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GAMEPLAY
 全6チャプター構成。難易度Normalで行ける場所には行ってみるという姿勢で10時間強。アイテム回収系に力を入れずに先を急げば7〜8時間でクリア出来ると思う。

 所持武器制限, 武器改造, TMDや基礎能力値のアップグレードといった要素はリプレイ性を高める物となるが、それ程劇的に武器の性能を変えられる訳ではないし、能力値のアップグレードの方は初回でかなりのレベルまで改造を進める事も可能なので、あまりリプレイ性が高いゲームとは思えない。難易度を上げてのリプレイはそれなりに楽しめそうだが、初回Hardでクリアしたらもう後はする意味が無さそう。コンソール版では実績狙いに行くにはセーブシステムの関係上リプレイせざるを得ない構造になっているが、PC版にはその実績も用意されていない。


 Bioshockとの比較が良く出てくるゲームであるが(1950年代の世界, 廃墟と化した世界に変質した人間, 通貨による購買システム, RPG的なアップグレード, ホラー要素, オーディオログにより当時の出来事を知る, 特殊能力と武器の併用等)、実際にはそんなに似ているという風ではなかった。それとホラーFPSの様な表現もされているようだが、ホラー要素は希薄なのでそれを期待すると外れる。Bioshockもホラーとは思えないが、まだあちらの方が怖い雰囲気が出ていると言えよう。

 1950年代の雰囲気再現という点でも今一つ。当時における最新設備や研究所といった場所が多く、労働者達が生活していたような時代を感じさせるエリアがあまり登場しない。そういう場所はゴミゴミとしていたりで雰囲気も良いのだが、如何せんそういった場所が少な過ぎる。ロケーションとしてはいろいろな場所へと行くのだが、見た目の変化はバラエティさに欠けるゲームである。それと時間の流れが変になっているという設定から過去の出来事を見られるというイベントも随所に登場するが、これも凡庸な演出で効果的には働いていない。最後にストーリーを重視するなら、オーディオログを後でも再生可能にするとか、字幕でも参照出来るようにした方が良かった。


 ストーリーはタイムトラベル要素を含んだ物で、それにより生じるタイムパラドックスを完全に解決しているとは言えないが、構成としては結構面白いと感じられた。特にゲーム序盤の?な出来事や、ゲーム中の謎のメッセージの意味などが解かれるラストは良く出来ている。(意味が良く解らなかったという方は、クリア後にNew Gameでレンコが過去の世界に最初に飛ばされてしまうシーンまでリプレイしてみる事をお勧めする)。

 エンディングは3種類で、プレイヤー最後の選択のみで決定される。この直前でセーブされるので、チェックポイントからロードすれば全部視られる仕様。メインと考えられるエンディングはネット上を見ると「グッドエンディング」と名付けられている事もあるようだが、これをグッドエンディングと捉える人は少ないのではないか。ただこの終わらせ方の演出は洒落ていて感心させられた(最初は何が起こったのかと驚かされた)。他の二つはバッドエンディングという事になるのかもしれない。


 ゲームの進行は一本道だが、E99やWeapon Techが隠された脇道は多い。だがあまり長く遠い別ルートというのは無く、移動中にちょっと「こっちにも行けそうか?」という位で見付かる物が多目なので、アイテム探しの労力は低い方だと思う。問題があるとすれば進行ルートの限定で、とにかくこのゲームでは背後の扉が閉まったりで戻れなくなるシーンがやたらと多い。後で取ろうと考えてアイテムを残すと後悔する羽目になる。その為にPCでは関係無いが、実績解除を目指してのアイテム収集を心掛ける際には注意が必要である。何故ならチェックポイントが更新されるともうそれ以前の場所には戻れないし、チャプター単位でのリプレイも出来ないので、ゲームの最初からやり直すしか無くなるからだ。

GAMEPLAY(続)
 肝心の時間操作に関連したパズルだが、これは単純な物がほとんどで期待していた程には面白くなかった。変化させられる対象物はアイコンが変化するので見付け易いし、頭を悩ませる様な難解で複雑な物は含まれていない。過去と現在を行き来する事から、その設定を利用したパズルなども想像していたのだが、そういった変化はストーリーに組み込まれており特にはパズル的な物は無し。

 実際のパズルとしては、取れない場所に有る箱を老化させて小さくする→それにより狭い隙間を通して重力操作機能を使い手元に持ってくる→台として使いたい場所におく→復元機能で元の箱に戻す→それによじ登って別エリアにアクセスする、といったパターンが基本。同じ様に老化させた物をシャッターの下に挟んでから復元し、その力でシャッターを持ち上げるというのも繰り返し出て来る。パターンが単調で工夫が足りないという感想で、もっと多種のパズルを用意して欲しかった。


 また不自然なパズルに興醒めさせられるのも欠点。FPSゲームにおいてはお約束というか、そこはゲームなので突っ込まないでという箇所が幾つかある。例えばプレイヤーが通れないと設定されている箇所は通れないので、「現実世界であればよじ登れるのに、ジャンプの高さが足りないのでそこには乗れない」, 「這えばくぐれる隙間なのに、屈んだ高さよりも低いので通れない」等。普段我々はこれ等をゲームだからという理由で納得している。ところがこのゲームではこういった点を“真面目に”パズルとして導入しており、それ故に非常に違和感があり不自然でもある。

 要は現実世界なら簡単に登れる高さに上がる為に台を運んできたり、同じく這えば簡単に抜けられる隙間を広げるのに箱を持って来たりを、わざわざパズルとして提示している。そうなると「いつもならばそこには突っ込まないでそっとしておくべき」と考えているこちら側としても、「いや、そんな箱を手間を掛けて持って来ないで普通に登ったり潜ったりすれば良いじゃないか」と考えてしまう。良いパズルというのは問題と解法の両方が良く出来ているものだが、このゲームではそもそもの提示される問題の方からして詰まらない。

 Timeshiftの方も時間操作のパズル自体はそれ程良い出来では無かったが、こちらとの大きな違いは世界全体の時間を操作可能という所で、(それに意味があるかどうかはともかく)工夫次第でいろいろと実験的に面白い事が出来るという楽しみ方があった。その点でSingularityでは効果対象がオブジェクト単体なので、プレイヤーによる創意工夫の幅が狭められている。


 なおアイディアとしてはTime Rift(1955年と2010年をつなぐタイムテレポーター)を使ってのパズルの計画は在ったそうだ。マップ内のTime Riftを利用して任意の時に過去と未来の行き来が可能にされており、以前には解けなかったパズルを装備がアップグレードした後に訪問して解決し、それによりまた未来が書き換わって....という形で進められるパズル方式である。

 しかし開発期間が延びたこと、それに伴ってライバルゲームの質も上がり、自分達の方も基本部分のアップグレードが必要になった事から、武器のモデリングを更にクオリティアップさせたり、RPG要素を拡張して更に多彩な選択を可能にしたり、敵の種類を増やしたりといった多大な労力が終盤になって降りかかってきた。その為に大きなグループとは言え人員が足りなくなり、「プレイヤーがどんな風にTime Riftを使って行き来しても、決してゲームがクリア出来なくなるような矛盾が生じない、と確信出来るだけのテストを実施するのはもう時間的に無理」という理由からカットされている。



 最後に余談。デザイン面でもいろいろと紆余曲折があったゲームで、開発開始時点からしばらくの間はFPSとして制作されていた。しかし途中からより良い可能性を探る為にTPSゲームへと切り替えられている。これには大きなプロジェクトとして成功(具体的には売り上げ面)を収める必要があり、Activision側からも様々な意見が出される中で、三人称にした方が売れるのではないか?という意図も絡んでいたそうだ。そこで三人称視点に作り替えてカメラシステムをいろいろと試したり、TMDの能力を効果的に見せる方法を模索したり、カバーシステムを組み込んだりしながらテストが続けられた。しかし結局の所やはり一人称視点の方が良いと決断して元に戻されている。


 もう一点主人公の扱いという面でも変化があった。当初は主人公のレンコ大尉は姿を持ったキャラクタとして存在しており、ゲーム中のカットシーンでは外部カメラからその姿を描写するし台詞も喋るという設定であった。これはE3 2009におけるプレイ動画などでも見てとれる。しかし彼のイメージにピタリと当てはまる声優がなかなか見付からず、それにより台詞の言い回しの方も決定出来ないという状態が続いていた。

 そうこうしている内に開発も終盤に差し掛かり、そこでレンコというキャラクタを強調するよりも、プレイヤー自身の体験を重視した方が良いのではないかという意見が力を持ち始める。つまりゲームを成功させる為には、見た目, 台詞, 声等が格好良いという主人公は重要な要素であるが、その主人公が現実離れして格好良いほど、逆にプレイヤーからはそれが自分自身だとは認識し難くなる。それよりもFPSでは無形的なイメージのキャラクタにした方が、プレイヤー自身がそのゲーム内世界に存在していると感じさせるには有利という話である。

 そこでカットシーンにおける三人称のレンコの姿を全てカットし(実際にはごく一部分残されている)、声だけを残す形に変更。しかし一人称視点でのカットシーンにて声だけを残すというやり方はテスターに「誰が喋っているのか判らない」等で不評となり、最後の最後に来てボイスも全部カットする事を決定。レンコが喋らなくなった事から会話のスクリプト自体も変えられ、声優が再度レコーディングをするという形になった。いわゆるゴードン・フリーマン方式だが、開発陣は最終的にはこの方式にしたのはプレイヤーの没入感を高めるという意味で成功だったとしている。確かに個人的には違和感は特に無かったが、人によっては「会話中に主人公が一言も発しないのは不自然」, 「主人公のイメージが希薄なので魅力が無い」といった定番の反対意見を持つ事もあるだろう。

BASICS

*武器は2種類を携帯可能
*武器の交換は落ちている物と交換するか、Weapon Lockerでの選択となる
*アイアンサイトあり
*照準は移動及び連射で広がる。屈みで小さくなる。
*左右へのリーンや伏せ動作は無し
*スプリントが可能だが、短時間しか持続出来ない上に速くない(スタミナバーは無し)
*敵からの攻撃には攻撃方向を示すインジケータが表示される
*グレネードは無し。敵は使えるという設定でこれにはインジケータが出る。
*個々の弾薬は上を通過する事でも拾えるが、アイテム類は指し示してUseしないとならない


 ヘルスは近年では珍しいアイテム回復方式。直接回復するスティムパックを取るか、携帯メディキットを適用するかになる。ヘルスが危険な状態になると画面周囲が赤になって知らせるという機能付き。なおこのゲームではメディキットの適用に実際にアニメーションが入るので、数秒間は何も出来なくなるし、ギリギリの適用だと間に合わない恐れも持っている。

 デフォルトではメディキットの最大携帯数は5個だが、能力のアップグレードにて8個まで増やせる。その他、ヘルスの最大値, 1個当たりの回復量, 適用の早さなどはアップグレードにて改善が可能。


 自動回復方式とは異なり、アイテム回復だとどうしても出てくるのが“詰み”の問題である。セーブ地点におけるヘルスが低く、どうしてもそこからでは先に進めないという件。昔のゲームでは任意セーブが何時でも出来るので適当な場所でセーブしながらクイックセーブを使い、詰んだらそれより前の任意セーブ地点からリスタートするか、或いはマップの最初でオートセーブされるのでそこからやり直すという形式が普通だった。ところがこのゲームは任意の地点でセーブが行えず、チャプター単位での最初からのやり直しも不可能なので、詰んだらゲームの最初からやり直すしかないという最悪とも言える方式を採用している。

 一応詰みの防止対策として、チェックポイントに戻った際には「メディキットの所持数にかかわらずヘルスバーがフルに復帰する」というシステムを採用している。つまりヘルスがギリギリの値でメディキットが無くても、やり直せばヘルスがフルからになる。それとこれはHardでリプレイしている際に難所で繰り返し死んだケースにて、リプレイ時にメディキットの所持数が増えているという事があった。難しいとされる特定の場所での援助機能なのか、どこでも繰り返し死ねば増えていくのかは未検証である。

 しかしこれだとセーブデータの破損に対しての保険が無いし、絶対に詰まない様にしているのならばともかく、実際には詰んでしまってやり直したという人も見られる。それとレビューする立場からすると特定の場所をやり直して検証したいというケースもあるのだが、このゲームではそれが出来ないのでその点でも嫌な仕様である。


 TMD使用時に消費されるE99は、拾い集めて改造に使う物とは別換算。そのリチャージ速度は遅く、能力を発動させた際に残りのバーが必要なエネルギーに足りなければ、予備のVialをリロードしてフルにするという動作が入る。このリロード動作には数秒掛かるので、例えばImpulseのパワーを最大限に活かす為に敵を引き付けてから発動させようとしたらリロードが入ってしまい攻撃されるという失敗も有り得る。


 武器の交換はWeapon Lockerでも行えるという点に注意。上記の詰みの件に関してだが、複数のプレイヤーがそれを報告している箇所が存在する。チャプター2の冒頭(最初にキャスリンに会ってから分かれた後)、プレイヤーはハンドガン一丁の状態となる。そこから先のルートにWLが在るのだが、最初のWL登場時の説明で「これは武器をアップグレードする為の装置」と思い込んでしまい、改造に必要なキットも無いしという事で素通りしてしまう。そしてその先でミュータントとの戦闘になるのだが、最大でも24発しか弾を持てない仕様のハンドガンのみでは無理。しかしWLの場所まではもう戻れない、となって詰んでしまう。


 ボタンの少ないコントローラーでの操作に合わせて、Useとリロードは一緒のキーを使う方式。しかしアイテムを取るのに逐一Useを使うという設定で、且つ近付かないと反応しないので、Useのつもりがリロードになってしまうという誤動作が結構発生する。それとノート類をUseで読むのだが、読んでいる際にポーズが掛からないので、戦闘中に偶然近くにノートが在る場所でリロードした際にノートを読む方が優先されてしまい、敵への反応が遅れてしまう事がある。


 改造可能なノーマル武器が7種類。その他に特殊な武器が2種類用意されている。この特殊武器は2つの携帯武器に加えて持つ事が出来るのだが、通常武器を選択した時点で落としてしまう。よって持ち歩きには構えた状態にしておかないとならない。追加の弾が拾えるケースはほぼ無いので、基本的には弾が無くなるまでの使い切りと考えるべき。

Centurion Revolver  最も弱いハンドガンでヘッドショットを決めないと効果も薄い。更に最大携帯弾数も24発と少なく、これを選択して持ち運ぶ意味は無いと見るべきだろう。改造したらどうなのか不明だが、改造用のキットも少ないので試しにくい。
AR9 Valkyrie
Assault Rifle
 スタンダードなアサルトライフル。弾は豊富に手に入るし、どんなケースでも汎用的に使える。ただ改造してクリップ装填弾数やダメージを上げないと、他の武器との比較では威力は低目である。
Volk S4 Shotgun  集弾性能が高目であまりバラけないので、狙いは出来るだけ正確に付ける必要がある。それと距離によるダメージの違いが大きく、ギリギリまで引き付けないと一発では倒せないことも多い。またクリップ装填数を増やさないと使い難い。
Kasimov SNV-E99 Sniper Rifle  強力な威力を持ったスナイパーライフル。普通の状態でもあまり揺れないが、短時間の息止めでスコープを止められる。
Autocannon  いわゆるミニガンで、持っていると移動速度が遅くなる。発射までのラグは短く、また連射時の銃身の暴れも少ないので使い易い。
Spikeshot  刺さってから数秒で爆発する矢を撃ち出す。ズームにすると熱源探知機能がオンになり、敵の居場所を明確に判別出来るようになる機能も在り。ただし一発毎にチャージしてから発射するので連射性能は低い。 
Dethex Launcher  小さな砲弾を使うグレネードランチャー。大きな放物線を描いて飛ぶので、慣れないと狙った場所に落とすのが難しい。ALT Fireでは目の前に砲弾を落とし、その後WSADとジャンプキーで砲弾をリモートコントロールして移動させられる(物陰でも通して見られる)。隠れた場所から敵の所まで転がしてやり、その後起爆させたりが可能。
Seeker  特殊武器の一つであるライフル。ALT Fireで発射後の弾丸をスローモーション状態にてコントロールし敵に命中&爆発させられる。
RLS-7  特殊武器の一つであるロケットランチャー。ALT Fireで発射後のロケットをコントロール出来る。弾当たりのダメージは最大の武器。

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