GAMEPLAY |
まずはこのゲームの持つテイストについて誤解の無いように触れておこう。メインのテーマとなっているのはユーモアであり、主にムービーのシーンではギャグの要素が強い。FPSの中ではNo One Lives Forever(1の方)に感じは似ており、当時のほのぼのとしたサントラも相まって全体的にのどかなイメージを持ったゲームである。ダーク&シリアスな雰囲気はまるで無く、残虐度という点においては低いと言うよりも皆無と言うのが適当だろう。確かに脳を喰ったりするシーンは出てくるし、腕やら頭部やらがもげたりとか、上半身だけで這い回って付いて来るゾンビとかの表現もある。しかしそういった要素はこのゲームにおいては既に”ゾンビ物作品としての記号”としてしか機能しておらず、残虐さは全く感じられない。一応Matureのレーティングを受けてはいるが、描画的に残酷さを思わせるような感じも無い。よってそういった残虐さを求める人には的外れのゲームである。 ボリューム的には短くて8-10時間程度。ただ早い人だと5時間で終わってしまうという声も有って、自分はプレイが早い方という自覚が有る人だと、一回のプレイでクリアまで行ってしまう可能性もあり、その辺はゲームの価格との絡みもあるが問題になる所かも知れない。また成績表示が無く、アンロック要素もほとんど無く、Stubbsが拾えるアイテム類が存在しないのでシークレットも作れない為に、必然的にリプレイ性は薄くなっている。 ゲームのタイプとしては世界観やシステムのユニークさで魅せる雰囲気ゲーの色が強く、その奇妙な味わいとユニークなプレイ感覚をどこまで気に入るかがポイントとなるだろう。背景設定やシステムは在り来たりだが、アクションその物の面白さが魅力というゲームとは対極に位置している。 まずは最も基本的な戦闘方法について。Stubbs自身は敵の武器を奪って使ったりが出来ないので、肉体を使っての直接的な攻撃方法としては近付いて打撃を加えるしかない。その攻撃方法も単にボタンをクリックするだけとシンプルである。そして移動速度が速く無いので、敵に近付く前に撃たれてしまうしその銃弾を避けられる訳でもない。よって集団相手に一人で近付いても集中砲火を浴びる形になってこれは上手くない。 そこで徐々に倒してゾンビ化した仲間を増やしつつ迫って行くというのが基本パターンとなる。ゾンビに注意が向いて自分への注意や攻撃が逸れるようになるし、盾にして銃弾を防ぎながら迫る事も出来る様になる。更に倒された敵が次々にゾンビと化すので、倒されて減った分が補充される形にもなり一定数の軍団を保つ事も可能になる。ただし狭い場所や区切りとなる箇所では一緒に連れて行けなくなるケースも有るのだが。 Stubbsの持つ特殊攻撃にはエネルギーが必要であり、その意味では単純に倒すだけではなく出来るだけ相手の脳を喰うというのを狙って行かないとならない。一般人以外はいきなり正面からは喰い付けないので、数回攻撃して弱った所を止めを刺さずに脳を喰ったり、上手く後ろに回り込むように動いて喰ったりが必要となる。ゾンビ軍団に注意が向いているのを後ろから狙うのも有効な手段。それと条件は定かでは無いが、時々パニックを起した敵が背を向けてコメディ映画の様に「アヒャー」という感じで手足をジタバタとさせて背を向けて逃げ出すのでその時はチャンスとなる。 ただしそれぞれの能力は必殺という程の破壊力は無く、それぞれにデメリットも抱えている。Unholy Flatulenceは攻撃というよりもエネルギー補充狙いの為の能力となり、麻痺した敵の頭を次々に喰うのが目的となる。その為に敵の集団の中心に位置しないと効果が薄く、そこに近付くのが難しいというケースも有り。The Headは最大の破壊力を持ってはいるが、首を千切って投げるまでに時間が掛かる上に狙う敵の集団との間にラインが通っていないとならず、その間敵の前に体を無防備に晒してしまう事になるという危険性を持つ。またこの両者の能力は使うまでに溜めないとならないエネルギー量が多いので、そう頻繁には使用出来ない。 Gut Grenadeは三発まで溜められるので比較的気軽に使えるが、思った場所に投げるのは結構難しい。一切転がらずにどこにでも張り付いてしまうし、あまり飛ばないようにもなっているので安全な遠距離からの投擲は不可能。それと敵は近くに落ちるとダイビングして逃げるようになっているので、それをやられてしまうと効果が薄れてしまう。よって投げた後に自動爆破を待たずタイミングを計ってリモート爆破するというテクニックが重要となるので、その辺のタイミングを掴むまでは練習が必要となってくる。投げたら最も敵に近付いた瞬間で且つダイブされる前のタイミングにて爆破してしまうという意味で、特にジェットパックで空を飛ぶ敵相手にはこの攻撃方法が必須。The Handは特殊な能力なので別の項で詳しく解説するが、憑依するまでの腕で動く状態では壁や天井を這うのが最も見付かりにくいので基本となる為に、視点や動く感覚が慣れないと掴み難いという問題は有り。 それでも難易度的にはゲームの前半は一部の例外を除いては易しくなっており(Normal)、適当に戦っていても進めてしまえる程度。Stubbsは危険になったら下がって隠れてしまえばHPを回復出来るのと、敵の数や攻撃力自体が低いのがその原因。スピード感の無さもあってのんびりした感を受けるゲーム性となっている。 だが後半になるとゲーム性は一変する。強い武器を持った敵の数が増えるので、Stubbs自身が敵に突っ込む時の危険度が増すのは勿論、仲間のゾンビ軍が倒される速度が速くなるので全体の攻撃力が落ちてしまう。一方でStubbs自身の能力には最後まで変化が無いので、直接攻撃では上手い対抗手段が存在しない。一応補助として定期的に弱いNPCが居る箇所が設けられており、そこで脳を喰ってエネルギー補給が行なえるようにされてはいるが、上に書いたようにそもそもエネルギーがフルで全ての能力が使える状態でもそれ程の攻撃力が有る訳ではなく、敵が一箇所に集中して固まっているとかでないと一人で突っ込んで行くのは難しい。そんな中後半戦では仲間無しの状態から広がって配置された敵の集団に挑まないとならなくなるケースもしばしば(例えばマップのスタート時はそういうケースが多くなる)。 Stubbs自身で挑む戦闘では火力が増した分死ぬ可能性も上昇しており、隠れて回復する前にやられてしまうケースも出て来る。ダメージの大きなロケットランチャーによる攻撃や、空を飛ぶジェットパックも相手にするとなると嫌な敵となる。中でも嫌なのはBoomstickと呼ばれる未来兵器で、これはダメージが少ない代わりに相手を弾き飛ばす力を持っており、これを持った敵が相手だと正面からでは近付くのが相当困難になる上に、場所によっては弾かれて落とされてしまってというケースも出て来てストレスになっている。他では敵が無限に湧いて来る場所も存在しているし、或いは地雷の誘爆によって吹っ飛んだりするのも厄介だ。 そこで腕を独立させて標的に憑依してやり、その武器による攻撃を使って敵を倒すという作戦が必要になってくる。ステルスで動いて最も効果的と思われる相手を乗っ取ってから攻撃。例えば高台に居る相手などは防御面で有利なので格好のターゲットになる(The Handは壁を登れる)。もし一回で成功しなかった場合には何とか誰かの頭を喰ってエネルギーを補給し(一人分でThe Handは使用可能になる)、再度隠れてから憑依にチャレンジというスタイル。この様に後半戦は敵の内の誰に憑り付くかというパズルゲーム的な要素が強くなり、Stubbs自身が戦うというケースは減って来る。難易度的にはどんな方法でクリアするかというのが関わって来るようになり、手段を間違えると相当難しくなったりもする。後でWalkthroughを読んで「こんな楽な手が有ったのか」という事も。 ゲーム全体としては、マップはそれ程広いという感じは無く進行ルートも一本道が多い。しかしそこに到達した時のゾンビ軍の数によって状況は変るし、ゾンビもどの相手に襲い掛かるかといった動きがランダムなのでプレイする度に変化は生じるようになっている。Stubbsの戦闘方法自体にも選択肢は多く、腕を使って憑依する場合でもターゲットを選ぶ自由度は存在しており、一応クリアの方法にバラエティさは持っていると言えるレベル。 しかし主人公がゾンビなのであまり出来る行為自体に種類が無いという設定なので、どうしても全体を通じては単調になりがちな点は否めない。前半と後半でゲーム性は変るがそれだけでは十分な変化をもたらしているとは言えず、特にStubbsの特殊能力が前半時点で全て出てしまうので以降は変化が少なくなるというのが問題。もう2,3個特殊攻撃を用意した方が良かったように思う。 印象としては一般的なアクションゲームに比較するとスローペースな感じとなり、ゲームの持つユーモアのせいもあるのだが緊張感が無い。敵は非常に強大な攻撃力や軍勢を持ってはいないのだが、Stubbs自身やその仲間のゾンビ軍団も同様にそれ程の破壊力を持っておらず、低い戦闘力同士の戦いという設定となり、爽快感・豪快さという要素は薄いゲームである。フニャフニャして押しても手応えの無い脱力型ゲームとも言える。 けれどもそのスローぺースな点はゲームのユーモラスな雰囲気と上手くマッチしており、別に悪い要素という訳ではない。ユニークなデザインのゲーム性故に生じてしまう事であって、他には無い独自のプレイ感を持っているという観点からすればそれはプラスとなっている。 ユーモアの要素はなかなか良く出来ており、Stubbsに脳を喰われたり腕を千切られたりする敵の叫び声もオモシロの方向で作られているという印象。敵のコーラス団は歌を歌っていたりするし、Stubbsが死ぬと周囲の敵が踊りだしたりする事もある。ストーリーの進行を解説するムービーシーンもギャグ優先。ちょっと下品な要素も含まれており、ダムを汚染するのに小便をしてやったりという設定も。警察署長とのダンス対決(音ゲー)のミニゲームも傑作で、これを途中で飛ばした方はYouTubeに上手い人の物がアップされているので是非見て欲しい(このミニゲームは任意にスキップ可能)。 |
戦 闘 |
ここでは切り離した手を使ってターゲットに憑依した際の戦闘について言及する。プレイ前の予想ではStubbsでのプレイがスローな分、憑依した際の戦闘を爽快感の高い物にしてやりアクセントを付けるのが狙いと想像していたのだがそれは違っていた。 まずバランス的に仕方の無い点なのだが、とにかく憑依した人間の動きが遅い。動きの遅いStubbsやゾンビ達が充分に戦えるようにするには敵のスピードは落とさないとならず、よってその敵に憑依しても同様に動きは遅くなる。もはや走っていると感じられるような速度ではないし(一応ジャンプは可能)、銃のリロード速度も相当に遅い。そうなると当然戦闘はスピード感の無い物となる。 オープンなスペースで次々に敵を倒して行くのは困難であり、避けようにも動きが遅過ぎて敵が多ければ集中的に攻撃されてすぐに死んでしまう(憑依した相手のHPを回復する手段は無い)。よって隠れられるスペースを見付けてチマチマと一人ずつ削るとか、遠距離(高台が理想)からの地道な攻撃が主体となるゲーム性。 そこまではゲーム性としてまだ許容範囲ではあるのだが、その他にも大きな問題点が幾つも存在している。第一に銃を撃っているという感覚に乏しい。ゲーム全体のサウンドは悪くないのだが、何故か実銃系のサウンドが頼りない「パスッ、パスッ」といった感じの抜けた音になっており(レーザー系はそれなりの音だが)、視覚的にも撃っているという感覚が上手く表現されていない。次に遠距離戦が中心の為に敵が小さくなって見え難い上に、照準は濃くて大きいので(武器によって形状は異なる)、遠くの敵に合わせると敵が見えなくなってしまう事もしばしば(ズーム可能な武器は限られている)。合っているなら赤くなるので判別は可能だが、単に赤いマークが出たらクリックするという作業の様に感じられてしまう。更に三人称の為に、物陰からギリギリ体を出して攻撃する時の照準判定が正確に働かないという問題も有り(照準は赤くなるのだが、実際には撃つと目の前のオブジェクトに当ってしまう)。 中でも一番の問題と感じたのは画面のエフェクトである。乗り移った状態では画面が白飛びした様な感じで周辺に残像風の歪みが入るエフェクトが掛かり、その為に周囲が相当見え難くなる。特に遠距離の敵が判別し難くなるのと、レーザー系の武器を使っている相手に攻撃されると一瞬画面が明るくなって見えなくなってしまう。通常のゲームにおけるBulletTime系のエフェクトが掛かりっ放しの状態で戦闘しているような感じで、見え難くてストレスを覚える。手の状態で動いている時ならともかく、憑依してからはこのエフェクトを軽減してやった方が良かったという印象。憑依している故の制限と言われればそれまでだが、この要素が余計に戦闘の爽快感を奪っているのも確かである。 後は憑依した際に実際に動き出せるまでに暫くの間が有るのも厄介な点。完全に見られていない状態でならば安全に乗っ取れるし、見られてもその範囲の敵を倒せば他には気が付かれないので、後は武器を仕舞えば気付かれずに移動も可能となる。しかしそう上手く憑依可能なケースは少なく、オープンな戦場で誰かに憑依すると大声で叫ぶので周囲に一瞬にして知れ渡ってしまう。そうなると一斉に攻撃を受けるので、ターゲットに憑依が完了してその後立て直す為に物陰まで移動するまでの間に、既に一気にHPを削られた状態になってしまうという事も。 戦闘を爽快にするのが狙いではないとしても、ここまでそれを奪う必要が有ったのかという点については疑問を感じざるを得ない。移動速度の件はバランスとしてしょうがないが、エフェクト等についてはStubbsの時と変化を付ける意味でももっと普通に戦えるようにして欲しかった。 |