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GRAPHICS
 発売当時Xbox最強と言われたグラフィックはPC版でも健在で、ゲーム性から行って決してカラフルでは無いが非常に美しい。特に光と影のコントラストは今までに見た事が無いようなレベルの物を見せてくれる。元になっているのはUnrealエンジンなのだが、それを大幅に改造して使用している。同社のRavenShield等も同様にUnreal Engineだが、そちらとはまた製作チームが違うので大きく異なった物となっている。
 Unreal Engineには用意されていない三人称視点でのアニメーションを初めとして、完全にオリジナルであるglobal lighting system、またカーテンの様な柔らかいオブジェクトの変形や光の反射を表現するSoft Body Physics等が組み込まれている。描画はXbox版同様にVertex & Pixel Shadersを全面的に使用しており、基本的にはこれらに対応したカードを使って欲しいとの事。ただしGF2やMX系の未対応カードでも、起動時にパフォーマンスを自動検出して出来るだけ同様の表現が出来るような専用描画システムも用意している。
 ただしその関係でEditor関連はユーザーMapやModを重要視するRSとは異なって完全に独自の物となっており、一般的なユーザーが数ヶ月勉強した程度で使えるようなレベルでは無いという話(元のUnreal EDとは似ても似つかないらしい)。それ故発売後にMap及びMod系のツールはリリースされていない。

 グラフィックは非常に綺麗で、暗い部屋でPCのディスプレイといった細い明かりだけで照らされている状態の表現なんかは相当な物。HDR効果も採用されており、炎の明るさがリアルである。影については若干のジャギーが見受けられるものの、光源位置による伸び方や投影のされ方が非常にリアルに感じられる。動いている物の影がちゃんとその様に表示されるし、ライトを撃って揺らすと光源が動いて影も揺れる所まで再現されている。周囲のオブジェクトの格子模様の影までが自分や他のキャラクタに投影されるようになっており、自分自身に自分の体の影が映り込むSelf Shadowも行われている。これまでの影描画とは全くの別次元という印象で、Domm 3と同じく新世代のエンジンと考えて良いだろう。
 ただゲーム性との関連で仕方の無い面も有るのだが、場所によっては不自然に暗いという箇所も存在している。(人が普通に仕事をしているのに何でこんなに暗いのかとか、警備しているなら何故こんなに暗い場所を多くしておくのか等)。これはShadow Bufferという描画方法との関連性もあるようである。

 三人称視点でのSamのアニメーションは非常に滑らかで多彩であり、これもまた特筆すべき点だろう。多彩なアクションが可能になっているがそれぞれが細かく作り込まれている。これはモーションキャプチャーではなく全て手書きによるもの。

 負荷としてはかなり重い感じのゲームで、それほどfpsを稼げる物では無さそうである。特に先に挙げたVertex & Pixel Shaders未対応カードではかなり落ち込む個所が有るようだ。非常にスピーディーに動き回ったりとか、大量の敵が画面上に登場すると言ったケースはあまり無いと思われるので、その分重くてもOKという考えなのだろう。

追記:上記は発売当時の頃の感想をベースにしたものであり、既に3年以上が経過した現在ではそれ程のインパクトは無くなっている。Textureの精度や、NPCキャラクタのモデリング、ポリゴン数の少なさ等が目に付いてしまう。負荷としても既に重いゲームとは言えない。しかしそれでも現在の平均的な作品に比べて負けていない面も持っており見るべき点は多い。なお掲載しているSSは2003年当時にShadow Buffer Modeでプレイした時の物を使用している。

SHADOW
 ここでは影の生成に関しての解説を行う。SCでは3種類の影の描画モードを持っており、これはデフォルトでは自動的に認識される。

*Class 2 Graphic Adaptors: Shadow Buffer
 Geforce 3以降のNvidia製ビデオカードでの描画モード

*Class 1 Graphic Adaptors: Shadow Projector
 R2xx/R3xx/Parhelia/Xabre 200/Xabre 400/Xabre 600クラスのビデオカードにおける描画モード

*Class 0 Graphic Adaptors: Shadow Projector
 R1xx/NV1x chipsレベルの最も精度の低い描画モード

 上記を見ても分かるように、最も高度な影の描画モードとなるShadow BufferNvidia製ビデオカード専用のモードとなっている。その理由はゲームの製作時点ではXbox専用のタイトルとなる予定だったので、Xboxのビデオチップ(Nvidia製)に描画エンジンが最適化されており、PC用に全てを一から製作しなおした新エンジンを用意するのは制作期間とコストの両面からして難しいとなったからである。

 しかしその後問題が発生する事になる。それはNvidiaが当時のDetonatorから新しいタイプのドライバとなるForcewareへとシフトした際に、新しい影描画方式の組み込みと共にこのShadow Buffer Modeが機能しなくなってしまったという点である。Nvidia側からしたら一つの特殊な描画エンジンのゲームの為に設計自体を見直すという訳には行かないし、Ubisoftとしては新たにエンジンを作り直す余裕も無い。と言う事でこの件は現在に到るまで放置状態であり、その為に必要環境の項に書いたような「Nvidia製のカードを使っていて影が一切描画されない」というトラブルが起きる事になる。これはNvidiaのビデオチップを採用しているのを認識してShadow Buffer Modeに自動設定するが、現在のForcewareではこれに対応出来ないので影が描画されないというのが原因。見分け方としてはV1.2以上にてVideoの設定内に"Shadow Detail"の設定が有ればProjectorで、Shadow Bufferと認識されていればこの項目は出て来ない。Nvidiaのカードで強制的にProjector Modeに切り替える方法は必要環境の項を参照。

 もし現在Shadow Buffer Modeを使おうとするならばDetonatorの最終バージョンを持って来るしかないが、既に結構前のビデオカードからForcewareしかサポートされていない、影描画が上手く行ったとしてもその他の描画や機能がおかしくなったりする可能性がある、ドライバ構造が大きく異なっているのでドライバのアンインストール・再インストールの際にレジストリにゴミが残らないように慎重にしないと別のトラブルが生じてしまう可能性もある、といった具合なので自己責任でお願いしたい。


 以下は具体的な比較画像でShadow Buffer(SB)とShadow Projector(SP)の影描画の比較を行う。なお両者はライティングの方式自体が異なるので、同じ場所なのにライトメーターの値が異なるという場所も有って、ゲーム性自体にも影響を与えている。

◎比較画像(上から1−5番まで)

比較画像1
比較画像2
比較画像3
比較画像4
比較画像5

[画像1] 両者はライティングのやり方が異なっており、その見え方の違いについて。上のSSは車のライトの前に立った時のもので、SBでは2つのライトからの光が独立して処理されており2つの影が描画されている。SPでは光が一つとして扱われており、影は足元から伸びる様な形になっている。
 下のSSは同じ場所で撮影した物で、別にSB側のライトが消えている訳ではない。この場所ではSPだとライトが揺れて光の束が広がっている様な表現方法になっており、影も揺れて動くようになっている。この辺の表現の違いは好みになるが、開発側もSBの方がリアリティが出せるけれど、全ての面でSPに対して勝っている訳ではないとしている。


[画像2] セルフシャドウの有無比較。同じ場所でのSSだが、SBではゴーグルや頭部の影がSam自身に映り込んでいるのが分かる。更にSPでは影の描画が単純化されており、下のSSを見ると影になる箇所は一様に黒くなり、明るい場所は強めに明るくなってしまっている。一方でSBの方はより自然に光が照らしている感じになっている。




[画像3] 上のSSは全く同じ場所であり、SBの方は左側にライトが点いている訳ではない。SBでは明るい所は非常に明るくなるという感じで、明暗のコントラストがハッキリとしている。またライト・メーターを見ると両者では同じ場所にも関わらず大きく値が異なっているのが分かる(必ずしも常にSBの方が明るくなる訳ではない)。それとSBではSamの体にブラインドの模様までもが投射されているが、これはほとんどの場合SPでは省略されてしまう。
 下SSも同じ場所だが、SBでは網目の模様までが影として描画されている。SPでは床には描画されているが、左側のオブジェクトやSamの体には処理が行われていない。


[画像4] 上のSSにてSPではかなり影が簡素化されており、上方からの光源が省略されているように見える。SBの方が光源の数が多い箇所が有るようで、またその場合光源の方向の処理も異なっている事が有る(影の出来る向きが両者で異なる)。
 下のSSでは光の当たる範囲や強さが異なっており、後方の机類の影がSPでは省略されてしまっているのが分かる。




[画像5] 最後にやや大き目の比較SS。SPには無くSBの方では処理されている物としては、
・網目の影がSamと敵の双方に投影されている
・背負った敵の影がSam自身に落ち、またSamの頭部と体の影も背負った敵の体に描画されている
・背景への影の投影がちゃんと行われている
・Samの鼻の影がセルフ・シャドウとして描画されている
・(少々分かり難いが)敵の体を掴んだSamの掌の影までもが敵の体に描画されている


 



SOUND
 ステルス物では音の位置は重要なのだが、EAX Advancedに対応しているにも関わらずそれ程出来は良くない。ちゃんと4SPでは音は後方定位もするのだが、サウンドのデザインとして効果音としては足音系の音が小さくなっており、敵の移動を知るにはちょっと不満が残る。実際にゲーム中のプレイはほとんどライトメーターに頼りっきりであり、サウンドがゲーム性に活かされていないという印象。ボイスやサウンド等を別々に設定可能なのは良い点。
 また三人称なので実際の音の出所が感覚とは異なるので戸惑う面も有り。音の出る場所はSamの絶対位置に対してなので、Samの背後を通るNPCが画面上では自分の前を通って移動する場合にも足音は背後から流れるし、Samの向きに対しては変化しないので右(左)を向いている状態のSamの背後を通る際でもサウンドは背後からになる。

 BGMは環境音の様な感じであまり普段は目立たないし、曲も同じ物が繰り返し使用されており種類が少ない。敵が警戒態勢に入った時には派手な曲が流れて状況を把握する事が出来るようにはなっている。

 Samの声は渋くて雰囲気が出ており、キャラクタの造形ともマッチしていて適任と感じさせる。

INTERFACE
 英語の量は結構多い方で、クリアするのに必要な分量はそれ程ではないが、ストーリーの背景を詳しく知ったりするのに登場する文書類の量は多い。それと字幕が出るのは重要な箇所となる一部だけで、ムービーのシーンや会話シーンでは普通字幕表示は出ない。

 メール等の内容を記したData Stickが結構手に入るのだが、新しい物ほど下に追加されて行くので多くなってくると読みにくくなってくる。またマップが提供されるミッションも有るのだが、これは簡略化されており分かりにくい。
 一方でメール内に暗証番号が記載されているようなケースでは自動的にNotesにそれが記載されていくのは親切な機能。Gadgetの使い方がビデオで見られるというのも面白い。

 次のオブジェクトがしつこく下にスクロールして出てくるのはちょっと目障りな点(しかも表示が大きい)。

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