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GAMEPLAY
 ゲームは4体存在するボス毎に4つの章に分かれており、その下の区分で見ると10箇所のロケーションから構成されている。その下に更にマップが幾つも存在する為にゲームのボリュームは結構あって、クリアまでには15時間前後というのが普通ではないか。

 基本的に出現する無数の敵をひたすら倒すだけのゲームと開発サイドも明言しており、Serious Samと同様のゲームと考えてもらって間違い無い。ロケーション単位では数百の敵が出現するようになっていて、エリア内に次々と出現する敵を全部倒し切ると扉が開くといったパターンが多い。ロケーションは古代のギリシャのみとなり、最初の予定だった3つの世界を旅しての冒険という要素はカットされている(この点でもSamに似ている)。ただWRにはユーモアの要素は含まれていない。

 敵の数はボスを除くとバリエーションを含めて25種類ほど存在しており、その多くがテーマとなるギリシャをモチーフにしている。斧を投げ付けて来て倒すと分裂するミノタウロス、半人半馬のケンタウロス、双頭のケルベロス、弓矢を使う山羊と人間のハーフのサテュロス等。様々な彫像が動き出して攻撃して来るというのも一つの特徴で、こちらも結構色々な種類が存在している。AIは数が多い分非常に単純である。

 ゲームが特徴としている点の一つに正確なObjectの破壊計算があり、これは今や当たり前の様に使われている物理演算の走りとも言える。壊すことが出来るオブジェクトが大量に存在しているが、それらは攻撃が当った個所・角度・威力によって正確に計算されて破壊される。つまり同じ形状で破壊される事は2回として無く、飛び散った破片の一つ一つにも物理計算が適用されるようになっている。

 特筆すべき要素としてはReal-time Procedural Morphing(Procedural Texture)を導入しており、これはWRの良い点としてまず挙げられる機能である。意味合いとしては敵の形状を攻撃によってリアルタイムで変形させることが出来るという効果である。この効果を採用している武器は4種用意されており、Acid Gun(敵が膨らんで弾け飛ぶ)、Medusa Gun(石化してボロボロと崩れ落ちる)、Crossbow(燃えてやせ細ってから崩れる)、Atomic Gun(ドロドロと溶ける)。それぞれが視覚的に敵を破壊しているという感覚を強めて、それが爽快感のアップに貢献している。こういった能力を持った武器自体は過去にも存在しておりWRが初では無い物も有るが、描画テクノロジーの進化と結び付けて非常に効果的に見せているという点でポイントが高い。これはSamには無かった物として個人的には一番に高い評価を与えたい要素である。


 ゲーム性は次々にSpawnして来る敵を倒して行くというスタイルなのだが、もうちょっと細かく分析してみよう。まず一つ目の特徴は武器の威力が非常に高いというのがある。これは相対的に見ると敵の耐久力が低いとも言える。多くの敵が大して耐久力を持っておらず、弱い敵から強い敵への存在率カーブが綺麗なグラフを描いていない。中間クラスの敵が抜け落ちているような状態になっている。
 強力な武器となるFireball Thrower, Acid Gun, Medusa Gunを使えば7割方の敵は弾一発分で倒せるようになっており、Minigunも一気に大量の敵を薙ぎ倒せるだけの破壊力有り。やや威力が落ちるとは言ってもCrossbowの火炎攻撃も強力だし、とにかく数の多い雑魚クラスの敵は離れていようがShotgun一発で倒せるというバランス。更にピストルも結構な破壊力を持っているとなっている。つまりそれなりに強力な武器を何発か当てないと倒せないようなタフな敵の出現が限定されており、武器の威力の強さばかりが目立ってしまうようになっている。

 第二に弾薬が非常に多い。しかも武器の同時装弾可能数も多くなっている(ミニガンとマシンガンの弾薬も別物)。先に挙げたようにFireball Thrower, Acid Gun, Medusa Gunという多くの敵を弾一発分で倒せる武器の装填弾薬数が50発・100発クラスな上に、拾い切れないほどの数の弾薬がマップ内に置かれている。仮にミニガンを1000発撃ち尽くしても、少し進むとまた500発といった感じで手に入ってしまう。各武器の破壊力が高いから使わなかった武器の分はドンドン余って行ってしまうようになり、明らかにアンバランスな設定となっている。
 確かにこの弾薬数の多さは、好きな武器を思う存分先を気にせず撃ちまくれるという観点からは高い爽快感を生み出しているのでプラスとなっている。ただ撃ちまくれるという点ではSamよりも上だけれども、ゲームバランスという目で見ると調整が上手く行っていないという印象である。

 上記との絡みでパワーアップも上手く機能していない。元々破壊力が高いのであまりパワーアップしても有り難味が感じられなくなってしまっており、難易度Normalにおいてはラスボス戦以外は使わないでも大きな問題とはならないと思われる。危ない時に無敵を使う程度で、ダメージを4倍にするまでもなく普通に武器を使っても個々の敵は倒し易い。よってGoldを集めても余ってしまうようになる。

 第三の特徴は遠隔攻撃の敵が多いという点。Samの一つの特徴は突進して肉弾攻撃を仕掛けて来るタイプの敵が多いという点なのだが、WRでは武器を使ってや物を投げての攻撃をして来る敵が多くなっている。これはプレイヤー側の攻撃力が強いという設定から、突進スタイルの敵だとプレイヤーに到達前に倒されてしまう確率が高くなるという意味でのデザインだろう。よって迫って来る敵自体を避けるよりも、飛んで来る大量の攻撃を避けるという要素が強くなっている。避けられない銃を持った敵は居ないが、その分やたらと矢や斧が飛んで来るので避けるのに忙しいというアクション性は持っている。 敵の攻撃が当ると体が移動してしまうのもちょっと厄介な点。その攻撃量が多いので全てを避け切るのは難しく、その為に攻撃力は相当に高いがそれ程簡単なゲームにはなっていない。相殺されて普通からやや易程度という感じに収まっている(パワーアップを積極的に使うならもっと簡単になるだろう)。


問  題  点
 残念ながらこのゲームの評価としては「劣化したSerious Sam」という感じの物が多かった。それは何故なのかについて考えてみる。

 主人公がヤサ男というイメージでSamの様にキャラが立っていないというのは明らかに弱い点。このタイプのゲームでの主人公の設定の重要性を感じさせる。またCoopは有るがネットコード等の問題でほとんど盛り上がらなかったのも痛かった。

 敵があまり魅力的ではないのは欠点。Samは非常に面白い敵を揃えているが、このゲームではデザイン的に格好悪い物が多くてマイナスである。赤・緑・黄等の原色を使った敵が多くカラフルなSamに対して、こちらは地味な印象の色使いの物が多くなっている。デザイナーの才能の差が出てしまっているような感じだ。
 またこれは実際に見てもらわないと伝え難いのだが、アニメーションが相当にぎこちないと言うか妙な感じ。動いている時に体の線が崩れているかの様に見えてしまう物や、パターン数(コマ数)が少ないのでアニメーションが粗くなっている物。或いはスローモーションで動いている様に見えて躍動感が無い物等、一方では優れたグラフィックスを実現しているのに、アニメーションに関してはレベルが低いと言わざるを得ない。

 Sam同様にとにかく敵の数は出て来るのだが、そのサイズは人間クラスが多くて全体的に小さ目であり迫力が感じられない。Samの様に耐久力が上がるほど大きくなって行くというようにはなっておらず、巨大な敵を倒すというシーンが少ないので強い敵を倒しているという爽快感が薄い。敵からの遠隔攻撃を避け易いように距離を置く事も多いので、余計に遠くで小さくなった敵を撃っている感が強められてしまう。

 敵は地面から出現したりというパターンが多く、そこから死ぬまで動かないというタイプも多い。動くタイプでも高速でこちらに迫って来る様な敵は少なくなっており、静的な印象を与えるシーンが多くてダイナミックさが感じられないというのも弱い点。スピード感という点で今一歩である。

 ボスも大して魅力的ではなく、非常に弱かったりと出来はそれ程良くない。

 ジャンプパズルや障害物を避けて移動しないとならない失敗即死の箇所が結構多くなっており、中にはストレスを感じるような場所も含まれている。ジャンプパズル中に敵が居たりして余計に厄介になっている面も有り。

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