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GAMEPLAY
 全部で18章で構成されておりこの数自体は前作と大して変らないのだが、短い章が増えておりプレイ時間は10-12時間程度とかなり短くなっている。これはマルチスタート&エンディングによるリプレイ性を考えての事だろう。

 ゲーム全体から受ける印象(世界観)は前作に非常に似ているが、そのゲーム性には大きな変化が見られる。まず前作では特徴の一つとなっていた謎解き要素はバッサリとカットされており、ノーヒントでは進めるのが困難だったのに比べると詰まる様な箇所は少なくなっている。また不気味な刑務所から替わって今回は一般的な都市を舞台にしているので、雰囲気的にホラー要素も後退している。前作をプレイしているとモンスターによる恐怖感というのも慣れで減退しているので余計にそう感じられてしまう。ヤク中がうろついていたりとか、バラバラ死体が転がっていたりといった要素が含まれてはいるが、怖さを感じるような類のゲームではなくその辺を求める人には物足りないと思われる。

 よってゲームはアクション中心、即ち戦闘に的を絞ったゲーム性になっている。その戦闘も激化傾向にあり、一般的なアクション物とはちょっと構成が異なっている。普通アクションゲームではある程度の間隔を置いて山場を設けてやり、そこでは「戦闘の直前に回復薬と弾薬が大量に手に入る」→「生きるか死ぬかの激しい戦闘が発生」→「終了後には多数の回復薬や弾薬が用意されている」というパターンが多い。

 TTBではこういったパターンが間隔を置いてやって来るのではなく、ゲーム全体を通じてこの様な箇所が続くという構成になっている。つまりあるエリアにて、ヘルス&弾薬の回復→大量の敵との激しい戦闘→弾薬とヘルスがMaxまで回復、という戦闘が行われた後、そのすぐ次のエリアでも同じ様な生きるか死ぬかの激戦が繰り返されるという形になっており、全体の半分程度はこのパターンである。この四方八方から倒しても倒しても次々に敵がスポーンして来る激戦が連続する構成を高いアクション性として評価するか、山と谷の強弱の変化に欠ける単調な構成と取るかは微妙な所である。


 戦闘時の操作性については前と同じく一人称と三人称の切り替えが自由に可能であるが、やはり三人称での戦闘が基本というデザインであり、前作よりもマシにはなったとは感じるが、FPSでのプレイには違和感と言うかやり難さが感じられる。それとこれは感じ方に個人差があると思うが、カメラの視点がよりTorqueの近く&低くへと寄った位置になっており、個人的には戦い難さを感じてマイナス点。更に後方に下がって壁を背にした時にTorque自身と敵が重なってしまう件や、その背面視点への切り替えタイミングが早いので狭い部屋に入ると極度に周囲が観察し難くなるというのもストレスを感じた箇所である。

 操作には屈みが追加されて敵の弾を障害物に隠れてかわし易くはなっているが、同時に左右への高速ローリングは屈みからで無いと出せなくなり、それには屈み + ジャンプ + 左右移動を組み合わせないとならず、屈み操作がToggle式ではないので激しい戦闘中は相当やり難い操作となってしまっている(パッドならボタン同時押しなので問題無いと思うのだが)。よってローリングは自分に点いた火を消す時位しか使わないという感じである。

 撃っている, 当っているという感覚については、武器のエフェクトや音が水準以上なのと、敵のモンスターは体の一部が吹き飛んだり当った時のリアクションが派手なのでハッキリと分かるようになっており爽快感が高い。


 前作では敵が非常に固いという設定であり、Shotgunを近距離から3,4発は撃ち込んでやらないとならない敵がウジャウジャと湧いて来るという様なデザインだったが、今回は武器の破壊力がアップしておりShotgun一発で倒せるというケースも増えた為に爽快感は増している。だが耐久力の高い敵も増えている上に数も多くなっているので簡単になったという訳ではなく、むしろ戦闘の難易度はアップしている

 まずは武器の所持制限の影響が大きく、どんな武器であっても2種類しか同時に持ち運ぶ事が出来ない。よってどこで何が手に入るのか分からない初回プレイでは弾の少ない破壊力が高い武器を持ち運ぶのはギャンブルとなり、どうしてもショットガンとサブマシンガンという無難な構成になりがちで、そうなると強い敵相手には効果が薄くなる。

 中でも最も難易度に大きな影響を与えているのはメディキットの携帯が不可になった点である。前作では9個まで所持可能でそれなりに数も有った為に、戦闘中に危なくなったら在庫を適用という風にすれば良かったのでそれ程難易度が高くはなかった。しかしTTBでは置いてある物の近くに寄って適用するという一般的な方式になったので、戦闘中に危なくなっても置いてある場所に行って回復するしか無くなっている。一応隠れてじっとしていればある程度までは自動回復するようになってはいるものの、敵が多い場合にはどうにも反撃が難しくなってしまうというのは確かだ。また今回は銃器を持った兵士との戦闘シーンが各所に追加されており、近距離での直接攻撃を持つモンスター戦中心だった前回とは異なり、どうしてもオープンな場所での撃ち合いではある程度のダメージを受けてしまうというのも厄介な点となっている。

 モンスターはTTBではMalefactorsという呼称となっており、Slayer, Arsonist, Mainliner, Marksman等ほぼ前作のラインアップを踏襲している。新たなタイプは4,5匹となり(ボスを除く)、どれもユニークな物となっているのに変りは無い。


INSANITY
 詳しくは前作のThe Sufferingのレビューを読んで貰いたいのだが、Torqueがモンスターに変身するという一種のパワーアップ能力は、前作に於いては上手く機能していなかった。そもそもMediumの難易度ではその力を借りるまでもないという程度のバランスであり、また変身した場合のデメリットも多くて限定された敵相手にしか有効ではないというのも大きな問題となっていたのである。これには製作途中で組み込んだ能力なので整合性が取れなかったというのも大きかった。

 しかし製作サイドではこの変身能力自体には大きな魅力と可能性を感じており、次作となるこのTTBに於いてはそのパワーアップ能力をゲーム性の中心に持って来て、他の全ての構成要素をそれに合わせて製作するという方針転換を行っている。その辺の基本的な変化については既にシステムの解説項に記載しているので、ここでは具体的な戦闘面での変化について書いてみよう。

1.変身時の攻撃力が大幅にアップし、レベルが上がれば強力な遠隔攻撃も可能になっている
2.変身時には被ダメージへの耐久力が高くなる
3.徐々にではあるがヘルス値が回復する

 以上が前作よりもInsanity Modeを使い易くなった理由となる。前作ではダメージへの耐久性が変身前と同じだったので、むしろ戦闘中にメディキットを適用出来なくなる分だけ死に易くなるという問題があったが、今回はTorqueの状態でも適用が出来ないという変更もあって変身は大きな意味のあるものとなった。


 TTBでのゲーム性の最も大きな変更点は戦闘のコアな部分にあり、それにはこのInsanity Modeが関わっている。このゲームをどう評価するのかも、そのゲーム性の違いをどう受け止めるのかに掛かっていると言っても過言ではない。上記の様にInsanityをパワーアップとして使うのは有用となっており、プレイヤーが使い易くなったのは改善された点と言って良い。これを単なるパワーアップ能力として組み込んだのならばTTBは一般的なアクションゲームの範囲に留まっていたのだが、製作チームが採用したのはそれよりも更に上の選択だった。彼等の選んだのは必ずInsanity Modeを使わないとならないというゲーム性であり、これがTTBの根幹を成している要素となっている。

 これはどういう事なのかと言うと、第一にシンプルな理由としてInsanity Modeでないと倒せない敵が存在しており、またそれが頻繁に登場するようになっている。彼等は同種のMalefactorsの亜種として存在し、見た目的には銀色で周囲の空気が歪んだように見えるのですぐに区別は付けられる。ただしTorqueが変身するには敵を倒してメーターを貯めないとならないので、常にそれを可能にする為にこのタイプはノーマル系の仲間を無限に召還する様になっており、変身不能ならばそれらを倒してエネルギーを貯めてから変身し、本元を倒すというデザインになっている。

 第二に武器を使って戦っていたのでは到底弾薬が足りないというバランスになっている。持っている武器2個の弾を全て撃ち尽くしても倒し切れないほどの敵が出現したりするので、必然的にInsanity Modeを使って相対しないとならない。第三に周囲を敵に囲まれたりした際など普通に撃ち合っていたのでは無理なケースもあるので、そうなると変身してSpecial Attackを使い同時に多数の敵を倒す様にしないと乗り切れなくなる。

 よってゲーム性としては、如何にして変身の為のエネルギーを貯めて、それをどのタイミングで使うのかというタクティカルな要素が重要視されている。変身した状態の間にターゲットの敵を倒し損ねてしまうと、再度貯めるまでには他の敵をTorqueの状態で倒さないとならないので難しくなるし、逆にスタートから貯めるのを急ぎ過ぎて焦って無理してしまうと変身前に死んでしまったりする可能性が高くなる。また貯まったからといってすぐに変身したのでは肝心の強敵の前にエネルギーが切れてしまうかも知れないので、それまではフルの状態でも我慢して耐えるという事も必要になる。


 一応断っておくと“強制”という言葉には悪いイメージがあるが、これは必ずしも悪い意味ではない。例えばMax Payneは実質Bullet Timeという特殊能力無しではクリア出来ないようなバランスとなっており、つまりBTを使う事をプレイヤーに強制するゲームデザインになるが、BT自体が面白いのでそれはマイナスとはなっていない。要はそのパワーアップが面白いのかや、どれだけ上手くゲームに組み込まれているかがポイントであって、強制する事自体には問題は無い。よって判定は純粋に「Insanity Modeを使わないとならない」というデザインが上手く行っているのかどうかになるのだが、残念ながらこの点についてはマイナス面も大きいのが実際である。

 その理由としてはまず武器で戦闘を乗り切るという自由度が無いというのが挙げられる。必ずInsanity Modeを使わせるというデザイン上、武器は2種類しか持てないし最大弾薬数も少ない。これは当然で強力な武器を多数所持出来るのならば、Insanity Modeの助けを借りないでプレイしようと考えるプレイヤーが増えてしまうからである。確かに武器を使って敵を倒す爽快感は持っているが、あくまでも武器での戦闘はInsanity Modeに比べると低い位置に置かれており、エネルギーを貯める為の補助的な役割という印象を拭えない。そしてその制限から持っている様々な武器を切り替えて戦えるという楽しさが減少している。

 続いてInsanity Modeでの打撃攻撃が単調なのも欠点。攻撃方法は2種類しかないので変化に乏しく、単純に敵に接近してマウスボタンを連打するという形に終始してしまいがちである。今回は変身シーンが頻繁に出て来るので、その意味でその攻撃方法に飽き易いという面も当然出て来る。攻撃時にスローモーションになったり、連打で回転攻撃をしたりといった面は爽快感を感じさせるが、最後までそれで持たせるにはバリエーション不足。付け加えると周囲に火薬缶が多いので誤って叩いて爆死が多いのも難点。

 そしてスペシャルアタックにも問題が感じられる。これは確かに周囲の敵を同時攻撃して非常に効果的ではあるのだが、その攻撃方法は自動なのでシューティングゲームとしては面白味が無い。能力発動時にはキーを押しているだけで自動的に周囲の敵を攻撃するので、照準で狙うという事をする必要がない為に物足りなさを感じてしまう。つまりこの能力発動時にはアクション性が極めて低いのが問題となる。


 Insanity Modeというアイディアは優れていると思うし、スペシャルアタックは不利な状況からの一発逆転という爽快感は持っているが、総合的にはマイナス面も多くて成功しているというレベルには到っていない。個人的には武器の所持数を増やしてやり、Insanity Modeを使わないとならない箇所は存在するがその割合をもっと低くして、純粋に戦闘で敵を倒せるシーンとのバランスを上手く取れば更に面白くなったはずと感じる。

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