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COMBAT
 全体の構成として、主人公は最初はTMDを持っておらず、それが手に入るのはチャプター2においてのこと。よってそれまでの間は普通のFPSと同じ様な戦闘になる。全6チャプターなのでその比率はそこそこ長く、20%位はそういう風になっている。またTMDが手に入っても最初の内は衝撃波のImpulseと、物を掴んで投げ付けるGravityを利用するだけとなり、最も戦闘に影響を与えるDeadlockが使えるようになるのはチャプター3からという設定になっている。

 そしてこのゲームの大きな問題点とは、チャプター4から最後に至るまでの難易度が低過ぎる(難易度Normal)という所になる。チャプター3までも全体としては特に難易度は高くないが、序盤は武器が弱い, 2回のボス戦を含んでいる, メディキットもそれ程無い, CH3にゲーム中最大の難所が在る、といった感じで、時にはメディキットの数が0や1になったりもしたし、ゲームの前半戦の難易度としては特に問題は無いと思える。

 ここから最後に向けて難易度が上がっていくなら良いのだが、逆に“崩壊”といっても過言ではないレベルで難易度が下がってしまう。そしてゲーム途中での難易度変更も不可という困った仕様。チャプター4以降戦闘で死ぬ事は一度も無かったし、メディキットを更に持てるようにはしたものの、そもそも携帯数がデフォルトの5以下に落ちる事すら無いというバランス。最後に至ってはE99のエネルギーが無限になるので著しく簡単になる。


 その原因についてだが、第一にDeadlockが強力過ぎる。プレイヤー側もスローダウンするという設定では無いので圧倒的に強い。効果範囲外の敵には影響を及ぼさないとは言え、範囲球体の向こう側からの攻撃は中で遅くなるので自分には当たり難くなる。しかもアップグレードのコストが安く、レベルを上げてしまうと効果範囲と持続時間が延びるので手が付けられない。こういう能力を設けるなら使用コストを非常に高くするとか、これを使っても苦戦するようなタイプの敵を数多く出すべきなのだがそうなってはいない。

 第二に各種アップグレードもアンバランス。私はなるべく探索して改造通貨となるE99を回収したが、そうなるとかなりの部分まで改造が可能になってしまうので強くなり過ぎる感がある。積極的に回収をしないプレイヤーを考えての設定とも考えられるが、それにしてもメインルートに置いてあるだけの分でも多いと思える。確かにこういったRPG的成長要素を含んだゲーム、例えばBioshockシリーズなどもアップグレードを進めると終盤は強くなり過ぎるきらいはある。ただそうなるのはかなりの終盤なので問題は小さいのだが、Singularityでは中盤からもうそういう状況に陥ってしまう。

 第三にオートキャノン(ミニガン)が強過ぎ。発射の際のラグが少ない, 銃身が激しく暴れないので連射しても正確性があまり落ちない, バーストで使えば離れていても結構当たるという優れ物。ただ強いこと自体は他のFPSでも変わらないで正確にはそこが問題では無い。不味いのは弾薬が多いという所で、一般的な「強力だが弾の消費速度が早く、その弾薬もレアなので難所での温存武器」にはなっておらず、常用しても存分に使える位に弾薬が手に入る。私は最初にこれが手に入ってから最後まで持ったままで、交換で捨てたアサルトライフルは以後必要としなかった。

 第四に上で書いた様に弾薬が多過ぎる。前半戦はそうでもないのだが、後半は弾薬を購入可能なWeapon Lockerが増え、また購入代金が安いのでフルまで装填するのが苦にならない。多数の武器の弾薬をまとめたAmmo packが在るので、兵士が落とすアサルトライフルやショットガン以外の弾薬も補給し易いというのもある。普通のFPSでは2つの武器選択にミニガンとスナイパーライフルという組み合わせはまず無い。どちらも特殊用途で弾薬も少ないからだが、このゲームではその組み合わせが成立してしまう位に弾薬が手に入る。

 そしてTMDの使い勝手も良過ぎ。遠く離れていても各種能力が使えるので、遠くから兵士を老化させてリチャージ待ちの繰り返しとか、Deadlockを遠くに放って時間を止めてから距離を詰めたりと安全に戦える。あえて使わないようにすればバランスがマシにはなるが、使わないと普通のFPSになってしまいユニークさが失われてしまう。

 その他では余りまくりな位にメディキットの数が増える, 武器の命中精度も高いといった要素が加わる。


 リプレイではHardで途中(CH3)までやってみたが、劇的に難易度が上がるという風では無い。メディキットでの治療効果が減るので、数を連続して適用する際にその動作が入るためスキが出来易くなるという点が難しくなる。ただ後半パートがNormalよりずっと難しくなるという気配は無く、やはり全体としてはHardと呼ぶ程では無さそうだ。途中で難易度を変えられないので、これは最初からHardでやった方が良いかなという気がする。

 こうなったのはアップグレードを積極的にしなかったり、TMDをあまり使わないというユーザーに配慮してというのもあったとは思うのだが、ゲームの根本としてTMDをメインにしているのだから、それを使わないプレイヤーに対して特に配慮する必要性は無いと考える。自由度が高いというのは一つの利点ではあるが、TMDを使わない&アップグレードをしない自由度というのまで認める事は無い。


 [補足] 他のプレイヤーの評判はどうなんだろうと公式を含めた掲示板やユーザーコメントなどを見て回ったのだが、意外な事に簡単過ぎるという不満はあまり無かった。中にはそういう人も居るが、他のゲームでもそれはあるのでその辺は特に変わりない。同じく時間を遅くしてプレイヤーが優位に立てるFPSとしてF.E.A.R.2: Project Originも簡単だと感じたが、こちらでは実際にそういう意見が多くて後に修正されもした。私の感覚だとこのF.E.A.R.2よりも数段簡単だと思えるのだが、難易度は普通という声が一般的である。

 そんな中で「これが原因か?」と考えられる書き込みを見付けた。その人はマウス+キーボードにて初回クリア後、二回目はXbox 360コントローラーでプレイしたそうなのだが、遥かにヘッドショットがやり辛いので難易度が大きく上がるとしていた。つまりこのゲームはコントローラーでの操作を前提に難易度が調整されており、マウス+キーボードにおける調整が成されていないのではないかという意見。だがマルチプラットフォーム制作のFPSで、売り上げ的にマイナーなPCでのマウス+キーボード操作における難易度調整が、他ではちゃんとされているのかとなると疑問ではある。

 考えられるのは敵のタイプの違いで、例えばMetro 2033などはXbox 360版だと非常に難しいという声が多かったゲームである。その理由として敵にミュータント系が多く、動きが素早い上にジャンプして跳びかかってきたりする, 頭部を揺さぶりながら迫って来るのでヘッドショットが難しい, 四つ脚で地面を駆けてくるのでヘッドショットが難しい, 接近されると足下から突き上げる攻撃を仕掛けてくる等で、アナログスティックでの照準動作に上下方向の激しい動きが要求されたりする事が原因に挙げられていた。敵が人間のケースではそこまで素早い上下動を要求される事は少ない。

 確かにこのSingularityでも素早い動きをするミュータント系の敵は登場するし、Deadlock入手まではそれを停止させる手段も無いので、それが違いを生んでいる理由という確率は高そうだ。よってこの簡単だという問題は、マウス+キーボードでプレイする場合にのみ適用されると考えた方が良いかもしれない。

COMBAT(続)
 TMDの各種能力に関しては、あまり上手く使われていないという印象。まずメインとなるDeadlockの場合、実質内部の時間を停止させるレベルなので使っていて面白味がない。スローモーションになるゲームでは、敵がラグドールで吹き飛ばされるところがじっくりと見られたりと爽快感があるのだが、Deadlockでは動かない敵に対して銃弾を撃ち込み、解けた時点でやられた敵が一斉に倒れるだけなので爽快感不足。撃っている最中に敵が死んだのかどうかすら判り難い(兵士ならば近くに居れば武器を落としたというメッセージが出るが)。

 敵の隠れているカバーを老化させて崩したり、Gravityで敵の持つライオットシールドを奪ったり出来るが、あえてそうしなくても普通に攻撃して倒せるという程度の難易度。Revertで兵士をミュータントに変えて攻撃させたりも同様で、わざわざそんな事をする必要が無い。結果的にいろいろな能力を持たせてはいるが、戦闘においてそれを面白くするような効果は十分に挙げられていない。


 戦闘時に死亡してゲームオーバーというのは少ないのだが、死亡以外の理由でゲームオーバーになる場所が幾つかあって、そちらでのやり直しの方がむしろ多いかも。それに関連してだがチェックポイントの間隔が長い場所が多く、例えば背後の扉が閉じてしまったのでチェックポイントを読み込ませて戻ろうなどとする場合、相当前まで戻されたりするので気を付けた方が良い。


 良い点としてはゴア要素が挙げられる。PC版では日本語コンソール版とは違って規制が無く、人間兵士でも頭部や腕を吹き飛ばされると血が噴き出したりと演出も派手。ヘッドショットでは頭部が砕け散るだけという設定のゲームが多い中、このゲームでは跳ばされた兵士の頭部が転がっていたりとより残虐度が高い(ただしゴーグル等で顔が見えない兵士に限る)。勿論ミュータントでもゴア要素はありとなる。同様にミュータントに殺されてズタズタにされたオブジェクトとしての死体も多くの場所で見受けられるという設定。

 流血テクスチャも用意されており、当たった部分が砕けた様に見える表現もあり。兵士などは時に体が真っ赤に染まったりもする。ただしこれはデカール扱いなので、時間と共に消えて綺麗になってしまう。死体や吹き飛んだ四肢が消える基準は不明で、長く残っている事もあればすぐに消えてしまうケースもある。それとゴアが派手と書いたが、何故か爆発による吹き飛びや四肢の破損は控え目であり、綺麗なままでその場に倒れるだけだったりする。

 このゴア要素の他に敵が撃たれた際のリアクションも良く出来ており、クラシックなアクションFPSとしての基本部分はちゃんとしている。難易度のバランスが後半に崩壊しさえしなければ、もっと高い評価も得られたはず。




 敵の種類は以下の通り。

Mutants  手脚の長いミュータントで、体を揺らしながらゆっくりと近付いてくる。ヘッドショットが効果的だが、頭部が揺れているので狙い辛い。接近されると急加速して間を詰めて来るので距離を置くのが重要。両腕を飛ばしても頭突きで攻撃してくるし、倒されると腕だけで這って迫って来る(ただし当たり判定は無い模様)。
Zeks  小柄で頭部が二つに割れていたりするミュータント。時間軸をシフトしながら動く能力を持っており、半透明のシフト中はダメージを与えられないが、TMDを使って現在の時間軸へと戻す事が出来る。戻っている状態では、Ageの力でスローモーションにさせられる。ジャンプして跳びかかってきたり、火薬缶を召還して投げ付ける能力を持つ。ショットガンが有効だが、群れを成してくるので囲まれると怖い。
Phase Ticks  小さな虫の様な敵で、群れを成して高速で床や天井を這って迫り、近付くと自爆してダメージを与える。虫と書いたがゲーム中最強の敵であり、登場場所での死亡確率はダントツで高い。特にHardでは難敵。Impulseで吹き飛ばしたりも出来るのだが、次々に襲い掛かってくるのでE99のリロードの間にやられたりする。同じく被ダメージが高いので、メディキットの適用が間に合わずに殺されてしまう。有効な対処方法はヒントで出るので見逃さない様に。Deadlockで対応するというやり方もある。
Elite Spetsnaz  特殊なアーマーを着込んだエリート兵士。ImpulseやAgeの能力が通用しない。耐久力が高く、オートキャノンやロケットランチャーを装備しているので、まともに撃ち合っては苦戦する。
Reverts  人間の姿に近いミュータントで、一般兵士をAgeを使ってこれに変態させる事も出来る。音が聞こえないので静かに通り抜ければ良いという設定だが、実際にはステルスは困難で普通に戦った方が早い。ゲロを吐いての遠距離攻撃を持つ。Ageを使って爆発するようにも出来るが、自分の方に来てしまう事がある。
Shifty Zek  Zeksの進化形で、より高速で頻繁にテレポートしながら攻撃してくる。シフトの時間が長く現世界に姿を現すタイミングが短いので、攻撃を当てるのが難しくて厄介な相手となる。Deadlockを使わないと対処がし辛い。
Spiky Zek  体の大きなZeksで周囲にノーマルのZeksを引き連れている。死んだZeksを蘇らせる能力を持つので、早くこの本体を倒す必要がある。
Radion  巨大な木が変形したかの様な敵でかなりタフ。高速で高ダメージのロケット弾を放ってくる。弱点は背後。

 問題はまず難易度の項でも書いたように強い敵が少ないという点で、Zeksの上位版2種もゲーム全体で各2箇所しか登場しない。特にShifty Zekの方は他の敵とミックスさせたりしてもっと多く出した方が良かったであろう。次に敵の種類自体が多くないのもそうだが、登場頻度が同じタイプに偏り過ぎというのも不味い。またPhase Ticksの様な虫がボス以上に難敵なのもどうだろうと思わせるし、強敵と言えるレベルのボス戦を後半に設けるべきであった。根本的にはDeadlockが全ての敵に通用してしまうのが欠陥とも言える。


GRAPHICS
 Unreal Engine 3を使用。Ravenと言えばQuake Engineのイメージだし、実際にこのゲームも最初の段階では前作Wolfensteinのエンジンを使用していたらしい。平行して製作していたX-Men Origins: WolverineもUE3を使っており、何等かのアドバンテージがあったと考えられるが、その辺の事情については言及している情報が見付からなかった。

 グラフィックスの質は高い場所があるかと思えば、モデリングやテクスチャが時にかなり粗かったりと(トップで言及している障害に起因する物では無く)バラツキが感じられる出来映え。ミュータント系はもっとディテールに凝って欲しかったし、兵士系は同じ様な顔の繰り返しが目立つ。

 設定項目は少なく、またオンオフ切り替えのみと単純である。だが幾つかの項目はトップに書いた様にレジストリから変更も出来る。

SOUND
 ドルビーサラウンドを使用しており、普通の4SP構成では再生自体が出来なかった。音の定位感や移動表現は相当に良くこれは評価したい。自分の周囲を動き回る敵の位置を音で追えるというレベルで良く出来ている。

 同じく環境音としての周囲のノイズも、その定位感の良さもあって雰囲気が出ている。

 銃声は軽めでこちらはそれ程でもなかった。

 声優は各人のイメージに合っており水準以上ではないか。

MULTIPLAYER
 マルチプレイは最大で8人までが参加可能。特殊な非対称型の設定で、兵士 vs ミュータントという対決になる。

 クラスは各4種。兵士の方は一人称視点だが、ミュータント側は三人称視点を採用。モードはExterminationとCreatures vs. Soildersの二種。

 Exterminationは兵士側がマップ内のビーコンをオンにして20秒間それを保持するのを目標とし、ミュータント側がそれを阻止するというルール。Creatures vs. Soildersは一般的なTDM。どちらも役割を交換しての対戦をワンセットとして勝敗を決定する。

 既に試そうにも人が居ないが、発売当初から過疎の状態だったようだ。よってフレンド同士等で日時を決めて集まらないとプレイは困難である。


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