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シ ス テ ム

キャンペーン
 難易度はEasy / Medium / Hard / Extremeの四種類。プレイ途中での変更は出来ない。チャプター単位でのリプレイ時に変更は可能なので、変えたいならそこから選び直せば良い。チャプターを選択すると、シングルプレイとCo-opで別々にクリアした最高難易度が表示される。


セーブ&ロード
 チェックポイントセーブ方式。ハンディカメラで撮影しているという演出に合わせて、セーブされた際には経過時間表示が画面上に出る。今回はチャプターの途中で終わらせても、再開時にはちゃんと最後のチェックポイントから始められるようになった。


OBJECTIVES
 具体的な内容をテキスト等で参照する機能は無い。ミニマップも無くされている。ヒントキーを押すと進むべき方向を向いたり、簡単な説明文が表示されるというのみ。ただしやるべき事を迷ったり、方向が判らなくなる様なケースはほぼ無いゲームである。


EXTRAS
 DLCとしてマルチプレイ用のDoggie Bag Packがリリースされている。これはPC版でも有料である。その他にも発売時にDLCが3つリリースされているが、限定版を買えばアンロックコードが付いて来る。

 Steamworks対応なので実績機能を装備している。


英語
 字幕機能あり。それ程英語の量は多くない。ゲームのクリアに限れば、英語の理解はほとんど必要が無いというレベル。

GAMEPLAY
 全11チャプターで、難易度Mediumにて6時間弱でクリア。今回は先にCo-opでクリアしてからという形になったが、迷う様な所はまず無いので「内容を知っていたからクリアが早い」という面はあまり考えなくても良いと思う。非常に短いという点に批判が集まっていたのは知っていたが、確かに短いという感じでこれは大きな欠点と言える。各種掲示板には4時間位でクリア出来てしまうという人も結構居たが、実際にCo-opだと4時間も掛からなかったので、物理的なボリュームという観点からすると4時間でのクリアも十分に可能。なお実績解除対象のExtremeだと少なくとも倍は掛かる模様。

 もし仮にHalf-Life 2の様に『Kane & Lynch 2: EP1 上海編 』といった形で、$19.99〜29.99程度の価格で出ていれば批判も減っていたと考えられるのだが、このボリュームでフルプライス(PCだと$49.99)というのは文句を言われても仕方のないところだろう。クリア後に実績解除の為にExtremeにチャレンジするのでもない限りは、リプレイ性も低いと言う他ない。


 今回は主人公がリンチに変わったのが前作との大きな違いになるが、リンチの最大の特徴である“精神的に不安定”という要素を考えると、根本的に彼は主人公は向いていないと感じられる。時々妙な独り言を呟いたりするという演出はあるのだが、プレイヤーが操作する以上は精神的不安定さをその行動で表現するのが困難であり、結果的にリンチのキャラクター(狂気)が活かされていない。彼のキャラクター自体が魅力に欠けるという訳ではないので、AI操作にしてイベントとして狂気を表現させる方がずっと有効だと思える(1の銀行襲撃の様に)。

 ストーリー上はリンチは感情を剥き出しにして怒って吠えまくるというキャラクタで、それをなだめるケインという図式なのだが、実際にはプレイヤーが操作しているので冷静なリンチと、やたらと攻撃的で前に出たがるケインという逆の構図になっていて、そこにプレイしていて大きな違和感が生まれている。実は最後のチャプターではケインを操作する事になるのだが、全体をこの様な切り替え方式にした方が良かったような気がする。


 ストーリーは特に捻った物では無く、時間のアクション映画風というかそんな感じで可もなく不可もなし。複雑な内容ではないだけに、ちょっとでも具体的に書くとそれだけでネタバレになるので展開の説明は省略。難点を挙げるとすればラストが呆気ないという所で、「これで終わり?」という感じだった。ここまでで半分で、そこから別展開の後半がスタートするなら良かったのだが、中途半端な所で終わってしまうという印象。前作でいうなら雰囲気がガラリと変わる南米パートの前で終わってしまうという感じである。

 前作がマルチエンディングだっただけに、今回の二人の関係がどうなっているのか興味があったのだが、これを説明するには1のエンディングのネタバレをしないとならないので、以下に反転して記載しておく。なお前作の後を描いたコミックスも発売されているのだが、この記事によるとゲーム側のストーリーとの関連性は特になく、オリジナルのストーリーとなっているそうだ。

 1のエンディングは2つで、片方は「仲間を見捨てて娘とヘリで脱出する」。もう一つは「仲間を助けに向かうが、娘が撃たれてしまいリンチと脱出する」という物で、どっちにしろバッドエンディングという評価になっていた。当然最初の方だと今回の協力関係は有り得ないので、後者が実際に起きた事になる訳だが、2では「実は娘のジェニーは死んでいなかった」という話になっている(あの状況からするととてもそうは思えないのだが)。その後ケインはジェニーとは疎遠状態で会っておらず、娘と和解するには大金を渡すしか無いと考えており、今回の危険な仕事に合意したのもその金を稼ぐ為という設定。


 ロケーションは上海のみ。チャプターによって場所は変わったりするが、それ程バラエティに富んでいるとは言えない。ただ景色を単調だと感じるほどにはゲーム自体が長くない。特にアウトドアの路地などは上海の猥雑さが良く表現されていて雰囲気が出ている反面、終盤のチャプターなどはそれが失われて平凡な見た目になってしまっている。


 今回は非常にシンプルなゲーム性にしたという事で、前作の持っていた多くの要素がカットされている。

*部隊操作コマンドは一切無し(ケイン以外の味方が居るシーンはあるが自動で動く)
*相方のケインは不死身で、ダウンした味方を助け起こす必要は無くなった
*自分が倒れた際に助けが来るまで待つという要素も無し
*武器交換システム&弾薬受け取り操作はカットされている


 進行ルートや目的も単純化しており、前作の様に次にやるべき事に迷うというケースは減少している。ほぼ一本道の進行で、二人で扉を開いたりする様な区切りの地点では後ろに戻れなくなるという構造。広い場所では戦闘時に移動するルートを選択出来るケースはある。

VISUAL STYLE
 最大の特徴とも言えるのが独特なビジュアルスタイルである。前作からバイオレンスを強調したり, HUDレスにしたりと徹底してそのゲーム内世界がリアルに感じられるようにと力を入れているシリーズだが、プレイヤーが最もリアリティを感じられるのはどの様な映像表現なのかを突き詰めた結果、それはYouTube等に投稿されたユーザー撮影動画であるという結論に達している。そこでこのゲームでは、そういった投稿動画を視ているかの様な映像表現を採り入れている。


 三人称視点のカメラは普段は特に変わりないのだが、あたかも背後に居る撮影者がその場で撮っているかの様な雰囲気を出している。第一にスプリント中は追い掛けるハンディカメラの手ブレ風に画面が激しく揺れたり傾いたりする。FPSゲームで移動中に頭が揺れる様な表現(Head bob)があるが、ああいうレベルではなくてリンチの姿をセンターに捉えられずにあっちこっちへと激しく揺れ動く。これで酔うという人も出ているという位の揺れとなっている(設定からSteadycamをオンにすれば安定させられる)。

 次に画面上に帯状の光の線が入ったり一部が変色したりといったカメラを通しての映像風のエフェクトと、撃たれた際には画面がブレたりブロック状のノイズが生じたりといったカメラに衝撃が加わった様な映像表現が行われる。被ダメージの血痕や雨のシーンの水滴も、レンズに付着したかの様に表現される。言うなればあえて綺麗な映像を避けて素人投稿風のローファイな汚いビジュアルを使っており、それにより上海という街の独特な雰囲気を醸し出そうという狙いを持っている。


 続いては幾つかの場所にモザイク処理を採用している。例えば下半身が丸出しになっている人物のシーンでは股間にモザイク。残酷な映像表現のシーンではその部分にモザイク。そして戦闘で頭部に大きなダメージを受けた場合にも、その死体の顔にはモザイクが掛かる様になっている。これも動画サイトにアップロードされた動画風演出の一環である。

 しかしこの演出が相当な批判を浴びてしまっており、公式掲示板では残虐表現へのモザイクに関する不満を爆発させるスレッドが幾つも建てられている。曰く、「何故設定からモザイクを外すように出来ないのか」, 「ヘッドショットされた全ての死体の顔にモザイクなど、こんな低レベルの規制を行うゲームは許せない」等々。これは一言で言ってしまえば勘違いなのだが、意図したビジュアルスタイルがユーザーに良く伝わっていないという点は制作側にも問題はあるし、ここでその狙いについて解説をしておく。


 頭部が吹き飛んだ様な残酷描写を行う事自体は可能である。しかし現在のグラフィックスにてそれをリアルなレベルで行った場合、レーティングを通す事が出来ないから発売が不可能になる(PCなら一応可能だが)。つまりモザイクを掛けないで頭部の損傷表現を行うなら、他社に比べてよりリアルなグロ表現を見せる事は出来ない(技術的にではなくレーティング的に)。股間にモザイクという性的表現の方も同じである。そこでどうやったら最もグロい映像表現のゲームに出来るのかとなって、その答えが「あえてモザイクを掛けてしまう」というやり方である。

 モザイクを掛ければ、実はモザイクの下には現在のレーティングでは表現不可能なレベルのグロ描写が在るのだと、プレイヤーに“想像させる”ことが出来る。結果的にプレイヤーの頭の中では、全てのゲーム中で最もグロい映像表現を持ったゲームだと印象付ける事が出来るという理屈になる。モザイクを外すオプションを設けた所で、外した下には他のゲームと変わらないレベルのダメージ表現の顔が出て来るだけであり、それでは他のゲームとの差別化にならない。(必要が無いので、おそらく実際にはその下の顔のダメージ表現自体作っていないと思うが)。或いはレーティングを通せないレベルのグロ表現のグラフィックスを実際に作成してからそれにモザイクを掛けて発売し、PC版ではModでそのモザイクを外せる様にするという手法は、GTA: SAの回収事件以来不可能になっている。


 日本語版での規制の意味合いは、上記の様に「モザイク表現を行うのは過激過ぎる」というレーティング上の判断からだと思われ、プレイヤーがモザイクの下の残酷&エロい描写を想像する事が無いようにする為にモザイクを除去。その代わりにそのモザイクが外れた際のグラフィックスが必要ならば作るという方針。例えば性的表現については股間にモザイクでは無く、代わりにパンツを履いているグラフィックスが使われている。

 なおトップで紹介した「過度な切創表現の修正」についてだが、これはあるチャプターでの体に付けられた傷跡の表現が緩和されているという意味。ここは確かにかなりグロいというか酷いレベルなので、規制された(コンソール)日本語版の方が良いという人も結構いるかも知れない。(このチャプターの画像については当レビューでは掲載していない)。


 物凄く上手く行っているとは言えないが、オリジナリティという面ではこの演出スタイルは十分に評価出来る。グラフィックスをあえて汚くも見せているのでそれがマイナスにもなっているのは否定出来ないが、独特の質感がロケーションである上海のイメージとマッチしているのは確かだ。

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