American McGee's ALICE
          (アリス・イン・ナイトメア)

                                  10/04/04



   SYSTEM / GAMEPLAY

   COMBAT / GRAPHICS / SOUND

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製作・販売: Rogue Entertainment / Electronic Arts
発売: 2000/12
日本代理店: エレクトロニック・アーツ・スクウェア



                             ※ 日本語版でのレビューになります ※


概  要  タイトルに付加されているAmerican McGeeとは、id SoftwareでDoomの時代からレベルデザイナーとして活躍していた有名人である。同社のロメロやカーマックに比較すると知名度は落ちるが、それは彼が“出たがり”や“奇人”ではなく、控え目で物静かな人間である事に起因していると思われる。それでも爆発的に売れたDoomの影響度が極めて強い北米ゲーム界においては有名という点には変わりない。一方で日本では比較的知られていないので、『アリス・イン・ナイトメア』へとタイトル変更が行われたと想像される。

 彼はQuake, Quake II等のヒット作に携わった後に1998年に大手EAへと転職。クリエイティブ・ディレクターという役職に就いて、そこで手掛けた中で一番の大きなプロジェクトがこのゲームである。なお彼が生涯で一番多く質問された事項はゲームに関する物では無く、「その“American”という名前は本名なのか?」だそうだが、答えはYESでヒッピーだった母親に付けられたそうである(我が国で言えば“田中 日本”といった名前みたいなものだろう)。子供時代はその母親に「外ではその名前ではなく、ミドルネームのJamesで呼んでくれ」と懇願していたが、この業界に入ってからはすぐに名前を憶えて貰えるので役に立つようになったと述べている。


 実際の制作を手掛けたのはRogue Entertainment。テキサスの会社でid Softwareと同じオフィスビルに入っていた縁から、過去にQuake, Quake IIのミッションパック等を制作している。また制作会社が4社にも変遷したCounter-Strike: Condition Zeroの最初の制作会社でもあるが、同プロジェクトがキャンセルされた2001年に倒産している。

 ゲームの設定はルイス・キャロル作の『不思議の国のアリス』、『鏡の国のアリス』という2編の後のストーリーという形を取っており、登場するキャラクタや世界設定の多くは共通しているが、内容は完全なオリジナルである。


 Windows版が出た後にMacに移植されている。かなり出来上がっていたというPS2版の移植は最終的にキャンセルされた。セールスとしては当時100万本以上売ったとされているが、売れなかったというコメントを出していたEA及びMcGeeにとっては満足の行く数字では無かったようだ。そしてセールスが期待出来るPS2版の発売中止については、キャンセルを決めたEAと発売を主張するMcGeeの間でかなり揉めたらしく、McGeeがその後すぐにEAを去る原因の一つになった。

 シングルプレイ専用でマルチプレイは含まれていない。

 待望されていた続編が既に公式にアナウンスされており、McGeeが設立したSpicy Horseが制作を担当する事に決まっている。


 ゲームのタイトルに名前を冠したのは全てEA側でのプロモーション目的における決定であり、McGee自身はシンプルに“Alice”で良いという考えで、「自分の名前をタイトルの前に入れるように」といった主張は一切していないそうだ。EAからすると同じくidを退社後にゲームを制作したジョン・ロメロによるJohn Romero's Daikatanaに対抗という意図があったのかも知れない。

 後にMcGeeが自分の会社からリリースしたBad Day LA(2006)に対して、「このゲームがコンセプトの段階から全ての面において自分の管理下で開発された初めての物」とコメントしており、この“Alice”に関しては最初のアイディアは確かに彼の物だが、それ以後の別の要素については何所までが彼の発案による物なのかという詳細は不明である。彼自身はプロジェクトの統括的な立場であり、定期的なミーティングは行っていたものの、実際に制作スタジオに入って一緒に仕事をしたのは最後の数ヶ月だけだと話している。




 私の知る限りではこのゲームのパッケージは全部で5種類存在している。オリジナル版(左)はアリスが武器の一つであるナイフを持っており、そのナイフ及びエプロンに血が付着しているという物。日本語版もこのイラストである。ところがアメリカでは発売直後にこのイラストが問題視され(EAの話では幾つかの団体から抗議があったそうだ)、次の出荷分からは別の武器であるアイスワンドを持ったイラスト(中央)へと差し替えられた。以後北米では再発版もこのイラストを使用。

 しかしこのイラストはゲームを未プレイの人にはアリスが何を持っているのか判り辛く(その為にフラワーバージョンという別名を持つ)、それもあったのか欧州ではやはり武器の一つであるトランプを持っているイラストか(右)、或いはナイフを持っているが血が付着していない物のどちらかが使用された。例外としてドイツではチェシャ猫の図案が不味かったのか、アリスだけをコラージュした形式の全く異なるイラストが使われている。


 ゲームはかなり残酷度が高い内容を含んでおり、お伽の国の設定とは言え、敵の胴体や頭が切断されてそこから血が勢いよく噴き出すといった描写が随所に見られる。稀にだがアリス自身の頭が吹き飛んだりする死亡アニメーションも在り。ゲーム内部にこの様なゴア表現をオフにするオプションも持っていない。CEROが設立される前で且つPCオンリーで発売されたゲームというのもあるのだろうが、近年の世界的に見てもゴア表現に非常に厳しい日本発売の物とは思えない内容になっている。

 ちなみにEA側はPS2版キャンセルの理由として開発会社の倒産を挙げているのに対して、McGee自身はパッケージイラスト変更に象徴されるような残虐な表現に対する世間の過剰反応と、それに対してのEA上層部の及び腰がPS2版の発売中止の一因になったと主張している。


 英国のSold Out Softwareや北米でもCDケース版として過去に再発はされているが既に流通しておらず、これを書いている現在(2010/04)海外においてはレアなゲームとなっている。合わせて上記の様なパッケージ違いというコレクターズアイテム的な要素も含んでおり、通常の中古品でも現在の新品ゲームと同程度、高価なレア版は数万単位での取引となっているようだ。だが続編のリリースも決まっているので、その発売時期に合わせてプロモーション目的での再発というのは可能性が高そう。

 一方で日本語版は『アリス・イン・ナイトメア』のタイトルで翌2001年に大箱パッケージにてリリース。この時にはマウスパッド等が付属した限定版も用意されていた。その後EA BESTとして廉価版再発。このベスト盤は今でも普通に販売しているので、ここ日本においては入手は容易である。ただしオリジナル版が英語と日本語の音声&字幕を自由に組み合わせられたのに対して、この廉価版は日本語固定となっている。
 おそらく日本で発売された海外産(洋ゲー)でPCオンリーのゲームとしてはかなり売れた方ではないかと思われ、その人気が日本での発売が継続されている理由であろう。海外の公式サイトは既に無くなっているが日本のそれはまだ残っている。


 サントラ『American McGee's Alice Original Music Score』も発売されており、これはまだ海外サイト等で入手可能である。


STORY  『鏡の国のアリス』の直後の1864年の事、アリスの家は事故によって全焼してしまい、家族は全員焼死しアリスだけが生き残った。そのショックからアリスは精神に異常を来してほとんど反応が無くなり、最終的にラトレッジ精神病院へと入院させられる。

 その後も彼女は時折反応を見せるだけで心を閉ざしていたが、奇妙なお伽の国と思われる世界に関連する詩を読んだり絵を描いたりするようになっていた。そして入院から10年後、再びアリスの元へとウサギの使者がやって来て彼女を別世界へと誘い出す。

 今回彼女が訪れる“不思議の国”とはアリスの作り上げた精神世界であり、それはこれまでとは違ってアリスの歪んだ心によって邪悪で攻撃的なエネルギーに満ちた物と化している。アリスは数々の障害を乗り越えてその世界に平和をもたらし、彼女自身が現実世界へと復活する為に戦わないとならない。


PATCH

DEMO
  海外では特定のビデオカード向けにパッチが出ているが、日本語版ではそれを収録済み。


 公式サイトの『おもちゃ箱』の項目から現在でも日本語版のデモがダウンロード出来る。海外でもデモがリリースされているが、こちらは内容が少し異なるようだ。製品版に忠実なのは日本語版の方で、海外版は発売前に出ているので最終調整された変更分が適用されていない模様。

動作環境

トラブル
  必要環境 推奨環境
CPU PentiumU400MHz以上 PentiumV500MHz
MEMORY 64MB 128MB
VIDEO OpenGL対応
VRAM 16MB以上
OpenGL対応
VRAM 32MB以上
SOUND DirectX 7.0a対応 同左
対応OS Windows Me/98/95
DirectX 7.0a以上要


 OSはVista 64でも問題無く動くというレポートも見られるので、純粋にOSのバージョンに関連する問題は特に無さそうだ。

 [動作確認] (XP SP3, E6850, MM 2GB, Geforce 8800GTS 640MB, 196.21, SB X-Fi)にてインストールから起動まで大きな問題は見られず。セーブデータを読み込んでの動作確認も異常は見当たらなかった。プレイした当時のWin98マシンでも非常に安定していたゲームである。ただ一点だけ今回のXP上でのトラブルとしては、スピーカーの設定をオプションから4chにすると、ゲーム起動時にOS上のSP設定が2chへと切り替えられてしまう。対策としては4chではなくてサラウンドを選ぶとちゃんと3Dサウンドが有効になり、OS上でのスピーカー設定の方も変更されない。


 発売当時としては要求スペックはかなり高い方で、この辺は異世界のグラフィックス表現のクオリティに一定以上のレベルを必要としたからだと思われる。10年前のゲームなので現在では重さという点では特に問題は無いと言えるが、このゲームは当時隆盛を極めていたQuake(III)エンジンを使用している為に、グラフィックスのAPIはOpenGLのみの対応となる。当時はQuake系エンジン採用のゲームが多かったのでOpenGLにドライバで対応するのは常識だったが、現在ではDirectXが使用APIの大半を占めており、単体ビデオカードを除くとそのサポートは疎かとなっている状況である。
 ここ数年のPCであればゲーム用では無いオンボードのビデオチップを使用している物でもVRAMが64MB以上はあると思うが、XP以降のOSではOpenGL用ドライバへの対応は疎かにされている事もある(特に廉価版PCのオンボードビデオチップ)。一応このAMAは初期のV1.x時代のOpenGL使用なので、ここ数年のGL採用ゲームに比べるとトラブルにはなり難いはずだが、性能の低いPCを使っている人はデモ等で動作確認を先に行っておくのをお勧めする。

 下にも書いてあるが、OpenGL関連のトラブルについてはこちらのガイド頁も参照して欲しい。


 ゲームコントローラーでの操作には対応していない。そのコントローラーに付属しているユーティリティとか、JoytoKeyの様な外部ツールを使ってキー入力を変換して対応させるしかない。


*Could not load open gl subsystem
 かの有名な「OpenGLの初期化に失敗した」というエラー。単体ビデオカードではまず無いと思うが、最新のビデオ用ドライバを入れても出るなら、そのビデオカード(orオンボードのビデオ機能)かドライバがOpenGLに対応していない可能性がある。


*HUDの画面表示位置がおかしい
 左右のステータスバーが中央付近に寄ってしまう等。これはOpenGLのドライバが正常に動作していない事を意味する。ドライバの最新版を探して更新。それでも駄目なら根本的に使用しているビデオ機能がOpenGLをちゃんとサポートしていない可能性が高い。


*画面が単色表示になってロックされたように停止する
 これはビデオ関連ではなくてサウンドの問題で停止している可能性が高い。サウンドのドライバの更新や、オプションから設定を下げる。XPであればサウンドのアクセラレーションを下げる方法を試す。

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