GAMEPLAY |
最初にこのゲームを評価する上で重要なポイントとなるであろう点について書いておくが、私自身は原作の映画を見た事が無い。映画の粗筋や批評関連は幾つか読んだので凡そどんな感じなのかは掴んでいるつもりだが、このゲームがどの程度映画の内容に忠実なのかや、どれだけその雰囲気を再現しているのかは正確には判らない事をお断りしておく。 次にゲームの評価はEasyでのプレイを基にしている。プレイ前の時点でゲームの内容が”あまりにも”という話は既に聞いていたので、このゲームについてはそれを考慮してEasyにてプレイした。難易度による変化としてはプレイヤーへのダメージが大きくなるというのは判るのだが、敵の数・耐久力・弾薬数といった各点にどんな影響が有るのかまでは未確認である。 ゲームの基本的なスタンスについても明確にしておく。とにかく大量の敵が出て来るのだが、その他の同系ゲームとはデザインが異なっている。普通敵が多いアクションFPSだと主人公はスーパーマン的な存在となっており、沢山の敵が出て来て苦戦はするが、最終的にはそれすらも打ち破る位に強いとされている。根本的に運動能力や破壊力が高いという設定。 一方でSSTにおいては主人公はエリート兵士という設定ではあるが、あくまでもサバイバルという要素が強調されており、主人公はそんなに強いという位置付けではなく、苦戦しながらも何とか生き延びるという程度の能力しか持っていないというゲーム性になる。大量のバグを蹴散らす能力を持ったスーパーソルジャーが主人公という話ではない。よって敵の数に比してプレイヤーは弱い戦闘力及び武器しか持っていない為に、爽快感は抑えられているゲームとなっている。 先にこのゲームの良い点を幾つか。常にでは無いが出現するバグの数は多く、数百という数が画面内を埋め尽くすというシーンも含まれている。それでいてフレームレートへの影響は少ないというのが実現されておりその点は優秀。また広大なマップで視覚的にも戦場の雰囲気が良く出来ている場所有り。更にスペクタクルな大量の敵相手との緊迫感に溢れた戦闘シーンが何箇所か存在している.....が、残念ながらゲームプレイの面で褒められるのはこの程度。後は山の様な問題点を抱えているゲームとなる。 第一に挙げるべき根本的な問題は、そもそもデザイン的に成立し得ないゲームを作ろうとしているという点になる。このゲームの第一目標は大量のバグを画面上に出現させる事であり、ゲームの製作もそこからスタートしたとされている。それが出来なければStarship Troopersのゲームを名乗る資格は無いという指針は理解出来るし、そして現実に最大同時出現数300体は実現されている(実際に数を確認した訳では無いが)。しかし「敵の同時出現数300体」というのは、他のメーカーがやりたくても出来なかった事をStrangeliteが初めて実現したのではなく、他社からは「今実現してもしょうがない」と考えられている事を実現した(してしまった)だけであり、そこからこのゲームの墜落が始まっている。 では敵がとにかく大量に出るゲームにしたら何が困るのかというと、その設定でゲームを成立させるにはバランス調整が非常に困難になるという点である。大量の敵を出してそれをプレイヤーが操作する主人公が倒せるとするなら、主人公はそれだけ凄まじい能力或いは武器を持っていないとならない。それなりに耐久力を持つ敵を同時に沢山出してやって、それでも難易度を異常に上げずに倒せるようにするには、それに見合うだけのパワーを主人公側に持たせないとならないという意味である(非常に弱い敵を大量に出すのでは面白くない)。しかしそういう設定をしてしまうと、今度は敵をそれ程の数は出さない場所において主人公側が強過ぎる事になって易しくなってしまうという問題が発生する。よって確かに敵は多いほど迫力は出るのだが、ゲームバランス的には上手くないので、製作する側ではそれなりに敵の数を制限しているのが実情となる。 つまり数百体レベルの敵の出現が活きるのは、「大人数でプレイするCoop」や「対抗する味方側も大量の人数を用意出来る場合」に限られ、これ等はテクノロジー(マシン負荷)的に現段階ではまだ難しいとなっており、それが多くのメーカーがそういう設定のゲームを製作しない理由でもある。この辺の事情は同様の件が戦争物のFPSでも良く見られる(典型的な例ではWWIIが舞台のアクションFPS)。 戦場の騒乱さを演出するには敵の数は多い方が良い。仮にAIの処理負荷的にその最大可能人数が32人だったとしよう。プレイヤーの前に一度に敵が32人出現するのは壮観だが、そこそこのリアリティは保ちたいとなると主人公をスーパーマンの様に強くする事は出来ないので、32対1の設定はちょっと無理がある。ここでプレイヤー側の能力は抑えつつゲームを成立させようとするなら、敵の数を相対可能なまでに減らすか、プレイヤーの側に味方AIを付けてバランスを取るかになり、前者では迫力が無くなるので通常は後者が選択される。しかしその場合には味方側にAIが増える分敵の数は減らさないとならないし、加えて多対多の戦闘になると飛躍的にAIの処理が敵味方共に複雑化してしまうので、結局は最大同時参加AIの数を減らして戦場の派手さはスケールダウンせざるを得ない(例えば敵軍15人対味方軍5人程度に落ち着く)。主人公が超人の様には感じられないようにして、且つゲームとしての面白さを損なわないようにするならこういった妥協は仕方の無い事となる。 ところがSSTでは、(常にではないにしろ)とにかく敵は大量に出したい。だが同時に(切迫感を出さないとならないので)プレイヤー側に強力な武器や爽快感は与えないようにしたいと想定している。そうなるとプレイヤー側の戦闘力の欠如を補間するには味方軍の数を多くするしか無いが、敵が大量という前提が崩せないならそれに応じた味方のAIも大量に用意しないとならず、それはAI処理的にもグラフィックスの負荷的にも無理。敵300匹対味方軍100人という規模の戦闘が実現出来るならば素晴らしいが、それはStrangeliteならずとも現段階では不可能に近い。 そこで彼等がやるべき事は2つ有った。一つはスケール感を大幅にダウンさせてでもゲームとして成立させるようなバランス調整を行なう。例えば最大で(頭が悪くAI負荷が軽い)バグ100体に人間側10人といった制御可能なレベルでのゲームとする。もう一つは味方となるAIをちゃんと作れる人材の登用(プレイヤーに高い能力を与えない分味方の能力は重要となる)。しかしこの両方共に実行しないままに突っ走った為に、基礎となる段階のデザインからして歪なゲームになってしまっているのである。 ちょっと考えれば、「とにかく沢山敵は出す」けれど、「プレイヤーは特別強くない上に主に単独行動」、では上手く行く訳が無い。第一にバグが10体程度でも簡単には行かないというバランスにしたら、大量に出現する山場のシーンの難易度が飛躍的に上がってしまうという問題が発生するのは必然。第二に倒すのにそこそこ時間が掛かる程度の耐久力を持った敵が続々と出て来るのをプレイヤーは何とか一人で応対するのだから、主人公の破壊力の無さ・爽快感の無さがやたらとクローズアップされてしまう事になる。敵の数は少ないが代わりにプレイヤーは本当に弱いという設定ならサバイバル感も出るが、このゲームでは特別にプレイヤーが弱いという感じはなく、兵士だけれどもそんなに破壊力が無いというイメージなので、単に主人公がショボいだけというマイナス感が強調されてしまっている。 更に「設定上プレイヤーを強くする訳には行かないが、簡単にプレイヤーが死んでしまうというのも困る」という観点から、時間をおけばスーツのArmorが回復するという保護要素を加えて何とかバランスを取ろうとした。そして実際にこの設定のお陰で死に難くなっているのは確かだ。しかし結果的には危なくなったら一時的に退避しないとならないので、余計に全てのバグを倒すのに時間を費やしてしまう事になる。つまり突破は持久戦でやたらと時間が掛かり、また単調な戦闘を延々と続けないとならない箇所が多い。死の危険性を減らす事で難易度のバランスは取っているが、それによってゲームの面白さが壊されているのでは意味が無い。 もしそれなりに優秀なAIを製作出来る能力が有ったならば、バグの数に応じて仲間の兵士数を増減する事で難易度を調整するやり方は可能で(たった5人程度でもこちらの攻撃力を大幅に上げられる)、それならここまでの問題にはならなかったはず。しかし味方AIの出来の悪さは致命的なレベルで、スクリプトで付いて来る以外はほぼ突っ立ったままで死ぬまで撃ち続けるのみ。隠れずに完全なオープンスペースから単に撃つだけなので、設定として仲間の兵士が居たとしても頼りにならずにすぐに死んでしまって、プレイヤーだけで戦わないとならなくなるケースが多い。多数存在したとしてもその場合には持ち場から動こうとせずこれも役に立たない。考えて動いているという感じが無く、プレイしていて白けてしまう部分となっている。 |
COMBAT |
FPSにおいては非常に重要な点となる銃撃の感覚についても出来はそれ程よろしくない。銃を撃っている方はまだしも、敵に当たっているというのが視覚的に分かり難い。敵によっては当たっているのが判るタイプも存在するが、戦闘の大半を占めている通常タイプのバグに明確な反応が無いのが問題となっている。偶にリアクションが発生する事も有るが、多くはいざ死ぬという時に反応が変るのみ。 鈍いとまでは行かないが、この手の敵が大量に出現するゲームとしては移動は遅いという印象(特に敵の速度との相対で見ると)。またほとんどジャンプが出来ずちょっとした段差でも登る事が出来ないので、目的地点に行くのに低い段差を探して移動しないとならないのもストレスが溜まる。座って撃つと安定度が増すという設定なのに照準の開きでそれを示さないというのもおかしな点で、見た目ではその差が分からない。 ロケットランチャー等の一部の武器には爽快感が感じられるが、ショットガンは威力は強いが撃っている感覚は軽い。グレネードランチャーも爆発にまるで迫力無し。手榴弾も同じで視覚的に派手さが足りない(威力は有る)。 先にも書いたようにプレイヤーに「自分が強い」と感じられては困るという考えからデザインされているので、当然の事ながら武器の破壊力は落とされており爽快感も薄くなっている。例えばショットガンは近距離戦が多い設定のこのゲームでは重要なのだが、弾数が相当少ないという調整で弱体化されている。それを補うのは(持っているなら)MoritaのScatterタイプだが、これも一気に10発消費するので弾無限のボックスが近くに無いと乱射はやり難い。 撃ちまくりという点ではこのゲームは確かに凄くて銃は嫌と言うほど撃てる。これだけ長い時間マウスの左ボタンを押し続けていないとならないFPSも無いだろう。指が痛くなって休憩しないとならない可能性もあり、昔のスクロールするシューティングゲームでボタンを押す指が痛くなったのを思い出す。それでも撃っていて面白ければ良いのだが、実際には単調な撃ち合いが延々と続くのみという箇所が多い。進行に時間が掛かる原因を改めてまとめてみると以下の様になる。 *敵の数の割には武器に破壊力が無い *逃げてArmorの回復を待てば良いという設定で難易度を調整しているので、回復の為に逃げる度に時間が掛かる *先行きの弾数補給が分からない状態だと、時間を掛けてでも弾数無限だが弱いMarauder MK4で粘るのが無難 *もっさりした移動速度なのに、マップ内はくまなく廻って見落としが無いか確認するのが重要なゲーム性 バグが大量に発生する場所では敵が重なってしまうようになり、ゴチャゴチャして個別の敵が識別し難くなる。その為に個々の敵を相手にしていると言うよりも、広い”面”に向って撃っているような感覚で面白味がない。更に敵が自分の周囲に固まってしまうと前が良く見えなくなるので、敵を撃っているという感覚すら無くなって来る(壁を撃って壊しているようなイメージ)。同様にこれは描画の限界として仕方がない事ではあるが、接近戦になると敵のポリゴンが自分と重なって敵の中に入り込んだような描画になってしまったり、そこら中のオブジェクトと敵が重なって壁を抜けて描画されたりが発生する。最悪の場合には敵が壁や床を通り越して中に入って消えてしまったりも起きている。 バグの種類はボス格も含めるとそこそこ多いが、通常戦う敵は限定されており後半には同じ事の繰り返しで飽きが来てしまう。もうちょっとバグの種類を増やすとかで対応して欲しかったところ。ボス系はともかく、一般の敵は最初から最後まで大きな変化が無い。 その中で目立った物としては結構登場するSniper bugが嫌な存在で、集団で暗い場所から赤い光の弾を放って来るのだが、撃った瞬間を注意深く観察しないと何処に居るのかが分かり難い。Motitaに装着されたスコープは倍率が低いので、暗い場所に居る奴をそれで探そうにも一苦労となる。他だとArmorを溶かす液で攻撃して来る羽虫の様なバグも相当厄介。耐久力は無いのだが突然出現して集団で襲い掛かって来るので、一気にArmorを削られてしまったりする。 難易度としてはEasyでプレイしたので、前半のミッションでは戦闘によって死ぬという危険性は相当低かった。その意味で緊張感を高めるには難易度が高い方が良かったとも考えられるが、後半の難しい場所はEasyでも相当に歯応えが有るので、それを考えるとより上げるのはどうかという気はする。難易度が上がるとシールドのリチャージをより頻繁にしないとならなくなるので、そうなると更に「一旦逃げてはリチャージしてから復帰」のプロセスを繰り返さないとならず、余計に先に進めるのに時間が掛かってしまうようになるはず。Easyでもクリアまでに15時間以上は掛かったと思うが、これ以上延々と同じ事をやらされるのは御免というのが正直なところ。ミッション単位で難易度を変えられたらまだマシだったのだが。 基本的に個人行動が多いのと、味方が居たとしてもスクリプトでのみ動く背景的な役割程度しか担っていないので、こちらも大人数で大量のバグに対抗するという映画の設定が再現されていないというのも大きな欠点である。映画を見ていない私が言うのも何だが、ゲーム内のムービーから受ける「大人数での人海戦術」という雰囲気がまるで感じられない。よって戦争のスケール感という意味でも、味方の人数が減らされているので迫力が無い。 もし大量の兵士が次々に死んで行くという絶望感を出すのならば、現段階(正確には2005年当時)でのPCのパワーならば兵士を単なる駒(ユニット)として扱うRTSにして、その分出来るだけリアルに戦場は3D化するスタイルのゲームの方が、映画の感覚をゲーム上に再現するには適した選択肢だったように思う。 映画の方はかなり残虐性が高いようだが、このゲームではそういう面はほとんどない。体がバラバラになっている隊員は単に最初から置かれている死体であり、グラフィックス的にも稚拙という感じの表現力。仲間の隊員は普通に倒れて死ぬだけでこちらも残虐性は感じられない。 |
ボス戦 |
大型で耐久力を持ったバグが何種類か存在するのだが、こういった敵は体の一部のみが弱点となっているか、或いは特定の箇所以外を攻撃しても一切のダメージが入らないという設定になっている。よって弱点が判らずに攻撃するケースでは、倒すには20-30分間撃ち続けないとならないといった状況にもなってしまっている。個々の弱点については司令官が教えてくれたりする事も有るのだが、そうでない場合には問題となる。アンロックされるExtrasに弱点のデータが書かれているケースが多いが、ミッションをクリアしてから追加される事も有るので、それだと初回戦闘時には判らない。映画を見ていれば推測出来る物もいるようだが、それは未見の人に対してあまりにも不親切だろう。 特定の箇所を攻撃をしないと倒せないという設定自体はよくある話でそれは問題ではないのだが、「そういうタイプの敵なのか?」という点がハッキリと分からないケースも有るのと、プレイヤーが弱点に気が付きにくい(実際にForumにて質問が多かった)というのが不味い点。更に事態を悪化させているのが、特定の弱点以外でも何とか倒せるという点(例外は居る)。つまり最初の戦闘で「20−30分位撃ち続けて倒す必要がある」と思い込んでしまうと、その後同タイプの敵相手に同じ事を繰り返すようになりかねない。ボス格の敵にダメージのメーターが表示されないというのも不味い点で、弱点以外はダメージが入らないタイプのボスに対して、長時間撃ち続ければ良いのではないかという勘違いを起させてしまう。 普通のゲームだったら10分も撃ち続けて敵に変化が見られなければ、これは何か特定の手段を使わないと倒せないのではないかと考えるものだが、SSTでは「この開発チームなら徹底して長時間撃ち続けないと倒せないようなボスを出しても不思議では無い」と思わせるようなゲーム性なので始末が悪い。 ボス戦(大量発生の山場を含む)に関連する問題はこれでは終わらない。もう一つの致命的とも言える問題は、特定の武器を見付けていないと極端に難易度が上がってしまうというもの。マップ内の難所を突破するのに重要な武器が存在する場合に、それが脇道に隠すように置いてあったりする。補充する弾薬についても同様。言い換えると、マップ内を隅々まで探索する事をプレイヤーに強制するゲームである。あらゆる脇道を探して武器や弾薬を回収して廻る事を前提に難易度が調整されているの意味。 典型的な例としてPlasma Mountainのミッションでは、序盤に分かれ道に置いてあるロケットランチャーを拾っておかないと、ずっと後のボス戦で弱点を狙っても20−30分というコースに。またはBaitではショットガンを見付けていないと最後で難易度が数段跳ね上がる羽目に陥る。同じくSniper Rifleを見付けていないと辛いミッションとかも。見付けていないなら単に最初からやり直せば良いという考え方なのか、全てのプレイヤーは必ずマップ内を隅々まで探索するものだという固定観念を持っているのか知らないが、ちょっとこの設定は異常である。 ボス戦の問題をもう一つ。仮に弱点が判ったとしても、敵がそこを見せる事が少ないというケースが多い。特定のタイミングでしか狙えないとか、しばらく攻撃してから短時間そこを見せるだけとなると、知っていても倒すまでには相応の時間が掛かってしまう。または激しく動く為に、プレイヤーの持つ銃の精度では命中させる事自体が難しいという敵もいて、更にゲームの難易度(または冗長性)を増加させている。 |