GAMEPLAY |
初回プレイは難易度Normalで27時間。いろいろと実験しながらのプレイだったので、先を急げば20時間程度で終わってしまうかもしれない。モンスター類を倒しても経験値が上がる訳では無く、初めから入手可能なサイバーモジュールの数は決まっているので、ある種のRPGのように次に進むために地道なレベル上げが必要なゲームでは無い。それとキャラクターの能力を大きく変えられるのでリプレイ性は高い。 FPSにRPG要素をミックスしたハイブリッド型のゲーム性だが、ホラーの要素も大いに持ち合わせている。プレイヤーの操作する主人公が相当弱い設定にされているので、普通の人間が極限状況下でサバイバルするという雰囲気が良く出ている。怖い演出も随所に登場するし、ホラー物としても出来は上々と言える。 ゲーム全体を覆うのは孤独感と、それから来る恐怖感である。死体だけが転がっていて後は敵しかしない船内を探索するのには不気味さが付きまとう。若干グラフィックスによる恐怖感の演出が弱いという面はあるが、リアルタイム制でPauseを掛けられないというのも緊張感の演出として活きている。何より前作からの登場となる意識を持ったコンピューターであるSHODANの存在感は凄い。魅力的な敵キャラクターという点では相当上位にランクされる相手であり、これより怖い敵キャラにはお目に掛かった事が無い。彼女のあのボイスは生涯忘れられないだろう。 舞台となる宇宙船の構造についても簡単に解説すると、主人公が目を覚ます超光速宇宙船Von Braunは巨大な5階層の構造をしており、その上にコントロールセンターが突き出ている。そして更にその上に護衛船のRickenbackerが連結されているという形になる。大量の人間が長期にわたって生活するという環境なので、内部は巨大だしバラエティに富んだエリアが用意されているため、景観的に単調という事にはなっていない。内部破損により水没しているエリアもあれば、凍結状態になっている所もある。また後半には船外の特殊な場所へと到達するシーンも出て来るといった具合で、ダークなトーンの場所が多く怖さが感じられる。ただしマップの構造自体は単純な物が多いのは残念だ。 自由度という観点では、Deus Exと比較するとそれは少ない。キャラクタの能力に応じた問題解決方法の自由度は含んでいるが、基本的には隅から隅までマップ内を探索する必要があるし、行く順番を別にすればどんなキャラクターでもやる事はほぼ一緒である。謎解き要素はアイテム探しがメインで、ヒントや指示が与えられるのでそれ自体は簡単な部類に入る。 このゲームの面白さのコアはストーリーにあり、Deus Ex同様に途中での意外な急展開から実に面白くなって、最後まで緊張感の持続する見事な物を見せてくれる。直接会話が出来る訳ではないが人物像の描き分けも非常に上手い。全体的には人数は少なめだが、それぞれが生き生きと描かれていると言えよう。そういう観点からいってゲームのストーリーに面白さを求める人には文句無しにお薦めしたいゲームである。 ストーリー担当のKen Levineによれば、「ゲームのストーリーというのは大抵想像した通りに進むもので、善人として描かれている人はずっと善人だし、同様に悪人は悪人である。時に主人公のキャラクターが裏切られる事はあるが、プレイヤーが裏切られる事は決して無い。そこでこのゲームではそのプレイヤーをも裏切られたと感じられる様な設定にしたかった」。意訳してみると「プレイヤーの操作している主人公が何等かの形で裏切られた場合、それが意外な展開に感じられたとしても、その事実がプレイヤー自身にショックを与える様な事は無い」といったニュアンスだと考えられる。そこでもっと踏み込んで、プレイヤーが「裏切られた」と感じられる様なストーリー構成を作り出したと言う意味合いになる。ゲーム途中で明らかにされるその趣向は上手く決まっていると思えるし、後にBioshockでも同様の裏切り演出が用いられている。 System Shockの続編となる事が決まった時点から、前作の優れた部分はそのまま活かして、直すべき部分は修正するというスタンスを採ったが、その修正箇所の最優先とされたのが画面I/Fである。発売当時には途轍もない複雑さで、それが(デモをプレイした)多数のユーザーから拒否されてセールス面での大きな失敗となったとされている操作性については、大きな改善を目指して試行錯誤が繰り広げられたそうだ。 マウスルックが一般的になった事からこれを活かす操作性に変更。そして出来るだけ単純化を目指し、実際のゲームプレイ画面とインベントリー&パラメータ系の画面を分割して、双方をすぐに切り替えられるボタンも設置。その画面表示系は良く整理されており、大きな問題無くすぐに慣れる事が出来るであろう。 スリリングなゲーム性にする為にリアルタイム制を採用していると書いたが、それによるプレイのし難さというのも一部に感じられた。例えばハッキングして監視カメラを無効化しておくのには時間制限があるので、その停止中にやるべき事はやらないとならない。しかしそこでログなどを見付けた場合、そのまま読んでいるとタイムアップになる恐れがあるのでゆっくりと読む事が出来ない。かと言って貯めておいて後でまとめて読むと、発見したエリアで実はやらなければならなかった仕事が判明したりして、再度そこへ行ってカメラのハッキングにチャレンジする必要になったりというケースもある(もしも英語を聴いて理解出来るのであれば、音声を再生しながら行動出来るので問題は減るのだが)。 |
難 易 度 | |
ゲーム全体としての大きな問題点は難易度のバランス設定にある。このゲームでは開始前に4つの難易度を選択することが出来るが、その内Normal以上では序盤1/3程度がとてつもなく難しい。これは文字通りの意味と取ってもらいたいのだが“途轍もなく”である。難易度がHardとかならばまあ問題はないのだろうが、一番普通に選ばれそうなNormalでこの難しさというのは大いに問題ありだ。 もうちょっと詳しく説明すると、このゲームはシステムをよく理解しないと先に進めない位に難しくなっており、特に「ゲームを進める際にあまり説明など読まない」, 「理解するのは武器の特性と敵の弱点程度で十分」と考える人に取っては厳しいものとなるはずだ。言い方を換えると、「やっていればその内に慣れてくる」といった類のゲームでは無い。RPGにて低レベルのキャラクタによる序盤が極めて厳しいという設定の物が在るがアレに近い。問題はRPGならば他の作品での経験を活かしてどうゆう風に進めるのが有利なのかをある程度推測可能だったりするが、このSS2ではキャラクターの成長システムや能力値等がゲーム独自のシステムになっているので、知識無しの状態では何が優位なのかや、何が悪いのかの見当が付け難いという所。 まずは50ページ程度あるマニュアルの内容を一通り理解し、トレーニングを受け、そして実際のゲーム中で死に続けながら突破法を考えて初めて道が開けるという感じのバランス設定である。類似ゲームのDeus Exの場合は、序盤は酷く弱いものの取りあえずやっていれば段々やり方が解って先に進めるという感じだが、とてもそんなレベルではないと考えてもらいたい。或いは後継作のBioshockは大衆にアピールする事に重点を置いて成功を収めているが、こちらはそれよりもずっとハードコアな仕様であり、(特に序盤の)難易度は桁外れに高いと覚悟して貰いたい。 具体的に難しい点を挙げてみると、第一にすぐ死んでしまう。Normal以上で開始した場合に耐久力が初期状態だと、雑魚敵相手でも簡単に死ぬ。更に回復薬が序盤は手に入り難いので、戦闘でダメージを負ったらダメージを受けないようにして勝つまで再ロードでやり直すくらいの事をしないと生き延びられない。初期武器のレンチの戦闘方法をマスターすれば多少は楽になるが、とにかくよく死ぬというのは確かである。 次に弾薬不足。「どんな敵でも武器さえあれば」というアクションの得意な人もこのゲームでは通用しない。何しろ弾が無いのだから。序盤は文字通り本当に少ないので無駄撃ちは絶対に避けなければならない(弾の管理を一発単位でしないとならない位に無い)。おそらく現れる全ての敵を倒せるだけの弾数は存在しないので、レンチで倒せる敵は危険を承知で接近して弾薬を節約しないとならない。 第三に武器が壊れる。使うと道具が壊れて行くという設定その物には問題は無い。他のRPGでも珍しいことでは無いし、リアルで良いという感じもする。だが問題なのはその壊れる速度である。使っていると凄い早さで武器が壊れていく。まあそんなに使える程弾薬が無いという事もあるが、それでもそれを直す為のスキルを身に付けていないと辛い。 第四に敵のリスポーンで、これもまた非常に厄介。エリア毎に数が管理されていて、設定値よりも少なくなると復活してしまうのである。RPGなどでは復活しないと倒して経験値が上げられないので困るというケースもあるが、このゲームシステム(弾無し, 武器破損等)では問題ありと言わざるを得ない。その上に復活の速度が速いので余計に困る。 最後に難易度を上げるとキャラクターのレベルを上げる為に必要なサイバーモジュールの数が増えるので、Hard以上だと初期のレベル上げが更に過酷になって相当な難易度上昇へと繋がる。初回プレイ時はNormal辺りをお勧めしたい。 以上が主な所だが、これについては一つ言及しておかないとならない要素がある。実はゲーム内には一度手形を記憶させてやるとONになる復活装置(Quantum Bio-Reconstruction Machine)が存在している(BioshockにおけるVita Chamber)。死んだ場合は最寄りのこの装置に出現することになる訳だ。このコストがたった10(Nanites)という設定から(弾薬が6発60程度の世界で)、おそらくはこれを利用して進むように、(何度も死ぬことを前提に)ゲームが作られているのだと推測出来る(と言うかそうとでも考えないと理解しがたい難易度)。 だがこの装置が上手く機能していない。まず初期は10程度のコストでも大きな問題で何回も生き帰るのには制約があるし、復活時には体力が1/3程度になってしまうのも辛い。しかもそんなに頻繁に装置が有る訳でもないので、場所によっては元の場所に戻るのにかなり距離がある。そうなるとその過程でまた復活したモンスターに遭ったりとかで、弾薬類を無駄にしたり再度死んだりということにも成りかねない。同じく体力回復用の装置もあるのだが、これとていちいちそこまで戻るのは面倒という風になってしまう。要はほとんどの人は死んだらその直前からロードしてやり直すはずで、この装置自体を使うケースは滅多にないだろう。すなわち設定として活かされていないという事である。 こういった難易度設定の厳しさから、派生的に以下の様な問題も生じている。一つはキャラクターの作成における自由度が制限されている点。このゲームは非常にユニークなキャラクターのシステムを用意しており、独自性という点では高い評価が与えられるのだが、この難易度ではその肝心な自由度の高いキャラ作成が困難という矛盾を抱えている。つまりこれだけの難易度を乗り切る為にはある程度最初に取るべき能力が限られてしまい、折角のシステムが活きてこないのである。不可能とは言わないが序盤にポイントを振り分けるのを失敗すると、ゲームを進める事が困難になってしまう(結果的に新規に作り直した方が早い)。 それとゲームが途中で放り出される危険性の上昇。正直な所このゲームは最初からプレイヤーをグッと掴むようなタイプのゲームでは無い。最初はかなり漠然とした感じで始まり、ゲームが1/3程度進んでから(最初の目的であるPolitoに会ってから)話が急展開して面白くなるという風である。そこまで行けばもう止められないと思うのだが、そこに行くまでが難し過ぎて放り出される可能性を否定出来ない。 最後に製作側がこのバランスについてどのように考えていたのかも書いておこう。昔の記事を探るとやはりこの件については相当な抗議があったようで、「次回のパッチにてモンスターのリスポーン率と武器の劣化率を変更する」というアナウンスがなされている。だがどういう事情があったのか知らないが、結局この修正は行われなかった。なおパッチのReadmeにそのやり方だけは書いてあるので、ユーザー自身が内部ファイルを書き換えて修正する事は可能。やり方は簡単なので、これをやってもっと楽にプレイするという手もありだろう。
続いてゲーム全体での難易度となると話は違ってくる。前半に比べると特にそういう感じが強いのだが、ゲームの後半は逆に簡単になってしまうきらいがある。個人的な話をすると初回プレイ時にあまりの序盤の難しさに、この分だとこの後も大変だと弾薬節約で進んだのだが、最終的にはかなり余裕が出来てしまった(思っていたよりもラストが早かったというのもある)。確かに終盤にも難所はあるにはあるのだが、通常のFPSに比べると今度は随分楽なような感じになってしまう。 終盤にはレベルがかなり上げられるようになる, 弾薬が結構買えるくらいお金も手に入る, 強力な武器も使えるようになる等々、バランスが今度は易しい方へと傾いてしまうのだ。私は中盤についても弾薬節約したのでそこそこ難しかったが、この段階から普通に弾を使っていれば(実はそれで問題は無かった)、もうその辺りから易しくなってしまうような気もする。 ではどういう風にすべきだったのかというと、どうせ難しくするならば後半を難しくすべきだったと思う。おそらく製作側の考えとしてはサバイバル面を強調して難しくしたのだと思うが、そうしたいのであれば前半はむしろ易しめの設定でキャラクターがどんなパラメーターの割り振りであってもクリア出来る様にしておいて、その後段階的に難易度を上げるほうがゲームのシステムを生かす上では正解だったと感じる。 いろいろと難易度に関して記述したが、難しくても序盤は我慢してやってみて欲しい。最後までやる価値は確実にあるという事だけは言っておこう。後は障害となる一因の「憶える事が多いので取っ付きにくい」という点については、事前に攻略の為の知識さえ身に付けておけばかなりプレイは楽になる。という事でゲームガイドの頁も作成しているので、簡単におさらいしたい人はプレイ前にでも目を通しておいて貰いたい。 |