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GAMEPLAY
 私は難易度Normalでクリアまで6時間。5-7時間程度のボリュームと言えると思う。ほぼ一本道のゲームで、実績の様な目標もアイテム等の回収要素も無い為にリプレイ性は低い。


 ゲームのコンセプトその物は新鮮味があって評価出来る。「もしもナチスがWWIIに勝っていたら?」といった仮想話は過去にも見られるが、それが舞台をヨーロッパとせずにアメリカに攻めて来たという設定にした点は面白い。ゲームの舞台となる1950年代当時のアメリカの再現には非常に力を入れており、建造物は当時の状態を忠実に再現するし、街中を走っている車のモデリング, 人々の服装, 看板やポスター等の表示も出来る限り当時の雰囲気が出るように大量の歴史的資料から製作を行っているとされている。それが何所まで正確なのかは確認出来ないが、市街などは独特な雰囲気を醸し出したりしており、この辺は確かに力が入っている様に感じられる。

 だがそのストーリー面では問題も有る。第一に主人公であるカーソンに違和感有り。彼は単なる建設作業員という設定であり、実は先のWWIIでは大活躍した勇者だった、という様な背景を持っていない。しかしその割には高い戦闘能力を持っているという点は不自然さを感じさせる。また最高の戦士として祭り上げられる様な格好で大役を任されるようになって行くのにも唐突さを覚える。
 それとCall of DutyMedal of Honorの主人公の様に名前だけで顔が無い匿名性が高い設定とは異なり、彼には外見のグラフィックスも用意されている。しかしセリフが無いので印象も薄いという中途半端な設定。その外観についてもコンセプトアートを見る限りでは如何にも主人公といった精悍な顔立ちをしているのだが、実際のゲーム内では大きくクオリティが落とされたような凡庸な顔付きになってしまっている。この点は匿名性を高めるか、或いはヒーロー物として非常に格好良い存在のどちらにハッキリと決めてしまった方が良かったと思える。

 次にゲームが短いと言うのもあるのだが、展開が急過ぎて深味が感じられない。全体がたった3つのパートから成っている事からも分かるようにロケーションが少なく、実際には幾つかの戦闘が行われて情勢が進展したという様な説明のパートが飛ばされており、何が起きたのかが良く分からないままに急にクライマックスになってしまうという展開振り。カーソンが市民軍の中で信頼を得て行くという過程が描かれていないし、市民軍自体の活動状況も説明不足で不明瞭。短い中に多くを詰め込み過ぎて逆効果という状態に陥っている。


 パズル性はほとんど無く、数箇所で操作可能なバルブやレバーを見つけ出すのがある程度。ルート探し要素も含まれているが、これは点滅する部分を探してぶら下がって移動したり、同じく台座によじ登ったりするという物。そもそも大抵のルートは瓦礫や車でブロックされて通れないようにされているので、この点滅する部分を見付けるのは特に難しくは無い。後は爆薬をセットするのに配線をしないとならないのだが、これもパズル性は無くて単に上から順に色を合わせて繋げていくだけ。面白くも無ければ時間制限も無いので意味も無いという要素になっている。


 デザインとしてはCoDやMoHをプレイした事がある方なら、あれとほとんど同じと考えてもらって構わない。戦争アクション物FPSでの定番ルールを忠実に守っている作品である。

*単なる一兵士でありながらスーパーマンの様な活躍をする
*突発イベント等のスクリプトによるゲーム進行
*ほとんどのルートは不自然なまでにブロックされており進む方向は決められている
*何故か常にドアが背後で閉まったり天井が崩れたりして戻れなくなる
*敵の攻撃が激しい重要なパートを、「お前しかいない」と言われて一人で行かされる
*戦車等の敵兵器の登場に対して、都合良くその場に置かれていたバズーカで攻撃を命令される
*大量発生する敵兵士に固定銃座での応戦
*爆弾設置の作業は周囲に仲間が居ても必ず主人公が行う
*味方は背景の一部
*スイッチ入れたりして目標を達成すると、それにタイミングを合わせて敵が突然沸いて出て来る


 これが悪いというのでは無く、この様なデザインをどう受け取るかは個人の好みである。ただし背景設定のユニークさを除くと上記の設定以外に目新しさは含まれていないので、この手のゲームに食傷気味の人へのアピール度は低いのは確かだ。

 代表的な作品であるCoDやMoHに比較して、アウトドアでの大規模戦闘といった派手なシーンは含まれておらず、限定された人数によるゲリラ戦のイメージに近い。戦場に一緒に存在する仲間の数は多くの場合3,4人程度と少なく、それに応じて敵の同時出現数も限られている。周囲に迫撃砲や空爆の音が絶え間なく鳴り響いているという演出もなく、エリア自体も広くないので局所的に戦っているという感が強い。よって戦争物と言うには地味な印象のゲームである。周囲で爆発が連続する様な派手なパートは冒頭部分等限られているし、またその迫力自体もそれ程出ていないという印象。

 味方との連携についてもう少し詳しく書くと、味方と行動するシーンと個人行動の割合は3:7位で単独行動のパートが多くの部分を占めている。味方の意義はイベントシーンの為に不死身設定だったり、単なる背景的な存在として皆死んでしまったりとシチュエーションによって様々。ただしちゃんと個性を持たされている人物は存在しないので、やはり単なる背景といった扱いになっている。近年ではCPUのパワーアップに伴って臨場感を出す為に同時出現するAI数を増加させる傾向にあるがそのトレンドにも沿っておらず、その意味でも古臭いという感は否めない。もっともこれは敵が多くなると処理落ちが目立つようになるというゲームのプログラム上の問題として、本当はもっと出したかったが無理だったという事なのかも知れない。


 物理エンジンを使ってはいる様だがその処理は粗い。死体への適用については、どうも倒れる際の処理は幾つかの固定されたパターンだけで行われているように見える。ラグドールと言うには似たような形で倒れるのが目立ち過ぎるという印象で、倒れた後に周囲のオブジェクトに対して物理エンジンで接触判定が行われているだけの様だ。またオブジェクトに重なってしまうケースも目立つ。


COMBAT

*武器は2丁を携帯可能。ピストルも一つの武器としてカウントされる。
*照準は走ると広がり、座ると縮まる
*アイアンサイトが使えて命中精度が大きく増す
*連射時のリコイルは大きい
*大抵の銃には弾薬という形でのアイテムがマップ内に存在せず、落ちている武器を拾って補充する形式
*グレネードは専用キーで投げる方式。爆発に時差を付けるコッキングでの投擲も可能。
*短時間ならばスプリント可能
*ゲームパッド使用時にはAim AssistをONに出来る


 視点は一人称。ただし物をよじ登ったり、捕まってぶら下がり移動をする時には自動的に三人称に切り替わる。Chronicles of Riddickの様なスタイルだが、残念ながら三人称時のアニメーションの出来栄えは2004年発売のこのゲームよりも劣っている。

 自動回復方式を採用しているのだが、ちょっとこのデザインに問題あり。大抵の場合はダメージを示すのに赤色の表示を使っているが、このゲームでは段々とモノクロになって行くというデザインが使われている。ゲームによっては瀕死の前の段階でも赤色が強まって周囲が見え難くなるという物も在るので、その観点からするとモノクロ表示は周囲が見え易いという利点を持っている。ところが困った事に、特に周囲が暗いケースではモノクロ化して行くのが判り難くなっており、危ないという状態になって初めてそれに気が付くという問題が発生している。見え易いというのは良い点なのは確かだが、重要度という点では現在のダメージ量が明確に判断出来るという方に優先度があるので、もう少し工夫して分かり易い表現に出来なかったのかという気はする。後は周囲で爆発が起きて大きなダメージを受けると、短時間スローモーションになって画面がモノクロ化+ボヤけるという要素有り。


 銃器類ではトンプソンやM1ガーランドの様な連合軍側で御馴染みの物以外に、ナチスが独自に改造した空想武器も何点か含まれているというのが一つの特徴である。一応これ等は実際にナチスに残されていた研究データから制作された物らしい。MP50, G47, G48 Carbineや赤外線スコープ付きのスナイパー・ライフル等が登場する。ただし未来的な要素を持ったSF武器は存在せず、使い勝手は既存の武器と大きな違いは無い。命中率についてもアクション仕様であり、アイアンサイトにしなくても比較的当たる方。ライフル系は正確で特にボルトアクションはダメージが非常に高く設定されており、ほとんどの場合ヘッドショットでなくても一撃といったバランスはこの手の他の物と変わらず。なおストーリー的に連続していても、チャプターが変わると所持武器はリセットされる仕様。

 ゲームはTeenのレーティングで、出血表現が無いばかりか当たっている際の血飛沫の描写も無し。周囲のオブジェクトにも血は飛び散らない。その為に敵のリアクションで判断するしかなく、敵に当たっているという感覚は今一つ物足りない。死体も短時間で消えてしまう。


 最大の特徴とされていた格闘モード(Grapple mode)だが、作り込みの時間が足りなかったのか、素手での攻撃や頭突きといった格闘要素は全面カットされており相当単純化されている。そのシステムはシンプルで敵に近付くとアイコンが表示されるので、そこでアクションキーを押すと外部視点に移って戦闘モードに入る。ここでW/Sのキーに選択肢が表示されるので、それを選ぶとそのアクションが実行される。基本的にWならば“Instant Kill”で、Sならば“Human Shield”だが、時には“Environment Kill”として周囲のオブジェクトを使った特殊なアニメーションでの殺害が発動可能なシーンも含まれている。Human Shieldは敵を抱え込んで盾として使うアクションで、この際には三人称での戦闘となり、武器はピストルを持って戦うという格好になる。これで敵からの攻撃ダメージを減らして優位に立つという方法。

 しかしこのモードがゲーム上で活かされているとは言い難い。“Environment Kill”で倒す利点として、「ステルス状態を維持出来る」というのと「弾薬を節約出来る」という点が挙げられていたが、まずステルスを維持する必要性が感じられない。つまり“Environment Kill”で倒せるようにこちらに背を向けて立っている様な敵が居ても、単に遠くから撃って倒してしまい、そのまま気が付いた他の敵と普通に戦って倒せるので意味が無い。弾薬もかなり少ないので節約する必要があるという事前情報とは裏腹に、多くの弾薬が拾えるので節約する意味も無いとなっている。

 Human Shieldも同じであり、使う意義というのがあまり感じられない。普通に離れて撃ち合って勝てるし、弾の節約をする必要も無い。むしろ近付いて使おうとした場合、アイコンが出るタイミングで行わないとならないので失敗する可能性があり、殴られると画面が揺れて見え難くなるという危険性も孕んでいるので、それを考えると離れて撃ち合った方が安全である。難易度が上がるとどうなるかは未確認だが、以上の様に少なくともNormal程度ではGrapple Modeは使う意味が無く、その効果を挙げていない。


 AIは場所を動いたりして来る者もいるが、固定された場所から動かないように設定されている者もいるとなっている。ブラインドファイアを仕掛けて来たり、体を出しては撃って引っ込んだりも行えるが、多分にスクリプトでの動きという感が強くてリアルタイムで状況を判断しているようには見えない。こちらを追跡して来る者もいるのだが、単純に接近して来るので待ち構えているこちらの餌食となる事が多い。という様にAIのレベルも昔のゲームという印象である。
 更に大きな問題として認識能力が低く、明らかにこちらが視界に入っているのに反応しなかったりそれが遅かったりが数多く見られる。他には近付いても全然違う方向を向いたままとか、体が半分見えている状態で止まってしまったりとか。後はこちらのグレネードを避けたり投げ返せる能力を持ってはいるのだが、そのグレネードを仲間が逃げた方向に投げたり、自分で投げた方向に走って行って自爆したりとこれもAI処理に問題あり。


 全体的に難易度はやや簡単というレベル。最後のACT3に来てようやく手応えが出て来るという程度で、終盤に一つ二つ難所が存在するくらい。滅多に死なないのでチェックポイントの頻度については検証出来ていないが(ハッキリ確認出来るように明確に画面に出ないというのもある)、死亡回数の大半を占めるACT3では、長くも無く短くも無くといったインターバルで配置されているので大きなストレスでは無かった。






 PC版にはデモが存在しないのでプレイ動画を掲載。Youtubeに攻略動画として全編クリアしている物が上がっていたので、それの冒頭の動画を紹介しておく。

 なお問題点として言及しているフレームレートの低下(一瞬停止する)はこの動画でも確認可能(特に4:40辺りからが分かり易い)。これは動画のエンコードに失敗している訳ではなく、実際にこういう風になる。特にマウスを左右に振る操作中に発生すると、戻った際に全く別の方向を向いてしまったりして困る。


問 題 点
 その他の問題点を記載。


 そのパフォーマンスの悪さは完成度の低さを示している。そんなに頻繁に発生する訳ではないが、1秒間位停止して戻った時にはその間の入力が反映されているので、一瞬どっちを向いているのかが判らなかったりするのはやはり厄介。しかもこのグラフィックスのクオリティでそれが起きるという点には、一時延期した発売日を更に延ばすべきだったのではないかと感じる。

 私の環境で発生していた頻繁なラグについては、少数派の問題と思うのであまり強くは言えないが気になったのは間違いない。ただスプリントすればあまり気にならないのと、床を向いて移動すると軽減されるので(ライティング等のエフェクトを画面外に消す)それで乗り切った。それには難易度が高くないのでラグの影響で死ぬというケースが無かったのも大きい。なお終盤は敵が増えて難易度が上がるので設定をLowに下げてプレイしていた。


 暗い場所が結構多いのだが、ライトが装備されているのはMP50だけなので必然的にこの武器を持って戦うというケースが多い。確かに味方の武器(弾薬)は敵陣では入手がし難いのでMP50にいずれ持ち替える事が多くなるが、MP50を捨てて別のドイツ軍の武器を持つのも同様にハンデを背負う事になる。ライトは別機能にして武器選択の自由度を高めて貰いたかった。


 ゲームの最後付近で、それまでに説明もされていないしマニュアルにも書いていない特別な操作を要求されるシーンがある。偶然気が付く可能性も高いとは思うが不親切。

 アクションキーで操作する際に、その位置が目標に対して近付き過ぎるとアイコンが消えて操作が出来なくなる場合が有って調整しないとならない

 メニュー画面ではマウス操作が不可能とPCでの操作性への対応が成されていない。マウス感度も三段階の切り替えのみ。

Xbox 360
 一連の問題はPCへの移植に拠る物なのかが気になったので、Xbox 360のレビューも幾つか調べてみた。


 フレームレートの低下はXbox 360でも発生するとして大きく問題視されている。

 操作感度はやはり三段階なのだが、この設定による照準の操作に非常に問題有りという記事がほとんど。動きが滑らかでは無い上に武器によって変化したりと一定しておらず、更には自動照準機能が上手く機能していないので余計に狙い難いそうだ。PC版と比較プレイをした人の記事では遥かにPCの方が狙い易いと書かれている。

 そのフレームレートの低下とコントロール性の悪さが原因で結構難しいらしく、またPC版と同じなのかは不明だがチェックポイントの間が長いので、操作性の悪さのせいで死んだ上に長いセクションをやり直さないとならずストレスが溜まるとされている。

 以上の様にコンソール版にしても問題点は解消されないようだ。

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