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GAMEPLAY
 全マップ数は24個。Normalでのプレイ時間は6-8時間程度とあまり長くない

 スタンダードなアクションFPSに若干のホラー要素が加わったというゲーム性。ただし事前に予想していたよりはホラーの要素は強くない。制作側のコメントとしては、Half-Life, Kingpin, Silent Hillといったゲームに強く影響を受けているそうだ。

 ゲームの舞台は1950年代初頭のソビエトとなっており、当時の建築や雰囲気を出来る限り再現する事に注力している。その頃のソビエトの建築物には独特で変わった形状の物も多く含まれており、相当な歴史資料を集めてその辺りを精密に再現。ゲーム内部のポスターや広告も当時実際に在った物を集めて来て使用している。
 実際にこのゲーム内世界に再現された1950年代のソビエトの雰囲気というのは良く出来ており、どこまで正確なのかは分からないが、大きな売りとなっているのは間違いない。これは西洋の会社ではやはり難しいと思われ、自分達の立地の利点を活かしたと言える。一般的な西洋のゲームではお目に掛かれない様な雰囲気を体験出来るのはポイントが高い。


 マップの進行はほぼ一本道で、小さな脇道を探すと弾薬や回復アイテムが置かれている程度。謎解き要素もほとんど無く、開かない扉はレバーを探したり鍵を見つけて来たりして開けるというやり方で進めて行く。なおカーソルを合わせてもUseの指示が出ないので、開く扉がどれなのか分かり難かったりとあまり親切な設計ではない。

 独自制作の物理エンジンを組み込んでいるのを宣伝していたが、それ程ゲーム中に影響されるオブジェクトの数は多くない。演出で吹き飛んだりするシーンは有るが、多くの物は撃ったりしても動かないし、木箱もサイズが大きくなると破壊も出来なくなる。オブジェクトを掴んで移動させる事も出来ないので、有効に働いているとは言えないレベルである。


 ゲーム中に流れる非常に印象的なムービーは、世界的に著名なウクライナの若手アニメーターAnatoly Lavrenishinの手による物。基本的な内容やシナリオはMandel ArtPlains側が制作し、それを彼がアニメーションとして仕上げている。一般的なゲームにおける解説的な役割の物ではなく、会話や説明の類は入っていないし、内容的にも奇抜で非常に印象的。白黒画面に時々カラーのエフェクトが入るこの独特なアニメーションのクオリティは高く、ゲームの見所の一つとなっている。このムービーは最初と最後の他にも進行中の所々に挿入されるようになっており、最後まで見ると全体の内容が分かるようになっている。

COMBAT

*武器の同時所持数制限は無い
*使用武器による移動への制限は無い
*移動しながら撃っても命中率に変化は無い(一部の武器が実際に反動で跳ね上がるというのはある)
*左右へのリーンや伏せは無く、しゃがみ動作のみ
*スプリントも歩きも無く、移動速度は一定
*一部の武器はアイアンサイトにて正確性が増す


 体力は最大で100。アーマー系は存在しない。回復はFisrt-aid Kitsとなる薬ビンを拾って行うが、これは撃つと壊れてしまって使えなくなる。携帯は出来ない。他には自販機のボタンを押して出て来る液体を飲むと回復出来る。

 移動速度は遅いという訳ではないが速くも無く、単純に移動しないとならないシーンではややストレスになる。こちらに突っ込んで来るタイプの敵の多くはこちらよりも速いので、一旦逃げるという手段は難しいケースが多い。


 戦闘のゲーム性はクラシックなFPSスタイルであり、非常にシンプルな構成となっている。プレイヤーには使える特殊能力も無く、回復も自動ではなくFisrt-aid Kitsを拾うという形で、ただひたすらに敵に照準を合わせて倒して行くというのみ。敵が一度に大量に出て来るという撃ちまくりスタイルのFPSではないし、逆にシビアなバランスで慎重さを要求されるようなスタイルでもない。純粋に戦闘面だけを見た場合、敵が変わっている点を除けば後は本当に普通の平坦なFPSという印象を受ける。

 定番となるボス戦が含まれておらず、強い敵は居るには居るが演出として盛り上がるケースは無い。また武器類にも強力な威力を持った物が無いので、その点でも地味なゲームという印象を強くしている。


 難易度の設定には問題が感じられ、Normalでのプレイでは簡単と言って良いだろう。とにかく回復薬が多いので、ヘルスが減ってもあまり怖さを感じなくなっている。弾もNornalならば比較的多い方。最後の1/3位はそれでも普通の難易度にはなってくるが、そこまでの進行は緊張感に欠ける感は否めない。マップの景観は良いとしても、戦闘その物はやや単調なので、それが簡単となってしまうと余計に問題となってしまう。かと言って話によるとHardだと一気に難易度が上がるそうなので、途中で難易度も変えられないしHardも薦めにくいとなっている。

 敵の出現はスクリプトによるもので、最初からマップ内に配置されているというケースは少ない。よってクリアしたはずの通路に突然背後から出て来たりもする。ただし打撃攻撃を狙ってこちらに向かって来るタイプの敵はうなり声を上げながら登場したりする者が多いので、この声で事前に登場が分かってしまうという面もある。
 逆に対応が難しいタイプの敵は、曇り窓ガラスの背後から突然撃って来る者が一つ。こちらからは事前に見付けるのは困難なので対応が遅れる。それとたまに遠くからライフルで攻撃して来る者が居たりして、これも見付けるのが遅れたりするので対応が難しい。後は敵の打撃攻撃は見た目よりもかなり遠くから命中するので、慣れないと引き付ける際の間の取り方が分かりにくい。


 特徴的なのは敵の造形で、精神的におかしくなったタイプの人間と、体も変質したミュータント系が混在している。こちらに向かって来て打撃攻撃を行うタイプ、銃器を持っていて攻撃して来るタイプ、それとミュータントとして毒を吐いたりという特殊攻撃を行う物の三種類。スキンを張り替えただけの様な人間タイプの敵が延々と出て来るゲームに比べるとこの変化は効果を挙げているとは言えるが、特別な面白さを出しているというレベルには達していない。

 AIもシンプルで、基本的にはこちらを見付けると突っ込んで来るか、その場から攻撃して来る事が多い。物陰から体を出したり引っ込めたりしながら攻撃もして来るが、リアルタイムでカバー可能箇所を認識しているのではなくて、そうしろと指定されているだけなのでひたすらそれを繰り返すだけである。マップ内を動き回って攻撃して来る箇所も偶にはあるのだが、多くの場合はその場を動かないで攻撃を続けてくる。
 バグ的な動きも時々目に付き。撃ち合い中に完全によそ見をしていたり、移動時に柵等に引っ掛かったりも見られる。認識も変になる事があって、間に障害物が在って見えない筈なのにこちらに向けて撃って来たり等。それとこれはこのゲームだけではないが、体の一部が見えている時にそこを撃っても気が付かない。隠れられていると思い込んだままの状態を撃って倒せてしまう。


 攻撃の命中は血がスプレー状になって噴出すような表現となり、近距離ならば当たっているのは良く判る。死体や背後の壁に飛んだ血が付着するという効果も有り。ラグドールは結構効果的に働いており、派手に敵を吹き飛ばせたりするので爽快感が高い。


問 題 点
 ゲーム全体に関わる最大の問題点として、当初アナウンスされていた多くの要素がカットされてしまったという件がある。


 ゲームの制作には丸3年を掛けたのだが、とにかくマップが出来ないとそれ以降の調整が始まらないという事から、最初はマップの構築とDS2エンジンの改良作業に取り組んだ。しかしエンジンの度重なるバージョンアップによる修正作業等も加わり、考えていたレベルに達するまでに2年を要してしまう。その結果としてゲームプレイ面を作り込むのには予算&期間的に1年しか残されず、完成を優先させる為に予定していた要素の大部分を削らざるを得なかったそうだ。以下はその一覧である。


*幾つかのマップ
*登場するはずだったミュータント(ブッチャー等)を数体
*火炎放射器、ミニガン、グレネードの三種類の武器
*ステルスでのプレイ(ホラー系要素)
*ホラー系要素のカットにより、それ系統のパズル要素も排除
*車両系を運転しての移動や戦闘要素
*プレイヤーの選択によって三通りに変化するマルチエンディング


 中でも個人的に一番痛いと思うのは、主人公も影響を受けてミュータント化してしまうという要素がカットされてしまった点。ゲーム中ではNPCとの会話やイベントにおける選択によって、プレイヤーに幾つかの特殊能力が加わるという設定になっていた。ただしこの能力を使えば戦闘では優位に立てるのだが、同時にミュータント化が進むほど人間としての心を失って行くという様に設定されており、例えば自分の意思に反してNPCを殺してしまったりが起きるようになる。デザインとしてはこの2つのバランス(supernatural strengths vs humanity)をどう保つかによってゲーム性が変化し、それによってマルチエンディングの何所に辿り着くかも変わり、またリプレイ性も高めるという狙いを持っていた。

 最低限これが残っただけでも大きく変わったと思うのだが、結果的にはこの件も含めて多くの要素が排除された為に、普通のFPSとしてのゲーム性しか残らないようになってしまっている。マイナーなゲームは目立つ個性が重要なだけに、大きくマイナスに働いたと言えよう。

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