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GAMEPLAY
 明確に番号は付けられていないが、大きく分けると4つのエリア(チャプター)から構成されている。難易度Normalにて8時間程度。しかし謎解きが中心なのでどれだけ詰まるかで当然プレイ時間は延びるし、攻略サイトに頼ったりするかによっても変わってくる。それと戦闘の項でも述べるが、モンスターを戦って倒すか、ステルスでの非戦闘で進めるかでも差は出る(ステルスで行く方が時間が掛かるだろう)。制作サイドでは、「エピソード形式なので6時間程度のボリュームを見込んで作ったが、実際のフィードバックでは8時間程度が普通のようだ」とコメントしている。


 このEP1のロケーションは炭鉱(廃坑)となり、殺風景な通路で繋がったエリア内に幾つかのアクセス出来る部屋が有るという感じで、景観的には綺麗では無いしバラエティさにも欠けている。リアリティという設定なのかマップサイズは割と広いが、何も意味の無い通路を長い時間走って移動したりも出て来るし、この辺はあまり良いデザインとは言えない。

 ストーリーはEP1というのもあって漠然としており、大して判明する事実は無いという状態で終わってしまうのでこれだけでの評価は難しい。ただ主人公にコンタクトを取ってくるキャラクタ“Red”は非常に個性的で面白い味を出している。


 ホラーの要素として雰囲気的な面は良く出来ており、最初の内は探索しているだけでも不気味さが感じとれる。モンスター系と遭遇するシーンでもそれは同様。しかし途中から戦闘を選択してモンスターを倒せる様になってしまうと急激に怖さは減少してしまうので、ホラー要素を強く求める方は制作者の推奨する通りに戦闘を回避するステルスで進めるスタイルを推奨する(この件は戦闘の項でも説明する)。

 想像していたよりも闇による恐怖の演出は重視していないようで、モニター調整で合わせた明るさだと真っ暗な闇の様なエリアはほとんど出て来ない。バッテリーが少ないのでフラッシュライトはあまり使えずグロースティックに頼る事になるのだが、これで特に不便は無いというレベル。そもそもこのゲームには、闇の中から何かが飛び出してきて突然襲われるかも知れないといったシーン(設定)がほぼ無いので、途中からそれが解ってしまうと闇に遭遇しても怖いという感覚は生まれてこない。よって闇の中を手探りで探索するような物を期待している方には残念ながら不向きである。


 モンスターによって襲われる可能性のあるエリアは限定されており、パズルを含んだ部屋ではほぼモンスターは出てこない。よってモンスターが結構出現して、何所でも襲われる可能性を持つホラーゲームに比べると怖さでは劣る事になる。しかしこれはサバイバルホラーの環境下にて、アドベンチャーゲームの謎解き要素を大幅に盛り込んだユニークなデザインからの仕方の無い代償であり、その分だけホラー要素が犠牲になってしまっているのは欠点とは言えない。

 つまりこのゲームは、ホラー要素を含むがそれを特別には重視しておらず、ADVゲームとしての特徴を活かす為にむしろその辺を犠牲にしている感がある。謎解き要素を重視してプレイヤーにじっくりと考えてもらう為には、その思考中にモンスターに襲われるかもしれないという要素はなるべく排除してしまった方がより集中して楽しめるから、謎解きを設定した部屋の中等では襲われないようにしているという意味。



 良い点を挙げて行くと、第一に物理的な干渉と操作を基本とした各種パズル(謎解き)は新鮮である。2DのADVではこの様なシステムは難しいし、完全な3D空間にて一人称視点でプレイするという、ADVゲームとしては非常に特異な設定を上手く活かしていると思う。

 第二にパズルの難易度設定が絶妙。投げ出すほど難しい謎解きは無いし、かと言ってスラスラと進められるほど簡単でも無く、この辺のバランス調整は見事だと感じた。手掛かりの与え方も概ねフェアで、思考の飛躍を要求される様な理不尽な物は含まれていない。通路の随所にそのエリアのマップが貼られており、また方向指示の看板もあるので移動で迷う事は無いし、壁等にヒントの書き込みが有ったりもしたりと親切。集めたノート類から解決方法を導き出すタイプの謎解きに幾つか解り難い所がある程度。

 第三にパズルの設定や解法は論理的であり、リアル世界の出来事という背景設定の雰囲気を損なっていない。制作側は他のサバイバルホラー等のゲームで見られる非論理的なパズルが好みでは無いそうで、出来るだけ論理的で且つリアリティが感じられる謎解きにしたかったそうだ。具体例として挙げている非論理的なパズルは、「4枚のカードを指示された通りの場所にセットするとドアが開く」という様な物で、いわば理由の説明は何も無く、単に制作者がこうすれば開くと設定した通りにやれば解決するというタイプ。(もう少し意味合いを補足しておくと、仮にそのパズルを設置した人間にとって、そのドアの先に重要な品物(もしくは入られたくない場所)が有るとした場合、そのパズルを解いてしまえば誰でもそこに入れてしまうというセキュリティは馬鹿げているし有り得ない。要はリアリティを重んずるのならば、暗証番号が解らない限り開かない電子ロックや、物理的に開けられない様な頑強な機構を設置するとかで防御していないと不自然という話)。


 大半のパートで謎解きの進行はリニアとなっており、一つの謎を解決してから次へという風に進められる。複数の謎を自由な順番で解いていけるといった構成では無い。このタイプのADVではある場所で詰まってしまうとそれ以外に出来る事が無くなるという面を持つが、このゲームでは特別に難解な謎解きは無いので流れには問題ないだろう。だが移動エリアは結構広いというのもあって、運悪く今は入れない部屋に先に来てしまってまた結構戻るハメになるという無駄足は発生する。

 物理エンジンに影響されるオブジェクト類を操作するパズルが目立つが、2Dのオブジェクト類を探し出したり, それ等を組み合わせたり, 適切な場所にて使用したりする、ADVゲームにおけるオーソドックスな謎解きも数多く用意されている。こちらは入手出来るアイテム類が比較的少ないのでそれ程難解ではないが、残された文章等から手掛かりを得るタイプのパズルには幾つか難しい物も登場する。

 それとパズルの解決方法が複数用意されていたりするのも一つの特徴である。理想的でスマートな解決方法ではなくてもクリア出来るケースが在るので、その点でも長時間同一箇所で詰まる事が少なくされている。


 謎解きでは無く、ある種のアクションの成功を要求されるシーンも含まれている。一人称視点でリアル3Dの世界を動き回るシステムを活かすには自然な流れとは思うのだが、ADVゲームのファンの間では「ADVにアクション要素を入れる必要があるのか?」は常に議論の的にされる件であり、普段はアクションゲームをプレイしないADVファンの人には批判の対象となる恐れは持っている。しかし普段FPSでのジャンプアクションなどに慣れている方には特に問題は無い難易度レベルと思うし、この突然発生型のイベントが恐怖感を生み出す重要な要素となっているので、個人的にはこの種のアクセントは上手く機能しているという意見。

 初見では即死の可能性がある突然発生型のトラップや、先がどうなっているのかを知らないと対応が難しい死にながら憶えるシーンなどもあるが、(元々ADVゲームには即死ゲームオーバーが結構多いという観点から)大きな問題では無いと言えよう。唯一Call of Cthulhu: DCotEの例のチェイスシーンを想わせる、「対応方法を知っていても、一連のアクションとしてそれを成功させるのが難しい」という箇所が在って、ここは正直言ってアクションゲームに慣れていない人には辛いのではというランクの難しさであり、難易度を下げればずっと簡単になるという風にした方が良かったように感じる。


COMBAT
 先に戦闘及びステルスの基本的なデザインから紹介する。

 武器として使えるのは打撃可能なアイテム類で、そのリーチやダメージ量から実質使えるのは斧(ピッケル)のみ。銃器類は一切存在せず、使えるとすればダイナマイトだがその数は非常に少ない。後は敵を殺せる仕掛けが用意されている場所があるので、それを利用して倒すかになる。

 打撃武器としての使用方法も他のアイテムと同じで、武器を持った状態にてLMBを押したままにすると視点位置が固定されるので、その状態で左右にマウスを振って振りかぶり動作を行い、そこからスイングして殴り付けるというやり方になる。その攻撃方法故に動いている敵には当て難く、振りかぶった時と同じ場所(ライン上)にいなければ攻撃は当たらない。敵が動いた際にはLMBを押したままでRMBを押して視点移動を行い、敵に合わせてからRMBを解除してスイングするという動きは可能であるが、これは実際にやってみて貰えば解るのだが非常にやり辛い操作となる。自分の周囲を動き回って攻撃してくる犬相手に、正面からこの攻撃方法で戦うのは無理というレベルのやり難さである。

 見た目とリーチが異なるので間合いも掴み難いし、高速で武器の連打が可能でもない。FPSでの「敵に照準を合わせてマウスをクリックすればそこに攻撃する」とか、TPSでの「敵をロックオンして自動的にそこに攻撃する」とかではないので、敵との戦闘は難易度が高くなっている。

 ヘルスは自動回復方式で時間が経過すればフルまで戻るが、その回復時間はかなり掛かるという仕様。よって戦闘中に即ダメージを回復したいという際にはペインキラーを使用して全回復を行う。だがこの回復薬は数が少なく、ゲームを通して6個しか見付からなかった。なので気軽には使えないし、その為に戦闘を頻繁には行えないという設定でもある。(救急ボックスを開けてもペインキラーが入っていないというケースが多く、もしかすると低難易度では所持数が少ないと補完として出現するという仕組みなのかもしれない)。


 戦えるタイプの敵は犬と蜘蛛のみで、敵の外見的な怖さという点では物足りなさが残る。犬はエリア内を徘徊している事が多く、光や音に敏感でプレイヤーを見付けると襲い掛かってくる。体力的にはかなりタフでスピードも速い。一定のダメージを与えれば倒れるが、すぐに起き上がって一旦逃げ出し、遠吠えで仲間を呼んだりもしてくる。難易度Normalで斧を使った攻撃だと4,5回位倒さないと死なない。アイテムのビーフジャーキーを使って誘導は出来るが、これは気が付かれていない状態でしか効果が無い(襲って来ている時に投げてもそちらに注意は向かない)。

 犬の出現や行動はスクリプトで管理されており、出現エリア内を実際に(リアルに)徘徊はしていない。その時点では出ないという設定ならば、さっきは居たはずのエリアでも出て来なくなるし、反対にさっきまで居なかった場所に設定されたタイミングで出て来たりもする。ただし無限沸きではないので、設定されている数を倒せばその後はそのエリアには出て来なくなる。

 蜘蛛の方は通常卵の中に居て、音などでプレイヤーに気が付くと殻を破って追い掛けてくる。犬とは逆に光を嫌い、フラッシュライトの様な強い光量を当てると逃げていく。なおそのフラッシュライトはバッテリー一個当たりの容量が非常に少なく、またゲームを通して入手出来る数も少ない。消費速度を考えると使える時間は相当限定されており、メインの役割はこの蜘蛛対策用という感もある。


 ステルスは屈み=ステルスモードという方式で、暗い場所で屈むと数秒で視界が青くなってステルスモードに入り、この状態では敵に見付かりにくくなる。それとこのモードでは周囲が若干明るく見える様になるので、光源を持っていなくても行動は容易である。これを使って物陰に隠れ、左右へのリーン動作で先を窺って敵が居ないのを確認してから前に進む事になるが、注意点として敵を近距離で見てしまうと震えが起こって画面が乱れるようになっており、そこで視線をすぐ逸らさないとパニック状態となり敵に発見されてしまうようになっている。なお敵が攻撃状態にあるのかどうかはBGMで判断が可能。

 敵を倒さずにこのステルスにて気が付かれずに突破、或いは気が付かれても逃走というやり方でクリアは可能であり、開発側もそのプレイスタイルを強く推奨している。ホラーとしてこのゲームを楽しみたいという人もその方が良い。ただし敵を排除しないので、そのエリア(通路)を通る度にステルスでの行動となる為、先に倒してしまうよりは時間は掛かる事になるだろう。



 続いてはこの戦闘とステルスの評価についてだが、これは失敗していると言わざるを得ない。製作チーム自身も失敗を認めており、狙い通りに行かなかったとしている。

 元々のデザインはSilent HillResident Evil(バイオハザード)シリーズの様なサバイバルホラーだが、戦闘要素をほとんど含まないという点でオリジナリティを出そうとしていた。つまり戦闘かステルスかを選択出来るゲーム性では無く、ステルスがメインで戦闘は最後の手段という位置付けでしかなかった(ステルス中に見付かった際には、何とかして打撃を加えて敵が一旦逃げた隙にこちらも逃走するといったスタイル)。モンスターの存在をより強大なものとして設定し、それで恐怖感を強めようという狙いである。そしてマニュアルにもプレイ中のアドバイスでも戦闘は非常に危険だと指示し、プレイヤーがステルスでプレイする事を推奨した。

 ところがそれは上手く行かずに終わる。失敗の一つ目は、「それがどんなアイテムであれ武器として使える物があれば、プレイヤーはそれを使って戦おうとする」として、予想以上に戦闘で進めようとするプレイヤーが多かった点を挙げている。そして二つ目、「戦闘が上手く行かない場合、プレイヤーは戦う事を諦めるのではなく、その状況下でどうやったら楽にモンスターが倒せるのかという方向に知恵を絞るようになる」。そして最終的にはシステムや敵のAIのバグを付くハメ技等を編み出し、簡単に敵を倒してしまうようになる。その結果敵を倒す事に意識が集中するのと、実際に倒せてしまって敵が居なくなるという状態が生じ、合わせて恐怖感の大幅な減退という最悪のマイナス要因を生み出してしまった。

 また戦闘が詰まらない(こんな戦闘システムでは駄目)という批判も浴びたが、これはホラーを重視している以上はどうしようもない。後のインタビューでは例としてDead Spaceを挙げており、「このゲームは確かに戦闘が面白いが、そうなるとプレイヤーは「さあ、次の敵出て来い」と考えるようになり、それでは恐怖感が失われてしまう。「モンスターよ、頼むから出て来ないでくれ」と思わせてこそのホラーゲームであり、その意味で戦闘を面白くするのとホラーの両立は不可能だ」としている。

 いずれにしろ今回の失敗は、製作チームのその後のゲームにおける方針の転換へと繋がる事となった(戦えるという要素を完全に取り去ってしまうというスタンスへの転換)。


 具体的な問題を書いておくと、まずはステルスモードで敵を見てしまうとパニック状態に陥るが、普通の状態ならば発生しないという点はシステムとして破綻している。どんな状況でも敵を見てしまうとパニックになるのであれば戦闘自体が困難なのでステルスを余儀なくされたと思うのだが、それはちょっと難し過ぎると考えたのかもしれない。

 次にモンスターのAIに問題があり、その虚を突き易い。すぐに思い付くような簡単な対処方法が通用してしまう。例えば一定以上の高さの箱の上に乗って待ち受け、下にやって来る犬を攻撃する。犬はダメージを受けると逃げ回るが繰り返しやって来るので、地道にそれを繰り返せばやがては倒れて死んでしまう(箱が勢いで押されるので、なるべく動かないような位置に移動しておく必要はある)。もっと直接的にこちらに向かって走ってくる犬に倒れるまで物を繰り返しぶつけてやり、倒れた所で近寄り起き上がる前に素早く武器攻撃してまた倒す。そしてまた起き上がる所を攻撃というループを死ぬまで続けるという方法もある(2匹居る時は難しいが)。序盤のハンマーだと威力が低いのとリーチの短さでさすがに使い辛いが、斧を手に入れてからはこういった方法により、邪魔物の犬を退治してからゆっくりと探索というやり方が可能となってしまう。

 蜘蛛の方は屈んで待ち構えて跳び付いてきた所を攻撃というやり方が通用するが、こちらは数が多い場合には戦闘は避けた方が無難。

GRAPHICS
 自分達で開発したHPL Engineを使用(H. P. Lovecraftから採っている)。Tech Demo製作時よりバージョンアップされており、ほとんどのコンテンツは捨てられて新しく作り直されている。

 光源の変化からのダイナミックシャドウ描画やポストプロセッシング等、2007年の発売時点からするとテクノロジー的にはなかなかの物という感想。グラフィックス関連の設定項目も多岐に渡っている。だが開発チームが小規模故の制限は避けられず、手間と時間が掛かるパート、具体的にはモデリングやアニメーションのクオリティはテクノロジーの方に追い付いていない。

 Tech Demoに比べると大きな改善を図ったとされているが、オブジェクトの作り込みやアニメーションには粗さが見られ、例えば犬や蜘蛛のモデリングや動きなどは低クオリティである。幾つかの装置や機械類のモデリングなども、専門のモデラーが居なかったのか凄く変に見えてしまう物が存在している。


 ワイドスクリーンに一応対応してはいるのだが1280x800以下という制限がある。マイドキュメント内のPenumbraフォルダ(単体かコレクションかによって名前が異なる)の中の settings.cfg を直接変更すればそれ以上の解像度にも変えられるが、HUDのサイズがそのまま引き伸ばされる点はどのワイドスクリーン解像度でも解消出来ない。

SOUND
 ボリューム調整は全体のみ。3Dサウンドに対応しており、モンスターの位置等を掴む際には重宝する。

 BGMは少なく、環境音のみというエリアが多い。また突然大きな音を出してビックリさせるような手法は使われていない。ホラー物としては割とサウンドによるホラー演出は控え目という印象。

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