THE VANISHING OF ETHAN CARTER


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更新履歴  18/02/21 レビュー掲載 (レビュー内容は主にRedux版が対象)
 18/02/23 ヒント&解答頁を掲載

販  売  制作・販売:  The Astronauts
 発 売: 2014/09
 日本代理店: 無し

 2018/02/21 現在 Steamにて 1980円で販売中

概  要  The Astronautsはポーランドのインディーズ会社でこれがデビュー作。コアメンバーは現在8名体制。ただしその前身は有名でPeople Can Flyの共同創設者Adrian Chmielarzが興した会社である。People Can Flyの中心メンバーとしてPainkiller, Bulletstormといった作品の開発をしていた事から、当然新会社のデビュー作もアクションFPSとなるのではという予想を裏切ってのこの作品だっただけに、発表時は驚きを持って迎えられた。

 PC版の発売後にPS4へと移植。そしてPCではリマスターされたRedux版をリリース。その後Xbox One版も発売されている。VRにも対応しているが、VR版は別売り(DLC)である。

 売り上げとしては発売半年で25万本超え。その後バンドルとして売られたりもしているが、2018/02現在のSteamSpyのデータでは60万本を超えている。


 中心人物Adrian Chmielarzの履歴を遡って見ると、実は新作がアクションではなくて探索重視の探偵物のアドベンチャー系ゲームだったという件は特別に意外という訳では無かった事が解る。彼は地元のポーランドで1992年に単独でアドベンチャーゲームを制作して販売したのがキャリアの始まり。これが国内だけだがかなり売れたのでMetropolis Softwareを設立して本格的な活動に入る。1994年に英語版としても発売されたTeenagentはアドベンチャーゲームのファンにはそこそこ知られたタイトルである。(私も今回初めてこれを作ったのが彼である事を知った)。

 2002年にはPCFを設立。2004年には傑作Painkillerでヒットを飛ばして有名となる。しかしその後に大きな落とし穴が待っていた。THQと契約してCome Midnightというまた別ジャンルのゲームを制作に入ったのだが、突然2006年に一方的に制作のキャンセルを告げられる。彼の話によれば理由も説明されず、コンタクトを取ろうにもメールの返事すらよこさない状況で、渡された契約中の開発費も実費用より30万ドルショート。既に70人を超える規模となっていたPCFではすぐに給料も払えなくなる状況に追い込まれてしまう。裁判に持ち込もうともしたが、相談した弁護士からは裁判には何年も掛かるしその間の費用も相当な額になるとされて、結果が出るまで到底持たないと判断し諦めざるを得なかった。

 そこで緊急手段として売り込みを計画し、新しいバージョンのUnreal Engineでデモを作成してEpic Gamesに持ち込み、どこかUnreal Engineを使用予定のプロジェクトがあるなら紹介してくれないだろうかと交渉。そこでその出来映えの凄さに感心したEpic Gamesから「だったら直接自分達と仕事をしないか?」と誘われて倒産の危機を脱することが出来た。その後はGears of WarのPC移植, Bulletstormの制作協力, Gears of War: Judgmentといった風に進み、2012年にはEpic Gamesに買収されて傘下に入りEpic Games Polandという名称に変わっている(現在は再独立している)。

 この買収の際にAdrian Chmielarz氏を含めた数人が会社を離れて独立している。これは単にAAAタイトルとは別のもっとパーソナルな内容のゲームを作りたいという方向性の違いに因るもので、仲違いとかそういった意味合いでの離脱ではないとしている。デジタル販売の発達により小さな会社でも販路が開けたという事情も独立を推す大きな理由となったそうである。

REDUX
 The Vanishing of Ethan Carter Reduxとは、2015/09にリリースされたゲーム全体のアップグレード(リマスター)版である。オリジナル版とのセット販売となり、本編を購入した(していた)人にはRedux版も無料で付いて来る(Steamならばライブラリに自動的に登録される)。異なるゲームが2本登録されている形となり、インストール等の管理はそれぞれ別々に単体で扱われる。セーブデータも別で共用は出来ない。Steam実績やトレーディングカード等も別扱いとなる。

 開発が始まった2012年の時点ではUnreal Engineは3までしか出ておらず、それを用いてPC版が制作された。ゲームの発売後にPS4への移植が行われたのだが、その際にUnreal Engine 3では現行世代のコンソールに対応しておらず、そこでUnreal Engine 4への移植が実施された。その後にPC版にもこのUE4バージョン(Redux版)が提供されたという流れ。Xbox One版もこのRedux版に当たる。

 ストーリーの内容には変化無し。新たなエリア等は追加されていない。ではどんな所が変わったのかは以下の通り。

比 較 表
比較項目 UE3 オリジナル版  UE4 Redux版 
必要環境  かなり低速のPCでも動作可能。32ビットOSを使用している or 64ビットOSだがメインメモリが4GB以下ならこちらしか選択肢は無い。  64ビットOS必須。メインメモリは6GB以上要。 
グラフィックス -  様々な点が改良されている。新規としては解像度のスケーリング(最大200%)に対応。高速PCならば大きなクオリティアップが図れる。アンチエイリアシングも新しい物を導入。
ディスプレイ 4Kには対応  ウルトラワイドやマルチモニターにも対応
ストリーミング  プレイ中にテクスチャーのロード(バックグラウンドでのストリーミング)で一瞬止まったりが発生。  最適化されており発生頻度が大きく減少。 
セーブシステム  おそらく最も批判されたと思われる点。セーブの単位がエリア基準で、各エリアの謎を解決するとそこで初めてそのエリアの状態がセーブされるという方式。よって途中で止めてしまうとそのエリアはまた最初からとなる。詳細は後述。   各エリア内の進行状況をそのままセーブ可能。つまり普通のオートセーブと同じになった。別のエリアに向かってもゲーム全体で各エリアの進行状態が保持される。
ファストトラベル  オープンワールドの構成なので、ゲームの最終目標地点に到達時に未解決エリアが存在していた場合には戻って全て解決しないとならない。しかしマップが広い為に、やり残しが多いとかなりの移動を強いられる。その不満からアップデートにより最終地点からのファストトラベル機能が追加されたが、片道通行で戻りはやはり徒歩となる。  ファストトラベルが双方向となり移動が楽になっている。
ジャンプスケア  一つだけプレイヤーを驚かせるジャンプスケア系のホラーが含まれているのだが、これに不満を唱える人が居た。実際には大した脅かしではないのだが、「そういうゲームでは無い」と思い込んでいる時に発生するのでドッキリ度が高いという話なのだろう。なおこれは失敗した際に発生する物なのでプレイヤーによっては遭遇しない。  驚かす表現をより穏やかな方向へと修正している。 
炭鉱エリア  プレイヤーの行動を邪魔する要素があって、それによりかなり面倒という不満あり。  妨害自体の発生頻度を削減。また妨害によってプレイヤーが失敗する度に、その発生頻度を更に下げるというシステムを導入(何回か繰り返されるとほぼゼロになる)。


 下はグラフィックスの比較動画
 日本語化  ゲームは日本語に未対応。だが日本語化するファイルは存在している。ただしちょっと問題点もあるので記載。

 ゲーム翻訳リターンズの武藤陽生さんが日本語化ファイルを制作して配布されている。これは制作側に許可を取った上で配布されている公式な日本語化ファイルとなる。問題の一つ目はこの日本語化ファイルはオリジナルのUE3版を対象にした物でRedux版には適用出来ない。そこでオフィシャルな翻訳としてRedux版のゲーム内に公式に組み込んでもらえないか交渉中とあるのだが、その件は2015/10の時点で更新が止まってしまっている。

 そこで有志がRedux版に適用出来る物を作って別に配布しているのだが(検索すれば見付かる)、こちらは非公式の日本語化ファイルとなり翻訳文も全て新たに作成された物が使われている。公式のUE3版の方は導入が非常に簡単なのに対して(初心者向けにはブログにSS入りで解説もされている)、こちらはUE4ではデータが圧縮ファイル内に保存されている為に外部の解凍展開ツールを別に用意しないとならず、日本語の説明文は添付されているが手順的にも若干複雑になる。特別に複雑という訳では無いが感じ方には個人差があるし、解凍ツールのダウンロード先がロシア語のサイトとか、そのツールがセキュリティソフトに引っ掛かって強制削除されたりとか、人によっては導入はハードルが高いと考える可能性もある。

 よって日本語化するならUE3版の方が簡単に行えるが、その場合にはリマスターされてほとんどの点でUE3版を上回っているRedux版でのプレイでは無いことになってしまう。そこをどう考えるか。

 もう一つの問題はパフォーマンス。この件については作者がブログの方で制作時の苦労話をしているが、まず字幕表示に関しては他のゲームと同様なので問題無し。しかしこのゲームでは主人公がサイコメトリーや残留思念などと呼ばれる超能力を使えるという設定で、その表現方法がオブジェクトからテキストが溢れて表示されるといったやり方になっている。このテキストをリアルタイムで読み込む仕様なのだが、英語の様に文字数が少ない言語では快適なのに対し、日本語の様なフォントファイルが大きな言語だと読み込みでパフォーマンスが落ちてしまう。そこでフォントサイズを削ったりして負荷を減らしているのだが限界もあり、何とか我慢出来る程度という形で決着している(上記リンクに実演動画有り)。

 私は最初バニラ状態でのパフォーマンスの確認も兼ねてRedux版を英語版のままクリア。その後にUE3版に公式の日本語化を導入して試してみたのだが、OSとゲームがどちらもSSDにインストールされている状況においてもやはり遅延は発生してしまう。特に多数のテキストが流れて出る様なシーンにおいてはFPSが5以下にまで落ちてほぼ停止というケースも在り、FPSの落ち込みが気になるという方には耐えられないレベルかもしれない。ただこの文字が湧き出る対象オブジェクトがそれほど多数有る訳では無いので、日本語化の恩恵を受けられるというメリットを考えれば仕方がないと割り切るしかないだろう。

STORY  舞台となるのは1970年代のアメリカ(ユーザー考察では80年代説もあり), ウイスコンシン州, Red Creek Valley。主人公は私立探偵のPaul Prospero。彼は普通の人間ではなく、事件現場に残されたアイテムから以前に発生した事件の情報を得たり、同じく死体からはその死亡時の状況をイメージとして再生出来るという超能力者であった。

 彼はイーサン・カーターと名乗る少年から助けを求める手紙を受け取るが、直感によって大いなる問題を察知し現場のレッドクリークバリーへと向かう。しかし既に何等かの悲劇が起きた後となっており、少年の姿は見当たらなかった。一体ここで何が起きたのか? それを自らの霊視能力で探って行くというストーリー。

 ゲームの前日譚となるコミックスが公開されている。(日本語訳あり。ただしこちらはサウンド無し)。

PATCH

DEMO
 Steamの方は自動適用。GOGではGalaxyを使っていればアップデートが可能と思うが(一部未対応ゲームが在る)、単体のDRMフリー版をダウンロードしているなら新しいバージョンが出ているかを確認し、有るなら旧版をアンインストール → 新規インストールという作業になる(パッチのみで済むケースもあり)。

 デモはリリースされていない。

動作環境

トラブル
  必要環境 推奨環境
OS Windows 7/8/10 Windows 7/8/10 (64-bit)
CPU Intel Core2 Duo 相当 Intel Quad-Core 2.5 GHz
MEMORY 4 GB / 6GB (Redux版) 8GB
VIDEO DirectX9.0c 互換 VRAM  512MB DirectX11 互換 VRAM 1GB
SOUND DirectX 9c互換 同左

 比較の項で書いたようにRedux版をプレイするには64ビットOS+メインメモリ6GB以上が必要である。UE3版だと32ビット&64ビットの実行ファイルを備えており、自動的に判定されてOSに合致する方が起動する。

*コントローラー対応(UE3版はランチャーのみ不可)
*セーブファイル&設定ファイルの場所は ドキュメントフォルダ → My Games の中。両方が各々のセーブ用フォルダを持っている。


 UE3版とRedux版ではエンジンが異なるので障害関連も別の話となるが、掲示板等は分かれていないのでどちらに関する情報なのかは確認が必要。

※起動に失敗する。ゲームが落ちる。 (全般)

・UE3版とRedux版、異なる方を試してみる。原因が判明せずに切り替えればOKならば、ゲームの中身は変わらないのでそれでプレイして貰うのが無難と開発側はコメントしている。しかし日本では別項で説明したような日本語化の問題が絡んでくるので厄介。

・ゲームキャッシュの整合性を確認してみる。(ライブラリからゲームを右クリック → プロパティ → ローカルファイルタブ → ゲームキャッシュの整合性を確認)。インストールされたファイルに破損等が有ればこれで自動的に修正される。

・定番だがビデオカードとサウンドカードのドライバを最新へとアップデート。

・UE3版の方は細かい設定が可能なランチャーから起動する方式となり、ここの設定を下げたりしていろいろと試すことが可能。Redux版ではシンプルにセーフモードでの起動が選択可能とされた。


※起動に失敗する。ゲームが落ちる。 (UE3版)

・ランチャーにてアンチエイリアスの設定をオフにしてみる。(特にCSAAは不可のビデオカード有り)。

・インストールされたフォルダ内 \steamapps\common\The Vanishing of Ethan Carter\_CommonRedist の中にライブラリファイルが入っており、これが何等かの原因で初回起動時に動作しなかったケース。DirectX 9.0c, Microsoft .NET Framework 4.0, vcredist_x64とx86 の4つを実行してインストール(既に新しいバージョンがインストールされているなら自動的にスキップされる)。

・設定ファイル \Documents\My Games\The Vanishing of Ethan Carter\AstronautsGame\Config を開いて DisableOcclusionQueries をFalseからTrueへと変更して上書きしてみる。


※サウンドが再生されない
 インストールされたフォルダ内 \steamapps\common\The Vanishing of Ethan Carter\_CommonRedist\DirectX\Jun2010 の中のDXSETUP.exeを実行してみる。これはDirectX 9.0cの最終版のライブラリで、DX10(Vista)以降のOSでのDirectXのWEBインストールではインストールされないファイルが収録されている。


※FOVの問題 (UE3版)
 UE3版だとFOVが昔ながらのVert-方式(水平FOVの値を指定する方式)となりいろいろと問題が発生とあるのだが(WSGF)、試してみた限りでは64ビット版ならばHor+(垂直FOVの値を指定する方式)という現在の一般的な方式でRedux版と変わりない。32ビット版を起動してみようと思ったのだが、ランチャー経由で自動的にOSに合わせた方が起動してしまうのでテスト出来ず。パッチにて既にHor+方式に変更済みなのかもしれない。

 もし治っていないケースだと昔のVert-方式では水平方向の範囲がワイドスクリーンになっても拡がらない為に、むしろ見える範囲が上下がカットされてしまい4:3等のアスペクト比よりも狭くなるという問題が発生してしまう。このゲームでは16:9以外では黒帯を用いて調整するアナモルフィックを使っている様だが、いずれにせよワイドスクリーンにてHor+風にするには外部ツールを利用しないとならないようだ。

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