GRAPHICS |
やはりUnrealと言えばそのグラフィックスを外す事は出来ない。発売時のインパクトはそれは凄まじいもので、同じ時代の他社のゲームとの比較という事では抜きん出て素晴らしい印象があった。 完全な3D世界という事では既にQuakeがリアルな空間を提供してはいたのだが、そこにはやはり限界というのも見て取れた。予め別のCG専用マシンでレンダリングされたムービーを流すアドベンチャーゲームや、固定背景画面をスクロールするRPGやTPSに比較するとディテールの面で相当劣る物があったのである。何故ならFPSでは見えるべき光景をリアルタイムで計算して表示しなければならないので、その負荷を考えると解像度やディテールを落としたりしないとまともに動かないという欠点があったからだ。 しかしこのゲームに採用されたオリジナル製作のUnrealエンジンはその常識を打ち破ったと言えよう。細部まで書き込まれた精密なオブジェクト、ゆらめく炎、様々なカラーのライティング、反射&鏡面効果の処理、フォグ効果、爆発・発煙のエフェクト、水面の波と半透明処理、流れる雲、そして多種多様なテクスチャの数々。全てが高い次元で完成していた。 更にUnrealではこの美しいグラフィックスを最大限に生かすゲームデザインがなされている。今までのゲームでは敵の基地内といったインドアでゲームが進行するパターンが多く、どうしても背景が単調になりがちだった(というかグラフィックスのデータ量節約という事で意図的にそういったデザインになっていたりした)。しかしUnrealでは40近くあるマップごとに実に様々な場所を旅することになり、その多くがそれまでのゲームとは全く違ったカラフルさと美しさを持っており、新次元の強烈なバーチャル・リアリティ体験をプレイヤーにもたらしてくれたのである。 一つの大きな特徴は開放的なアウトドアマップの実現だろう。私と同じ体験をした人も多いと思うが、最初に護送船Vortex Rikersから外に出た時の驚き&感動は今でも忘れられない。このNyleve's Fallを始めとして、Harobed Village、Na Pali Haven、Bluff Eversmoking等々、それまでには存在しなかったレベルのアウトドア世界が見事に描かれていた。その空気感すら感じ取れるようなクオリティは、当時のライバルQuakeエンジンには実現出来無かった物である。またモンスターのデザインやアニメーションも秀逸であり、当時としては滑らかで多彩な動きを見せてくれた。 現在の視点で見ると、もはや美しいという当時の感動は味わえない位に過去のグラフィックスとなっているが、そのオリジナリティ溢れる美しい世界の構築という面は今でも価値のある物として残っている。純粋なクオリティとしての美しさは減少していても、想像で作り出されたオリジナル世界そのものの美しさと言うのは鑑賞に堪えうると思う。 発売当時は大きな欠点とされた重さに関しては現在では問題は無くなっており、反対に軽過ぎて問題が発生している位だ。当時はこれだけの美しいグラフィックスを実現する為には3Dアクセラレーションに対応したビデオカード(主にVoodoo)が必須で、マシンの性能もハイエンドクラスが要求されていた。その後はパッチにより、Glideでないと高速で動かなかったこのゲームも、ビデオカード自体が高速化したのに伴ってDirect 3Dでも十分な速度を実現可能となっていった。 動作に問題がある時に使用するソフトウェアレンダリングモードにすると、特に目に付くのがエフェクト処理の劣化である。3Dカードを使わないのだから当たり前ではあるが、かなり全体のクオリティは落ちる。それでもUnrealは一定レベルのクオリティを保ってはいて、全般的に見てみると使用しているテクスチャの質が高い為に、ソフトウェアモードでも当時としては結構美しい。97年頃までのFPSゲームと比較しても歴然とした差が存在している。ただしその分CPUに高い負荷が掛かっているので、一時的な速度の低下を招く為にその点は問題となる。 その他に問題としてはオプション画面から変更可能な項目があまり無くて、細かく設定したいのならば直接iniファイルをエディットする必要があるという点。これは当時のエンジンではよくあった話である。 |
SOUND |
まずBGMの方だがこれは本当に良い。ゲーム中に流れるサウンドは荘厳で重厚な音楽やもの悲しいサウンド等がそれぞれのマップに合わせて多数収録されているのだが、このクオリティが非常に高い物となっている。グラフィックスにマッチした多彩なイメージの音楽や、戦闘が始まった時に流れ出すRock+Technoといった感じのダークだがノリのいいBGMまで本当に良く出来ている。 これまでのこのジャンルでは単調でハードロック調のサウンドや、暗くておどろおどろしいサウンドがほとんどだったが、ちょっと別次元という感じのクオリティに仕上がっていると言える。それまでは結構FPSではバックの音楽をオフにする事も多かったりしたのだが、これは流しっ放しでも気にならなかったゲームである。このBGM製作の中心はAlexander Brandon。その後UTやReturn to Na Pali、そしてDeus ExのBGM製作に携わっている才人である。 効果音の方は3Dサウンドに対応しており、対応サウンドボードがあれば3Dサウンドが楽しめる。特に戦闘時において、これがあれば物音から敵の場所を察知することが可能。前後左右、時には上下方向から聞えてくる音は時として重要なヒントになったりするので、出来る限り良質なサウンドシステムで聴いてみてもらいたいものである。ただし3Dサウンドの出来は普通というレベルであまり方向感は良くない。特に最近のゲームに比べると劣る感じだ。 その他一般の音源についてはゲーム的ではなくリアル系に作られており、鳥や動物の鳴き声・様々な環境音についても聴きものといえる。戦闘時のエフェクト音についてはゲーム的なサウンドであるが、かなり派手目で良く出来ているように思う。 今ではもう無いがA3DはV225ではサポートされていないし(V226ではサポートが復活している)、EAX使用時にはwindows\systemフォルダ内にあるa3d〜と付いたA3D関連ファイルを削除(移動)しないとならない。 2003年追記: 残念ながら途中でバンドルソフトとしてCreative Soundblaster Live!にUnreal Special Edition(7面まで)は付かなくなってしまった。これはサウンド調整をCreatvie自らが担当したらしく、本編よりも素晴らしい出来になっているので実に惜しい。クリーンな音質でポジショニングの効きも最新ゲームに引けを取らない物だったのだが。これにはEAXの効果のデモマップ3個と、本編の没DM用マップが3個同梱されている。 |
MULTIPLAYER |
マルチプレイには通常のDeathmatch,Team DMの他に3種類のモードが用意されている。定番のKing of the Hillは若干ルールを変更しただけなのであまり面白いとは言えないが、ユニークなアイディアのDarkmatchは結構流行した。これはマップ全体が暗くなっており。基本的にプレイヤーはサーチライトを持ってプレイする。敵を見つけるためには周りを照らさないとならないのだが、そうすると自分の居場所を知らせてしまう事になる。音を頼りに敵を探したり音をわざと出して自分の居場所を誤認させたりと、戦術的に新鮮で面白い(製品には1つしかマップがないが、ネット上にはかなりの数の追加マップが存在する)。 それともちろんCo-op Gameを外す事は出来ない。これは通常のゲームのシングルプレイを協力して複数人数でクリアしていくという物で、難易度Unreal等で大量のモンスターが襲ってくるのを協力しながら倒していくことになる。このCoopに関してはCoop道場に詳しいのでそちらを参照してもらいたい。 最初から収録されたマップの質はかなり高く、多数のユーザー製作マップが出た今でもかなりハイレベルと言えるだろう。全部で9個収録されたマップの中では、Ariza, Deck16, Tundraがベスト3か。どれも非常に面白い。 接続はゲーム内に自前のサーバー検索機能を持っているので接続自体は簡単である。外部ツールを必要としない。 発売当時は発売を優先した為にいろいろな問題を抱えており、ネットコードの方もあまり優秀とは言えなかった。やはりQuakeには敵わないのかという感も出たいたのだが、その後はバージョンアップによって段々と改善されていき、ネットコードについてもかなり良い物に変わっている。 ただしマルチプレイに特化したUnreal Tournamentが1999年に出てからはプレイヤーはそちらに移行してしまい、それ以後はプレイヤーは徐々に減って行った。UnrealはQuakeシリーズと比較するとModの製作で盛り上がらず、またゲーム性がUTとそれほど変化が無いので、敢えて“これ”と言う人が少なかったと考えられる。それとUTの出来が良過ぎたというのもあったと思う。 マルチプレイで注意すべき点としては以下の通り。 1.V226のバグ 最終のV226は安定度とパフォーマンスが高い代わりに、パスワード機能が正常作動しないというバグがあり、パスワードを掛けてしまうと他人が入れ無くなるし、掛けないとバグを利用して管理者権限を奪う事が可能という問題を抱えている。Coopならばいざ知らず、DM系のゲームではチート可能というのは大きな問題となるので、それを避けるにはV225でやるしかない(非公式でパッチを製作している人もいる)。 2.Gold問題 現在手に入るUnreal Goldは旧来の単体版Unrealとはマルチプレイでの互換性が無い。つまり自分の所持しているのと同じタイプのサーバーでないと遊べないという事になり、ただでさえ少ないサーバー数から遊べる物は更に減ってしまう事になる。この辺の事情はCoop道場に詳しく書いてある。 |
BOTMATCH |
オフラインでもBotと対戦出来るBotmatchが用意されており、これだけ遊べる物は当時としては凄かった。(その後UTが販売されているので大分価値は薄れたが)。 botとは何かというとAIを持った仮想の敵プレイヤーである。ネットワーク対戦の大きな問題は、一つには回線速度によるゲームの反応速度低下、もう一つはメンバーが好きな時に好きなだけ集められるとは限らないことである。そこで考え出されたのがbotという名のコンピューターがコントロールする仮想人員である。自分がやりたいと思った時に好きなだけbotを参加させて、いくらでも自分のマシン上で対戦を行うことが出来る訳だ。 発想としては誰でも考え付くことなのだが、これまでに発売されたこのジャンルのゲームでBotをサポートしている物はほとんどなかった。なぜならAIを作成する事が非常に困難だからである。コンピュータがコントロールする敵というと対戦格闘系ゲームがまず思い浮かぶが、ああいった取れる行動が限定されているゲームであれば、なんとかキャラクタの動作をコンピュータに受け持たせる事が出来る(知能と呼べるようなレベルではないが)。しかしながらFPSでは3D空間を移動しないとならず、またあまりにも採る事の出来る行動が多過ぎるために、それらを系統立ててプログラミングするのが困難という事情がある。また機械がコントロールしているというのがあからさまに分かる程度のAIでは、大して意味が無いし面白くなくなってしまう。その難関に対して果敢に挑戦したのがこのUnrealである。 Botのレベル設定は0〜3までの4段階で、その中で個別に差を設定出来るようになっている。まあ1が適当なところか。なおAuto Adjust Skillにしておいてやれば、あなたの命中率に合わせて自動的に能力を修正してくれるのでこれでも良いかもしれない。特徴としては止まっている時と動いている時で命中率が変わらないようので、レベルが上がると非常に手強くなる為に注意が必要だ。逃げる時に非常に複雑な動きをしながら避けるので命中率が上がるとかなり手強い。 その出来はというと、生身の人間のような狡賢さは無いし、ネット対戦を仮想的にプレイ出来るといった水準にはまだまだほど遠い。しかしながらオフラインの仮想対戦として楽しめる程度のクオリティは保っているし、射撃の練習用としては十分に通用するレベルである。当時のCPUパワーを考えると、その出来映えは高く評価出来ると言えるだろう。 ではUnrealのbotはどこまで人間に近い動きが出来るのか。以下にその例をいくつか。 ・そのマップ構造(道順・部屋やリフト等の配置)はもちろん、アイテムの出現場所も把握している ・対決になった時無闇に突っ込んでこない。適当な距離を取って危うくなると逃げたり物陰に隠れたりする。 ・その半面強い武器やシールドを手にすると思いきって前へ出てくる ・撃ち合いになった時、人間の実際の戦法同様に小刻みに動いて照準を付けづらくする ・実際の対戦同様視界には死角があるので、背後や側面から狙える。同じ画面に入った途端になぜかこちらに気付くというような事はない。 ・戦闘時に有利な上や下といった方向からもキッチリ攻撃してくる。 ・特別にプレイヤーを狙ってくるという事はない。bot同士でも同様に戦闘は行われる。 ・重要なアイテム出現場所で隠れて待ち伏せしていたりする ただし出来ないこともあるので完成度は70%というところだろうか。しかしコンピュータの操る敵にやられて「悔しい」などと思ったのは初めてである。それもbotの優秀さ故の事であり、それもあってこのBotmatchは単体でも非常に面白い。 2003年追記:今でもこのレベルにすら達していないBotというのも在るが、さすがにもう古くなった感もある。少なくとも同じAIプログラマの作成したUTやUT2K3が手に入る現在では、プレイする価値は薄れていると言わざるを得ない。 |