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シ ス テ ム

キャンペーン
 難易度設定は無し。アイテム持ち越しの二周目やクリア後の別モードは持っていない。ただしマップ内の自由探索モードをPC版にも導入するという予定は明かされている。


セーブ&ロード
 Redux版では普通にセーブが行われる。マップ内全体の状態が保存されるという意味。一方でUE3版ではエリア単位でのセーブとなる。詳しく書くとマップ内には幾つかの謎解きを達成しないとならない箇所が用意されており、これ等をそれぞれエリアとして区分している。各エリアは初期状態と解決後の二つのステータスしかセーブ出来ないという仕様で、未解決のままでゲームを終了してしまうと初期状態へと戻ってしまう。その為に幾つかのエリアを訪問してはどこも途中状態の未解決のままで終わらせてしまうと、次のプレイではスタート地点の最初からやり直しという事態になり大きな不評を買った。アップデートでメモ等を読むと位置セーブだけはされるようになったが、エリアの進行状態が保存出来ない件は現在でも治っていないし治される予定もない。

 これに対する開発チームの説明。「あまり知られていない事だが、Unreal Engine 3にはマップの状態を保存する機能は無い。だが大抵のゲームでは移動中の何も無い場所でチェックポイントセーブが行われ、現在のキャラクターのステータスが保存されるだけなので問題にならない。しかしオープンワールドで各エリアの状態を保存したいとなると専用にセーブ用のプログラムを制作しないとならず、これは極めてというレベルで難しい作業になる。予算のあるAAAタイトルならば専門チームに任せて作らせる事も可能だろうが、自分の所の様な小規模な会社では非常に困難である。

 制作予算を考えると延期はしたくないが、見積もりとしてセーブシステムの制作はチーム全体で何ヶ月も掛けないとならない。一方で各エリアは解き方さえ解っていればやり直してもそれほど時間は掛からない。ゲームは平均5時間位でクリア出来るという予測で途中で中断するとしてもその数は少なく、プレイを続けている限りは各エリアの状態はその場を離れても保たれている。これらの要素を考慮した結果、セーブ無しでも大丈夫という考えでは決して無かったが、時間と予算が足りないという苦渋の決断からこういう風にされた」。

 既にRedux版にて改善されており、マシン性能的にもRedux版でプレイが可能という人が大半と考えられるので、もはやあまり大した問題とは言えなくなっている。しかし起動しない等の問題でUE3版でプレイするしか無いという人も居るだろうし、その際にはこのセーブ制限の件は注意してプレイしないとならない。


OBJECTIVES
 現在の目標の参照機能や矢印による方向ガイド機能は無し。ミニマップを含めてのマップ表示機能なども持っていない。


英語
 字幕機能有り。日本語関連はトップ頁を参照。英語の量は少ない部類に入る。

 書類関連は新聞の切り抜きや手書き文字などが多いが、読み易いテキストにして表示も可能である。不満なのはこういったドキュメント類をログとして保存出来ない点で、探偵物なのに資料として後に読み返すことが出来ないというのは残念である。


その他

*キーアサイン可○, マウス感度設定可○, マウス反転可○, 明るさ調整可○
*一人称視点固定, FOV調整機能有り(70-120 垂直FOV指定)
*スプリント○, 屈み○, ジャンプ×
*照準(カーソル)は有り/無し/スマートを選択可能
*Steam実績対応


BASICS
 ゲームの製作に当たっては最初にイメージとして過去にキャンセルされたCome Midnightが在ったが、これは使おうにも現在版権が何所に在るのか判らずに終わる。このCMは様々なジャンルやゲーム性がミックスされている何とも説明が難しい作品で、一番イメージに近いとすればLA Noireを挙げている。これにバイオハザードの様なサバイバルホラー要素, ラブストーリーなどを合わており、非常にムーディーでナラティブな構成のゲームだそうだ。主人公は探偵で死者に触れるとその最後の瞬間から30秒前までを再生して視る事が出来るという特殊能力を持っているという設定。結果的にはその主人公の設定等一部を流用してこのゲームがデザインされている。

 他の影響としてはAdrian Chmielarz氏はFrictional Games(SOMA, Amnesia - The Dark Descent等)のThomas Grip氏と親交があり、彼がゲームデザイン論をブログで語るのと同様に、自分でもブログにて様々なゲーム論を展開している。このTVoECにおいても二人の間で戦わせたゲーム論からのデザインへの影響は大きいと考えられる。後はシンプルに趣味として氏はNDSの探偵・推理物の大ファンだそうで、『逆転裁判』や『ウィッシュルーム 天使の記憶』シリーズなどが好み。ただし『ゴーストトリック』から影響を受けているのではないか?という質問に関しては、こういった時間制限のあるタイプは好きでは無いと答えている。


 ゲームのストーリーは“Weird Fiction”と呼ばれるジャンルに属するとされている。これはアメリカのパルプ・マガジン(大衆向け雑誌)の一つ「Weird Tales」誌(1923年創刊)に代表される物で、主に超自然的な内容を扱ったホラー小説といった位置付け。資料をまとめたサイトも幾つか在り、当時の雑誌のスキャンを読めるサイトへのリンクが揃えられている。このジャンルに属する最も有名な作家はご存じH. P. Lovecraftである。ただし「ラヴクラフトの小説をゲームや映画にしようとしても上手く行かない」という理由から、このゲームでは設定として直接的な影響は受けていない。M.R. Jamesやこのジャンルの近代での継承者とも言えるStephen Kingからの影響の方が強いとしている。

 海外の感覚だとゲームのタイトルとしては非常に奇妙とされた「The Vanishing of Ethan Carter」という名称だが、当時のWeird Fictionではこの形式の“The Something of Someone”という物が多かった。そこで好きな作品であるオーガスト・ダーレスの『The Vanishing of Simmons』を真似てこのタイトルにしたそうである。


 紹介頁を一見しただけだと「実際の所どういったタイプのゲームなのか?」というのがハッキリしない面もあると思うのだが、制作者からは「謎解きアドベンチャーゲームなのか、それとも探索型ゲームなのか? あるいはホラーなのか、クライムストーリー風なのか? どれもピタリとは来ないので我々自身では最終的に“First-person Mystery”という呼び方に決めた。」と話している。その他では「没入, 探索, 発見がメインのゲーム」, 「ストーリーはゲーム側から語られない。プレイヤーが体験する物(ナラティブ)。」, 「ホラー要素は含むがあくまでも雰囲気としてのホラーであって直接的な物ではない」とも述べている。

 より具体的に踏み込むと、主人公は探偵だが謎解き推理をメインにした物では無い。集めた手掛かりを元にして謎を推理するというのは確かだが、一般的な探偵物アドベンチャーゲームではプレイヤーを苦しませる(楽しませる)為に複雑で難解な謎解きを用意したりするのに対して、このゲームでは謎解きその物はシンプルで難易度は高くない。謎解きの基本がどういったシステムなのかはここでは書かないが、長時間詰まる事はまず無いだろうという程度である。

 ではいわゆるウォーキングシミュレーター(ゲームプレイ要素が薄く、基本的に探索により進められて文書類を発見しては読んでストーリーを楽しむ)的な面が強い作品なのか?となるとそうでは無い。推理以外に普通のパズルも用意されているし、何の苦労もせずにスイスイと進められるというデザインでは無い。ユーザーを詰まらせるような難解な謎を用意しているゲームでは無いが、その謎解きパートの分量自体はある程度持っているので、ほとんどが歩き回って探索をしているというゲームとは異なる。後は探偵物と言うと証拠資料としてドキュメント類を多数読まないとならないというイメージがあるが、そういったドキュメントの類も非常に少ないゲームである。ウォーキングシミュレーターが好きだという人もいれば趣味では無いという人もいる訳だが、その辺は誤解のないように書いておく。その他では、

・選択肢による会話要素は無し
・インベントリー内のアイテムのマネージメント(組み合わせパズル)等は無し
・操作や行動にスキルを要求されるシーンは少しだけある(難易度は低いのでアクションが苦手という方でも問題は無いだろう)
・武器を使って戦闘したりは含まれない


 冒頭に出て来る “This game is a narrative experience that does not hold your hand.” の「このゲームはあなたの手助けをしない」という下りに関してちょっと説明。これは上で書いたがThomas Gripとの「ゲームのイントロに表示されるテキストがプレイヤーに与える影響」といった討論からの物で、発売数日前になってGripからTVoECではどうするのかという問い合わせがあり、それに応える形で急遽考え出して入れた文章だそうだ。

 Adrian Chmielarzは例えばこのブログにて「ありとあらゆる手段を使ってゲーム側がプレイヤーを助けてクリア出来る様にする傾向」について語っているが、それを否定する立場なのでこのゲームでは親切なガイドは付けませんという単純な図式では無く、「ゲームにおけるチャレンジ要素の必要性」という題材については他の投稿を含めてかなり長きに渡って書いているので興味のある方は読んでみると良いだろう。

 「このゲームにはチュートリアルは無いし、ヒントもジャーナルも目標への方向ガイド類も無い。プレイヤーは全てを自分でやらないとならない。しかしハードコアなゲームでは無い」としており、不親切なのと難易度が高いというのは別の意味という話であって実際にクリアへの難易度は高くない。ゲーム画面内で親切にガイドされるほど「これはゲーム内での出来事である」という印象が強くなるので、没入感を高めるにはこういったガイド機能は少ない方が理想的。その理由からこういうガイド機能の非常に少ないデザインにされたと考えられる。


GAMEPLAY
 私はクリアまで6時間程度掛かったが、開発側からは早ければ4時間位とされている。全体として謎解きの難易度は低いので詰まる可能性は少ないが、それとは別の要素がクリア時間により深く関わってくる構成。

 まずオープンなマップ構造をしており、最終目的地点までの道のりは自由となっている。そして謎解きが狭いエリア単位で独立しているというのがアドベンチャーゲームとして見るなら珍しい特徴となる。マップ内には幾つかの謎を解決しないとならないエリアが存在するが、これ等はそれぞれが謎解きとしては独立しており他のエリアの影響を受けない。つまり他のエリアで入手したアイテム類を持って来て別エリアで使用するとか、他のエリアでの解決がフラグとなって別の場所で何かが可能になるといった概念を持っていない。インベントリー機能自体が用意されておらず、アイテムは持てるがそれは同じエリア内で消費される仕組み。よって広大なマップ内の全エリアをどういう順番で解いて行っても良いし、それはどのエリアも最初に訪れた際に解決まで持って行ける構造という意味でもある。

 通るのに塞がれているエリアは無いので、最初から一切のエリアをクリアせずにほぼ全域を歩き回る事が可能。最終目標地点へ行くには直前のエリアをクリアしないとならないが、それ以外のエリアは未クリアでも最終地点まで行かれてしまう。ただしゲームをクリアするには全てのエリアを解決しないとならない為に、未解決エリアに戻って全部解いてから再度戻ってくる必要がある。なおRedux版ではこのトラックバックの際の移動が楽に出来る様に改良されている。


 マップのサイズは途方もないという程ではなくて、オープンワールド型の別のゲームであればもっと広い物は沢山ある。だがこのゲームには地図その物や方向ガイド機能などが一切無く、どういう風に広がっているのか見当が付かない為に、探索はある意味もっと広いがガイドの用意されているオープンワールドのゲームよりも大変である。こっちには何か有るのか?と考えて探索してみると何も無く終わるというケースは結構あり、収集系アイテムも存在しないのでそういったエリアの探索は景観を楽しむ以外は意味が無い。ところが何も無さそうだが実際には謎解きエリアが用意されているという場所もあるので厄介。目印となる建物類を目標にして進める事で最終地点前に半分以上はクリア出来るが、それだけ追っていたのでは見落としが発生するのは避けられない。しかし見落としを防ぐ為に徹底して全エリアに何かないかをチェックしながら進めると時間が掛かるという風になっており、これがクリアまでの時間に大きく関係すると言えよう。なお早目に最終地点まで到達してそこからやり残しを探す方が楽だが、ストーリーを楽しむという観点からは全部終わらせてから最終地点に来た方が良い。もっと言えば私は最終地点には全部もしくはある程度のエリアをクリアしてからでないと来られないという構造にするべきだったという考えなのでそこは不満である。

 付け加えるとCollector's Editionには特典としてネタバレが軽度&中程度という注意付きの2枚の現地マップが収録されており、ネットを検索すればそれらしき物が見られるが確かにネタバレなのでプレイ前には見ない方が良いのではないかと思う。


 普通のアドベンチャーゲームならば別のエリアを選択するとロードという形式が一般的だが、このゲームではマップ上を実際に長距離移動しないとならない。Mafiaシリーズなどと同じで、特に何かが起きたりする訳でもないエリアを実際に移動させる事で、その世界内に自分が存在しているというリアリティを感じさせるという狙いなのだろう。

 実際のところ移動は確かに多くてその時間も長く、こういった長距離移動を多用するゲームでは自動移動機能を備えている物が有るが(設定した移動状態のままで前進キーを押さずに自動的に前に進む。後はマウスで向きを微調整するだけで良いという機能。)、それが欲しいと感じる程度には移動させられる。せめてスプリントのトグルが可能ならばShiftキーから指を離せるのだが無し。私はこういう移動の多いゲームではそれ用のマウスのプロファイルを用意しておいて使ったりするが今回もそうなった。(サイドボタンにShiftキーを割り付けておいて、Shiftキーを押す左手小指が疲れたらマウスのサイドボタンと切り替える)。まあ景色は非常に綺麗なので繰り返し同じエリアを移動する時を除けばそれが単調さを大分和らげているとは言えるのだが。なおその一方でスプリントの速度は速くて、またスタミナの概念が無いのでずっと走り続けられるという点は救い。後は問題という程では無いのだが、ジャンプが無くて坂や障害物を移動で越えられるのかはその場所に因るという設定にされており、見た目の段差では判断が出来ない(下りる際も同様)。


 ストーリー(ナラティブ)が重要な要素になるので、その内容についてはここでは語らずに概論だけに留める。第一に全体のトーンとしてはダークで陰惨な雰囲気が漂っている。主人公は依頼主のイーサンを助けに訪れた訳だが、既に何等かの事件が起きてしまった後であるといった感じの虚無感が強い。次に推理物ミステリーとくれば意外な結末というのが期待される訳だが、そういった要素は確かに備えているし味わい深い物もあった。しかしおそらくほとんどの人は、ラストよりもそれまでの展開の方の意外性に目を白黒させる可能性が高い。幾つもの驚きがあってここは非常に楽しめた点。第三に全体がオープンな構成となっているので、ストーリー展開という面は希薄。どんな順番にでも進められるので前後関係が設定出来ず、断片的に各エリアで発生した事柄が解っていくだけである。それ故に主人公の事件に対する独白(感想)は制限され、最初に書かれたシナリオからドンドン削っていって最終的にはセリフが相当少なくなってしまったそうだ。プレイ前の予想の数分の一くらいしか喋らないという印象。

 ラストの意味合いについては当然ここでは書けないが、ネタバレ無しの範囲で開発側からの解説は書いておく。まずラストの考察については掲示板で相当に長いスレッドになっている。それを受けて書かれた開発側のブログがこちら。どちらも完全なネタバレになっているのでクリア前には見ないように。

 結論から言うと制作側が設定しているラストの正解は存在しない。ブログではミュージシャンであるSealの発言を引き合いに出しており、彼は(既に古い事項になったが)自分のリリースするCDのケース内に歌詞カードを入れないのは何故か?と聞かれて「自分の曲を聴いてくれた人は、時にその歌詞を聞き違えたりその意味合いを取り違えたりして自分なりの曲へのイメージを生成する。しかし各人なりの解釈があってもそれで良いのであって、その作られたイメージを(歌詞カードという正解を与えて)妨害するつもりはない」と意見を述べており、自分達開発側の考え方もこれと同じとしている。つまりラストの解釈は体験した各人がイメージした通りで良いのであって、こちらから正解は実はこうだという風に説明するつもりは無いと記している。だから皆さんもクリア後に実はどういう意味だったのかと正解を探す必要性は無い。ただ意表を突くような鋭い解釈なども有ったりするので、上記の考察ページを終了後に読んでみるのは面白いのでお薦めしておく。

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