<SYSTEM>
DEIWのゲームの一番の特徴は問題解決の自由度という点になる。プレイヤーが乗り越えないとならない各種の障害に対して複数の解決方法が用意されており、プレイヤーはその中から好みの方法でそれをクリアしていく。DX1のレビューでも詳しく述べたが、ゲームの中心になる個所なので再度解説しておこう。
開発チームの考えとしては「たった一つしか解決方法を用意せずに、それをプレイヤーに達成させるようにする」という方式では面白くないし、不自然な点も出てくるのでこういったデザインを採用している。不自然というのは、例えば「非常に強力な武器を持っているのに、弱そうなドアを開ける為に鍵を探して来ないとならない。ドアを破壊すればそれで終わりのはずなのに」といったケース。以下は解決方法のバラエティの一例であり、常に全てが可能な訳ではないが、一方で他の方法がまだ存在しているケースもある。
障 害 | 解 決 方 法 |
ロックされた開かないドア | *MultitoolでUnlockする *開く為の暗証コードの記録されたDatapadを探す *誰かから会話で暗証コードを聞き出す *ドア自体を武器やGrenadeで破壊する *そのドアを迂回出来るダクトの様なルートを探す *Speed Enhancementで大ジャンプして他の場所を超える *物を積んで台を作り乗り越える *外部で騒ぎを起こして中にいる人間に開けさせてしまう *入れないので飛ばして進んでしまう |
監視カメラ | *下に上手く入り込んでMultitoolで停止させる *EMP GrenadeやSpy Droneで停止させる *EMP系の武器で攻撃して破壊する *Rocket等で破壊する *Neural Interfaceで端末をハッキングして機能を停止させる *Thermal Maskingで関知されないように隠れてしまう *Speed Enhancement等で監視区域を高速で駆け抜けてしまう *警報が鳴ろうが無視して行動する |
人間の監視している場所を 通り抜ける |
*正面から戦って倒す *Non-Lethal系の武器や能力で眠らせてしまう *Cloakで隠れて行動する *Move Silentで音を立てずにステルスで行動する *Speed Enhancementで監視区域を高速で駆け抜けてしまう *気が付かれないような高所やダクトといったルートを探し出す |
この様にプレイヤーの好みやその場の状況、またはアイテムの所持数や残エネルギーに応じていろいろな選択肢が選べるのが面白い点である。プレイヤーのスタイルとしては、直接戦闘型、接近戦闘型、Non-Lethal(殺さないで気絶させる)、ステルス(非戦闘)、ハッキングといろいろと可能になっており、またゲームを通して常にそれに縛られる必要もないと自由度が高い。
DEIWではストーリー性重視もあって会話が占めるパートが多くなっている。DX1に比較して今回はより現実に近い会話システムに力が入れられており、単純にプレイヤーの選んだ会話の選択肢によってNPCの受け答えが決められているのではなく、その場のシチュエーションやプレイヤーの属する組織、それまでの受け答えの流れによって返答が変化するというシステムになっている。選択肢の中から正解を選ばないとならないというゲームでは無く、何を選んでもそのままストーリーは進んでいく(返答の流れに沿って)。またそれまでにプレイヤーが進んで来た経緯によって、会話で話される内容や出てくる選択肢が変わるケースも有る。それと会話するのかどうか自体が自由であり、この人間と会話しないと話が進まないという個所は極一部しかない。逆にゲーム中に手当たり次第に相手を殺すというやり方でも進められるが、死体が周囲にある状況ではそのNPCは逃げてしまって何も話してくれなくなったりもする。このシステムのためにゲーム中での会話時間及び分量は1の比では無く3〜4倍程度になっているが、一回のプレイで全ての会話パターンが表示されたりする訳ではないので、一度のプレイについてはそれほどは膨大な分量ではない。
DX1に比較してゲーム全体として様々な簡略化が行われているのだが、重要な点としてSKILLや経験値の廃止という大きな変更が実施されている。RPG要素が強いゲームであるのだが、今回はキャラクタの成長要素はBiomodに一本化されており、Objectを達成して経験値を得て自分のSkillレベルを上げていくと要素は無くなっている。
この点で「DEIWは1を単純化したゲームなのか?」という問いに対しては、「それは全くの誤りで、DEIWは1同様に極めて複雑なゲームである。ただし複雑化の方向性が異なっている。DEIWはいうなればスイス製のアーミーナイフの様な物で、それ自体は単純だがそれを使って何でも出来るという点では複雑な行為を生み出す物とも言える。DEIWは何でもプレイヤーが思った事がゲーム中で出来るという点から、それによる世界の変化は非常に複雑になっている。DX1は表面上は非常に複雑だが内部的には単純化されていたゲームであるが、DEIWはその逆に表面的には単純化されているが、内部で起きている事は極めて複雑というデザインのゲームである。」
これには肯ける部分も有るのだが、幾ら表面的には単純化するといってもSKILLの要素を省いてしまったのは個人的にはやり過ぎではないかと感じる。特に開発の主要なメンバーはTRPGの熱心なファン揃いというだけに意外な気がする決定だ。ゲームのストーリーが豊かで内容が複雑だとなっても、だからキャラクタの能力値や経験値は無くても良いとは普通考えないだろう。SKILLに囚われずに進められるという自由度を増す為とは言っても、ここは残念に感じた変更点である。
<BIOMOD>
DEIWではキャラクタの成長要素がBiomodに統合された。1に存在したSkillの概念は排除されており、このBiomod以外の能力値は存在しない。これはDX1ではAugmentationと呼ばれていた物で、人体に装着してその能力を上げる特殊な装置である。DX1との比較を含めて概略を表にしてみた。
項 目 | Invisible War | Deus Ex |
装着可能人体スロット数 | 5 | 9 |
Upgradeの段階 | 3 | 4 |
部位別の選択可能種類 | 標準2種に加えてBlack Market Biomodを 1種選択可能で合計3種 |
2 |
Canister | 標準とBlackの2種のみで種類は無い Upgrade Canisterは無くて上書きでUpgrade |
それぞれの装着個所別に専用のAugが9種存在しており、まずはそれを装着しないとならない。その後汎用のUpgrade Canisterにて任意にUpgrade可能 |
装着方法 | 任 意 | 最初のAug装着はMedibotを使わないと行えない Upgradeは任意 |
装着後の交換 | 可 能 | 不 可 能 |
Default | Lightのみ。ただし右記DX1の能力は持っている。 | Light / IFF(照準による敵味方の識別) / Infolink |
使用方法 | Biomodの種類によって異なる | 該当するキー(F3-F12)を押してON/OFFを切り替える |
今回は装着可能個所が5箇所と大きく減らされている代わりに、部位別に3種からの選択が可能となっている。前作はAugが2x9で計18種、それに加えてSkillが多種存在していたのだが、それらを統合して今回は全ての能力をBiomodの3x5で計15種にまとめた事になる。1では今一つ使えない能力が存在していたり、AugとSkillの分離が分かりにくかった点も有るので(例えば代表的な例としてSwimが挙げられている)、今回は単純化して単一の成長要素に統合されたという話だ。装着自体も単一のBiomod
Canisterに統一されたので、入手さえすれば任意の時にどの部位にも装着出来るし、Upgrade
Canisterの概念も廃止されている。
唯一の制限が新要素として追加されたBlack Market Biomodであり、この能力を使う為にはBMBを手に入れないとならない。つまりBMBに属する能力をインストールしたい&Upgradeしたい場合にはBMBを使わないとならないようになっている(逆にBMBを通常の能力用に使う事も出来ない)。BMBはCollapseの後のロシアによって開発された特殊なBiomodであり、Omarがその流通を取り仕切っている。よって通常のタイプに比較すると入手は困難であると言える。
それと大きな変化として今回のこのbiomodは途中で変更する事が出来る。これは単純に既存のスロットに上書きする事で達成される仕組みで、何時でも何回でも行う事が出来る。ただしそれ以前の能力はそれがどのレベルであっても消されてしまい、再度新しく装着した能力がレベル1からスタートする仕組み。よって1段階のBiomodであればそれ程の痛手はないが、最高レベルまで達成している物に関してはそれなりに損をする事になる。
使用に関しては使いたい機能をOnにしてやってその間Bio Energyを消費する点、無くなったエネルギーの補給にはEnergy
CellかRepair botを使う点は前作と同じなのだが、今回はActiveとPassiveという2種類のタイプに分かれているのが新しい点。PassiveタイプのBiomodは使用に一切のエネルギーを消費せず、使った時にのみ自動的にその機能がOnになるようになっている。一方でActiveタイプの物はONにしている時間に比例してエネルギーを消費するのだが、単にONにしている状態ではエネルギーを消費せずに、実際に作動させた時にのみエネルギーを消費するタイプも多い。
各Biomodの詳しい能力に関しては別のページにて解説する。
<HAVOK>
物理エンジンとしては今や多くのゲームに採用されているHavok 2.0を採用しており、物体の動きをリアルにシミュレートして見せる事が出来るとしている。ゲーム内に存在するObjectには計算の為の重量設定等がなされており、プレイヤーの行為に応じて正確な計算が行われる(ただし物理計算の対象とならない固定のObjectも多数存在している)。例えば一般的なObjectを投げたりした際の衝突の動きや、Grenadeを室内で爆破させると内部のObjectが飛び散ってぶつかったりする計算が正確に行われる。ゲームの武器やAmmoといったアイテムもその対象となるので、爆破などが起きるとどこかに飛んでいってしまったりして探したりとか。或いはDEIWでは倒れている人間(or死体)を持って移動する事が可能であり、重量設定もされているのでこれをObjectに対して放り投げた際にもちゃんとこの計算が作用する。
エンジン自体の出来としては計算処理自体は特に重さは感じられなかったが、死体のRagdollに関しては既存の他のゲームのレベルと変わりは無く問題が残っている。間接自体は妙な方向には曲がらないが、体はゴム人形の様に変な方向に曲がったりと不自然な表現も多い。接触判定がおかしくて、体が地面や壁にめり込んでしまうという現象も時々起きる。
ゲームを通してプレイした感想としては、考えていたほどには物理エンジンを使用してゲームプレイに活かすという事は出来ないという様になっており、ゲーム世界にリアルさを感じる為の要素としての位置付けが強い。出来る事としては、掴んだアイテムを投げて注意を逸らしたり、階段から下に向かってドラム缶を転がして敵を攻撃したりとか。StrengthのBiomodが有れば倒した人間の体を遠くや高くに放り投げて隠すというのも可能だし、ドラム缶の様な重い物をドアの前に何個も置いてやって出て来れなくしたりといった事も出来る。箱等を積み重ねて高い場所に上ってしまったりも出来るが、持ったアイテムをそっと置いたり出来ないので調整には若干苦労する。
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