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戦   闘
 ステルスがメインのゲームでプレイヤーの戦闘能力が高かったらゲームにならない訳で、このゲームでもかなり戦闘能力は制限されている

 武器はSC PistolSC-20K M.A.W.S.(Modular Assault Weapon System)の2種類しか用意されていない。SC-20Kはアタッチメントの付け替えで多目的に使用出来るAssault Rifle。武器は構えの姿勢に入らないと使う事が出来ず、この状態では移動速度もゆっくりとしか歩けなくなる。つまり銃撃戦になった場合、FPSの様に左右ステップで敵の狙いを狂わせながら撃ち合うというのは不可能。オープンスペースで複数の敵相手の撃ち合いにまず勝ち目は無い
 照準は徐々に収束するシステムを採用しており、構えの姿勢に入ってから最も小さくなるまでに4,5秒掛かるので、いきなり銃を抜いて撃とうとしても当てるのは難しい。また一発撃つ毎に照準は開いてしまうので連射するほど命中率は悪くなる。更に一番収束した状態でも必ずその場所に弾が飛ぶという風にはなっておらず、出来るだけ目標に接近してより確率を高めるしかない。
 武器の切り替えやアタッチメントの付け替えはInventryキーを押して行わないとならない方式であり、戦闘の真っ最中にやるのは危険を伴うとなっている。それとHPが危なくなってもMedikitの適用は銃を降ろさないと行えない。Ammoは通常マップ内を探索すれば手に入れられるがそれ程多くなく、所持出来るのは1マガジン分だけ。ただし足りなくなるというケースは少ない、と言うか弾が足りなくなるほど撃ち合い出来るようなバランスのゲームではない。

 ドア等の障害物となる場所が有るならそれを利用して戦うのが基本で、隠れる場所が無い所での戦闘は困難である。またSamは向って右側からしか覗く事が出来ないので、左側に体を隠せる物が無いと最小限に体を出して撃ち合うというのが出来なくなる。場所によっては背中を壁に張り付け乗り出して撃つというのも可能だが、この場合命中率が落ちるという欠点がある。
 障害物が何も無いケースでも暗闇から先制攻撃を仕掛ける事は可能だが、初弾で倒せないか他の仲間に気が付かれて撃ち合いになると厳しい。銃弾数発なら耐えられるとは言っても相手がマシンガンを持っているケース(ゲーム後半はほぼこのパターンになる)では瞬殺に近いし、加えて相手が複数の場合には同様に厳しくなる。またMedikitもそれ程手に入れられる訳ではないので、毎回戦闘していたのでは体が持たない。

 射殺のデメリットは"Grab"は無音で行えるのに対して、射殺した場合には呻き声が出て周囲の仲間に気が付かれる点。例えば同じ部屋の中に居る敵の一人を他の者に気が付かれないように始末したい場合、暗闇でGrabするなら可能だが、射殺してしまうと気が付かれてしまう可能性が高い。それと戦闘になるとその他の場所から敵が増えて出て来る(ステルスを貫いていれば登場しない)というケースも有るので注意。アラームが鳴らされると、以前にステルスでやり過ごしてきた部屋に居た警備員までがそこにやって来てしまうというのもある。
 敵を盾にするというオプションもあるのだが、これはあまり有効性が無いというか、その状態で銃を向けると敵は構わずに撃ってくるし、自分にも当たるのが完全に防げるという訳ではない。またこの状態だと移動操作が難しく、左右キーを押すと移動ではなく回転してしまう為、逆に敵に体を向けてしまうという間抜けなことになってしまいがち。


 Pistolは消音機能付きで、気が付かれていない状態からの狙撃かライトを壊したりするのに使う。殺傷能力が低いので敵を倒すにはHeadshotするのが基本だが、命中精度が低いので相当接近しないとならず、またそこまで近付けば"Grab"まで可能という事になってしまうこともある。Grabに持って行くのが困難なケースで使うか、敢えてこれで倒して気が付いてやって来た別の仲間を連続して仕留めるといった使い方になる。音がしないので敵を倒すにはこちらの方が理想的ではあるのだが、頭以外では結構撃ち込まないと死なないし、マップ内で弾を入手出来る可能性はかなり低くなっている。もし銃撃戦になった場合には反動が大きいので連射で正確に当てるのが難しく、頭を狙うよりも的の大きいボディーを狙って撃ち込んでやる方が確実性は高くなる。

 SC-20KはPistolに比較して射程距離は長くなるが、命中率がそれ程高くないという点に変りはない。またPistolの場合は敵を倒しても自分の位置を気が付かれにくいが、こちらはかなりの確率で敵に居場所を発見されてしまうという大きな欠点を抱えている。Pistolに比べると弾は入手可能だが、それでもフルオートで撃ち合うというのは命中率も下がるし音も立てるしでお勧め出来る手段ではない。他にスコープ機能を持っているが相当揺れるので狙い難く、右クリックで息を止めて安定させると今度はスコープが微調整程度しか動かせなくなる。更に一発目を外せば銃身が跳ね上がって次の弾をすぐに撃つ事が出来ない。よって動いている敵相手にHeadshotを決めるのは至難の技。

 敵の射撃能力についてはそのシーン毎に調整してあるという印象で、ステルスで進むべきとデザインされているシーンでは神懸り的な精度を持っており、逆に銃撃戦を或る程度許容するような箇所では命中率は下げられている。

 総合的に一対一の状況ならば銃撃戦で相手を倒すのはそれ程困難ではなく、物陰から敵のリロードの瞬間を狙って攻撃するとかいろいろと手段は有る。しかしエリア内を数人がうろついている状況では急速に対処が困難となる。一人目を倒しても他の敵と銃撃戦になると、銃を構えた状態ではろくに動けないのでこちら側が不利となるからだ。気が付かれないようにPistolを使うには当たるような距離までステルスで接近しないとならないし、攻撃力も大幅に落ちてしまう。しかし離れた場所からSC-20Kで撃ったのではすぐにこちらに向けて銃撃が開始されてしまう。普通のFPSであればSniper Rifleを使って一人目を倒した後、死体に寄って来た他の仲間を次々に狙撃するといった芸当も可能だが、このゲームでは先に書いたようにスコープの揺れが激し過ぎて動いている敵をHeadshotするというのが困難である。
 基本的に銃撃戦では命中精度はこちらの方が不利な上に、場所によっては敵の射撃の腕が正確過ぎて撃ち合う事が出来ないということも多々有る。どうしても戦う際には事前に出来るだけ事前に敵の人数を減らしておいて、戦闘時にはドアの様な障壁を利用して敵を分断し、やって来る敵を一人ずつ倒すといった工夫でもしないと勝利は困難である。実質敵の多い難所では用意された多彩なGadgetを使って戦った方が有効であり、直接対決ではなく間接攻撃で数を削って行くという戦法になってくる。つまりステルスを使わずに敵を攻撃する戦法はそこそこ可能であるが、アクションゲームの様な銃撃戦でのクリアというのは難しいゲームである。



GAMEPLAY
 ミッションは全部で9個用意されており、それぞれが幾つかのマップから成っている。ステルス主体というゲーム性なので、総プレイ時間はそのプレイヤーのスタイルによってかなり変ってくると言える。20-25時間程度が平均的と思うが、徹底してやり込むなら40時間以上とかになるかも知れない。Profile単位でSave等を管理する方式で、難易度は作成時にNormalかHardを選べる。Hardを全てクリアした訳ではないが、基本的にマップの内容には変化が無く、ダメージ等が厳しくなるといった変化があるのみのようだ。難易度を変えてリプレイする際でもトレーニングを飛ばせないのはちょっと問題。

 ゲームのデザインとしてはステルスが基本だが、特別にそこにこだわっているという感じではなく、プレイヤーに常にステルスで行く事を強要しているといったゲームでは無い。ミッションによって殺傷禁止の物は存在しているが、逆に結構戦闘寄りのデザインのマップも有って、目先を変えて飽きさせないような工夫がなされている。または場面によっては一定時間内に数人の敵を倒さないとならないとか、ある場所を守って追って来る敵の集団を迎え撃たないとならないとか、到達した時点で敵に発見されるという設定になっている、といったシチュエーションも用意されており、一般的なステルスのゲームとはやや異なったデザインとなっている。
 主人公のSamは決して超人的な能力を持った人間として設定されてはいないが、スマートに敵を排除して行く格好良さの表現は狙いとして感じられ、その為には或る程度の戦闘能力は持っていた方が良いという考えからの構成と想像している。

 ゲームバランスとしては、ステルスを強制はしないが、かと言って暴れられる訳でもないという観点からは程良く調整が成されていると感じる。強力なGadgetは多数用意されているが、その数を少なくする事で上手くバランスを保っているというのもあるだろう。
 必要とされる殺害以外は行わずに非殺傷でゲームをクリアする事は可能になっているし、通常はステルスを通す方が厄介な問題は起き難い。しかしむしろ単純に殺した方が簡単に突破可能という箇所も有るので、徹底したステルスを要望する人にとってはその点は物足りないかも知れない。加えてクリア後のランキングや成績の表示機能も無いので、あくまでもステルスで行くというモチベーションはより保ち難くなっている。

 難易度は高い部類であるが、これは何を尺度に計るかも関わって来る。死ぬ回数だけを取れば通常のアクションゲームに比べたら数十倍の回数になるし、その意味でステルス物が初めてというプレイヤーに取っては相当な難易度に感じられると思われる(Easyの様な難易度は無い)。それでもステルス一辺倒を強要される訳ではなく、或る程度は攻撃的に出られるようになっているし、敵を殺してはならないという制限が付くミッションも少ない。その意味で例えば他のステルスゲームの高い難易度でのプレイに比較すれば易しいという見方も出来る。
 またXboxとの相違点として任意の場所で無制限にQuicksaveが可能な上にLoadもすぐなので、やり直しへのストレスはかなり軽減されている。全く同じ内容で且つバランスとしてはPCの方が難しくなっているにも関わらず、例えばGamespotのユーザー・アンケートではXbox版の方が難易度が高いと答えている人が多くなっており、それにはPCでのQuicksave可という点が強く働いていると考えて間違いないだろう。

 まずは大まかなその箇所の突破の為の計画を建てて実行に移し、失敗すればすぐにQuickloadしてやり直し。どうも上手く行かないようならば計画自体を考え直しながら進むといったデザインであり、ステルスタイプでは一般的な「何回も死ぬのは織り込み済み」というゲーム性。失敗を繰り返しながらよりスマートな方法を考えて行くという点に面白さを見出させるのが狙いのゲームであるとも言える。


 自由度については、一つ一つの場面(シチュエーション)、それが集まって出来るブロック(エリア)という固まり、更にそれが集まったマップ全体、という三段階に分けて見てみる事にする。まずマップ全体という一番大きな単位で見た場合、SCには自由度は無いと言える。例えばHitmanシリーズの様に最初に目的とマップだけが与えられて、どういう風にその目的を達成するかマップ内での行動に高い自由度が与えられるというゲームではない。マップは幾つかのブロックの連続で構成されており、Aというブロックをクリアしたら次はB、そしてCという風に決められた順番に進んで行くので、その進行に自由度は無くなっている。
 ブロック内での自由度についてはケースによって異なり、Aブロックから次のBブロックへと到達するのが目的の場合に、Aブロック内に異なる別の到達ルートが設けられている事も有るし、或る場所で廊下側から回るか部屋の中を通るか二手に分かれたルートのどちらを通るかが選べるというのも有る。しかしゲーム全体の割合としては分岐ルートが選べる場所は少なく、その意味でこのブロック単位で見ても自由度はそれ程高くない。
 一方で個々の場面に対しての自由度は非常に高い。ステルスで行くにしろ戦うにしろそのバリエーションは数多く用意されている。敵にコンタクトすらせずに通り抜ける事も幾つかの方法が可能だし、気絶させるにしても様々なGadgetを使ったり出来るようになっている。それと完全にステルスで行かないとならない訳ではないので更に取れるオプションが幅広く、一人を殺して混乱している隙に次の地点へ抜けてしまうという戦闘と非戦闘のミックス型の対処方法が取れたり、走力が有るので意外と単純に銃撃の中を駆け抜けて逃げてしまうという行動が上手く行ったりもしてしまう。

 よって進行に関してはほぼリニアだが、個々の場面では窮屈さを感じさせる場面は少ない。このゲーム性をどう取るかは好みの問題になるだろう。クリアまでの時間は比較的短い代わりにリプレイ性の高いゲームにしようと考えるならば自由度は非常に重要な要素となる。しかしSCは初回プレイにおけるボリュームも相当有って、リプレイ出来無いと不満が残るほど短くは無い。元々自由度が高いゲームを作ろうという意図自体が無かったそうなので、そうなるとルートを限定してプレイヤーの体験を限定出来るデザインの方が、皆に共通して面白く感じてもらえるように細部まで細かい調整を行うという点は達成し易くなる。逆に自由度の高いゲームでは、それを理解してくれないプレイヤーに取っては散漫で底の浅いゲームと取られる可能性が有るので、この辺はゲームのタイプによって一長一短であると言えよう。

 敵のAIについてはそれ程不自然な点も見受けられず、倒れている仲間にはちゃんと気が付くし、消された灯りも認識可能になっている。実際の人間と比較したら認識距離が短くなっていたり、至近距離の気配に気が付かないといった不自然な点はゲームとして成立させる為に仕方がないだろう。問題点としては時々障害物を透過して認識を行ってしまう事が有るという点。

問  題  点
 進行ルートに関しては自由度が低いので、クリアするには(そこに到達するまでの方法は自由だが)必ず或る箇所を通らないとならないという場面は多くなっているが、その場所が分かり難いというシーンが幾つか有る。なのでステルスを駆使して「ここだろう」と考えて到達した場所が違っていたという無駄足を踏むのもしばしば。つまり一般的なアクションゲームの様な、どこを通って次に移動するのかを見つけさせるタイプのパズルも含まれており、これはあまり感心しない要素である。そこを通るしかないにしてもその箇所はハッキリとプレイヤーに明示してやって、どうやってそこに到達するのかを考えさせた方が面白いはず。

 三人称の利点として、カメラを回転させて実際のキャラクタの視界外の場所をグルッと観察可能というのがあるが、逆に一人称に比べて普通に進んでいる時に周囲に死角が出来易いという面を持っている。特に上方は見落としがちとなり、例えば監視カメラはつい見逃してしまうケースも出て来る(動作音はしているが)。ぶら下がれるパイプ類も気が付かないことがある。

 プレイヤー側に知らされる範囲外の原因でゲームオーバーになってしまう箇所が幾つか存在しているのは問題。時間制限が有ってそれが明示されるなら問題無いが、そうではなくて失敗した後にそれが分かるといったケース。もしもう間に合わないという地点でQuicksaveしてしまっていると、それ以前のSaveに戻らないとならなくなる。または殺したり気絶させたりしてはならない人物について、やってしまった後にそれが知らされるというのではどうしようも無い。

 特殊なアクションの自由度が低い。例えば股を開いて上方の壁に隠れるという能力だが、これはゲーム全体でも数えるほどしか使う事の出来るシーンは無い。ロープを使ってのアクションも、自分で持っているロープを使ったり出来るのではなく用意されている箇所でしか行う事が出来ない。

 一般的なジャンプ等のアクションはそれが出来るのかどうかの表示が無く、例えばここには掴まってぶら下がれるのかとか、ジャンプして超えられるギャップなのか等が判別し難い。実際にはそれは能力的には出来るはずなのだが、ゲームのプログラムとしてそこでは出来ないとなっている場合には出来なくなる。そこでやってみるまでは判断のしようが無いという意味。

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