次の頁      TOP

COMBAT(続)
 Veilの力は爽快感が高くて面白いが、やはりこれもオーバーパワー気味という感は否めない。リチャージ方式だが回復速度は遅く、通常の状態では連発出来ないという設定は良いと思うのだが、敵の出現する場所の付近にはエネルギーの噴出口が在るので、繰り返し補給が可能になっているのがバランスを崩している。特に後方に戻って安全に補給出来る地点があると、繰り返しそれを行っての攻撃が可能になってしまう。特殊能力自体はそれぞれが強力であり、更にパワーアップを施すとより破壊的な力を持つようになるので、それが繰り返し使えるとなれば当然プレイヤー側が非常に強くなるという結果が生じる。ボス戦などではその強さが適当とも言えるレベルになるのだが、一般の戦闘ではやはり強過ぎるという印象。
 謎解きに必要な地点では無限補給可能なのは仕方がないとしても、他の地点では例えば各噴出口毎にエネルギーを吸える量には限りがあるとかの制限を設けるべきではなかったかと思える。或いはメダリオンのオーバーヒート等であまり短時間に連続使用は出来ないという制限でも良かった。


 武器のアップグレードによる変化は相当大きく、Goldを溜めて徐々にパワーアップされていくのは楽しいし、(敵がそれ程強くない点は置いておくとしても)強くなった武器は爽快感も高くなる。Veil Powerの改造の方も同様。それと相当金を稼いでもほとんどの武器やVeil Powerを最大限までアップグレードする事は無理なので、リプレイ時に以前とは異なる武器をアップグレードしてより多くそれを使う事で、プレイ感に大きな変化が生まれるのも良い点と言える。その点でこのゲームはミッション進行の自由度も含めて、コンソールに多いリプレイ前提のゲームデザインに重きを置いているように見える。一回だけのクリアを前提としたデザインとどちらが良いかというものではないが、コンソールではゲーム自体のボリュームが少ない代わりに、難易度による変化を大きくしたりアンロック要素を増やしたりといった工夫で、何回もリプレイを楽しめる様にするという点に力を入れて作られている物が比較的多い。

 だがこのデザインはリプレイしない人にとっては十分に楽しめない危険性を併せ持つ。自分で好みを選択したとは言えそのアップグレードが面白い方向に出るとは限らないし、ミッション選択の順番がいわば“外れ”になる事も考えられるからだ。リプレイしてもらえれば今度は“当たり”を引く可能性が高まるが(チートメニューが出るので改造が自由に行えるようになるというのもある)、それをしてもらえなければどうしようもない。一度限りのプレイを前提にしているゲームに比べてそこは大きな弱点となる。


 先に書いたように改造に使うGoldはマップ内を探して回収する分の方が高額であり、ミッションクリアの報酬だけではとても十分な改造を行うには足りない。またおそらく多くの人はVeil Powerを優先してアップグレードを行うので武器の改造は後回しとなり、Goldの回収に力を入れないと武器改造は大して実施出来なくなる。よってアイテム回収を気に掛けないタイプの人だと、それ程改造が進んでいない性能が低い武器で最後まで進める形になるので、改造された武器の爽快感は味わえない事になって、それはゲームの面白さを損なう事に繋がる。しかもVeil Powerさえ上げれば、武器を必死に改造しないとならないほど難しくはないので、途中から「これでは厳しい」と感じてGold集めに転じるという人も少ないと予想される。

 具体例としてはBlack Sunのエネルギーを利用した三種類の武器では、改造していない段階では各々に大きな違いが感じられないので差別化が生じないし、作動までの待ち時間, 連射速度, エネルギー容量等を向上させないとそこが弱点にもなってしまう。しかし改造するとParticle Cannonは遠くの敵までも攻撃出来る単体の相手向きの強力なビーム兵器になるし、Tesla Gunは放射型ビームの本数を増やして近距離のグループ相手用の有効兵器としての特性を強く出すようになる。Leichenfaust 44もパワーアップしないとスーパーウェポンと感じるほどには強さは感じられない武器である。しかし順番としては第一にVeil Powerで次にMP43やKar98といったメイン武器、その次にようやくパンツァーシュレック&火炎放射器か、このBlack Sun系の武器改造が回って来るケースが大勢を占めると思われ、Goldを集めていないとそこまでは手が回らない状況になってしまう。

 個人的にはミッションの報酬をGold全体量の半分程度にして、誰にでも改造はある程度出来る様にしてやり、改造の面白さを多くの人が味わえるようにするべきだったと考える。そしてその分後半に向けては敵の方も強くすればもっと良くなったに違いないと感じられる。


 その他の戦闘の特徴としては、物理エンジン適用範囲が広く相当数のオブジェクトが影響を受ける。よってカバーに隠れてもそれが弾き飛ばされて動いてしまったりや、壊れて無くなってしまう事もある。稀に動いたオブジェクトが移動の邪魔になる事もあるが、これは戦闘を面白くしている要素の一つと言えよう。その関連でエネルギーの収納缶は一瞬で全回復可能なアイテムであり、敵が多い場所では回復用に置いてあったりもするのだが、攻撃や爆発で簡単に壊れてしまうので、それを守りながら(壊れないように敵の攻撃方向を限定したりしながら)戦わないとならないという戦略も含んでいる。

 ゴアは派手な方で、四肢は千切れ飛んでそこら中に転がるし、頭部も転がりはしないものの吹き飛ぶようになっている。血が派手に流れる表現はないが、命中した場所からは出血するのはハッキリと見て取れる。被弾のアニメーションも同社のSoldier of Fortuneの様に部位別に行われるので、攻撃が当たっているのかはちゃんと把握出来る。


 敵兵士のAIは一つの居場所に留まらずにカバーからカバーへと走ったりと移動はまとも。攻撃時にはカバーから身を出して撃っては隠れるという動作もちゃんと行う。こちらの居場所を瞬間的に見付けたりという不自然さもなく、あちこちを見回してこちらを探し回ったりする動作も見せる。しかし如何せん他で書いたように正確性と反応速度がやや鈍く設定してあるので、その意味で怖いAIという風には感じられない。こちら側が引いても積極的に追い掛けてプレッシャーを掛けて来る事が少ない点も弱いと言える。特殊なタイプの敵は一般兵士よりも当然強いのだが、AIの方は正面から突っ込んでくるかパターン化した動きしか見せないので、知能が高いという印象はこちらも受けない。全体としてアクションFPSとしては標準的なAIであり、大きな弱点はないが同時に感心するような良さも持っていない。


GRAPHICS
 Quake 4で使用したTech 4(Doom 3エンジン)の改造版を更に拡張した物を使っている。(正式ではないようだがTech 4.5 Engineなどと呼ばれている)。

 かなり内部をいじっており、ライティングについてはDeferred shadingを新たに採用。これはUnreal Engine 3やS.T.A.L.K.E.R.等で使われている手法で、パフォーマンス的には有利なのだがDX9からはアンチエイリアスが掛けられないという有名な問題を抱えている(擬似的に行えるゲームは在る)。このゲームでもそうなのだが、DX10からだとメニューにアンチエイリアスの設定が出て来るのかは不明。

 最も大きな変更点としては、既にその後のエンジンにて実現されているMega Textureの技術を利用してデータのストリーミングを導入している。これにより高解像度のテクスチャを広いマップでも使用可能。実際にその効果なのかマップのローティング速度は相当短く、全体のデータは移動中に随時読み込むという形になっているのだと思われる。他にはポストエフェクトやDoF, ブルーム, モーションブラー, ソフトシャドウ等を機能として追加。

 キャラクタのモデリングやアニメーションはやはりTech 4の物という印象で、このエンジンの人間描画が変と感じている人にはやはり同様にそう見えてしまうだろう。


 当初からグラフィックスの凄さにこだわったゲームではないとしている通りに、2009年のこの時代にインパクトが感じられるような高いレベルの物ではない。同じTech 4の改造版を使った2007年のEnemy Territory: Quake Warsとかと比べてもあまり変わらないという印象。現在の水準は十分にクリアはしているが、これを売りにするには物足りないと言える。それとプレイ中の半分以上がVeilの緑画面になるので、あまり風景をよく見られないと面も持っている。その代わりに最高設定にしても重さは感じない部類。

 ワイド画面に対応。垂直同期周波数も変更出来る。

SOUND
 3Dサウンドは5.1chサラウンドに対応。4SP環境にてポジショニングは感じられるが、音の移動感等はそれ程ハッキリしていない。

 普通の銃器が少ないのだが、特殊武器も合わせてサウンドの方は合格レベル。BGMも数はそれ程ないが出来は良い。

MULTIPLAYER
 先に情報だけ書いておくと、発売後の評判は率直に言ってかなり悪く、ゲーム内容及びサーバーブラウザ等のI/F系の両面に批判が出ている。前作RTCWのマルチプレイが大人気を博しただけにより失望感が広がっていると言えよう。制作側からは単なる怒りの書き込みではなく建設的な改善案を聞かせて欲しいというスレッドが立てられているが、マルチプレイを制作したEndrant Studiosのチームが既に解雇されており、どこまでの対応が行われるのかは未知数である。

 現状ではプレイヤー数も少なく寂しい状況にあり、RTCWリリース当時の盛況振りとは比べものにならない。個人的にもまだ未プレイなのだが、あまりやる気も出て来ない状態である。大幅なアップデートが行われるまではプレイしそうにないので、現段階では評価は保留とさせてもらう。


 アカウントを制作して成績をトラッキングするシステムで、それに応じてランクも上がって行くという方式。一つのキーコードで4個までのアカウントを制作可能。ただし一つのキーコードでは同時にその中の一つのアカウントでしかプレイは出来ない。

 モードはTeam Deathmatch, Objective, Stopwatchの3つ。Stopwatchは攻守を入れ替えて達成までの時間を競うモード。

 クラスはSoldier, Medic, Engineerの三種。武器は最初から全てが選べるが、アンロック項目はGoldを稼いで行わないとならず、可能な項目もグループ別に一つだけという制限が設けられている。またそれぞれが独自のVeil powerを持っている(シングルプレイとは異なる)。


 Co-opの導入を検討はしたが、ゲーム性に合わないという結論からカットされている。

     次の頁      TOP