MONSTER |
ホラーゲームに出現する敵(モンスター)は当然プレイヤーに怖がられないとならない。そこでどういう風にそれをデザインするかが大事となるが、まずはごく普通にモンスターを出した場合にどんな問題が生じるのかについてグリップは以下の様な考えを述べている。 「ゲームは映画と違って長時間持続するメディアである。2時間で終わる長さならば敵の恐怖感を維持する事はずっと簡単だが、ゲームはもっと長くないとプレイヤーを納得させられない。前作Amnesia: TDDは大変怖いゲームと言う評価を受けたが、実際には恐怖のピークは中盤までで、それ以降はプレイヤーが敵に慣れてしまう事から怖さは減退して行ってしまう。或いは最近プレイした中でOutlastは怖いホラーゲームでありボリュームとしても5〜6時間程度と短めだが、その短さでも最後の1/3程度はもう慣れて恐怖感が薄れてしまっている」 そこでどうやってそのプレイヤーのモンスターに対する慣れを回避するのかになってくるが、第一に「モンスターの姿をなるべく見せない」という方針を挙げている。怖い・グロい姿のモンスターを作成する事は可能だが、すぐにプレイヤーはそれに慣れてしまう。更にゲームの場合、その姿をじっくりと見せてしまうとアニメーションのおかしさとかAIの問題点に気が付かれる恐れがあり、そうなったらもう単なるぬいぐるみ程度の存在にしかならない。怖がらせるのにモンスターの姿をちゃんと見せる必要性は無く、映画等でも往々にして姿の見えないモンスターの方が怖いという評価を受けたりする。実際にAmnesia: TDDで最も怖いと評価されたのは水中を水音だけで移動してくる姿の見えないモンスターだった。 Amnesia: TDDでは正気度という概念を導入し、モンスターを見てしまうと強烈なブラーエフェクトなどが掛かり、ハッキリとその姿を認識するのは困難という手法を使用した。このSOMAでもモンスターが近付くと画面にノイズエフェクトが掛かったりして視界が激しく乱れる様に設定し、また暗いエリアを増やしてモンスターの姿を見え辛くすると同時に、フラッシュライトで照らすと敵に気が付かれるという設定を用いて、直接照らして観察するのは困難という風にして対策している。或いは中には見てしまうとこちらに気が付くので直視出来ないという敵のタイプも使われている。 しかしそれだけで10時間程度のゲームを持たせるのは難しい。そこで第二の方針として「敵との遭遇は最小限に留める」。敵と頻繁に遭遇するほどプレイヤーは慣れてきて恐怖を感じなくなっていくのだから、その回数を減らして且つ遭遇する間隔も空けていく。実際にSOMAでは全体を通じてモンスターに遭遇するシーンは12回程度(数え方にもよるが)しか出て来ない。これは10時間でクリアするならおおよそ一時間に一回位の計算になる。だがこれでは「敵がプレイヤーを襲うのがメイン」のゲーム性の場合には上手くマッチしてくれない。SOMAは別項でも書いた通りにモンスターと対峙する事がメインのゲームでは無いし、それとは別のホラーを扱っているのでそこは良いのだが、それでもモンスターでも怖がらせるのが目的である以上は、遭遇が非常に少ないという設定を上手く機能させないとならないのは変わらない。 そこでどういう風に処理しているのかと言うと、ストーリーと結び付けて論理的にそれをプレイヤーに納得させる様に仕向けている(ナラティブ)。出現する生物系のモンスターは純粋な怪物では無く、全て元は人間だった者が異形の姿に変わったのだという設定。そして出現する各モンスターが元はどんな人間だったのか(特定の個人を含む)を会話のパート等で説明し、対峙しているプレイヤーが今遭遇しているのは元誰(何をしていた人)だったのかを認識させる事で、それぞれのモンスターに出現理由(何故ここを徘徊しているのか等)がある事を示してやる。中にはプレイヤーを襲う事が目的では無いという設定の者も居る。その結果、(全てにではないが)出現理由が存在するのだから、理由が無い場所にはモンスターが居なくても当然という風にプレイヤーの思考を導いて、出現頻度が少ない事を物足りないと思わせないというトリック(グリップはそう称している)を用いている。 ただし問題点が無い訳ではない。それが誰なのか、またそのモンスターの出現の意味合いをストーリー的に理解していないプレイヤーに対しては効果が無いという点である。だから最小限の事項は誰もが聞かされる会話シーンで説明しているのだが(詳細はパッシブなドキュメント等に含まれる)、他項で問題点として挙げた「対応言語に理解出来る言語が無いとストーリーを理解するのが困難」という件にぶち当たってしまう。それだと「何故かモンスターが全然出て来ないゲーム」とだけ受け止められてしまう恐れがある訳だが、これはどうにも対応言語を増やすとかしか対策が無い。 第三のモンスターに対しての慣れへの対策は「同じモンスターを何度も繰り返し出さない」。何回も遭遇していくうちにプレイヤーはそのモンスターへの対応方法を確立してしまい、そうなったら後はその攻略法を使うだけなので怖さは薄れてしまう。怖さとは主に“未知”から生まれるのだからこれは当然である。そこで多種のモンスターを制作すると共に、各モンスター別に性質や能力を変更してバラエティに富んだラインアップに。そして各モンスターはゲームを通じて1〜2回位しか出現しない様にする。これによりプレイヤーからは“初見のモンスター”というケースが増え、性質が判らないのだから不安、それが恐怖に繋がるという風にする。 基本的には音や光に反応するので、屈む事で音を減らし、ライトを消して行動する事になる。物凄く変わったタイプが居る訳ではないのだが、様々な特性が違っていたりする事で各モンスターに変化を付けている。そして遭遇が少ない為に、正確にどんな特徴を持っているのかはそれだけでは掴み難く、新鮮さや恐怖感の維持という点で狙い通りの成果は挙げていると言えるだろう。以下は特性別の変化の例。 位置: ルート巡廻型, 自分から探索して回る, 何かしない限りその場に止まったまま 移動: 一定速度で遅め, 一定速度で早目, 途中から加速する, テレポートする 追跡: ひらすら追って来る, すぐに諦める, ある程度追うと諦める, その間こちらが移動し辛くなる(振動で) 認識: 音さえ出さなければ近くでも見付からない, 光さえ当てなければ音を出しても反応しない, かなり近付かないと気付かない, 遠くからでも気が付く 出現時のエフェクト: 何も無し, 異音と共に画面にノイズが入る, 猛烈に画面が揺さ振られて光がブレて見える 電動式のドア: 普通にボタンを押して開けてくる, ドンドン叩いて強引に開ける, ドアは通れない まずは安全を確保するのが困難という点は上手く出来ているという印象。ドアが電動で大きな音がする為、ステルスで移動していても開ける度に敵がその音に気が付いてしまう。更に自分が部屋に入った際にドアを閉めるというやり方は、大抵の敵が開けて入って来られるので短い時間稼ぎにしかならない。敵は広いエリア内でも全ての場所にアクセス可能だし、複雑な形状に引っ掛かってスタックするとかも無く、どこまでもプレイヤーを追って来られるという点でAIに目立った欠陥も見受けられない。 敵との対峙のパターンは、敵に見付からない(捕まらない)様にしてそのエリアでの脱出ルートを探して通り抜ける, 敵の徘徊しているエリア内である種の仕事をこなす必要がある, ただひたすら捕まらない様にゴール地点まで逃げ込むの三種。二番目のタイプが一番良く出て来ると思うのだが、このケースでは作業に一定の時間が掛かるという設定が多い。従って敵をかわして移動するだけでは無く、特定の地点で一定の作業時間を確保しないとならないのだが、その作業が大きな音を立ててしまうので、作業時間を確保出来る様に敵を遠い位置まで誘導しておかないとならないという障害がある。敵は大きな音を立てて走って来たり、閉めてあるドアをガンガン叩いて開けようとしたりと、作業中はスリリングで緊張感が高く怖さが良く出ている。なおこの作業時間が掛かる行為には、エリア内のオプション情報を持っている端末にアクセスしたりする際も含まれる。ただしアイテム収集系の実績(トロフィー)は存在しないので、敢えて危険を冒して背景情報を知るつもりが無ければ実行する必要は無い。 最後の逃走パターンもシンプルで定番ではあるのだが、敵が猛烈な速さで追って来たりや、凄まじいまでの叫び声を挙げながらだったりするので、直感的な恐怖として確かに手に汗握るという感じになる。 問題に感じたのは上で書いた誘導の必要性で、敵を望みの場所まで引き離す為に誘導するという手法を採るのだが、通常は自分からわざと見付かって追わせるという風にするので、その「自分から見付かりに行く」という行為に因り、敵への恐怖感が薄れてしまうという弊害を生んでいると感じられた。 |
DEATH |
Amnesia: TDDから続いて、プレイヤーの死の扱いに関してグリップは改めて様々な考察を行っている。 「第一作目のPenumbraにおける難関シーン。モンスターに追われて逃げ切らないとならない箇所において、我々はプレイヤーから対照的な二つのフィードバックを受け取った。どちらも割合としては50%と同程度で、片方は『こんなフラストレーションの溜まるセクションを繰り返しやるのは御免だ』という意見で、もう一方は『繰り返し成功するまでプレイしているが、スリリングなのでとても面白い』という意見。前者の意見をより分析した結果として、こちらのタイプでは2回連続して失敗したらもうそれで集中力が切れてしまう。そうなるともうそのセクションは『単なるチャレンジを成功する為のゲーム』と化してしまい、プレイヤーのゲーム世界に対する没入感と同時に怖さも完全に失われてしまう。(それまではゲーム内世界に没入して怖がっていたのが、モニターの前でゲームをしている自分へと意識が戻されてしまう為に、以降のチャレンジは全く怖くなくなってしまうという意味)。とにかくホラーゲームでは無く『ホラー体験』である事を最優先したAmnesia: TDDでは、その経験則に従って最初の失敗では敵の配置を簡単な位置へと動かし、それでも失敗したら敵自体を消してそのままスキップしてしまう事で、プレイヤーの感覚をモニター前でゲームをプレイしている自分という白けた状態に戻さない様にするというデザインを採用した。しかしSOMAでは改めて意見の異なる両グループに対して最適な落とし所はどこなのかという立場から、死亡時の扱いについて考え直している」 ではSOMAではどういう風に死を扱っているのかだが、第一に死という状況をなるべく延期させるという方法が有効だとしている。Amnesia: TDDでは失敗した場合、チェックポイントに「今のは実は悪夢だった」という事にして戻すという方法を使っていたが、今回は敵に襲われた場合、その襲撃を受けた場所にてダウンしている状態から再スタートするという方式に変わっている。おそらく敵に襲われてその場にダウンさせられたが、敵の知能が高いという設定では無い為、そのまま放置されて敵は去ってしまったという風にしているのだと思われる。いずれにしろ今回も、敵に捕まるという失敗=即ゲームオーバーというシステムでは無い。 そして繰り返しダウンさせられるとゲームオーバーとなりチェックポイントからのやり直しとなる点が、前作における「2回連続して失敗すると敵が消えてそのチャレンジがスキップされる」というシステムから変わっている。それとダウンさせられた場合にチェックポイントからのやり直しとなる際の法則が固定では無い模様。自分でやってみた実験と他者の情報などを踏まえた現時点で判明しているシステムを以下に記す。 *ダウンさせられると光等が何重にもブレたりと変に見える様になる *ダウン後しばらくは体がふらつく(これは回数が増えるとより持続時間が長くなるようだ) *ダウン時にその場からのやり直しでは無く、死亡と判断されてチェックポイントに戻されるまでの回数は1〜4回 *許容回数は敵のタイプでは無く、そのシーンによって異なる *ゲームオーバーが繰り返されると敵が消失するケースもある(今回は基本的には消えない) *繰り返しゲームオーバーになる場合、それまでのダウン可能回数が変化するケースがある 順に補足していくと、失敗すると易しくなるというシステムは今回も生きている様で、繰り返し失敗していると敵の反応距離が延びたり、反応速度が遅くなったりするのは確認出来た。ただし幾らでも低下するという風にはなっていない。それと敵自体が消えてしまってチャレンジ自体が無くなるというシーンは少なく、消えるにしても5回程度は繰り返さないとならない様に見える。 死亡までにダウン可能な回数がシーン別に異なるのは、そのシーンでの難易度分析により回数を調整しているのか、或いは必ず2回という設定にするとプレイヤー側にそれを読まれてしまうので不味いからという事なのか、現時点では不明である。 ダウンするとその場から続行されるというルールに変わった事から、それにより簡単になるという可能性が新たに加わっている。目的地点にてダウンさせられた場合、そこから離れた場所が敵のスタート地点になる為に、その近くで復活したプレイヤーにとっては有利な条件となるというケース。その為に何回も繰り返さないとクリア出来ない位に難しいというセクションはほぼ無い。逆に言えばダウンさせられるのを承知で一回目は目的地点まで到達し、有利なリスタート状況から二回目を始めるという強攻策が通用してしまうエリアも有るので、その場合には恐怖感というのは大分損なわれてしまうのは否定出来ない。 ダウン複数回でゲームオーバーになるエリアにおいて、一度ダウン後にヘルスポッドにて回復するとダウン数がリセットされる様だ。また敵に攻撃を喰らった際に一撃ではダウンしないケースもあり、表示されないがヘルスを数値として管理している可能性も考えられる。ダウンまでの回数が変わる事があるのはそれの影響という説。 単純にひたすらゴールまで逃げるシーンでは何回死んでも敵は消えないし、ダウン一回でゲームオーバーになる。これはダウンからの復活地点がそのダウン場所に変わったので、逃走シーンでは上手く機能しないからだと考えられる。 結果的にAmnesia: TDDにおけるスキップ機能は原則的にカットされたらしい。上で書いた様に2回連続して失敗したら緊張感が切れて怖さを感じなくなるというプレイヤーが半分程度は居るという訳なので、今回はその問題について見過ごしたという風にも取れる。Amnesia: TDDではそのスキップシステムについて「ちゃんとクリアを達成するまでやらせてくれ」という不満も当然ながら出ていた為、そちら側の意見に寄った調整を行ったという事なのかもしれない。または前作とは異なりモンスターとの対峙はメインではなくサブの要素に格下げされているので、そこには前作ほどこだわらなくてもOKという判断なのか。 感想としては確かに繰り返しの失敗によりゲーム的な作業しになってしまうシーンは在って、どうやったら上手く行くかという作戦を考え出した時点で恐怖感は減ってしまうという状態になっていた。ただ極端に難しいというシーンは無いので延々とリトライしないとならないケースには遭遇せず、雰囲気ぶち壊しという程の問題とも感じなかった。 続いては「死をどういう風にプレイヤーに見せるのか?」という課題である。「追って来る敵に捕まる、若しくは殺されるというシーンを直接的には見せない場合、プレイヤーはそれを怖がらなくなる。しかし一方で残虐な殺害シーンを映し出した場合、それを見たプレイヤーは『最悪の瞬間は既に過ぎ去った』と感じて、以降のリプレイ時に怖さが失われてしまう。この両者のバランスを採るのは非常に難しい。一つの解決策はAlien: Isolationの様にゲームの難易度を非常に高くする方法で、次のセーブポイントに達しないと長時間の努力が失われてしまうという意味での恐怖を常時醸し出す事が可能になる。だがこの方式ではプレイヤーはより効率的で上手いやり方を編み出そうと考え始める為、それはモニターの前での“ゲームとしてのプレイ”となり、ゲーム内世界への没入感や恐怖感は失われて行ってしまう」 それとYoutubeではホラーゲームのフェイスカム実況(プレイしながら自分の顔やそのリアクションを撮影して、その映像をプレイ動画の中に埋め込んで見せる動画)が一大人気となっているが、グリップはこういった物もホラーゲームにおけるプレイヤーの反応を観察する上で有用だとしている。「本来ならば死の瞬間は最大の恐怖の筈だが、動画を見ると死の瞬間に笑っているプレイヤーも居る。何故ならゲームでの死を悲劇では無く、逆に一種の安心や解放だと捉えているからだ」。 ここでのSOMAの対策は、死よりもプレイ中の方が怖いという風に感じさせるデザインの採用。実はプレイヤーが死亡する瞬間というのは、上でも触れた様に大して怖がられない。単に「この敵に捕まったらあの死亡ムービーが流されるんだな」程度の認識である事が多い。だから死亡時の演出やムービーに力を入れて、「死んだら怖いぞ。こんな風になるんだぞ」という脅しを掛けても、実際のプレイ中の恐怖感を増すのには効果があまり期待出来ない。そこでプレイヤーの死亡シーンなどは無視してしまい、労力は純粋に敵その物を怖がらせるという方面に注ぎ込んで、「死んだら怖いぞ」では無く、「死んだらまたこの怖いセクションをプレイしないとならないんだぞ」という風にして恐怖(緊張感)を与える様にする。 実際にSOMAではダウン後は何も演出が無く、ロード無しにすぐにその場からリスタートとなり、死亡時もコラージュ的な映像が5秒ほど流れてからやり直しになるだけ。この死亡時の扱いに関しては確かに非常にアッサリとしており、その分だけ他でも述べた様に敵に対峙する際の恐怖の方に力を入れているというのは感じられる。 最後に死の扱いに関する問題点として、リプレイ時にもそのセクションは同じ状況な為に単調な繰り返しになってしまうという件を挙げており、これに対しては死亡後にはマップ内の状況や形状を変化させる方法で対応すると語っている。Amnesia: TDDでも行っていたがそれは微細な変化だったので、SOMAではよりダイナミックな物にするという方向性。しかしプレイした感想としてはその様な変化は体感出来ず、このシステムはカットされて無くなってしまった様な印象を受ける。若しくはダウンした地点からのリスタートなので変化が生じると言いたいのかも。もし導入されているのだとしても、微細過ぎて判らないのでそれはそれで問題。リトライ前よりも消えているライトが増加してより暗くなっているかな?と感じたケースがあった程度で、同じ内容をリプレイしているとしか感じられず。この点は残念である。 |
GRAPHICS |
バージョンアップされた自社製のHPL 3 Engineを使用。これまでは同時代比較でそれなりのグレードという程度だったのが、今回は表現力を上げて他社の高度なエンジンにも負けない様にする為に大幅な改造が図られている。このエンジンの改良の目処が付くまでゲームの開発の方は停滞していた為に、それが理由で完成が一年遅れたと話している位。 描画がOpenGLベースなのは変わらず。グラフィックス関連の設定項目は多く、自動判定機能も備えている。最高設定にすると当然重くなるが、激重という程では無いという印象。それに関連してフルダイナミックでのライティング処理はやはり重過ぎる為に、シーン別に負荷を調整して一部をカットしているそうである。 売りの一つに挙げているのがストリーミング機能で、複数のマップの接合点を感じさせないレベルでデータを読み込む事が出来る。これによりローディング画面の少ない、出来る限り連続した状態でのプレイが可能。だがその件で問題も感じられた。まず起動後の初回ローディングが非常に長いケースが多い(全回では無いのだが)。それとストリーミングで起こりがちなテクスチャの貼り遅れもマップ開始時に発生する事があった。 見た目として良かった点はモンスター達の造形とアニメーションで、これはかなりデザインとしても優れていると思うし、作り物ではなく生き物的な動きをちゃんと見せてくれる。施設内の各種オブジェクト類の数の多さ&作り込みの細かさによるリアリティへの貢献も評価出来る点になるだろう。 対して気になったのは水の描画。流れている水、或いは垂れているオイルの表現などは満足の行くレベルでは無い。同様に海中移動のシーンが結構多いのだが、どうも見た目に水中を移動しているという感じがあまり良く出ていない感じがした(深海の方はそれよりはずっと良いと思ったが)。 |
SOUND |
前作Amnesia: TDDでは新しくなったWindows(Vista/7)におけるサウンド処理へのサポートの難しさから、デフォルトの状態ではハードウェアアクセラレーションに対応していなかったが、今回は3Dサウンドに対応している。5.1ch SP環境での定位感も良く、特にホラー物については敵を含めた周囲の位置情報が3Dで聞けるのは臨場感の面で大きなプラスになる。 一方でヘッドフォンユーザーが多い点にも考慮しており、主人公のサイモンが潜水服を着ているシーンも多い事から、ヘルメットを被っているかの様な再生を実現する為にバイノーラル録音での収録が行われている。 リアリティという観点からすると、BGMの扱いをどうするのかは悩ましい。状況に応じてそれに適したBGMを流しプレイヤーの心境を変化させたりするというのは有効な手段。しかし実際に施設内を移動する際にBGMなどは流れていない訳だから、その意味ではBGMはカットして環境音だけにした方がリアルである。SOMAでもリアルさ優先で後者の方針で制作していたそうで、例えば怖くなるシーンでそういったBGMを流し始めるのは、ゲーム的な印象が強過ぎて好ましくないという考えからである。だが実際にいろいろと試してみると、適切なBGMを適切な音量で流せば、それはプレイヤーの印象にあまり残らないという事実に気が付く。つまりサブリミナル効果の様に「ここは怖くなるシーンだぞ」という感覚をプレイヤーに与えながらも、BGM自体はプレイヤーにそれが鳴っているという印象がほとんど残らない様にして、BGMを利用する事は可能だという結論に至る。つまりBGMが鳴っていない方がリアルな表現になるとは限らない。そこでBGMはもっと多くの場面で鳴らすようにデザイン変更されたそうだ。 続いての問題はモンスター出現時のBGMの扱い。定番の利用例としてモンスターが追跡モードに入っている際はBGMを鳴らすというのがあるが、これにはBGMが途切れた時点で敵の警戒が切れたという情報をプレイヤーに与えてしまうと言う問題がある。そこでSOMAではモンスターが興奮状態になった際に派手で煽る様なBGMを鳴らすが、その状態を脱した時点で止めるという風に処理している。つまり警戒状態を解いた時では無く、興奮状態が解かれた時点で止める。よってBGMが鳴り止んでも、プレイヤーにはモンスターがこちらに警戒している状態なのか、全くの無警戒状態なのかは判断出来ない。 モンスターに関してはほとんどが元は人間だったという設定から、常に何だか意味の解らない様な音声を発し続けているモンスターが多く、位置が判り易い代わりに非常に気味が悪いという効果を挙げている。それとこのゲームにはビックリ系の演出はほぼ無いのだが、敵が興奮状態になった際のBGMや叫び声などはかなり大きめの音量で再生されるバランスに設定されており、脅迫的なビートの派手なBGMをバックに大きな足音を立てて叫びながら疾走してくるシーンなどは相当なプレッシャーをプレイヤーに与えて実に怖い。 全般的にホラーゲームとしてサウンドは良く出来ている。本題のホラーの方は考えさせるタイプの物なのでサウンド関連とはマッチせず、モンスター関連の要素は副次的な扱いとは繰り返し書いているが、モンスターのサウンド関連においては一切の手抜き無しと考えて良い。 |
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