次の頁 TOP |
シ ス テ ム |
キャンペーン 難易度は無し。アイテム持ち越しの二周目やクリア後の別モードは無し。クリア済みのチャプター選択は可能。 セーブ&ロード チェックポイントセーブ方式。ただし一時的な(メモリー)セーブを使用しているので注意が必要。ゲームをプレイ中はチェックポイントへと戻る事が出来るのだが、これはメモリー上への保存であって物理的にHDD等へとセーブファイルとしての保存はされない。物理的に保存されるのは各チャプターをクリア済みかどうかというデータだけとなっている。よってゲームを終了(メインメニューへと戻る)させてしまうとチェックポイントへは戻れず、常に現在のチャプターの先頭からのプレイとなる。この手のセーブ方式を採用しているゲームとしては大手ではDead Space 3, Operation Raccoon Cityとかが在るが珍しい仕様ではある。 これは意図的にではなく技術的な問題が原因で、リソース(人員&予算)や時間的にセーブ機能を作る事が出来なかったのでこうなっている。一応制作のKrillbite Studioの名誉の為に補足しておくと、セーブ機能を作るのは無理という制作チームはここだけではなく、セーブ機能の制作チームを専用に持てるレベルの予算がある大手のゲームでないと困難という声はインディーズゲームのインタビュー等にて時に聞かれる。 10年以上も前からFPS/TPSゲームではチェックポイントセーブが定番と化しているが、これは特に何も無い場所でプレイヤーのステータスを保存するだけのシステムであり、マップ内の状況を保存したりする機能は持っていない(チェックポイントから以前の場所へとは戻れない仕様なのでそれでOK)。現行のゲームエンジンにはこの基本的なチェックポイントセーブ機能しか実装されていないのが普通である。よってオープンワールドとかのマップ内状況を保存する必要があるゲームでは、独自にそれを可能にするプログラムを開発しないとならなくなっている。そして一般的なゲームにおいても、マップ内を戻ったり出来るとかが可能ならばセーブ用のプログラムを作る必要が出て来る。厄介なのは昔と違って地形破壊だとかのマップ内にて変化する要素が増えていることで、特に物理演算の対象オブジェクトが大量にマップ内に用意されていると、それ等が現在どういう状況になっているのかを全て記憶するのにはセーブ時間&データ量が増えるという問題が生じてくる。もちろん再度マップ(エリア)にアクセスすると全てが初期状態に戻るという設定にしてしまう事も可能だが、その辺りがどの位大変になるのかはどこまでセーブを正確に行う必要があるのかによって変わってくる。このゲームではその仕様の分析の結果、とても大変なのでカットせざるを得ないとなったという事である。 とは言え導入が不可能では無い訳だし、これが大きな欠陥となっているのは確かである。一度そのチャプターでの進行方法を理解すれば、そこに戻るまでに最初からやり直しても時間は掛からないから大きな問題では無いといった擁護も見受けられるが、ゲームがエラーで落ちた際にもやり直しとなるし、好きな時に止められないのはとても不便。それと難所とかは無いのでやり直しになっても楽とも言われているが、特別に何も無い箇所のやり直しは精神的に苦痛で詰まらないと考える私の様な人もいるので欠点だと言わざるを得ない。 OBJECTIVES 現在の目標の参照機能や矢印による方向ガイド機能は無し。ミニマップを含めてのマップ表示機能なども持っていない。 英語 字幕機能有り。赤ん坊自体が会話をしないので全体の文章量としては少ない部類。 その他 発売後に無料のDLCとして「プロローグ」が追加されている。注意点として「プロローグ」だからと言ってこれを本編よりも先にプレイしてはならない。本編のネタバレが豪快に含まれている。事故を防ぐ為にもこれは本編クリア後にアンロックされる形式にした方が良いと思う。 同じくミュージアムがEnhanced Editionでは追加されている。こちらも同じくネタバレ満載だが、ゲームの資料館という案内なのでそこは本編未プレイユーザーでも予測は付け易いだろう。 コメンタリー機能あり。しかしこのコメンタリーには字幕が付かない。またコメンタリーのアイコン表示やその配置が悪くてとても使い難い。アクセス済みでも消えない(区別出来ない)、シーンが切り替わっても残ったままとか、一つにまとめれば良い物を多数に分割しているのでアイコンだらけ等。 *キーアサイン可○, マウス感度設定可○, マウス反転可○, 明るさ調整可○ *一人称視点固定, FOV調整機能有り(垂直60〜90) *スプリント○, 屈み○, ジャンプ× *照準(カーソル)はON/OFF可能 *Steam実績対応 |
BASICS |
制作がスタートしたのは大学時代からで、赤ん坊が主人公, ホラー風味, テディベアがお供といった基本線は決まっていたものの、実際にどういうゲームにするのかに関しては紆余曲折があった作品となる。当初はプレイヤー側から積極的にいろいろと何かをするアクティブなタイプのゲームとして作られており、モンスターとの対決やパズルを解くのにお供のテディベアの持つ幾つかのアビリティーを利用して進めて行くという形式だった。つまりサバイバルホラー的なデザインであった。しかし主に敵の移動パスなどのAIの制作が上手く行かずに断念。そこからは探索を重視した受動的プレイスタイルのアドベンチャー風のゲーム性となり、ホラーの方も前面に推し出すという姿勢から雰囲気的なやや引いた位置付けへと変えられている。 結果的にベースとしては探索アドベンチャーゲーム。テーマはホラーだが「ホラーゲームの中でも探索要素が強い作品」と言うよりも、「探索ゲームでその環境がホラー風だったりもする作品」と言った方が適切であろう。ホラー>探索ではなく、探索>ホラーという印象で、これを“ホラーゲーム”と呼ぶべきかどうかは微妙なところ。 次にプレイヤーが操作するのが2歳の赤ん坊という点も非常にユニークな特徴となるが、これも当初の赤ん坊シミュレーター的な狙いから変化している。最初はリアリティを出す為に、例えば階段を下りるには手摺りを掴んで補助としないとならないという設定だった。しかし実際にプレイをしてみると単に面倒なだけで、移動が非常にスローペースだとゲームとしては詰まらなくなるという結論に達する。 そこで実際の作品では赤ん坊の動きはかなり軽快にされている。階段はそのまま下りられるしその速度も別に遅くはない。様々な物に簡単によじ登れて、下りる際も慎重に段階を辿って下りるのでは無く、大きな段差では無いのならば上から一気に下まで飛び降りてしまえるという設定。2歳児とは思えないほどの身体能力を持った赤ん坊という設定になっており、リアリティは薄れているがゲームとしては移動時のストレス等が軽減されている。 移動モードは立っての移動とハイハイによる移動の二種類。二歳児だけにハイハイによる移動の方が速いという設定になっているが、立っている時にはスプリント(駆け足)モードが可能でこれの方が視点が高いので周囲は見易い。ただこのモードだとしばらく進むと転んでしまうという欠点がある。後は立っている状態では左右へのリーンが行える。 背が低いというのも普通とは違う点で、背の届かない場所にアクセスするには何かを台にして使ったりしないとならない。台があるならスペースバーにてよじ登り動作を行える。他には様々なオブジェクトを掴む事が出来るようになっており、マウスの動きと連動させて引き出しやドアを思った方向へと動かしたり、軽い物であれば右クリックにて放り投げられる。 ゲームとしてはスキルを要求される様な難しいアクションは要求されないし、シビアなタイミングを合わせて何かをする様な箇所も無し。よってアクションが苦手という人でも問題は無いだろう。操作上の問題では障害物へのよじ登り動作の際に、位置関係のズレが原因と思われるが繰り返しよじ登り動作を行ってしまい視点が変な動きをするという状態に何回も遭遇した。 このゲームはアナウンス後に各所からの批判めいた騒動に巻き込まれている。その内容を簡単にまとめると、「二歳の子供を危険に曝すなどというゲームが存在して良いのか?」, 「ゲームオーバーにおいて子供が死亡するのだとしたら大きな問題である」の二点である。これに対しての返答は「これはリアルな世界を扱ったゲームでは無い」、もしくは「少なくともリアルな世界だとプレイヤーが認識するようにはなっていない」となる。 モンスターやゾンビ等が出て来るホラーゲームにおいて、主人公がそれと相対するのは現実世界の中であるという物は多い(ゲーム自体は仮想の存在だが、ゲーム上の設定としては現実世界の意味)。つまりプレイヤーの操作するキャラクターは実際に危険に曝されているし、攻撃されれば死んでしまう恐れもある。一方でAtSではファンタジーあるいは悪夢的な世界をテーマにしており、リアルな現実世界を扱ったデザインでは無い。例えばストーリーの解説は縫いぐるみのテディベアが喋べる事で補完されるようになっているし、訪問する世界は森林や洞窟などへとワープし周囲の現実世界に限られない。また精神世界のようなシュールで非現実的なロケーションも登場する。もしこのゲームを「現実の世界設定の中において、そこに出現したリアルなモンスターから二歳児が実際に逃げる設定の物」だと想像しているならそれは誤りである。何等かの失敗によりチェックポイントへと戻されてやり直しになったりはするが、その際の表現は明確に死亡したとかでは無い曖昧な表現に留まっている。 |
GAMEPLAY |
ボリュームは短めで、マップ内をある程度は探索しながらでも3時間半程度だった。クリア後にプレイした無料DLCのプロローグもせいぜい30分の長さ。 この短さには理由があって、第一にこのゲームにはマップ内にドキュメント類が存在しない。主人公は赤ん坊なので文字は読めない訳だが、ゲームなのでメタ視点からプレイヤーは読めるという風にしても良い。だがマップ内の普通の文字すらも記号化されており読めない(赤ん坊からはそういう風に見えるという意味)と徹底している。よって発見したドキュメント類を読む時間が存在しないとなっている。 第二に引き出しや戸棚の様にインタラクト可能な場所は多いのだが、そういった所にはドキュメント類や必要なアイテムは隠されていない。脇道探索とか引き出し類を開けてみるという行為は実績(トロフィー)対象の収集アイテムを見付けるという意味しか持っておらず、それに気が付いた時点で興味が無いなら無視して進められる様になるので早い。 第三に高いスキルを要求する様な難しいセクションは存在せず、謎解き関連も易しい部類となっており、長時間詰まる恐れのある箇所が無いというところ。 よって2時間程度でクリア出来てしまうという人も居るが確かに急げばその通りだろう。開発側も平均クリア時間は3時間程度を想定としており(なお発売前は4時間だった)、無駄にプレイ時間を延ばすのにボリュームを水増ししても意味は無く、内容が濃い物を短時間プレイする方が良いとのコメント。実際にボツになったレベルがミュージアムに展示されており、これを入れればもっと延ばせていたはずである。 この短過ぎるという件についての不満は多く挙がっており、掲示板やレビューでも目立っている。しかし個人的には「こんなに短いの?」感は別に無く、これよりもワールドの数が一つ二つ多くても良かったとは思えるが、純粋に短過ぎて減点対象というほどではなかった。おそらくこの件への不満は「純粋に短いのが不満」ではなくて「価格の割には短過ぎる」という理由が大半を占めているのだと考えられる。私もフルプライスで買っていたら同じだった可能性が高い。 背景設定は先に記した様に現実のリアルな世界を舞台にはしていない。「現実世界」とはゲーム内の設定での意味だが、つまり現実世界にやって来たモンスターを相手にして、現実世界で赤ん坊が活躍するという設定では無い。ではどういう設定なのかとなるとちょっとこれは説明しにくい。説明が難しいのではなくて、どういう話だったのかが最後に解るという風な進行なので、説明にネタバレ的な内容を含んでしまうからという理由によってである。とりあえずはハブを起点にして幾つかの異なるワールドを探索していく形式とだけ書いておこう。なおプレイヤーが子供視点になりきっての没入感を高める為に、主人公の子供に特別な設定は用意されておらず匿名的な存在とされている。 エンディングは一つだけで意味合いとしても解り易いとは思うが、確信が持てなければコメンタリーモードにして最後のチャプターをリプレイすればよりハッキリと理解出来る筈である。このエンディングについては「こういうストーリーは良くない」という声も出ており、私はこういうストーリーでもOKと思うが、この結末を嫌う人がいるというのは理解出来る。 ドキュメントが無いゲーム中において唯一とも言える解説のトークを行ってくれる相方のテディベアは、普段は背中にぶら下がって同行している。特殊能力としては抱きしめる事で短時間灯りを発してライトの代わりになってくれる。プレイ前にはこのテディベアの果たす役割は大きいという期待を持っていたのだが、実際には想像以上に空気の様な存在でそこはガッカリとさせられた点。灯りになるとは言ってもそれほど必要とされる場所は無いし、抱えているとリーンやらスプリントやらの特殊動作が不可になるのであまり使いたくないという面も持っている。そして重要なポイント以外ではほぼ意味のあるコメントを発しない。結果的にプレイしている大半の時間中、テディベアを連れている事を忘れてしまう位に希薄な存在でしか無く、期待していたテディベアとのコンビで様々な作業を行って進めていくといった要素はほとんど含まれていない。 マップ進行のルート探しは概ね簡単で、先に書いた様に実績(トロフィー)にこだわらないのなら脇道は無視して進めても問題無いので迷い難くなっている。後半暗い部分が増えたり、迷路的な場所も中には在るが、大した苦労はせずともルートは見付けられるはず。同時にパズル要素も重視されておらず、深く考えてパズルを解く必要がある箇所はほぼ無し。アイテムを要求される場所でも見付けるのは簡単。これ等はプレイヤーが途中で詰まったりする事を避けて、テンポ良く雰囲気を味わいながらスムーズに進行が出来る様にするという狙いからの意図的なデザインである。従って広範囲の自由な探索やパズルを好むプレイヤーには向かないゲームとも言える。 ホラー要素は控え目な設定。繰り返しになるが「ホラーゲームでマップ内の探索を重視しているタイプ」ではなく、「探索重視のゲームで環境や雰囲気がホラー的な要素を含んでいるタイプ」とする方が適切。別の言い方をするなら、私の定義としては「ホラーゲームとは手法の違いはあれ、本気でプレイヤーを怖がらせに来ている物」だが、AtSからはプレイヤー震え上がらせてやろうといった意図的で強硬な姿勢は感じられない。あくまでもホラー感を持った環境(マップ)の中を探索し、その雰囲気を楽しむというデザインの作品である。 まず定番のジャンプスケアは無し。そして敵と直接対峙する必要があるサバイバルホラーでも無い(赤ん坊なので戦闘手段を持っていない)。敵は出てくるが、それから逃げるという回避のみとなる。しかし敵の追跡能力が高いとか移動が高速とかでも無い上に、こちらのハイハイでの移動がかなり速くて、またベッドの下等に潜り込んでしまえば捕まらないので回避は簡単という設定。ついでに書くと開発中に悩まされたという敵のスタックするバグは完全に治っておらず、誘導して引っ掛けて切り抜けてしまえたりもする。という風に追って来る敵から逃げ切る難易度は低くなっており、それ故に追われる怖さも低減されてしまっている。 ただしこのゲーム、雰囲気重視のホラーとしての出来はとても良い。純粋なホラーゲームにおける評価では、実際にどれだけプレイヤーを怖がらせる事が出来たかが最重要だが、このAtSの様に直接的なホラーに重点をおいていないゲームでは評価の仕方も変わってくる。その意味でダイレクトに怖がらせるタイプでは無いが、ホラーゲームとしての出来は良いとなるのだが、ちょっと複雑なのでその辺りを丁寧に解説してみよう。 このゲームは主人公が子供である事から、子供時代における恐怖という面をメインに据えており、その点で多くのホラーゲームとは異なっている。子供時代のホラー、即ち子供が怖がる様なホラーとは、既に大人のプレイヤーにとってはあまり怖くないというケースが多い。イメージとしては例えばだが「子供が怖がる絵本」を思い浮かべてもらえば良いだろう。この様な絵本は大人から見れば怖くないからと言って、どんな物でも一緒かと言えばそうではない。怖い絵本としてのクオリティには当然差がある事になる。そして中には「子供向けだが内容としてはとても良く出来ており、子供を非常に怖がらせるには優秀な出来映えである」とまで高評価されるレベルの作品もある訳で、このAtSはそういう意味での優れた内容の作品になっている。子供向けの怖い絵本の全てが大人にとっては読むに値しない様な内容かと言えばそんな事は無いという話であり、雰囲気的なホラーとして見るなら大人でも擬似的に怖がれるし楽しめる作品は存在する。 つまり自分が子供になりきって、童心に帰ってプレイすれば怖いし内容も良く出来ているという形での高評価。大人が実際に震える位に怖いのかとなると全然そんな事は無いのだが、子供視点をシミュレートする様な精神でプレイすれば怖さも感じられる、「大人でも楽しめる上質な子供向けのホラーストーリー」といった感じに仕上がっている。 |