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SURVIVAL HORROR
 ジャンルとしては一般的にサバイバルホラーに分類されているこのDead Spaceだが、実際には純粋な意味でのサバイバルホラーでは無い。そこでそのゲーム性を分析する意味で、先にサバイバルホラーの現況についておさらいしてみたい。なおこの項目はDead Spaceというゲームのジャンル内での立ち位置や登場の経緯について解説した物なので、実際のゲーム内容を知りたい方は飛ばして貰っても構わない。


 サバイバルホラーというジャンルの性質の一つとして、難易度が高いという点が挙げられる。これはその名称からして当然の事であり、「楽なサバイバル」というのは原義的に矛盾してしまう。そこでこのジャンルのゲームでは、プレイヤーを追い込んで生きるか死ぬかの感覚を出す為に定番の設定が幾つか存在している。「HPが低くてすぐに死んでしまう」、「銃器の弾薬が少なく、危険を冒して近寄って打撃攻撃を行う必要性がある」、「戦わずに逃げないとならないシーンが含まれる」、「暗くて周囲が良く見えない」、「回復薬等のアイテム類の数が少ない」、「持ち運べるアイテム数が制限されている」、「謎解きが難解」、「セーブ箇所やその回数が制限されている」等々。ところがこの難易度が高いという点が災いして、近年このジャンルは岐路に立たされている状況にある。

 その理由はゲーム制作費の高騰に関係している。更にそれを回収せんが為に大規模な広告キャンペーンを行って勝負に出るケースが増えており、今ではより多額の予算がゲーム一本を作るのに掛かるようになっている。その結果として現在のゲーム界の一つの潮流となっているのがゲームのカジュアル化現象である。要は幅広い層にゲームを買って楽しんでもらう為に、ゲームの難易度が下がって万人向けになっているという意味。これはFPSのジャンルでも明白であり、ここ数年のゲーム側が設定している難易度“Normal”での難しさは、平均すると昔の同難易度よりも簡単になりつつある。
 その流れとしては、制作費を回収するには大量に売らないとならない→売上げアップにはカジュアルな層への受けが重要となる→誰でも楽しく最後までクリア出来るように難易度は低く抑えるべき→結果的に難易度が下がるという形だ。そこで近年のゲームでは、Normalの難易度を下げる代わりに、コアなユーザー向けにはHardの難易度を若干昔よりは下げて提供し、更に上に第四の難易度としてVery Hard等を設けて幅広い層へのアピールを狙うというのがトレンドとなっている。

 しかしここで問題となるのが、「サバイバルホラーは難しい」という前提である。90年代末から2000年台初頭の頃は制作費が今よりもずっと安く、予算にもよるが目標販売本数が20−30万程度でも成功を収められる時代だった。この位の本数ならば「サバイバルホラーとは難しい物である」という点を理解してくれているユーザー層を対象にするだけでも何とかなっていたのだが、現在の様に金を掛けて新世代機で制作する場合にはもっと売らないと採算が取れず、そうなるとカジュアルな層にもアピールして販売数を伸ばす必要が出て来る。つまり上記の様に難易度を下げないとならない。
 FPSでは難易度が下がるというのは致命的な問題ではなく、カジュアルな層に対して然程苦しまないような難易度でも、出来さえ良ければ楽しんでもらえるし高い評価も受けられる。ところがサバイバルホラーでは、誰でもクリア出来る様な難易度を設けるというのは原理的に難しい。非常に難しければカジュアル層には「難し過ぎるからやりたくない」として投げ出されるが、それを簡単にしてしまうと今度は「こんなにスイスイと進めるのでは怖くない」として不満を言われてしまうからだ。集客に悩むお化け屋敷が客層を広げようと、「このお化け屋敷は年配から子供まで誰でも楽しめる程度に怖くなくしてあります」とやったら根本的な意味がおかしいのと同じで、難易度を下げてしまうのはサバイバルという語句の意味と矛盾してしまう。結果的に高額予算を掛けてのサバイバルホラーの新作は、損益分岐点のハードルの高さを考えると作り難いという結論になる。

 当然制作側としてはサバイバル要素と難易度のバランス調整にはいろいろと取り組んではいるようだ。しかしコアなファン向けには高い難易度を用意すれば良いが、売上げの大きな割合を占めるカジュアル層向けの「サバイバル感はちゃんと出ているが難しくは無い」というバランスの難易度を設けるのはやはり困難である。また難易度を減少させる為にシステム面に手を入れてプレイし易くしてしまうと、単にそこから難易度だけを上げても面白くならないという問題も発生する恐れがある。コアなファンからは「システム的に簡単になってしまったので、単に難易度が高くなっても深みが無くて詰まらない」と言われかねないのだ。

 このジャンルはコンソールがメイン市場なので、私自身が体験した感覚ではない受け売りな点は済まないのだが、周囲のファンに聞いてみた所では、人気作の続編が大幅にユルいゲーム性になったりとか、難解な謎解きを要するゲームが減ったというのは確かにあるそうだ。以上の様にこのジャンルは大きな壁にぶつかっており、予算が下がる可能性は無いので打開策も難しい。今後については、コアなファンのみをターゲットにして難易度を高く設定しても成立させられる分野、つまり低額予算で制作が可能な携帯ゲーム機やWiiへとメイン機種がシフトして行くという可能性は十分に考えられるだろう。


 この様な状況から近年のホラー系のゲームには変化が生じている。ホラーゲームは確かに人気がある。しかしそれがサバイバルホラーである必要性は無く、怖さを出せるのならばアクション系でも問題は無いという考え方である。現在明確な名称は無いが“アクションホラー”とでも呼ぶべきタイプのゲームで、ホラーはホラーとして制作するが、ゲーム性自体はアクションが中心なので特に難しくは無いという物である。これなら怖さは残しつつ、難易度を上げずに万人向けに作る事が出来るという点が大きい。このDead Spaceもサバイバルホラーというよりは、このアクションホラーと呼んだ方が適当なゲームである。
 その怖さについては雰囲気や気味悪さを全面に押し出して実現する。この点では新世代機の方が、実際にその場に居るかの様なマップのリアルさ、ダイナミックなライティングの効果、高ポリゴンで制作された気味の悪い敵キャラクタといった点で有利である。

 その代表的な作品が2005年に発売されたバイオハザード4(Resident Evil 4)だ。このゲームはそれまでのシリーズとは操作性やシステムを一変させて、敵も一般的な意味でのゾンビでは無くなった。そしてシューティングとしてのアクション要素が強調されており、ゲーム感も大きく異なる物となっている。またNormalの難易度では難しいが、その下に皆がクリア可能な様に2段階の易しい難易度も設けられている。このゲームは従来のファンからはあまりにも変わり過ぎだとして批判されたり、アクション中心な分怖さが感じられなくなったという意見も出ていたが、セールス的には新規ファンを獲得して大ヒットを記録し、ゲームの評価自体も非常に高い物となった。実はDead SpaceもRE4には大きな影響を受けており、システム面には似通っている点が多く見られる。

 その他に有名な作品としては例えばCondemned: Criminal Originsが挙げられる。このゲームは難易度は高くないが、それとは別に怖さについては良く出来ており、十分に恐怖感を味わいながらのプレイが可能である。どの程度怖さの表現が成功しているのかには差が有ると思うが、同系列のゲームを列挙するとThe Suffering, Dead Rising, BioShock, Clive Barker's Jericho, F.E.A.R. 2: Project Origin等結構多い。またこのジャンルの大御所であるSilent Hillシリーズの新作Homecoming(日本未発売)も武器を使っての戦闘要素が大きく増して難易度が下がっているという話だし、同じく大物であるバイオハザード5も、ムービーを見る限りではこの系統のアクションホラー作品だと思われる。


 この様にアクションホラーという新タイプは、近年サバイバルホラーに替わって確実に増えて来ており、Dead Spaceもジャンルとしてはそれに属していると言える。Normalの難易度ならばあまり難しくないので誰でも楽しめるバランスだが、プレイ中の恐怖感の表現にはそれとは別にこだわっているというデザイン。ただしDSは上記の多くのゲームとは異なり、従来のサバイバルホラーが持っていたプレイヤーの行動制限を盛り込みつつ、アクション面では過度に難しくならないようにもバランスを取っているという、上手い調整が成されているゲームとなっている


ACTION HORROR
 DSが広範囲な層から高い評価を受けた理由として、プレイヤーに恐怖とサバイバル感を与えつつも難易度(Normal)としては特に難しく無いので、多くの人が途中で長時間詰まったりせずに最後まで進められるようになっているという点が大きい。恐怖感を与えながらも難易度は高くないという、非常に困難なバランス調整を見事に達成している点がこのゲームの大きな魅力となっている。


 先に恐怖感の方から書いて行くと、このゲームの敵は素早い動きの物が多く、また複数で出て来るケースも多い。その数多くの敵が高速でこちらに迫って来るというのは恐怖感を生むし、的確にその敵の弱点を攻撃しないと倒すのにも時間が掛かるようになっている。また倒れても這って来たりとなかなか死なない点も怖い。主人公のHP自体はNormalならば特に低いという程ではないのだが、こういった敵の性質から複数に囲まれて連打されてしまうと一気に危くなるので安全で気楽というレベルでは無い。

 同様に敵の出現がプレイヤーを取り囲むように仕組まれているケースが結構多い。このゲームはResident Evil 4の影響を強く受けているが、「RE4はゲームとしては面白いのだが、怖さに関しては大した事が無い。そこでいろいろと分析してみた結果、敵が前から出て来るパターンが多いのが原因だと思い当たった。そこでDSでは敵が天井板やダクトを破ってあらゆる場所から出現し、戦闘中のプレイヤーを突然背後や横から襲うというケースを増やして恐怖感を生むようにデザインした。」と話している。確かにその通りで、前方の敵に集中していると突然不意討ちを受けて焦る事からプレイヤーが恐怖を感じるようになっている。

 サバイバルホラー的な行動制限としては、アイテムの持ち運びにスロット制限があるので何でも大量は持ち運べない。敵を攻撃するには銃の構え体勢にならないとならず、構えると移動速度が遅くなるので攻撃が避け難くなる。突然敵が襲ってきたり、視界が悪い暗い場所での戦闘が多い。操作は全てリアルタイムで、インベントリーを開いてアイテムを使う場合でもポーズは掛からない。無重力空間や無酸素状態等の戦い難い場所で敵が襲って来る、といった物が存在しており、こういった制限がプレイヤーに焦りと恐怖を与えるように仕組まれている。
 戦闘時の操作系についても同様で、完全なアクションゲームに比べると制限や不便な点が設けられているので、敵に襲われた危うい状態で的確な操作が上手く行えずにパニックになり、それが恐怖感に繋がるという風になっている。

 しかし問題はここからで、単に難しくしてプレイヤーに恐怖感を与える事ならば誰にでも出来る。上記の様にしてプレイヤーに死の恐怖感を与えながらも、同時に過剰に難しくもならないという風にバランスを調整する事が難題である。一定水準以上の戦闘能力を持っているプレイヤーならば、なるべく敵に接近させる前に倒す様にする事で相手の攻撃能力を上回る事が可能であり、それによって過度に難しくはならないようになっている。だが特にアクション物が得意ではないカジュアルな層だと、敵に囲まれてしまって殺される事が多くなり、結果的に難易度が高いとして嫌われる事に成りかねない。この辺の調整の困難さが大きな壁となっている点は先に書いた通り。ではこのDSでは、その難題に対してどの様な解決方法を用意しているのかを以下に書いて行こう。


 まず一つ目の上手いアイディアはメディキットの扱いである。回復薬は一般的なサバイバルホラーでは貴重な存在となり、ゲーム全体で限られた数をどの様にして節約して行くのかがクリアの鍵となる。しかし量が限られている故に、上手くないプレイヤーに取ってはゲームの難易度が上がる大きな原因でもある。逆にそういったプレイヤーの事を考えて量を増やしてしまえば、上手なプレイヤーに取ってはゲームが簡単になり過ぎてしまうという難点あり。

 その点DSではメディキットはショップに行けば幾らでも買う事が出来る。(上級の物はSchematicsを見付けるまでは買えない)。よってマップ内で手に入る分だけでは足りないというプレイヤーは、多目にメディキットを買い込んで携帯する事で死の危険性を減らせる様になっている。また金はメディキットが十分に買える程度には手に入るので、金欠で買えないという事もまず無い。ただしこのゲームではメディキットの価格は相対的にかなり高価に設定されており、他のアイテムを購入する分の資金が減るというデメリットを持つ。弾薬は上手ければ節約も可能だが、メディキットが足りないというレベルでは節約は困難なはずなので、拾った弾薬を売って金を稼ぐのは難しい。結果的にメディキットを多く買い込んでしまうと、アップグレード用のパワーノードの購入資金面で不利になるという構造になっている。

 この様にアップグレード用のパワーノードもメディキットも、アイテムは全て金で購入するというシステムを採用したのが上手く働いている。つまり防御力を高める為にアイテムを買い込むとアップグレード面では不利になるので、主に攻撃に使用する武器の改造が進まなくなる。同じくスーツ自体を早目にレベルの高い物に買い換えて行けば、アーマーが強化されるのと同時にスロット数が増えて携帯可能なメディキット等のアイテム数も増えるが、これもまた改造用途の資金減につながる。よってディフェンス面を強化したプレイヤーの攻撃力は相対的に低下し、ゲームが過度に易しくなってしまうという状況を自動的に防ぐように機能している。これは改造要素の中のスーツのアップグレードでも同じ事で、ディフェンスを強化したいと考えるプレイヤーはHPを100から倍の200まで改造出来るが、そこでパワーノードを使ってしまえば武器の改造は遅れる事になる。

 この様にしてアクションが得意ではないゲーマーならば、ディフェンス面を固めて死の可能性を減らし難易度を下げる事が一応可能であるが、同時に攻撃力が減るのでバランスは一定範囲内に保たれるように連動しているのが優れた点である。対して一般的なサバイバルホラーでは舞台が現代で主人公が一般人なので、設定としてプレイヤーの能力アップや装備のアップグレードといった要素を組み込むのが難しく、その点をこのDSではSFという設定を上手く利用していると感じる。メディキット等のアイテムを増やすほど攻撃面での武器が弱くなるという様なシステムは、現実世界がテーマのゲームでは自然に組み込むのはは困難だろう。これは改造用のパワーノードが、ミッションクリアに応じて一律の値で供給されるといった設定にしなかったのも良い点。これだとどんなプレイヤーでも改造可能量が一定になるので、金を使ってディフェンスを固めた上に攻撃力の方も増加が出来る状態になってしまう。


 二番目に敵を短時間遅く出来るStasisの能力。高速で突っ込んで来る敵を遅くしたり、数が多い時にはその一部を止めて対応したりと、これ無しでは戦闘が困難な位に重要な機能である。これもメディキットと同じく、敵の攻撃がキツイと感じる人ならリチャージ用のパックを必要分買ってアイテムスロットに入れて持ち歩くという対応策が取れる。またパワーノードを使ってアップグレードし効果を増す事も出来るが、その分武器改造に回せる分が減るので過剰に難易度は下がらないという調整機能も働いている。ただ敵をほぼ停止状態にまで遅くする能力となると強力なのは事実であり、それはプレイヤーの恐怖感を削ぐというマイナス面を持つ。その辺を考えて一般的なゲームでのスローモーションの様に万能タイプではない形での調整が行われている。

 まず能力の効果範囲が限定されており、狙った場所に向けて当てないとならない。つまり敵かその近くに命中させる必要がある。しかしこのStasis弾は左手で投げる際に若干の間が生じるので、激しく動く敵に当てるにはそれなりに技術が必要となる。それと当てた相手しか遅くならないので、前の敵を止めても背後や横等の他の敵には効果が無く、世界全体を止める方式に比べると気が抜けないで緊張感が持続するようになっている。SF設定なのでアイザックの周囲にスローダウンするタイプのフィールドを生成するというやり方でも不自然さは無いが、それを採用しなかったのが恐怖感の低下を防いでいると言える。

 それと離れた敵に先制攻撃で当てるのに比べると、間近に接近されてしまった状態では的が大きいので遥かに当て易くなっている。つまりピンチを脱出したい際には当て易いが、離れている通常状態ではそれ程的確には当てられないという上手い仕組みが働いている。


 第三にアイテムの出現には自動調整機能が使われている。船内で手に入るアイテムの一部や、倒した敵が落とすアイテムは、プレイヤーの現在の状態に応じて変化する仕組み。例えば弾薬は高確率で持っている武器の中のどれかが出るようになっており、使っていない武器の物はほぼ出て来ない。そしてこれは他のアイテムの出現率にも関わって来る。もしプレイヤーがメディキットを持っていない場合にはその出現率が高くなり、弾薬が切れそうならば弾薬が、残金が少ないならば金が出易くなる。それぞれ完全に切れてしまうとデッドエンドになって以前のセーブからやり直しになる可能性もある訳だが、この自動調整機能のお陰でやり直しに直面する確率が減っている。またアイテムが切れそうでいて何とか繋げるという状況は緊張感も増すという効果を持つ。この様な自動調整機能を持ったサバイバルホラーがどの程度存在しているのかは不明だが、カジュアル系のゲーマーが嫌がるやり直しの発生を避けるという意味では効果的なシステムだと言えよう。
 なおこの調整は絶対ではなく、現在メディキットが無いから次の敵は必ずメディキットを落とすという風にはなっていない。あくまでも期待値は増すという程度である。よって過度に安心感を増して恐怖感を減退させるような要素では無い。


 第四にセーブのシステム。サバイバルホラーではセーブがシビアな設定の物も存在するが、このゲームではチェックポイントセーブを採用しておりエリア単位でやり直せる。これは難易度を下げる一因ではあるが、ゲーム全体の流れは良くなるという効果を持つ。クイックセーブは出来ないので過度に簡単にはならないし、カジュアルなユーザーでも最後まで行ける確率が高くなるという妥協点としてはまずまずだろう。

 ここでDSのセーブ方式がユニークなのは、マップ内のセーブステーションにてマニュアルでセーブが可能であり、またそれが多くの場合は何時でも可能であるという点である。どういう意味かというと、チェックポイントセーブはエリア単位なので、その中で複数のイベントや数回に渡る敵のウェーブが発生する場合、最後のシーンで死んでしまうとエリア全体を最初からやり直しとなってしまう。しかしDSでは背後の扉が閉まって戻れなくなるというケースは稀なので、もし最後の戦闘が難しいという場合には、そのエリアからセーブステーションまで一旦戻ってセーブしておくという救済策が用意されている。これなら死んでもセーブの時点から復活するので、ステーションから戻る移動の面倒さを除けばクリアが楽になる。同様に最後のセクションを前にアイテム類が少ないのならば、ショップまで戻って買い足しも可能。この仕組みも戦闘が苦手な人への援護策としては優れた機能だ。


 最後に武器の設定がユニークで、一般的なゲームのように進むに連れて強力な武器が手に入るという形にはなっていない。それぞれの武器には利点と欠点が存在しており、また改造によってもその威力が変化するので単純に優劣がつけ辛い。また敵のタイプに応じて役立つ武器というのが異なっているので、特定のタイプが嫌で上手く倒せないというプレイヤーなら、その敵に対して有効な武器を持って難易度を軽減出来るようになっている。同じく武器の中には360度全方位に攻撃可能な物もあるので、周囲を囲まれてやられてしまうプレイヤーはこれを使って対処したりも可能。ただし武器の所持数には制限が有るので、全ての敵に対してその都度有効な武器に切り替えながら戦うという事は出来ない。よってこれもまたゲームが過度に簡単になる事を防ぐように機能している。


 以上の点をまとめると、

*各プレイヤーが自分が弱いと考える箇所を補正可能なので過度には難しくならない
*弱点を補正した分が別の面ではマイナスにも作用する仕組みなので過度に簡単にはならない
*難しくて突破が出来ないデッドエンド状態に陥らないような工夫が設けられている


 という事で、プレイヤーの焦りやパニック状態を引き起こして恐怖感を維持しつつ、その難しさを解消するシステムを組み込んでいるので難易度の方は適度に保たれて、結果的に万人が楽しめるという設定になっているのが優れた点である。それが広範囲のプレイヤーから面白いゲームとして支持された大きな理由であろう。SFホラーという設定を活かした制作側の見事な腕前を感じさせる。

 ただ一つ断っておくとこれは難易度を適切に選択した場合の話であって、特にアクションゲームが得意ではないカジュアルな層ならNormalが適していると思うのだが、普段からアクションゲームをやっている人だと、ゲーム内での補正が効き過ぎてNormalだとやや簡単に感じられる可能性が高い。また実際に比較した訳ではないのだが、ゲームの特徴として敵の身体の弱点となる特定部位を撃つのが重要な為に、DSにはコンソール版でもオートエイムの機能が組み込まれておらず、PCでのマウス操作だと制作側の意図よりも狙いを付けるのが簡単になっていると思われる。よってアクションゲームに慣れている方は、恐怖感をより強めてゲームを面白くしたいのならば最初からHardでプレイした方が良さそう。この場合でもシステム自体は同じなので補正機能は働く為、格段に難しさが増すという事は無い筈である。

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