問 題 点 |
このゲームは三部作の最初のパートを占めており、言ってみれば普通の一本のFPSゲームの最初の1/3だけを切り取った様な物となっている。そしてプレイ感も文字通りにそういう感じになっていて、一本のゲームを1/3進んだ所で止めさせられたという印象が強い。確かに宣言通りに一応の終了はしているが、最初のボスを倒したというのと同じ程度の話であり、完結した一つの話(ゲーム)という印象は相当に少ない。 最初なので武器は3つしか出せないし、それ程多彩なロケーションも用意出来ないという前提が有るのなら、4-6時間で終了という今回の設定はバランス感覚としては間違っておらず、これ以上同じ武器に同じパターンで進められても飽きが来てしまうだろう。しかし結果的には一本のゲームをクリアしたという達成感が薄いというのは欠点には違いない。 そこを「そもそもエピソード形式自体が間違い」と言うのは簡単だし、私自身好ましい方式とは思ってはいないが、実際問題として過去にSiN 2はコンセプトの段階で契約先が見付からずにポシャったという経緯を持っており、それが今回エピソード形式なら(同時にダウンロード販売ならというのも大きい)となって世に出る事が出来た訳である。そのまま消えて行くのと、曲がりなりにも世に出るのではどちらが良いのかとなれば、その二者択一においては世に出た方が良いだろう。資金的にこれしか方法が無かったと言われては返す言葉が無い。 1.クオリティの高いゲームを一本製作するには莫大な資金が必要 2.その資金を手に入れるには販売会社と契約しないとならない 3.契約すれば売る為に販売会社の意向に沿ったゲーム製作を迫られる可能性が強い(コンソールがメインとなる共通デザイン化等) 4.それを嫌って大手と契約せずに独自製作を決定。経費を節約する為にダウンロード販売を選択(代償として宣伝効果は大きくマイナス)。 5.それでもゲーム一本分の多大な制作費を、数年後(ゲーム完成後)に返済という条件で銀行等から借り受けるのは不可能 6.最終的には限られた予算内でのゲーム製作を強いられる事になる そうなると選択する道は2つ。あくまでも一本のゲームを完成させるのを重視し、各製作要素のクオリティは予算に応じて落とすという方法が一つ(低クオリティ化)。もう一つはクオリティは出来るだけ落とさずに全体の何分の一かの分量だけを製作して切り売りし、売って得た資金で続きを製作するという形態(エピソード化)。今回Ritualが採ったのは後者の方法になり、今後こちらを選択する中小の製作会社は増えてくる可能性は有るが、結局の所エピソード化は低クオリティ化に変る形の”犠牲”である事には変りはないというのは事実。 エピソード化の低クオリティ化に対する利点は、最終的に完成までこぎ着けられれば、そこで各エピソードは結び付いて一本のれっきとしたゲームに変貌するという点。低クオリティで製作されたゲームは、何本集まってもクオリティが低いままの物が複数有るという事にしかならない。欠点は一つのゲームを終わらせたという感触を得られない事で、どちらを重視するかは個人差が有るだろう。 その他のエピソード形式の是非・利点と欠点については、当サイトにて別にコラムを書いているので(このSiN: EPについても具体例として採り上げている)ここでは繰り返さない。 Secretを多数マップ内に埋め込んでおり、それをプレイヤーに探させる事を意図している。こういったSecretはリプレイ性を高めるには重要な要素となるが、しかし成功しているとは言い難い。根本的な問題は序盤なので大した物が用意出来ないという点で、見付ける事で高い恩恵を受けられるならば探す価値も有るが、パワーアップの様な特殊アイテムは無いし、普通の難易度設定ではそれ程足りなくて困る物がない。HPの上限を高めるような要素はPCSとの絡みで導入が困難。よって気に掛けないで進んでしまう人が多くなるという結果に終わっている。 発売後のインタビューでも見込み違いとして話しているが、主人公Bladeがほとんど喋らなくなっている。前作ではコミカルなやり取りも含めて相当喋っていたのだが、今回は短い台詞を呼び出しの際に話すのみ。プレイヤーがBlade自身であるかのように感じさせるには出来るだけ喋らせない方が良いし(HLのゴードン・フリーマンの様に)、コミカルなやり取りは緊張感を損なう恐れもある。一方でBladeというキャラクタを個性的にするには喋らせた方が好ましいし、ユーモラスな会話は前作で評判が良かった点でもある。最終的には安全策を採ろうという観点から前者を選んだそうだが、結果的には想像以上に反発を受けてしまう事になってしまった。私もこの点はSiNの魅力の一つと感じていたのでマイナス評価。EP2以降においては万人に受け入れられるように、Bladeの台詞のON/OFF機能を搭載する事を検討しているそうだ。 非常に高速に移動するのは利点では有るのだが、カーソルを目的物に合わせるのが少々厄介。カーソルの色が変化するスポットが結構小さく、更に前進はともかくとして横方向への移動速度が不自然に速いので、ピタっと合わずに微調整を余儀なくされる事も多い。 HUDのデザインが分かり難いという声も結構出ていた。左下のHPの下の三連のランプと、上の小さな赤い三連のランプ。前者は構えた武器の番号で、後者はAmmoが一杯の時に該当する武器番号が点灯する。それと気になるのはこのHUDだと武器は3つまでしか所持出来ない事になり、EP毎にHUDのデザインを変えるというのはどうかと思うし、3つまでしか同時所持が出来ないというのもゲーム性からして問題あり。デザインを変えたらこのEP1もパッチで変更するという手法は残されているが、どうも一過性の気がして良いデザインとは思えない。 PCSの問題点については解説ページで詳しく書いたので省略。 |
そ の 他 |
Arena Modeは発売には間に合わずにパッチで導入されたモードで、現在使用可能マップは7個となっており今後も追加予定はある。これはいわゆるQuick Missionに当たる物で、専用に製作された閉じたマップ内で出来るだけ長時間サバイバルし、ハイスコアを競うというゲームになる。 最初に難易度の選択をシングルプレイと同様に行うが、異なるのは自動難易度調整が非常に高速で行われるという点。プレイヤーのパフォーマンスに応じて敵の数等がダイナミックに増えたり減ったりするようになっている。ハイスコアを稼ぐには出来るだけ高い難易度でスタートし、その難易度を保つ(上げる)というのが重要になるのだが、5秒間攻撃を当てるか当てられるかが起きないとマイナスになってしまう為に、とにかく必死で走り回って休む間も無く戦闘をし続けないとならなくなっている。 感想としてはあくまでもオマケの要素という感じで、それ程繰り返し遊びたくなるような物ではない。ハイスコアを収集してのランキング・システムも用意されていないのでコミュニティでの盛り上がりにも欠けている。ただしマルチプレイに応用すれば面白くなる要素は秘めている。 マルチプレイは導入される事自体は確実であり、購入者には無償で提供されるのだが、それが何時でどの様なモードがサポートされるのかは未定。予定からしたら相当遅れているというのは確かだ。注目点としてはCoopに対応させるとコメントされており、これがArena Modeの様な形態なのか、シングルプレイのシナリオなのかは不明。ただ私はPCSはシングルプレイには問題が有るが、Coopに導入するのはメリットが多いと思っているのでCoopには大きく期待している。 一応将来的な可能性についても書いておこう。このゲームはオンラインでの各プレイヤーのStats収集を行っており(メニューから送信ボタンを押すと送られるシステムで、勝手に収集はしていない)、その分析結果を用いて”自動難易度調整”の調整や、或いは続編EP2における初期設定の調整に活かす事が出来るようになっている。またはこのデータを基にしてプレイヤーの嗜好を分析し、その後のエピソードの内容に反映させられるという仕組み。 データの一部はStatisticsにまとめられており、平均クリア時間は内部時計で04:57:41とかのデータが載せられている。マップ単位の平均死亡回数や、初期の選択難易度分布等興味深い物も有り、相当製作の参考になりそうなのは確かだ。例えばSecretの発見数の分布グラフが掲載されており、この結果からはほとんどプレイヤーはSecretを探していないという事が分かる。普通なら失敗だったで終わってしまう所だが、どのSecretがどれだけ見付けられているかまで分析が可能なので、分かり易い物と設置場所に問題が有る物の判別が行える。次の作品ではもっとプレイヤーがSecretを探そうとするようなゲームにする為の参考にするとあり、こういった事が出来るのはStats収集機能の大きなプラス点と言える。 |
GRAPHICS |
グラフィックは必要環境からしてHalf-Life 2の物を特に改造せずに使用していると思われ、その後導入されたHDR機能も使われていない。つまり水準としては2004年後半の物であって特筆すべき点は見当たらない。 SiNは前作での造形やその後アニメ化されて人気を博したというのもあって、各キャラクタがアニメのキャラ的に見えたりマップから受けるイメージがリアリティよりもゲーム的といった、全体的な感触が作り物っぽいという点に関しては大きなマイナス要素とは思わない。しかし予算・人員不足からなのか、結構作り込んであるアウトドアに比較してシンプルな形状で繰り返しの多いインドアの比率が多くなっており、インドア部分にはリアリティを出すような細かい部分までの作り込みが見られない。キャラクタモデルの細かさも同様。よってより昔に作られたHL2の方が総合的にクオリティは高いと感じてしまう。低予算で発売される多くのゲームに比較したら上回っているが、トップクラスの作品に比べると負けており、開発側も次回作ではもっとグラフィック面のクオリティを上げて行きたいとコメントしている。 出血表現や頭部・四肢が飛ぶGoreは導入されているがそれ程派手ではない。ライティングのクオリティも最近のゲームと比較すると前世代というのを感じさせる。 |
SOUND |
Source Engineという事でサウンドはMiles Sound Systemを使用。MSSはOpenAL同様に非常に有名なサウンド製作システムであり、Call of DutyやMedal of Honor等の非常に多数のゲームで採用されている。ただしSourceではEAXには対応していない(MSS自体はEAXを呼び出して使用する機能を持っている)。マルチスピーカーの設定は可能でちゃんと後方定位も行えるが、EAXほど明確な物とはなっていない。良く言えばゲーム的では無い自然な音作りだが、明快なサウンドの移動感が薄くてこれは弱点の一つと言える。狭い屋内と広いアウトドアでのサウンドの反響に差を付けたりが出来ていない。 BGMは通常流れない方式で特定のシーンで鳴らされるのみ。中ではメニューで流れるテーマ曲は良い出来。サントラが通販可能となっている。 John R. Blade, Elexis Sinclaire, JC等の主要キャラの声優はオリジナル作品の人物を起用。新入りのJessica Cannonの声はJen Taylor(No One Lives ForeverのCate Archer役等で著名)が担当している。 |