当てないとならなくなっている。よってHeadshotが重要となるのだが、命中率が悪いのでHeadshotする事自体が難しい。敵がこちらに気が付いていない状態ならそれなりの確率で出せるのだが、戦闘状態に於いては良質の武器を持っていてもそれ程頻繁に即死させる事は出来ないバランスである。これは更に敵が頭部も覆った全身型のスーツを着込んでいると難しくなる。 そこで効果的となるのがArmor Piercing Roundで、後半は出来るだけこのタイプの弾を多く集めるようにしてやり(性能に応じて何種類か有ったりもする)、ミュータント系にはJHP、重装備のArmorを着込んでいるならFMJという使い分けを行なわないと余計に苦労する羽目になる。 ゲーム(戦闘)の難易度は相当に高い。個人差は当然有ると思うが、Normal(Satlker)の難易度における比較ではトップクラスの難易度となっているのは確かだ。Forumでは異常過ぎるといった声も出ており、確かに万人向きとは思えない感じはするが、それでもQuicksaveが自由なのと途中で自由に難易度を変更可能なのでその辺は緩和されていると思う。逆に言うととにかく死にまくるので、頻繁にQuicksaveを行なって進めるゲーム性である。 しかし難易度のバランス調整は非常に上手く出来ており、最初から難しいがその難しさは最後まで大きくは変化しないようになっている。つまり気を抜いてプレイ出来る様な瞬間が無く、常に死の緊張感を持った状況での戦闘が繰り返されるのでサバイバル感をヒシヒシと味わえるようになっている。易しいのは装備が良くなった状態で初期の頃の装備の劣る敵を相手にする時や、効果が高い新品のArmorを使っている時位だろう。 戦闘を難しくしている要因を更に順に列挙してみよう。まずは大抵の場合こちらが死に易いという状況に置かれている点。Armor自体が劣化してしまうので、(劣化速度自体は相当遅いが)一旦劣化すると非常に厳しい状況に置かれる事になる。通常のFPSの様に定期的に代わりの物が明確に置かれている訳ではなく、有ったとしても相当にレアな上に箱の中等に隠されていたりも多い。かと言って予備を持ち運ぶには重いので難しくなっている。新しいエリアに入る前には新品の程度が良い物を使いたいのだが、良質なArmorは店には売っていない事が多く(特別なイベントやクエストで手に入る)有っても相当に高価。またプレイヤーが入手出来る数は限定されており、本当に優れたArmorをどこで使うかという難しさも持ち合わせている。ちょっと痛んだらすぐに新品にするというのは困難だが、勿体無いので古いArmorで臨んだら途中で痛みが激しくなり、引き返せない状況なのに替わりも無いという羽目に追い込まれたりもすると判断は難しい。 Headshotはこちら側に対しても発生するようになっており、当たり所が悪いとArmorの状態が良くてHPがMaxの状態でもすぐに死んでしまう。特に終盤になってFMJ系の弾を使う相手になると、Armorの効果が薄れるので死に易くなる。この辺の死に易さは装備系が最強レベルになった終盤においても変らず、本当に死ぬ時はアッサリと死んでしまうというバランスである。逆にJHP系の弾を持つ敵に対しては、良いArmorを持っているならばそこそこ正面から撃ち合っても大丈夫にはなるのだが。 人間相手だと近距離になる程敵の弾が当たり易くなるので遠距離戦主体となり、そうなると同様にこちらからは当てるのが難しくなる。これには離れるとIron Sightにて敵が見え難いという弊害も有り。Medikitを大量に持っていれば被弾しても死の危険性は減らせるが、Armorが傷んでしまうとそれがArmorの性能自体に響いて来る為、死ぬ危険性が低くてもArmorの痛みを最小限に抑える為に出来るだけ弾に当らないようにする事が重要というのは他のゲームとは異なる点になる。 メイン武器は重量さえ許せば幾らでも持ち運べるが、実質50kg制限の状態では2つになるだろう。Assault RifleとShotgunという組合せが一般的とは言えるが、近距離戦を避けるのが基本のこのゲームではShotgunは地下エリアの様な特定の場所以外ではそれ程使えない様な印象。よって一個だけにして他の装備品を充実させるか、違うタイプのAssault Rifleを持って行って使い分けるかになる。という様に多数の武器を同時には持てないというのも難しい点。更にバックパック内の武器の切り替えはダイレクトに行なえず、Inventroy画面を開いて武器をスイッチしてやらないとならないようになっている。 銃弾は運動量が計算されており、距離が長くなると重力により落下するようになっている。また木で出来たカバー等は隠れてもそのまま撃ち抜かれて当ってしまう事も有ったりと、その辺まで計算して隠れないとならない。命中率を上げるにはCrouchして安定性を上げたいのだが、Crouchの状態では移動速度が遅くて敵に攻撃を受けた際に逃げるのが遅れてしまう(浮き腰のCrouchダッシュは出来ない)。Crouchした状態からLowに持って行き、更にLeanするという様にキー操作が大変という面も感じられる。 そして中でも厄介なのが敵のAIである。そのAIについての基本的な説明は以下の様になっている。 200程度の内部パラメータを持っており、それに応じてその場の行動を決めるという方式。スクリプト的な行動は最小限に押さえられている。第一に注目点といった能力を備えており、これは”ここに敵がいるであろう”という推測ポイントの意味。敵が見えなくなった場合は最後に見た地点の周囲を観察するし、発砲が有ればその周辺へと注目点は移動するといった自然さを持たせている。一度発見するとどこに移動しようが居場所がバレてしまうとか、こちらからは見えにくいのに敵からは丸見えといった不自然な事は起こらない。 次に複雑な地形やオブジェクトを正確に認識出来て、どこに隠れられるのかやそこに隠れて安全なのかを判断可能。またモラルというパラメータを持っており、自分の所持武器や弾数と敵の武器の比較、味方の人数と敵の人数の比較を行って、状況が不利なら逃げるし有利なら攻め込むといった状況判断を行う。 この解説がどの程度実現されているのかは分からないが、AIの動きが非常に良いというのは確かであり、ゲームの誇れる点の一つとなっている。むしろあまりにも手強いので逆に難易度を大きく上げてしまうという問題を起している位である。 非常に動ける範囲が広く相当な距離を側面から廻り込んで来たりするようになっており、通れる移動パスの認識がしっかりしている。そして体勢を低くして隠れながら攻撃して来たり、リロード時には物陰へと移動したり、撃たれると一つの所に留まらずに別の場所へと逃げたりと防御の意識も持ち合わせている。動きの予想が付け難いのも一つの特徴で、物陰に隠れてから再度その場所に顔を出すのか、大きく回って別方向に動いてくるのかが分からないし、接近して間合いを詰めて来るかと思えば、ずっと遠距離から安全第一で攻めて来たりとその動きは多彩。敵味方合わせて20人を超えるような戦闘になる場合もあるが、特に負荷によって反応が鈍くなるというのも見受けられない。時には割とストレートに体を出して撃って来たり、走りながら撃って来たりもあるが、その辺も行動の選択肢が豊富という面からは特にマイナスでは無いだろう。 その為に戦闘時は応対が難しくなっている。こちらが障害物に隠れていても、そこまで側面から廻り込んでやって来たりもするので常に周囲を確認したりしないとならない。隠れていると複数で近くへとやって来てプレッシャーを掛けて来たりもする。部隊行動の概念を持っているのかは不明だが、基本的に多人数ならば大きく広がって包囲するような形で攻めて来るようで手強い。またGrenadeへの反応が素早く、固まっている敵に対して投げてもあまり効果が無い(この点はちょっと反応が早過ぎて問題でもあるのだが)。不自然にこちらを見付けたりとチートの様な手段でこちら側の居場所を検知している様には見えないし、思考や動きが人間的に見えるという点で優秀である。 欠点としてはまず手榴弾を一切投げて来ない。これは複雑な地形なので自爆を回避するのが難しいというのもあるのだろう。しかしこの難易度で手榴弾まで投げられては余計に大変という気もする。次にこのゲームでは木の壁の様な物ならば撃ち抜けたりもするのだが、その辺の影響なのか壁を通して撃って来たりする事が有る。こちら側も背後に気が付かない事はあるので、偶に警戒状態でこちらに背を向けながら動いて来るのは許容範囲だが、時々明らかにこちらを見失った状態になるのも見られる。障害物に支えてスタックというのはまず無いようだが、Anomaliesに引っ掛かったり突っ込んでしまったりは発生する。後はロケット弾については爆風範囲の計算が出来ないようで角度が変わると目の前の障害物に当てての自爆も多い。しかしいずれにしろ全体からするとそれ程大きな問題ではない。 よって基本的な戦闘は、物陰に隠れた状態から姿勢を低くしながらの攻撃が基本となる。当然Leanが基本で危なくなったらすぐに体を引っ込められる様にしておかないとならない。接近戦だと立った状態でLeanのみにならざるを得ないケースも出て来るが、出来るだけ低くしないと弾が当たり難い。多人数相手ならば待ち伏せて誘き寄せるのが効果的なケースも有るが、警戒して近付いてこない敵も居るので万能では無い。なお相手の装備系が格下で現在のArmorが痛んでも代わりが有るという状況ならば、多少大胆に体を出して撃ち合っても問題は無い。後はナイフでの攻撃が非常に強力となっており、隙を付けるならば有用である。例えば隠れて接近して上手く敵に撃たせてリロードを誘い、その動作中に飛び出して切り付けるという戦法。大抵は一撃で倒せる。 戦法としては現実同様に高所を取るのは非常に重要となり、高所ならば角度的にすぐに敵から隠れられる。それと結構多くのケースでは逃げるのも重要な手段となっており、目的地がハッキリしていて逃げ切れそうならば相手にせずに逃げてしまった方が利口である。実際に戦う事自体に意味の無いシーンも存在している。 味方AIについては終盤の仲間はそれなりに頼りになるが、それまでは割と装備が貧弱なNPCが多いのであまり当てにはならない。また彼等の通り道にいると強引に押されてしまうという問題も有り。自分の意思で仲間を雇って戦うという概念は含まれていないので、チーム同士の戦いを味わえるシーンは少なくなっている。 Mutant系は人間とは大きく異なっており、知能が高い様な敵は存在していない。その為戦闘に知性は感じられないが、その分特殊な能力や攻撃方法を持っている敵は存在している。死ぬまでこちらを攻撃して来るというタイプは動物系の知能が特に低い物に限られており、その他は攻撃を受けると逃げたり、こちらが逃げると追っては来なかったと動きがランダムである。 こちらは人間の敵に比べると単純過ぎてそれ程出来はよろしく無い。途中に挟まるアクセントとしては活きているとも言えるが、単体では魅力に乏しい。種類がそれ程多くないというのも弱い点。またMutant系は弾が当たっても反応が無いタイプが多いので、当っているのかが感覚的に分からないのも欠点である。以下はその内の幾つかを紹介。 *Zombified S.T.A.L.K.E.R. 放射能の影響によってゾンビ化したStalker。外見上は通常の者とほぼ変りはない。ノロノロとスピードが遅く撃たれても反応が鈍いが、死体の分耐久力が高くて倒すのには苦労する。動きが遅いのでナイフが使えれば有効。 *Bloodsucker 口がタコの様に開いている人間型のモンスター。光学迷彩を使って消える能力を持っており、よく見ると大気が歪んで見える個所が有るのでそこに居るとは分かるが天候や場所によっては確認が困難。相当にアグレッシブで凶暴な性格。 *Flesh ギョロギョロする飛び出した目を持つ豚のミュータント。非常に弱く通常は攻撃すると逃げてしまう。 *Boar やたらと攻撃的なイノシシ風の動物。耐久力はそれほど無い。 *Pseudodog 大型の犬のミュータント。攻撃力は強めとなっている。 *Snork 元はStalkerだったミュータント。四つん這いになって通常は集団で移動しており、飛び付き攻撃を仕掛けて来る厄介で気色の悪い敵。 *Poltergeist 様々なオブジェクトを念力で持ち上げて投げつけて来る。ただし本体を見付けさえすれば倒すのは容易。 |