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シ ス テ ム

キャンペーン
 難易度は無し。ゲーム進行の設定を変えられる拡張モードを持っており、これは一度クリア済みでは無くても変更が可能。最初からライトを全てオンにしたり、鍵の掛かっている箇所を全て開いた状態にしておいたりにも出来る。また開発者コメンタリーモードも用意されている。だが初回プレイではデフォルト状態でのプレイを推奨する。


セーブ&ロード
 オートセーブ。保存は一箇所のみを上書き。


OBJECTIVES
 マップ表示機能を備えており未探索エリアの確認も行える。また新規に発見があった際にはその情報がマップに書き込まれたりもする。現在の目標の参照機能や矢印による方向ガイド機能は無し。


英語
 字幕機能有り。日本語対応。


その他

*キーアサイン可○, マウス感度設定可○, マウス反転可○, 明るさ調整可○
*一人称視点固定, FOV調整機能有り(垂直60-90)
*スプリント× , 屈み○, ジャンプ×
*照準(カーソル)ON/OFF可能
*Steam実績対応
*オブジェクト類を指した時のオーバーレイテキストの表示をON/OFF可能

 他に照準補正機能という設定があり、これを使うと何か情報が表示されるオブジェクトを指した際に照準の速度がスローダウンしてそれを知らせてくれる。反応がある物を探す時には便利だが、反応が有る物が多い場所だと照準の動きがコロコロと変化してしまうのでやり難いというデメリットを持つ。

BASICS
 ゲームのデザイン面に関していろいろと。「ゲームのデザインとは足し算では無くて引き算である」というのを聞いたことがあると思う。あれもこれもと面白いと考える要素を詰め込んでしまうと焦点が絞れなくなって逆効果となる為に、むしろ有った方が面白くなると考える物でも削れるだけ削って、“これだけは”という少ない要素のみに絞った方が効果的であるという思想。このゲームもその思想に基づいてデザインされているが、これは低予算と少人数という現実的な理由から。それまで関わっていた2K GamesでのBioshockシリーズの様に莫大な予算と人員が与えられている訳では無いので、「検討の余地無く切るしか選択肢が無い要素が多数」という状況にあった。しかし結果的には思い切って多数の要素を切れたお陰で成功する事が出来たとしている。

 チームは僅かに3人(+サポート1人)でオフィスも高額な予算も無し。大きな都市や街を制作したりは不可能なので一軒家というデザインに決定。一人称視点へのこだわりがある訳では無かったが三人称視点にすると操作キャラクターのモデリングやアニメーションを制作しないとならず、チームに制作のスキルを持った者が居ないので一人称に。登場する予定だったNPCも同じ理由の他に、移動させるのにはAIをプログラム出来る人間が居ないとならないからカット。戦闘をゲームに組み込んだ場合の製作負荷は非常に高いので無理。パズルもクオリティが高いレベルの物を多数用意するのは困難。

 こういった観点から、「普通のゲームでは必要とされている要素の大半を取り払ってしまった状態からでも新しい形態のゲームを制作する事が出来るのではないか?」と考えたという所から始まっている。具体的にはストーリーがメイン。ただしストーリーに重点を置いたゲームは既に多数存在しているので、その語り方や表現手法を新しい物にするといったアプローチが採られたという事である。


 続いて没入感(リアリティ)を非常に重要視している。CEOでデザイナーのSteve Gaynor曰く、「例えば最近出たゲームではThe Last of Usは没入感が高くて面白い。しかしこのレベルのゲームでさえ、相変わらずゲームの世界から現実へとプレイヤーを引き戻してしまう様な不味い事をやっている。マップ内を探索していると書き置きが見付かって、そこには『もう自分一人だけになってしまった。外からはゾンビ達が迫っている音が聞こえている....』云々といった事が書かれている。一体お前は何を書いているんだ? この書き置きは誰に宛てて書かれているのか? 今にもゾンビが扉を破って入って来そうな時にこんな日記みたいな事を書いている人間が居るか? AAAタイトルですらこんな不自然でゲーム的なストーリーや状況の解説方法がいまだに横行しており、それが面白いストーリーを味合わせる事を阻害している」

 「私の望むゲームとは、ストーリー関連の要素を目の前に強制的に突き付けない物である(ムービーにて説明が入ったりNPCがイベントで話し掛けたりで、強制的に同じタイミングで説明される形式)。そのロケーション内を自分が自由に歩き回れて、得られる情報は自分がその世界にインタラクトした際にのみ得られるという構造。それによってその世界内に自分が居るというリアリティが生まれる。それだとプレイヤーが必要な情報を得られない可能性があるという問題は生じるが、その辺はプレイヤーを信頼して任せるという姿勢を採るべきではないか」


 時代設定。リアリティを出すには出来るだけ現在に近い方が良いというのが最初の発想だったがこれには大きな問題が在った。ゲームのメイン要素が屋敷内の探索である事から、屋敷内に様々な書き置き類が残されている必要がある。しかし現代はEメールやスマートフォン(携帯電話)の時代であり、情報を得るにはその人間のコンピューターを起動してEメールのフォルダ内を探したりになるし、そもそも帰宅した際に誰も居ないのならばまずは当人に電話やメールで連絡してみるという話になってしまう。そこでインターネットや携帯電話が普及し始める直前の1995年という設定が採用された。それより前ならという事で60年代という設定も考慮されたが、その年代だと自分達が実際に暮らしていないので資料から制作するしかなくリアリティ面でマイナスになる。一方で1995年ならばゲーマーの年代層としても実際にこの時代を10代以上で暮らしていた人が多いから、リアリティを感じさせるという点では優位とされた。


 Unity Engineにて制作されているが、元々はFrictional GamesのAmnesia: The Dark Descentで使用されていたHPL2 engineを使用する予定だった。しかし公式ライセンスを貰えないかという交渉の段階で、エンジンの使用に関する公式のドキュメントが存在しないしサポートも保証出来ないとして、UDKかUnityにした方が良いとのアドバイスにより断られている。当時プロトタイプとして制作されたファイルはこちらからダウンロード可能。Amnesiaのカスタムストーリー用のファイルとしてインストールすればプレイ出来る。

STORY
 ボリュームとしては短めで、プレイスタイルにもよるが隅々まで探索するタイプの私でも3時間程度。早ければ2時間を切るという位しか用意されていない。コメンタリーモードや実績解除を目指してのリプレイ性は一応ある。

 ゲームメディアにおいて多数の賞を受賞したりと評判はとても良くて著名な作品ではあるのだが、その一方で批判も結構受けている。Steamでの評価も現時点では割れているという状況。どんなゲームでも人によって面白さの評価は割れて当然だが、このゲームにおいてはちょっと特殊な“批判される事情”が含まれているのでその辺を含めてストーリーの内容などを説明していきたい。


 未プレイの方はこのゲームの存在は知っていても、具体的な内容に関してはほとんど知らないと思う。私もプレイ前はそうだったのだが、「久し振りに帰宅してみたら家族が居ない。一体何があったのか? 何所に行ってしまったのか?」程度。

 まず最初に書いておくと、これはその初期設定から想像される様なホラーやサスペンスがテーマでは無い。家に居るはずの家族が全員居ない, 深夜に雷が鳴り響く屋敷内を一人で探索, ゲームのロゴ画像の雰囲気等からはそれが連想されても仕方がないとも言えるが誤解の無い様に。当時はインディーズからの一人称ホラーゲームが大きな人気を得て広まりを見せていた頃だったので、それもあってこれはホラー(サスペンス)物であると勘違いしての購入が結構多かったらしく、ところが実際にはホラーでもサスペンス物でも無いという事から「話が違う、騙された」となって批判が寄せられてしまったというのが上で書いた特殊な批判される事情の一つになっている。

 なぜこの様なスタイルにしたのかと言うと、ゲームに限った話ではないのだが「全くの平穏な日常が突如としてホラーやサスペンスの展開になる」というタイプのストーリーは山ほど有るが、その逆に「明らかにホラーやサスペンス展開を思わせる出だしだが、実際にはそんなことは全然無かった」という展開の作品はほとんど無い。その様に恐怖感から安心へと展開する様な設定を効果として創り出したかったのでそうしてみたという話である。


 次にストーリーの三本柱について順に解説していく事にしよう。このレビューにおける姿勢としては以下の様になる。

1.主人公: これは基本事項として明かす
2.テーマとして重点的に扱われている題材: これはこのレビューでは明かさない方針
3.そもそもどういった内容のストーリーなのか: これは核心事項なのでこのレビューでは明かさない


 1番の主人公はプレイヤーが操作するケイトリン・グリーンブライア(ケイティ)では無く、実質その妹である女子高生のサマンサ(サム)になる。ただし彼女を含めてNPCはゲーム内の世界には登場しない。ケイティはほとんど空気の様な存在で、サムや両親に比べてデータ(状況)などが提示されない為に全く印象にも残らない。なのでこのプレイヤーが操る探索者はケイティではなくても別に良かったのだが、テスターからは「徹底的に屋敷内を探し回っている行為が空き巣の様に感じられて抵抗がある」という意見もあり、それが許容される身内という設定に。そして屋敷内の間取りを知っているという設定では探索するのが不自然になるので、旅行中に引っ越していたという風にされている。

 進行としてはサムの日記の埋めていくという形で進められる。ゲーム内の世界においては、最終的にサムの日記その物を入手するのでそれで全てが解るという設定。対してゲーム的には日記に関連するアイテムを入手すると、メタ視点からそれに関連した日記のエントリーがサムのボイスとしてその場で再生されて日記の一覧も埋まっていくという構成になっている。その他には両親に関連する近況や、ケイティの知らなかった事情などがやはり探索によって明らかになっていくという風に進められる(両親はボイスなどは無し)。


 2番の重点的に扱われている題材だが、これはサムが好んでハマっていた事項に関連しており、当時のアメリカにおいてリアルに存在していた物。こちらは多数有るトレーラーやSSの中にはその内容が出ている物も含まれているし、ヒット記念に出された物理的なパッケージの限定版特典に関連グッズが付いて来たりもしているので、徹底して未プレイの人に隠そうという意志は無い様だがこのレビューでは触れないことにする。よって知りたくない人はSteamの商品頁(SSにそれが含まれている)を含めてあまり情報を集めたりしない方が良いだろう。


 3番目のストーリーの内容はネタバレに通じるのでここでは記載しないし、これは2番とは違ってさすがに制作側を含めてどこも(各種レビューでも)隠している。このメインのストーリーとは主人公のサムに関わる内容になるが、壮大でドラマチックな類の物では無い。両親に関連するサブ的なストーリーの方も同様に隠されている状況。

 そしてここでのストーリーの内容が隠されているという件こそが、先に挙げた“特殊な批判される事情”の最たる物となっている。例えばだがあるドラマを、1990年代のアメリカが舞台, 主人公が女子高生, ストーリーが面白いという情報だけを示して興味のある人に見せたとする。そうしたら実際の内容が、人間社会に潜んでいる悪のヴァンパイアと密かに戦っている女子高生スレイヤーの話とかであったとしよう。評価としても上々で面白いという人も多かったのだが、この様な見せ方では一定数の不満を持つ視聴者が出てしまうことは避けられない。理由は簡単で、ストーリーが面白いのならばそれがどんな設定のどんなテーマの物でも構わないという人は少数派であり、「ストーリー設定がこんな内容だと知っていたら視なかった」, 「面白いのかどうか以前にこういったテーマのストーリーには興味が無い」等が生じるからだ。つまり興味を持つ人を絞り込む前の括りが広過ぎるのである。

 このGHの問題というのもそれと一緒で、基本的なストーリーがどんな内容の物なのかすら明かしていないので、「ストーリーが面白い」という条件だけでそれに興味を惹かれるプレイヤーを集めたら、上の例と同様に「こういったストーリーを面白いと思う人にはそうなのだろうが、自分はこの手のタイプのストーリーには興味が無いので楽しめなかった」という人がそれなりに出てしまう事になる。それが原因で不評も結構多く見受けられるという図式である。


 そうなると当然の疑問となるのが、「では事前にストーリーの概要だけでも明かしておけば良いのでは?」だが、それは出来ない事情がある。理由はこのゲームでは何が起きたのかがプレイヤー(ケイティ)が屋敷内を探って行くうちに解ってくるというその“課程”を最重視しており、ある程度進めるまではどんなテーマのストーリーなのか自体が解らないという構成を採っているからである。よって「こういうタイプのストーリー」とプレイ前に明かしてしまうと、その徐々に判明していく課程を楽しめなくなる。もう少し詳しく解説すると、これまでのゲームでは「ストーリーが面白いかどうか?」のみを追求していたのに対して、GHでは「ストーリー自体が面白いかどうか」とは別に「ストーリーがどんな物なのかが判明していく課程」の面白さを追求しているゲームとなっている。その従来とは異なったアプローチによって大きな効果を挙げている一方で、プレイ前には知ることが出来ないストーリーが自分の興味と合わないという理由により一定数の批判の発生は防ぎようが無いという事にもなっている訳だ。

 なおそのストーリーの内容についてだが、ある意味では議論を呼ぶ様な事項が扱われており、実はそれが原因で(テーマが何であるのかを知った)主催者側と揉めて発売前に某有名ゲームショーへの出展を断念するといった事件も起きている。一つだけハッキリとさせておくと、制作側はその扱われている内容に関して支持するとか反対するといった意見は何も持っておらず、またそれに関する議論を盛り上げようという目的で作られている訳でも無い。単なる一つのストーリーの題材として採り上げられているだけに過ぎないので勘違いしないように記しておく。


 最後にネタバレ無しなので具体的には語れないが私自身のストーリーに関する感想を。実を言ってしまうと私もこのストーリーのテーマについては好みでは無く、もし映画においてそういうテーマの話だと事前に知っていたら「ストーリーは面白い」という評判でも手を出さない可能性が高い。しかし上記の様にそれが徐々に明らかになっていく課程については楽しめたと言える。ナラティブと呼ばれるプレイヤー主導によるストーリーの判明プロセス、もしくはゲームプレイとしては面白いの意味。

 その他の判明していく題材としては、父親及び 母親の近況, 最近の両親の関係, 屋敷関連の謎等になるが、その中ではそれまで知らなかった父親の人生についてのストーリーと屋敷関連の謎は面白かった。対して母親の近況と両親の現在の関係については掘り下げ不足もあって今一つの内容。


 付け足しとしてこのゲームが高い評価を受けた一因として、90年代アメリカ社会の再現という面も含まれている。1995年に主人公のサムと同程度の16〜19歳とするなら発売時の2013年には34〜37歳となり、この辺りはゲーマーの年齢としては多い世代となる。屋敷内には当時流行っていたりした物が幾つか用意されており、リアル体験世代のプレイヤーには懐かしさによる感慨を与えられる。また上記2番のサムの熱中していた事についてもリアルに存在していた流行なので、自分もそうだったというプレイヤーにとっては非常に楽しめる内容となっているはずである。しかし日本のプレイヤーからだと同じく日本でも流行していたので懐かしさを感じられる物も有れば、そうではない物もあるので本国のユーザーほどには効果的ではないだろう。

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