<GAMEPLAY>
◎STORY
初めてこのゲームの事を知る方は面食らうかもしれないが、やはり一応は事前にアナウンスされていた話との食い違いから入りたいと思う。
このDEIWは発売前にはプレイヤーの行動によって世界(ストーリー)が変化するゲーム、言い換えると「自分自身でストーリーを紡ぎ出すゲーム」として位置付けられていた。漏れていた情報からの凡その想像としては、プレイヤーが属した組織に応じて、ストーリーその物がダイナミックに変化するタイプのマルチストーリーゲームと考えられていた。しかし実際にプレイしてみるとそうはなっておらず、幹として存在するストーリーに沿って進む或る意味スタンダードなスタイルの構造となっており、プレイヤーが大きくストーリーの進行に変化を与える事は出来なくなっている。
確かに或る組織の指令に沿って動いて別の組織に対立する事は出来るが、どう考えていようが或る組織と必ず敵対しないとならなくなる個所も有るし、常に全ての組織に対しての選択肢が与えられる訳でもない。また幾ら或る組織に敵対しても、結局の所プレイヤーは特殊な力を持ったキーパーソンとして設定されているので、完全に敵として見なされてしまうという事は(最後を除いては)起きないようにもなっている。
私自身が以前にPreviewにて”DEIWに関する心配事”として書いていた点になるのだが、
””「一つしか筋道は無いがそれが非常に面白いゲーム」と「そこそこ面白い筋道が幾通りも体験出来るゲーム」ではどちらが上なのか? これは難しい問題だ。言ってみれば「変化するマルチ・ストーリーで何回もリプレイ出来るから凄い」というのは誤りで、そこにはやはり面白さが加わっていなければならない。何故ならたった一本の面白いストーリーを作るのも大変なのに、複数存在する大きく異なったストーリー全てが面白い物が作れる訳が無く、普通のクオリティのストーリーを何回もプレイさせられても、それが「リプレイ性が高いので優れている」とは単純には受け取れない。DX1はマルチエンディングではあるが、そこに至る過程は一本の濃いストーリーによって貫かれていた。再度繰り返すが「ストーリーが分岐するから凄い」というのは誤りであって、あくまでもそれを使ってゲームが良く出来ているのかで出来は判断されないとならない。””
この観点からするとDEIWはちゃんとした一本のストーリーによって貫かれておりその点には文句は無いし、普通の出来のマルチ・ストーリーの集合体にはなっていない点に安心もさせられた。しかしマルチ・ストーリーといった要素を期待していた面からすると大きな拍子抜けだったのは確かだし、その意味でこのDEIWには革新性といった要素はほとんど見当たらない。もしDX1を未プレイの人間ならば革新性を感じるとは思うが、プレイ済の人に取ってはDEIWは単に”より自由度の増したDX1”という印象となるだろう。最初はそうしようと考えていたのを路線変更したのか、元々そうだった物が大袈裟な宣伝文句で誤って伝わったのかは謎である。
予告されていた内容との相違に関しては、基本的にはゲームのクオリティとは関係無いのでこれ位にして、肝心のストーリーに関して言えばこれは非常に良く出来ている。予告されていたマルチ・ストーリーでもなく、ストーリー自体も詰まらなければどうしようもなかった所だが、この点では高い評価を与えられる。スタート時点では主人公はあまり世界の構造に関しての知識が無いのだが、出現する幾つかの謎とそれが徐々に明らかにされていく過程はなかなかにスリリングだ。プレイした方はお分かりと思うがDX1はゲーム中に大きなどんでん返しが有ったが、DEIWでも途中大きなどんでん返しが用意されていて驚かされる(特に1をプレイ済の人には)。それとラストのロケーションも意外な場所と言えるだろう(これも1をプレイ済なら)。また1をプレイした人に取っては、登場人物及び概略を見た時点で或る程度想像が付くような予定調和的な展開を期待していると裏切られる事になるかも知れない(詳しくは書けないが)。後は1では結構哲学的な会話を交わす個所が存在していたが、このDEIWでも後半に掛けてはかなりその類いの問答が出てくる。それぞれの組織の考える理想の世界という点では深い物が有るのは確かだ。
世界観としてはダークと言うかグレーと言うか、今回もマルチ・エンディングでどれを選択するかはプレイヤーに(原則的には)任されているが、いわゆるハッピー・エンディングに当る物が存在するのかどうかはプレイヤーの考え方によるだろう。私自身は或る意味救いの無いストーリーという感想を持ったが.....。非常に重苦しい負の面でのインパクトが強いストーリーとも言えるだろう。登場人物の造型は良く出来ており、主要な人間は皆個性的であって印象に残るキャラクタが多いのも良い点。特にAIとして登場するポップスターNG
Resonanceのホログラムとの会話は面白い物が多いので試してみるべき。なお前作からの登場人物は非常に少ない。
総合的にストーリー面はよく出来てはいるのだが、ゲーム全体を覆う雰囲気の出来としてはDX1に劣るかという印象は否めない。ゲームの展開が短いというのが一つと、主人公が男女どちらにしろJ.C.ほどは魅力的ではないというのが大きい。またこれはストーリーだけの問題ではなく、ゲームのシステム全体の簡略化というのも大きく影響しているとは思うのだが、全体から滲み出る雰囲気がややライトな方向にシフトしてしまっているという感じがする。
◎難易度とプレイ時間
DEIWは4つの難易度設定を用意しており、これはプレイ中に何時でも変更する事が可能(DX1では不可だった)。難易度によって変更されるのは戦闘に関する事項のみである。以下は各難易度毎の変化についての一覧であり、Normalを基準とした時の倍率となる(V1.1)。なおUS版マニュアルの難易度に関する記述には誤りがある(現在販売されている物に付いているバージョンでは)。
敵に与えるダメージ量 | 敵から受けるダメージ量 | 敵の射撃の正確性 | AMMOの量 | |
EASY | 1.25 | 1.0 | 0.75 | 1.0 |
NORMAL | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 1.0 |
HARD | 0.75 | 1.25 | 1.25 | 0.95 |
REALISTIC | 1.5 | 1.75 | 1.0 | 0.75 |
注意点としては最も難しい難易度はHardであり、Realisticは単に現実的な設定に近付けただけの物という点。実際に比較してみるとRealisticはNormalよりも簡単という個所が多い。Biomodの能力を使って先制攻撃を仕掛け易い為に、敵に与えるダメージ量が多い分反撃を繰り出される前に倒せてしまうケースが多いからだ。海外ではDX1でのそれを想像していきなりRealisticから始めたという人も多かったようで、「何でこんなに簡単なんだ」という不満の声が結構挙がっていた。これからプレイされる方は気をつけて欲しい。
プレイ時間に関してはプレイヤーによるとしか言えない。何故ならこのゲームはどれだけの寄り道をするかはプレイヤーの自由に任されているからだ。プレイ時間を実時間で見るかSaveに添付される経過時間で見るかにもよるが(Saveの方は死んでのリロードの分が含まれていない)、ありとあらゆる個所に行ってObjectiveを出来るだけ達成するという風にプレイすれば初回プレイでは実時間で30時間程度掛かるだろうし、ただクリアだけを目指すのであれば10時間程度でのクリアも可能だろう。ちなみにゲーム内に含まれているObjectiveの内何割を自分が受けているのかが分からないので、受けた依頼は全て達成したとなってもそれが完全なクリアを意味しているとは限らない。例えば人を殺してしまうとその人間から直接受けるはずだった依頼や、そこから派生するはずだった展開が出てこなくなるので、その分やるべき事は減ってしまう可能性がある。同様に騒ぎを起こすとNPCが怯えて会話が出来なくなってしまうケースもあり、この場合も展開が広がっていかない。しかしいずれにしろDX1程の長さを感じないのは確かであり、より一箇所での起きるイベントは増えているが全体のボリュームは縮小してしまった。
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◎マップ構造
大きな変化はまず1よりも全体構造が単純化されている点。1はあまりにも長過ぎたという反省点から、一回のプレイは短いがより異なった体験をリプレイで味わえるというスタンスに変わっている。「狭いがより深く」というのがデザインの根本で、一つの場所にてより濃いストーリーを展開という方向性。。移動場所も少なくなっており、当初予定されていた個所が幾つかカットされている。ロケーションは開発段階のアナウンスでは夜ばかりだったDX1とは違って昼間のマップを幾つか採り入れるという話だったのだが(実際にSSも有ったが)、今回も前作同様にアウトドアは夜のマップのみとなっている。インドアにしろアウトドアにしろ、ほとんどの個所は暗いという構成である。
マップの構造はブロック型であり、通常のFPSとは異なっている。ロケーション毎にマップが幾つも複雑に接続されており、その中を基本的には自由に行動出来るシステム。そのロケーションにおけるメインのイベントを達成すると次のブロックへの移動が可能になり、次の個所への移動は原則的にはヘリを使って行い、それを使った時点で以前の場所には戻れなくなるのが普通。
今回はXbox版との同時開発になっているのだが、その為に以前より「両者のコンテンツを同一にする為にPC版はDegradeされているのか?」という個所が議論の的となっている。その中でも中心的な話題の一つがマップの構造の問題である。すなわちXbox版に合わせてマップのサイズが小さくなっているのではないかという点が問題視されている。一応こういったXbox版との問題全般に関しては、「我々は最初の段階で望むレベルの物がXboxで可能なのかを検証してから作業に入っており、Xboxでも実現可能なように当初考えていた物から内容を縮小するといった事は一切行っていない。仮にPCのみで発売となっていた場合でもこういうデザインとなった」とIon
Stormサイドは否定している。マップサイズについては、「よく言われる”PC版であればより広いマップが可能なのだからそうしないのは問題”という考え方には反対である。マップが広ければ面白いというのは完全な勘違いであって、ゲームプレイの面白さとマップの広さは関係無い。Xboxで可能な広さでゲームの面白さを表現するには十分である。」と述べている。
しかしながらこのマップサイズの個所に関してはI/F系のデザイン論議に比べるとかなり歯切れが悪く、実際の所は広くしても良かったのだが、Xboxのサイズに合わせたというのが本当の所ではないか? そもそもゲームの面白さはマップの広さとは無関係というのは納得出来ない意見であり、そのゲーム内に自分が存在しているという雰囲気を出すにはそれなりの広さの物が必要であるのは間違い無いと思う。ゲーム上重要な事が起きるのはマップの中の1,2割の個所だったとしても、だからといってそれだけが起きる個所を切り取って小さくしたのではゲームにのめり込めないという風にもなってしまうからだ。
では実際のゲームではどうなっているのかと言うと、全てが狭いマップばかりではないのだが確かに狭いマップは多い。特にインドアは狭い物が多いと言える。ローディングが必要となる個所も多くて、通常のFPSの感覚では1個のマップとして収められそうな物が幾つかに分断されていたりする。妙にこじんまりとした感を受ける個所も有って、これはゲーム内にリアリティを感じさせるという面からはマイナスとなっているのは確実。その一方で小さいが故に良い面も有って、目的の場所へアクセスし易いのでいろいろと実験的行為が時間を掛けずに行えるとか、アイテムを置いておいたり取りに行ったりといった作業には便利である。少なくとも小さいのでその分起きるイベントが少ないというデザインにはなっていなし、心配していた程には”狭いので良くない”という印象は受けなかった。
しかしながらここにゲーム上でトップクラスの大きな問題が存在している。それはローディングの長さである。ローディング個所が多いというのはともかくとして、次のマップを読み込むまでに結構な時間が掛かる(グラフィックの設定にも関係して来ると思うが)。最初はマップ内を探索しているので頻繁には起きないから特に気にならないのだが、一度探索し終えて通過する時に問題が生じる。例えばAのマップから単にBを通過してCに行きたいとなったら、ただ中を移動したいだけなのに2回長いローディングの時間が入ってしまう事になる。PC版ではマップを何個か接続して大きな単位で扱ってくれる様に変更して欲しいと感じるのだが、それをやるとPC版は別にデバッグテストをしないとならないので止めたのだろう(プレイヤーがいろいろな事を行えるデザインなので、接続してしまうと変な事を行った場合の整合性に関しての検証をしないとならない。例えば追い掛けられた状態で”Xboxでは”別のマップからNPCを連れてきてしまうとか、何等かの品物を別のマップ内に持ち込んで変な事をするとか、マップの接続点となる空間を通して攻撃を仕掛けるとか等々)。元々ゲーム性からして大量の人員を投入してのテストを行っていたそうだし、それをやるには予算も時間も無いという結論ではないか。今後は接続は無理としても、メモリが有るのならキャッシュ等でローディング時間の短縮を目指してもらいたいと感じる。
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