GAMEPLAY |
謎解きでどれだけ詰まるかで変わってくるが、クリアまでは実時間で12時間程度だった。個人的には長い時間詰まった場所が2つ在ったので、すんなり行く人ならもっと短いだろう。 最初の計画ではスーパーマリオ64と同じ様なデザインのホラーゲームを作ろうとしていたとかで(ハブで連結されている各エリアが進行に応じて更新されるので、何回も行ったり来たりしながら進めて行く方式)、斬新なデザインにより前作とは異なったゲームを作ろうという意図があった。しかしやはり途中でいろいろと上手く行かない点が出て来てしまったのと、Steamで新たに売り出したPenumbraシリーズが大量に売れて評判も良かったので、あまり大幅な変更はせずに前作を踏襲した物にしようと切り替えられている。 しかしこのAmnesiaのデザインにはとても変わっている面も見受けられる。そこが個性的な所でもあり、実際に非常に怖いゲームとしての評価を上げた理由にもなっている。簡単に言えばAmnesiaは「恐怖体験」であって、「ホラーゲーム」では無いというスタンス。プレイヤーに恐怖感を与える事を最優先事項として突き詰めていった結果、「ゲーム」であるなら当たり前の事項であっても排除してしまうという方針を採用している。最初からそうだった訳ではなく、作りたいゲームの本質(すなわち恐怖)を追い求めた結果としてこうなったそうだ。 ほとんど全てのゲームは常にプレイヤーにチャレンジ(挑戦)を課する。与えられたシチュエーションに勝利(クリア)する事で先に進めていくという意味だが、この根本事項に疑問符を提示している。Amnesiaには幾つかのイベントが用意されており、それはモンスターからの逃走だったり、一連のアクションを制限時間内に成功させる事だったりする。もしこのチャレンジにプレイヤーが失敗した場合、二回目のチャレンジは同じパターンでは無くて、一回目よりも簡単な設定でのプレイとなる(例えば敵の出現位置がより逃げ易い遠くに移される等)。そしてこの二回目も失敗した際には、そのチャレンジ自体が消失して先に進められるという仕様である。(ただしそのエリア全体のチャレンジ(敵)が消えるのでは無く、対象の敵が複数居るのならば該当する物が消えるだけである)。プレイヤーが特定の箇所でそれをクリアせずとも任意で飛ばせるという物は過去にもあるが(Mafia, TRON 2.0等)、ホラーゲームというジャンルにおいては相当珍しいと思う。「襲われる怖さ」というホラーゲームの本質を取っ払ってしまう行為だからだ。 こういう風になった理由とは、Amnesiaでは一人称視点によりプレイヤーがダニエルの立場になって、城内を自分自身が実際に探索しているという没入感を出すのを重視している。しかし課したチャレンジをプレイヤーがクリア出来ずに繰り返しになった場合、 1.それが長引く程プレイヤーの頭の中は「どうやってクリアすれば良いのか?」という分析思考が多くを占める様になる 2.上手くやる(操作する)という点に集中する事から、「今自分がやっているのはゲームである」という現実に引き戻される 3.リプレイで何度も繰り返し怖いシチュエーションを見せられても、効果が薄いどころか逆効果になりかねない 以上全てが没入感の維持には大きなマイナスになってしまう。そこでホラー要素を最重視するという観点からは、このチャレンジの繰り返しによりプレイヤー側に勝利を求めるという方式は無い方が良いという結論に達する。そしてこの繰り返しが効果を維持できるのはせいぜい2回までという分析から、2回目の失敗後はチャレンジ自体を無くしてしまうというシステムが使われている。 それに関連してこのAmnesiaには死の概念が無い。特にゲーム中に解説がある訳では無いが、設定上プレイヤーの失敗は“死”ではなくて “悪夢”という解釈にされている。一度目のチャレンジで恐怖を感じながらもそれに成功したのであれば、それは最も効果的な形でのイベントの成功であり、今の出来事は現実に起きた事であると解釈される。一方でもし失敗した場合には、それは精神的なプレッシャーから悪夢を見ていたという形で処理され、そもそもそんな事は起きていなかったとなって、イベント発生地点からまたスタートになる。そして二回目も失敗したならまた戻されて、結局そんなイベントは発生していなかったという風に処理されると説明している。なおそのイベント失敗前に取っていたアイテム類はそのまま保持される。 この大胆なシステムへの評価だが、進行をなるべく切らずに城内を探索しているという没入感を維持するという面で成功を収めているのは間違いない。イベントにて最大の恐怖を味わえるのは当然初回だが、それを体験はしている訳だから、二回目以降でそれがカットされたとしてもホラーという観点からは大きな問題では無い。またPenumbraの様にアクションが苦手な人が進めなくなってしまうという危険性も回避されている。 しかし完璧とは言い難く、問題点を二つほど挙げておく。一つは二回目のチャレンジに移った時の難易度低下が大き過ぎるというイベントが目立つ。モンスターに襲われるというイベントでは、一回目は敵がこちらに気付いている状態で襲って来るのだが、二回目は周囲を彷徨っている状態でこちらには気が付いていないというパターンが多い。これだと難易度は相当落ちてしまうので手応えが感じられない。例えばデモにて水中モンスターが出現するシーンがあるが、二回目でも難しいとなるとあそこが全体で一, 二を争う位の箇所ではないか(ちゃんと二回目も襲って来るという点と、ジャンプでの箱渡り+制限時間仕様なので)。他はもっとずっと簡単に難易度が落とされてしまう。 もう一つはリトライで、呆気なく失敗してしまった際にはむしろ諦めが付くのだが、後一歩で逃げ切れたというケースなどでは「あそこでミスしなければ行けた!」という感じになり、もう一回同じ状態からリトライしたいという願望に駆られてしまう。 達成してクリアしないと気が済まないという方は、過去のセーブデータをロードし直す事を繰り返せば何度でもチャレンジは可能である。だがそういう事をされない様にという意味合いなのだろうが、チェックポイントからやり直す機能を持っておらず、一度メインメニューに戻って一覧から選び治さないとならないので面倒ではある。 ストーリーを解説するカットシーンは一切無くて、ほぼ全てマップ内で発見される日記やメモにて説明される方式。後は到達した地点において、フラッシュバックの形で過去の出来事が語られるというやり方を採っている。自ら記憶を消したダニエルが過去の自分の行いについてや、「殺せ」と指示されているアレクサンダーとは何者なのかを探っていくという話だが、プレイ前の想像とはちょっと違った類の内容であった。ダニエルがどういった存在だったのかを含めて意外性は持っており、なかなか面白いストーリーだったという感想。 ただしとても陰鬱で嫌な話である。インタビューを読むと、プレイヤーに「ダニエルになりきってプレイしていたが、もうこれ以上先に進めたくない」と思わせたかったとあるが、確かにそんな感じの真実が徐々に明らかにされていく構成となっている。 エンディングは3種類。過程に関係無くラストの場所での行為で決まる方式だが、一種のパズルになっている点は面白い趣向で、何も出来ないとバッドエンディングになってしまう。それとラストに来る前に終了する特殊エンドも一つあり。 |
GAMEPLAY(続) |
マップの構造は前作と似通っており、ハブとなるメインエリアを中心として、そこにローディングにてアクセス出来る幾つかの枝エリアが接続されている形態が多い。後はそれらハブを繋ぐ一本道のエリアが時々挿入されるという形式。舞台はラストを除けばブレネンバーグ城のみだが、ダンジョンを想わせる岩壁のインドアパートだけではなく、多彩な景観のエリアが用意されており飽きさせない。 かなり広いエリアも含まれており、特に何も起こらないが移動に時間が掛かるというケースもある。スプリントが無限に続けられるのでストレスではないが、例えば見逃しているアイテムが有るのではないかと行ける場所に再度行ってみようなどという場合、かなりの距離を延々と走り続けるというハメになる事は有り得る。 ハブ構造のエリアにて、そこから連結されている複数の場所へのアクセスは自由なケースがほとんどで、鍵等を見付けてこないとアクセス出来ないという設定は稀。ただし必要なアイテム類は散らばっているので、先に解決すべきパズルの場所に来てしまい、その後必要なアイテムを別の場所で得てから再度やって来ないとならないという状況は多々ある。 操作体系はPenumbraシリーズを継承しており大差なし。 *持っているオブジェクトの回転と手元距離操作(近付けたり遠ざけたり)が可能 *右クリックでの観察モード(眼のアイコン)は無くなり、左クリックがそれを行う様に簡素化された *ドアや引き出しを掴んでいる状態から右クリックにて、勢いよく自分の向いている方向に押し出せるようになった(素早く閉められる) *バルブ等を回す操作がやり易くなった *アイテム使用のショートカットキーは無くなった 謎解きに関しての大きな変化は、流れ重視で難易度の低下が行われた所。デザインの項で述べた様にホラー要素を最重視しているので、プレイヤーが一つのパズルに長い時間を掛けてしまうのは不味いというのがその理由。長時間進めなくなってしまうと、そのパズルを解く事に意識が集中してしまい、恐怖感がどこかに行ってしまう可能性がある。そこで恐怖感を持続させる事を最優先して、詰まる可能性がある様な難解なパズルは排除したそうだ。「Penumbraではゲームのボリュームを増す為に、難しいパズルを幾つか入れてプレイ時間を延ばすという手法も使ったが、今回はそういった時間延ばしは止める事にした」。つまりここでもプレイヤーに対してチャレンジを要求するゲーム性にはしていない。 第一にアイテムを集めてそれを組み合わせたりして使うインベントリータイプのパズルでは、入手出来るアイテム類を少なくして解り易くしている。スロット数自体が前作よりも少ないが、実際に手に入るアイテムの数はそのスロットの半分以下しか使わない状況が大半である。繰り返し使用する物はそのまま残り、以後使わない物はそこで消えるという親切設計にもされている。 次にそのアイテムをどうにか出来るというケースでは、カーソルを持って行くと手のアイコンが表示されるという点は一緒。そこに重要なアイテムや干渉できる場所はボンヤリと光って見えるというヒント機能が加えられている。従って単に持って動かせるだけのアイテムなのか、重要な働きをする(インベントリーに加えられる)アイテムなのかの判断がし易くなったし、そこに対して何かが出来るという見分けも(全てではないが)可能となった。それと重要なアイテムについては、他のオブジェクトを退けないと出て来ないという設定がほとんどなく、逐一動かせる物を掴んでは退かして背後に何か隠れていないかを検査する手間が省かれている。 複数の解決方法が用意されているパズルは今回も幾つかあり、それだけ詰まり難くもされている。人間には特定の思考パターンがあるので、パズルの解法がそれとは異なるベクトルを持っていると答えが簡単でも詰まる可能性が高くなる。そこでなるべく多彩な発想に対応出来るように、発想が異なる別の解法を用意する様に心掛けたとしている。 非常にややこしいプロセスを必要とする様なパズルも減っている。例えばAで見付けたアイテムでBにアクセスして、そのBで別のアイテムを見付けてCに行き、Cでそれを使って新たなアイテムを手に入れると、再度Aに行って新たなエリアにアクセス出来る様になるといった入れ子構造の類。ある場所が開かない場合、それを解決するアイテム類はその近くに在るというパターンが増えている。 前作で御馴染みのノート(マニュアル)を読んでそれを機械操作として実行するパズルも健在だが、今回は意地の悪い捻った解り難い書き方を避けており、素直に読めば解る簡単な物にされている。 なお物理演算が作用するオブジェクトを操作して行うパズルはやはり出て来るが、その数は前作に比較すると大分減っている。また直感的で解り易い物が多い。 このパズルの難易度低下についての評価だが、ちょっと判定が難しい面がある。そもそもの問題として、開発者の意図が成功したのかという点に疑問符が付くという結果に。発売当時の幾つかの攻略掲示板を遡って見ても、決して「詰まったので答えを教えて欲しい」という要請スレッドが少ないとは言えない状態であり、流れ重視でなるべく詰まらない様にするという狙いが達成されたとは言い難い。 謎解きが簡単になったというのは間違いない。では何が問題なのかというと、一つにはPenumbra的思考の罠という件がある。Penumbraは物理演算によるオブジェクトの操作を大幅に謎解きに導入しており、直感的に何をすれば良いのかが解り易かった(超えられない障害物が有るならそれを超える方法を見付ければ良い等)。しかし今回は具体的に何をすれば良いのかが解らないパズルも用意されていて、答えは知ってみれば非常に簡単なのだが、それを思い付かないで詰まるという物に幾つか遭遇した。個人的に詰まったある場所も、これはPenumbraの様に動作しない装置を作動させれば良いのだろうと思い込んでしまい、実際にはもっとシンプルな解答に気付けなかったいう事があった。 それと親切設計が裏目に出ているケースもあり。重要なアイテム類や、それにアイテム類を使用して干渉出来るというオブジェクトは光ったりして教えてくれるのだが、物凄く明るく光る訳では無いので、状況によっては見逃してしまう恐れがある。皮肉な事に比較的明るいエリアや、ランタンを点けているケースにて、それがオブジェクトの放つ灯りを目立たなくさせるという事にもなっている。同様に必ずしも干渉出来る箇所が光るとは限らないので(小さなオブジェクトは光るが、扉の様に大きな物は光らない)、「光るはずだ」という思い込みで何かを探索していたりすると、そこにアクセス出来るというのを見逃す恐れがある。 ただ私の意見としては、その一部のパズルの解り難さが欠点だとは考えていない。先に評価が難しいと書いたのは、詰まる箇所が結構あるという点で制作側の狙いは完全には実現出来なかった訳だが、むしろその実際の難易度の方が適切な難易度バランスではないかと感じられるからである。頻繁に詰まるほどではないので大きく没入感や恐怖感を損なっているとは感じられないし、パズルを解く面白さのプラス点を考慮するなら別に失敗しているとは思わない。つまり意図は失敗しているがそれでOKという結論。 |
COMBAT&HORROR |
Penumbra: Black Plagueと同じで、Amnesiaでも戦闘要素はカットされている。プレイヤーは武器を持つ事が出来ないし、それ以外の対抗手段も持ち合わせていない。逃げたり隠れてやり過ごすか、何等かの用意されている方法で敵に対抗するしかないという設定である。開発の当初は武器による戦闘要素を再度導入して、「プレイヤー側が強くはなれないが、何とか武器でもある程度の対抗は可能」というバランスを探っていたが、テストの結果では劣化版Condemnedみたいにしかならなかったので、序盤の段階でその構想は捨て去られている。 敵として登場するのは三種類。普通のエリアに現れるのがGruntsとBrutesで、基本的な性質には変わりなくBrutesの方が強化版といった位置付け。例えばGruntsの攻撃には数発耐えられるが、Brutesの場合には一発でダニエルは倒されてしまう。あとは水中エリアに出現するのがKaernk(Krakenのもじり)で、こちらは姿は見えず水飛沫でその位置を確認するしかない。 Grunts(Brutes)はPenumbraの感染者(Infected)に比べると能力的にも脅威度が増しており、走る速度もダニエルより速いので十分な距離がないと逃げ切るのは難しい(特にBrutesの方がより速い)。ただしこちらを検知する能力はそれ程高くないので、こちらが逃げ出してから向こうが駆け出すまでに若干の余裕があるケースも多い。それと角を曲がったりして一時的に視界から消えると、途中で一時停止して周囲を観察するという行為をしたりするので、その隙に距離を離すチャンスも出来る。また敵の唸り声が聞こえる様な場所では曲がり角でリーンして偵察するとかで慎重に行動してさえいれば、敵を発見直後に身を隠す事でやり過ごせる可能性も高まる。Kaernkの方は移動速度はそれ程でもないが、ダニエルは水中だと速度が落ちるので逃げ切るのは困難。だがこちらも音に反応するという性質を利用して、何かを投げて注意を逸らすという対応方法がある。 三種類しかいないが敵はどれも相当に怖く、モンスターを怖くするというのはホラーゲームにおいて重要な事項だが、その水準を大きくクリアしておりホラー度のアップに大きな役割を果たしている。だがAIの方は原始的であまり良いとは言えず、自分が近くに居るのに別の方向を攻撃し続けるというバグにも遭遇した。ダニエルを検知する能力ももっと高くても良かったように思える。 Amnesiaでは敵が通路を彷徨っているというケースはあまりなく、イベントとして出現するパターンが一般的。そしてイベントの際には最初からこちらに気が付いて追って来るという設定が多いので、瞬間的に逃走コースを見付けられないと苦しくなる。彼等は扉を破壊する能力を持っているがそれには時間が掛かるので、逃げる際に扉を閉めるというのは有効な手段。勢いよく閉めるという操作が導入されたので、奥側に向かって閉められる扉ならば素早く閉じられる。バリケードを作る事も可能だが、時間が掛かるしそれ程有効では無いと感じられた(トレイラーには机等の重量物を動かしてバリケードを作るシーンも見られるが、これは上手く機能しないという理由からカットされている)。 逃げた後はロードが入る箇所まで逃げ切れればそれで成功。それが無ければどこかに隠れてやり過ごす事になる。中に隠れられる戸棚があれば、その中に入ってしまえば見付からないという設定の模様。そういう物が無いなら暗い場所に屈んで隠れるしかないが、敵が近くにまで来た際に成功するとは限らない。なお隠れた状態で待っていても敵が動いてくれないケースもあって、その場合には自分から動いて膠着状態を打破するしかない。 厄介な点としては正気度との絡みがあり、敵を見てしまうと正気度が低下して視界が乱れてしまう為に、断続的にしか位置を観察出来ないというハンデを持つ。また明るい場所やランタンを持っているとすぐに発見されてしまうので暗い場所に隠れるしか無いのだが、暗い場所に長く居ると徐々に正気度が下がっていってしまうのを避けられない。そしてそれがゼロになって倒れてしまうと、近くに敵が居た場合には発見されてしまうという設定にされており、かと言って灯りを点ける等の回復手段が無いのでどうにもならないという状況。一種のシステムとしての矛盾になっている。 体力の方は自動回復だが、これでは正常時の一段階前までしか戻らず完全治療には治療薬が必要である。とりあえずヘルス低下状態でも放って置いてあまり支障は無いが、ヘルスが最終段階まで下がると前が赤くなって非常に見え辛くなるのでそこでは使うべき。回復薬の数は多くも少なくも無いという程度。今回はアイテムのショートカットキーが無いが、インベントリーを表示させるとポーズが掛かるので、敵からの攻撃でダメージを受けた際に治療を行う事は可能である。 他の要素を犠牲にしてでも重要視したホラー関連の出来栄えだが、これは実に良いという印象。まずはプレイヤーに強い恐怖を与えるショッキング(パニック)イベントだが、これの配置間隔やタイミングが巧みである。ゲーム全体の長さからするとその回数は少ないのだが、それが逆に予想していない時に発生するといった効果を挙げている。襲われる数を増やすというやり方だと、どうしてもプレイヤー側が常に身構えるようになってしまうので効果が薄れるし、インフレで後半になるほど怖くなくなってしまう恐れもある。 そしてプレイヤーに攻撃手段が無いという風にしたのはやはり正解だったと思う。逃走するしか無いというシーンが含まれるホラーゲームはそこそこあるだろうが、Amnesiaでは終始モンスターから逃げるしかなく、プレイヤーの極端な弱さが恐怖感を高めている。 次に一人称視点の有効利用で、三人称視点が大半のホラー物の中で異彩を放っている。どちらにも一長一短あるが、Amnegiaでは周囲を良く見る事が出来ないという制限が効果的に使われている。特に背後から敵に追い掛けられている時など、3Dサウンドで後方から迫ってくる音に怯えながら必死に走るシーンでは臨場感が素晴らしい。敵の方が速いので振り向いた時の時間ロスで失敗する可能性もある為に迂闊に振り向く事も出来ず、姿の見えない敵から逃げるというユニークな恐怖感を生み出している。三人称視点だとカメラを回転させたりして走りながらも後方を見る事が出来たりもするが、それだとこの緊張感は感じられないだろう。 雰囲気も重苦しくて圧迫感がある。敵と戦うという要素が省かれている為に展開がスローペースとなっており、それが真綿で首を絞めるかの様なジワジワと浸透してくる恐怖となっている。途中で何回も戦闘シーンが入るゲームではそれが気持ちの切り替えに繋がるが、延々と探索を続けたりするので精神的に嫌な感覚を長時間味わいながらのプレイとなる。 ビジュアル的なグロ要素は強調されていないが、少しだけグロさを感じさせるシーンも含まれているし、またダニエル自身がグロい行為をしないとならないという場面も登場する。後は怖さと言うよりは嫌悪感という方が適当だと思うが、城で何が行われていたのかという事実については、非常に嫌な真相が幾つも明らかにされる。 最後に暗闇での恐怖感はこの作品のクライマックスとも言える出来である。暗闇の項で解説したように、リアリティは薄いが暗さを強調するシステムを構築しており、プレイヤー側の持っている灯りではそれを大幅に解除する事が出来ないし、灯りを点けているとモンスターに発見され易くなるという設定。そこに暗闇では正気度が低下して視覚&聴覚が乱されるという要素を追加して更に効果をアップさせており、これだけ暗闇が怖いというゲームは稀というレベルに達していると思う。 ただ小さな問題ではあるが、プレイヤー側が所持する光源が少ないという点が、「だったら走り続ければ良い」というプレイスタイルを生んでしまったという件がある。おそらく開発側からすると想定外だったと思うのだが、ランタンの灯りが長く持たないのであれば始終スプリントで走り続けてやり、アイテム探しなども全速力で片付けるようにするという人が出て来てしまい、結果的に「じっくりとプレイしていないので怖くない」, 「ゲームが短時間で終わってしまう」といった不満を生んでしまった。ただこれを消す為の調整は困難だろうから、そういうスタイルではプレイしない事をお勧めするとしか言えないであろう。 |
GRAPHICS |
新規に作り直したHPL Engine 2を使用。プレイヤーの没入感を高めるには高度なクオリティのグラフィックスが必要であるという観点から、ビジュアル面の向上を考えて大幅に改善を加えたそうである。 特に良くなったのはモンスターのモデリングやアニメーション。その他のゲーム内に配置されたオブジェクト類のモデリングも随分と改善されているし、マップ内の様々な部分までの作り込みも細かい。インディーズ会社の製作エンジンとしてはかなり優秀な部類だと感じられる。 ワイドスクリーン対応。設定可能な項目は多岐に渡る。 |
SOUND |
3Dサウンド(OpenAL)に対応しているが、トラブルの項で述べたように互換性の問題から、そのままでは3Dサウンドにならない可能性もある。このゲームでは3Dサウンドが非常に重要な役割を果たしているので、出来るだけその環境でのプレイを推奨する。SP構成が適さないならヘッドフォンの方が効果を得られるかも知れない。 BGMは普段は静かに流れており、恐怖イベントのシーンになると別の物が流れ出すシステム。効果音の方は不気味な物が多く、突然大きめの音量で鳴ったりと怖さを感じさせてくれる。特に敵に襲われている時のサウンドなどは恐怖感を煽る良い出来である。他には正気度が減少した際の幻聴なども高い効果を挙げている。 気になった点としてはフラッシュバック時の会話が、声に慣れないと最初の内はセリフの主が誰なのか判断し難いというのがあった。 |