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COMBAT
 第一の特徴は武器の種類である。用意されている武器はナイフに始まりFire Axe, Revolver, Dual Revolver, Sub-Machinegun(Tommy Gun), Shotgunと来て...これで終わりである。普通ならこの後Assault Rifle, Heavy Machinegun(Mini gun), Sniper Rifle, Grenade Launcher, Rocket Launcher 等の様な更に強力な武器が加わるか、ピストルやマシンガン系に各種バリエーションで数種類を追加といった感じで増えていく訳だが、このゲームにはそれが無い。実は他にFlamethrowerが存在してはいるのだが、これはシークレットの様な形でマップ内に有る部品を組み合わせないとならず、最後までクリアしても部品を全て見付けられなかったという人も多い。また燃料も少ないのでほとんど使う機会が無いともなっている。

 こうなった理由はリアリティを最重視したというもので、実際に刑務所に暴動鎮圧用に用意されている武器以外は在っては不自然という意味合いからそのようにされている。別に投擲系武器としてFlashbang, TNT, Molotov Coctail, Frag Grenadeが使えるようになってはいるが(武器選択とは別のキーで操作可能)、全体としては武器のバリエーションが少ない上に地味という感は否めない。ちなみに続編TTBではプレイヤーからのフィードバックを重視したのか、上記の様な強力で多彩な武器が使えるように変化している。


 戦闘の感覚はかなり独特であり、これは2つの理由による。一つは敵が堅い、或いは武器にパンチ力が無い。これには上で書いたように破壊力のある武器が無いのも影響している。リボルバーの攻撃では威力が無いのは勿論の事、近距離からのショットガン攻撃でさえも何発か打ち込まないと大抵の敵は倒せないし、特定の武器でしかダメージを与えられない相手も存在している。サバイバル・ホラーでは人間側が弱いという演出の為に敵が中々倒せないというバランスにされている物は多いが、このゲームもバランス的にはその類に含まれる。

 ただし入手可能な弾数は結構多いし、ヘルスは9個まで携帯可能で何時でも適用出来るので、こちらが弱くて逃げ回る必要があるというゲーム性では無い。タフな敵が避け難くて強力な攻撃を行ってくるなら難易度は高くなるが、敵は攻撃を仕掛けるまでに間があったり、知能が低い為に意味もなく途中で休んだりするので(こちらが危険という時に突然別方向へ動いたり休んだりしてHP復旧の間を許したりする)、それ程シビアに攻撃を避け続けないとならないゲームでも無い。つまり多くの弾数を撃ち込まないとならないので倒すのに時間は掛かるが、それ程難易度としては高くないという変ったバランスである。難しいのは数箇所の特定のポイントと、倒す為の方法を見付けないとならない謎解きに関連した箇所のみになる。

 また敵はまとまって出現する事が多いのでそれをどうやって上手く捌くかや、種類が混在した敵相手に同士討ち狙いを含めてどういう風に戦うか、地形をどう利用するかといった点に頭を使うゲームでもある。倒すまでに掛かる時間と弾薬の消費を考えると、相手をせずに逃げるという手段が有効な場合もあるので、常にハイテンションの戦闘が続くというゲームでも無い。


 次に敵の造形や性質が非常にユニーク。それぞれの敵は絞首刑・薬殺・銃殺といった処刑で死んで行った人々の怨念が蘇ったという設定になっており、デザインも変っていれば動きも変っている。基本的に怨念という事から知能といった物は持っておらず動きは原始的。とにかく休む間も無くこちらに向かって来るという敵はおらず、何もせず立ち止まってみたりと明らかに不利と考えられるような行動もしてくる。その攻撃は嫌らしい&厄介といった表現が適当で、これは別に問題点という意味合いではないが、イライラさせられる敵が多いという風にも言い替えられる。このゲーム位「もう戦いたくない」と感じさせる嫌な敵が揃っているゲームも珍しい。

 基本的にずっと死ぬまで攻撃してくる敵はおらず、途中で一時的に逃げたり消えたりしてしまう奴が多いので、一気に短時間で片をつける事が出来ない。個別の特徴としては、Slayerは天井を這い回ったりして不規則に動き回る上に数が多いので、特定の物を倒す前に他のが来て戦闘になったりがよく発生し、更に一々倒れて死んだかと思うと起き上がって来るので面倒でもある。Burrowerは地中を這い進んで攻撃時に姿を現すのだが、その瞬間に攻撃しようと待っていると延々と自分の周りを這い回って姿を現さなかったりする。ではと諦めて放っておいて先に進むと、突然不意を突いて現れたりといった具合。Noosemanは天井に有る血溜まりから出現してプレイヤーを吊り上げるのだが、三人称故に上方が見難いので気が付かないうちに突然攻撃されたりする。Festerは特定の攻撃以外は受け付けない上に、死んだ後に体内から大量の爆発ネズミが湧き出て襲って来るので大変に厄介(ある種の攻撃方法が有効ではあるのだが)。ゲーム中最強とも言えるInfernaは倒した後にすぐ死体を破壊しないと蘇ってしまうので、完全に倒すのには忙しく動かないとならないとこれまた面倒。

 中でも最悪の敵はMainlinerで、基本的に水分の有る場所から集団で湧き出て来て、毒の攻撃や飛びついての注射器攻撃を仕掛けて来る。ダメージを与えると水中に隠れて別の場所から出て来たりするので一体倒すのにも時間が掛かる為、周囲を囲まれると困った事になる。更に死んだ後にはしばらく残る毒霧を残すので、誤って他の相手と戦闘中に移動した際にその中に踏み込んでしまい大ダメージを受けたりもしてしまう。

 念の為書いておくが私自身はこの嫌らしい性質の敵を否定するつもりは無い。プレイヤーが非常に嫌がる敵というのは、ことホラー物においてはある意味では最も理想的な敵でもあるからだ。一応難易度ノーマルにおいては、個性的な敵が多いとしてむしろ良い方に数えている。しかし強力なダメージを与えて早急にケリを付けられる武器も無ければ、敵は戦闘中に逃げたり消えたりで再度攻撃するまで待っていないとならなかったりが頻繁に発生するので、アクション物にスピード感や爽快感を求める方にはこのゲームはあまりお勧めが出来ないとも言える。


 ダメージ系では炎や爆破のダメージが高い部類で、また毒も含めたこういったダメージは一度ヘルス値が大きく下がってから徐々に元に戻るというシステムになっている(実際に入るダメージ量はそれ程高くない)。なのでヘルス値が低い時には最初に一旦下がった時点で死んでしまうというケースも。それと敵の特殊攻撃の中には一定時間Torqueが倒れてしまって動けなくなるタイプが有るのだが、敵のAIにグループ行動という概念が無い為に、大量に現れた際に連続で倒されて反撃出来ない状態にハマってしまう事もある(敵の動きはパターン化されていないので、ロードし直せば回避出来たりはする)。

 攻撃が当たっているのは血が噴出したり部位が吹き飛んだりするのでビジュアル的にも分かり易いし、手応えも感じられる出来である。ハッキリしない点としては照準の色変化が起きるが、赤に変るのがコンソールでのロックオンの印でありその時には大きなダメージが与えられるのか、それとも照準が白い状態であっても敵に掛かっていれば同じ様に当たる事になるのかどうかがハッキリしない。なおTorqueは戦闘中に血塗れになって行くが、これは時間と共に消えて行くしゲーム性には影響を及ぼさない。

問  題  点
 Insanity Modeの使い勝手が悪い、またそもそも必要性が薄いというのが目に付く大きな問題点。これについては開発サイドも認めており、「幅広い層にアピールする為に弾薬数を増やしたり敵をそれ程強くしないようにしたので、結果的に難易度Mediumでは易しくなってしまいInsanityを使う意味が薄くなってしまった」とコメントしている。実にその通りで難易度的にInsanity Modeが使いたいと感じさせる程の場面はあまりない。

 そしてこの能力の有用性自体にも疑問符が付く。最大の問題は耐久力が通常モードと変らないという点。しかも変身すると戦闘中にメディキットの適用が出来なくなるというデメリットも抱えている為、むしろ普段の状態よりも危険になってしまうという困った設定になっている。それでも攻撃能力が高いのならば使う価値も出て来るのだが、近距離戦では高い破壊力を誇ってはいるものの、射程外から炎を放って来る敵や毒を吐く敵には普段と同じくダメージを受けてしまうので、結果的に限定された敵以外には役に立たない。また地面を叩くショックウェーブ以外に遠距離攻撃を持たないので、遠くから攻撃してくる敵に対しても弱くなっている。更に仲間がいると近距離では直接攻撃が誤って当たってしまう可能性がある上に、遠距離ではショックウェーブがFFになってしまうので使えなくなる為、Goodを目指すとなると使い所がより少なくなる。Evilを目指しているのならば、早期に積極的に使ってレベルを上げればショックウェーブ攻撃を多用して一応使えるようにはなるのだが、この場合でも普通に戦うのに比較して特別パワーアップしたという感じでもない。結局は遠距離でも武器攻撃が可能で、戦いながらメディキットを適用可能なTorqueで戦っていた方が安全という結論になってしまう。

 なお設定として「人間である彼がモンスターに変身するというのはどういう意味なのか?」というのも、当然の疑問として出て来る点だろう。これについてはゲーム中にその説明が出て来るのでネタバレとしてここには書かないが、それでもこのモンスターへの変身に関わる件についてはクリア後でも謎が多い。実はこの変身という要素はゲームの製作途中にて、戦闘にアクセントを付ける意味合いで一種のスーパーパワーアップとして付け加えられた物であり、最初から計画されていた要素ではなかった。それ故にゲームの背景やストーリーとは整合性が取れなくなってしまったという話であり、つまり「上手く説明が付けられないので、謎のまま残すという風にしてしまって取りあえずはお茶を濁す」という事にされてしまった要素である(こういうゲームは結構有るので特にこのゲームを非難する気にはならないが)。その反省を踏まえて続編TTBにおいては、この変身という要素はゲームのストーリーの根幹に関わって来るような位置に置かれて、ゲームプレイ上でも非常に重要でより複雑な機能として組み込まれるまでに変わっている。


 Mediumだと標準的という感じの難易度を上げるにはHard以上にすれば良いのだが、これには大きな問題あり。開発側はMediumで遊ぶプレイヤーが沢山居て余計にInsanityの出番が減ってしまったと嘆いていたが、それ以前にHardはバランス的におかしな事になってしまっている。ただでさえタフな敵が倍加してタフになっており、撃っても撃っても死んでくれないので弾が足りなくなる傾向にある。Shotgunを8発撃ち込まないと死なない敵が5匹同時に現れたりではバランスが破綻しているとしか言いようが無い。

 あまりのバランス設定にリプレイは途中で止めてしまったが、おそらくHardだと徹底的に脇道等を探し回って弾薬を全て集め回る事が必要で、それでも足りないのでナイフや斧での攻撃をマスターして弾数の節約をしないとならないと思われる。またInsanityでも戦える所は積極的にそれを使わないとならないだろう。


 TNT等の投擲系武器は置かれている状態で当り判定を持っており、例えばその近辺に持っている爆発物を投げてやると連鎖爆破を起すようになっている。時にはこれを利用する事も出来るが、全般的には爆発したらそれが拾えなくなるのでマイナス面の方が大きい。塞がれている場所の傍に爆発物が有る場合にはそれを撃って爆破し障害物を壊すというのが定番だが、このゲームではその先に(部屋の中に)有った投擲系武器までも爆発してしまう。かと言ってナイフで障害物を壊そうとした場合、当たり判定が有るのでナイフが背後のアイテムに触れてしまって爆発し、プレイヤーが死んでしまうという事になったりと問題あり。


*キャラのハマリがあって最悪の場合には抜け出せなくなる事がある。また幾つかの箇所にて敵を全て倒しておかないとイベントが起きなかったり、純粋にバグで進めなくなったりもある模様。

*ほとんどの場合には空なのだが、箱の中にアイテムが有るケースも。よってアイテム探しをするのならば、逐一低い確率しか持たない箱を壊して回らないとならなくなる。

*インベントリー表示がバグなのか変で、Weapon Cycleで選択しても特定の武器が抜けてしまったりが時々起きる。

*USEすべきオブジェクトの前で、その表示が出る位置が微妙だったりする事がある(見逃しにつながる)。

GRAPHICS
 自社開発のRiot Engineを使用。元々はコンソール用に製作されたゲームであり、特にPC用に力を入れて移植されたとは思えないのだが、それにしてはグラフィックスのクオリティは同時代の比較としては中々のレベルである。しかし2004年はDoom 3, Half-Life 2, Far Cryといったグラフィックスの水準が大きく変化した年でもあり、その意味で当時は比較面で不利だったというのはあると思う。また暗い場所が多いというのも綺麗さが少ないという印象につながっている。

 テクスチャーのクオリティは元々コンソール用なので特に良くはないが、単なる移植物にありがちなこれはちょっと酷いなと思わせるような箇所はあまり存在していない。なお設定に[Detail Texture]は存在しているのだが、グレーアウトになっていて選択出来ない。おそらく性能の低いビデオカードを使用している場合には、ON/OFFが可能になるという事ではないかという話になっている(通常はON固定の意味)。

 エフェクト系ではブラーエフェクトが良く出来ており、ライティングはDoom 3に比べれば単純な処理のはずだが、影の描画もちゃんと行われているし、ライティングによるゲーム内の雰囲気描写も悪くない。武器のエフェクトも派手目。一方でBlood系は乾き切った赤という感じの描写で、流体的なリアルさが無く地味な印象。Torqueが血で染まって行くという表現は良いと思うのだが。グラフィックスの質自体は悪くないけれども、グロテスクさや恐怖感の演出についてはイメージ的にはあまり成功していないという印象である。

 特に良く出来ているのがモンスターのアニメーションと造形。これはStan Winston Studiosが担当しているそうで(映画Terminator, The Predator, Aliens, Jurassic Park等を担当)、非常にユニーク且つ変化に飛んだアニメーションを見せてくれる。主人公Torqueのデザインも良い出来だ。

 ワイドスクリーンには未対応。4:3以外には1280*1024(5:4)を持っている。設定可能項目は3つと少ない。アンチエイリアスは起動前のランチャーからのみ指定出来る。

SOUND
 サウンドはEAXに対応しており、4SPでは後方定位感も良好。後ろで突然音がしたりといった演出も効果的である。静かな廊下に裸足でペタペタと走り回る音響も良い雰囲気を出している。

 BGMは普段は無くて特定の場所で鳴るのみ。それと突然鳴って驚かすタイプのサウンドが多いのだが、これはちょっと繰り返されると逆効果という印象。

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