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シ ス テ ム

キャンペーン
 難易度は無し。アイテム持ち越しの二周目やクリア後の別モードは持っていない。


セーブ&ロード
 オートセーブが1スロット。他に任意の場所でセーブも可能となっておりスロットは4個。これは古い物から順に消えて行く仕様。


OBJECTIVES
 現在の目標の参照機能や矢印による方向ガイド機能は無し。全体マップの表示機能はあり(マップ入手要)。


英語
 字幕有り。日本語には非対応。英語量は少ない方。ただしオープニングとエンディングは主に英語文での説明となる。


その他

*キーアサイン不可×, マウス感度設定可○, マウス反転可○, 明るさ調整可○
*一人称視点固定, FOV調整機能無し
*スプリント○, 屈み○, ジャンプ○
*照準(カーソル)有り
*Steam実績対応

BASICS
 自らの謳い文句は“first-person thriller adventure”。より具体的には昔ながらのポイント&クリック式のアドベンチャーゲームと近年流行の一人称視点でのマップ内探索要素(ウォーキング・シミュレーター)をミックスさせたゲーム性で、ストーリー的にはホラー風味を加えたナラティブな物という感じになる。

 戦闘やステルスの様なゲームプレイは含まれていない。また通信による会話シーンは存在するが、ゲーム内で別の人間に遭遇したりという事も起きない。後はホラー要素を含んではいるものの、雰囲気的な物であってジャンプスケア系は無し。


 トレーラーやストアでの説明文からの事前予想とは違っていた面も有る。具体的な名前としてはThe Vanishing of Ethan Carterの様な同じく謎解きと探索をミックスしたタイプを想像していたのだが、実際にはこのゲームはアドベンチャーゲームの要素の方がずっと大きい。予想ではアドベンチャーとウォーキング・シミュレーターの両要素は6:4程度の比率かと考えていたのだが、終えた時点では8:2程度という印象である

 ウォーキング・シミュレーターと言われるゲームで舞台がアウトドア中心とするならば、大抵はマップは広大(何も無い場所をこんなにも長時間歩かされるのかと不満が出るくらいに)というのが相場だが、AtIaSTではマップサイズはかなり小さめとなっており、スタート地点の家から半径数百メートル程度しか拡がりは無し。一度訪問してマップに記載された場所はファストトラベルに対応しているので、再度実際に時間を掛けて移動し到達する必要も無くされている。また重要地点以外には何も集めるべきアイテムは無いので隅々まで探索して回る意味も無く、全プレイ時間中における「歩いてマップ内を探索している時間の割合」は少なくなっている。よって広大なマップ内を歩き回って風景を楽しみたいという方には相当に物足りないであろう。


 ストーリーについては、オープニングは3分ほど紙芝居形式で簡単な設定の説明があり、エンディングも同じく紙芝居形式。この辺りを3Dのキャラクターを用いたムービー形式では行えない所は、低予算のインディーズ会社としては仕方の無い面と言える。

 トップにも記した様にストーリー設定はエリザベス・キューブラー=ロスによる著書『死ぬ瞬間』をべースにしており、このEP1はその第一段階となる「否認」がテーマだそうなのだが、プレイし終わってもどの辺がそのテーマに即しているのかは解らなかった。もっと大枠で5部作が完結すれば理解出来るのかも知れないが、単体でも完結しているという言うからにはプレイし終わってもそれが理解出来ない以上は、このテーマを用いているという件はストーリーを魅力的で面白くするという観点からは何のプラスにもなっていないと言わざるを得ない。

 その一方でストーリーの内容その物は面白いと言える。怖いというレベルでは無いが周囲の状況や雰囲気には不気味な物が有り、ここで一体何が起きていたのかという興味で終盤まで引っ張るという魅力を備えている。続編にてどういう意味だったのかが解説された際にそれが面白いのかはまだ何とも言えないが、少なくともここまではミステリアスで期待させられるレベルの仕上がり。断片的にしか入手が出来ない為にノートブックに記載される情報量は少ないのだが、それ等を発見した各種事項と結び付けていろいろと想像を巡らすのは楽しかった。


 しかし終盤になってちょっと方向性が変わってきて、「これってそういう方向の話なのか?」という戸惑いはあり。それまでの状況の解釈の仕方が正しかったのか疑わしくもなり、ちょっと違う解釈をしないとならないのではないのかと混乱させられる面が生じてしまっていた。特にエンディングなどは唐突過ぎて、?マークが幾つも思い浮かぶという感じに。「そこで終わってしまうのか」では無くて、「何これ? 意味が解らない」という終わり方である。

 この点は評価が微妙でもあるのだが、次の話がいつ見られるのか確定しているor既に完結している連続ドラマや小説とかなら、意外な出来事の発生にて「次回に続く」となっても大きな問題は無い。だがこのゲームでは発売から現時点で既に2年半が経過しており、次作がリリースされる時期もアナウンスされていない。もっと言うなら続行出来るのか自体が怪しいとも言える状況にある。そうなるとこの状態での引き延ばしはリアルタイムでプレイしていた人達にとっては訳が解らないままでの長期間放置という意味合いでマイナス要素に成りうる。私自身も後に続編にて解説されて納得すれば訂正はするつもりだが、この終わり方で説明無しに年単位で放置されるとなればマイナス要素という印象しか持てないというのは確かである。(無料で配布される予定の前日譚のコミックスを読めばある程度は解決されるという可能性はあるのだが)。

GAMEPLAY
 プレイ時間は4時間半程度。アドベンチャーゲームとしての謎解きがメインなので、当然それにどれだけ悩まされるかによってこの時間は変わってくる事になる。なお全て答えを知った上で通してプレイする分には1時間も掛からない様である。それだけ物理的な広さは持っていないという意味になる。

 先に探索要素の方から。低予算というのもあってグラフィックスは技術的には大した事が無いが、マップ内の作り込みは結構凝っており“リアリティ”という点では一定の評価を与えられる出来映え。とりあえず粗いポリゴンで風景らしき物を簡単に作りましたという感じでは無く、地面の起伏や木々の生え方などはかなり複雑な形状をしており、実際の地形をデータとして取り込んで再現したかの様な(ただしグラフィックスのクオリティとしては平凡)印象を受ける。よって実際に現地を探索している様な雰囲気はある程度出せている。しかし上で書いた様に探索可能なエリアが狭い上にファストトラベルが出来る為に、歩き回って移動している時間が短いという面は持っている。

 NPCとの直接の接触は無し。これも低予算だと3Dのキャラクターを用意してアニメーションさせるのが困難という件からの設定と思われる。通信にて他者と会話するシーンがあるのみで、そこでは選択肢も出て来るが分岐要素とかは無し。


 主役となる謎解き, パズル要素について。これは一般的なアドベンチャーゲームと変わらず、特に変則的な設定の物は用意されていない。種類はバラエティに富んでいるが、どちらかと言えば純粋なパズル系よりも、回収したアイテムを利用したりする論理的な謎解きの方が多目。インベントリー内でのアイテムの組み合わせや、別のアイテムへの使用などはあり。引き出しを開けたりする際にはマウスで持ってその方向に動かして開けるというやり方だが若干やり辛い(とは言えこの手の操作を要求されるシーンは少ない)。アイテム類はハイライトされるので解り易く、またカーソルを合わせた時のアイコン形状で何が出来るのかも解る様になっている。

 何かが存在している重要なロケーションの探索順には自由度があるが、パズルの解決順はほぼ固定されているというタイプ。目の前にパズルらしき物が存在する際に、それが解けるのかどうかは概ね以下の様に分けられる。

1. 現在の自分の所持アイテムの範囲内で解決が可能
2. 現在の所持アイテムでは不可能。ただし現時点で行かれる範囲内で入手可能なアイテムを持ってくればOK。単に来る順番が早過ぎたというケース。
3. 先に別のパズルを解いて別エリアにアクセスしてからでないと解決出来ない。つまりここは後回しにしないとならない。

 このいずれに当たるのかは判別不能なので、とりあえずは到達する事が可能なエリアは全て回ってみて、まずはアイテム回収に専念するという方法が一般的となる。


 シンプルで簡単な物も含まれるが、半分位の謎解き(パズル)の難易度は結構高目。純パズル系が少ない(純粋なパズルは解らないケースでは徹底して解らない), ロケーションが少ない, アイテム数が少ないといった構成なので難解という程ではないが、それでもプレイ時間の大半はその解法を考えている時間に充てられる事になるだろう。それもあってか自前のヒント頁が用意されており、メニュー画面からでもアクセスが可能(WEB頁が別に開く)。この頁はUHS風の自作ヒントシステムとなっていて、単純な作りでは無い点には好感が持てる。内容は英語だが簡素ではあるし、攻略動画等にて直接的な答えを見たくないという方には非常に役立つシステムになっている。

 ※補足としてUniversal Hint Systemについて。これは相当昔から存在しているアドベンチャーゲームのファンには有名なサイトの名称で、基本的には無料で利用出来る。(現在では活動が停止している様に見えるが運営状態がどうなっているのかは不明)。謎解きに詰まってしまいその解答を一般的なWalkthroughにて見るという行為は、アドベンチャーゲームではそれこそがメインなので出来ればしたくない。考えても解らないからといって次々に答えを見て進めたのでは味気ないからである。そこでUHSとは、直接的な答えでは無くヒントを貰って自分で考えてみるというやり方の方が理想的だとして作られたサイトである。ヒントが何段階にも分けて作成されており軽度な物から順番に公開されていくので、そのヒントでも解らなかったら次を開けるという風にして直接的な解答はなるべく見ない様にしながら進められるという利点がある。

*パズルにおける問題点や解決を難しくしている要素

・同じオブジェクトから複数の物が取れたりする。何かが取れた時点で終わったと判断しての見落としの恐れあり。
・使ったアイテムを回収して何回も使うケースあり。終わったとして置いていってしまう危険性(ただしファストトラベル有りなので回収は容易)。
・複数回Useキーにて操作しないとならないオブジェクトが有る
・アイテムが進行に応じて変化する事がある。インベントリーを観察して気付かないとならない。
・何を要求されているのか自体が解り難いケースあり(ヒント頁が助けになる)
・(ネタバレを避けて詳細は省くが)明るさ調整が適切でないと意味合いに気付かない危険性の箇所あり


*パズルの解決を助けている便利な要素

○アイテムは使用可能であるならば自動判定で使われる(インベントリー内で選択してから使う必要無し)
○アイテムをある場所にセットするケースでは外形表示によるヒントが出る事が多い
○ヒントとなる文書類は全て携帯しており、ノートから何時でも参照可能なのでメモを取る必要は無い
○フィードバックに応じて難解とされたパズルは改変されたりしている


 総合的に見て謎解きのクオリティは良く出来ているという結論。難易度として特別に難しい訳ではないが手応えは十分にあって楽しめるし、いろいろと種類がバラエティにも富んでおり、純粋なアドベンチャーゲームのファンであっても満足の行く水準と思える。逆に言えば一般的なウォーキング・シミュレーターの様にプレイヤーをパズルで苦しめる意図が薄い物と比較すると難易度は高目であり、パズルで苦労するのが嫌いなプレイヤー向きではない。ただし親切なヒント機能を持つので問題は少ないとも言える。

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