当サイトの様にゲームをレビューしたり、或いはブログで感想を書いたりする際に書き手が気に掛ける点として、そのゲームのネタバレをどう扱うかというのがある。個人が書く物だと「ネタバレには一切関せず」というサイトも中には有るとは思うが、複数の人間で運営されているゲームサイト等だと、ネタバレには気を使うというのが常識である。しかしこのネタバレというものは、どこまでがOKなのかという線引きが難しい。何をもってネタバレとするのかは個人によって感覚の差が有るからだ。
書き手側としてもこれは悩む所で、ある程度は内容に触れないとそのゲームの面白さ(詰まらなさ)を紹介出来ないが、あまりにも踏み入ってしまうと実際にプレイした際の新鮮さが失われてしまう。反対にあまりにもネタバレに気を使い過ぎると、読んだ人にどういうゲームなのかが伝わり難い。ゲームのタイトル程度しか知らない人に対してこれはどんな凡そゲームなのかを紹介するのが目的ならば、公式サイトに公開されているデータをまとめる程度でも良いと思うのだが、もっと突っ込んでレビューをするとなると、それ以上の内容に触れざるを得なくなってくる。そこに「XXについて書いて良いものかどうか?」という悩みが発生する訳だ。
一例として、私がDoom 3のレビューを書く時に悩んだ事が有る。もう発売から4年になるしプレイ済の方も多いと思うので、ここでは当時のレビューでは触れなかったそれについて書かせて貰う。
このゲームのストーリーは、火星基地にて地獄との間にゲートが開いてしまい、それによって基地へと侵入して来たモンスターと戦うというものである。書くかどうか悩んだ点と言うのは、「主人公は最終的にそのゲートを通って地獄へと向かう(地獄で戦うシーンが在る)」という情報を明かすかどうかである。
これについては先に書いたように人によって見方が違うだろう。「ゲームの設定からして最後に地獄へと向かうのはもう見え見えであり、ネタバレには当たらない」という考え方も有るし、「地獄に向かうのはゲームのクライマックスであり、それは明かすべきでは無い」という意見も有ると思う。書き手側の考え方としては、以下の様に分類出来る。
1.最後に地獄へと向かうという情報自体を明かさない
2.最後に地獄へと向かうという情報は明かすが、そこでのプレイ画像は公開しない
3.最後に地獄へと向かうという情報も、そこでのプレイ画像も両方公開する
D3では2で良いのではないかとも考えたが、最終的には1に落ち着いた。こういったゲームの終盤に付いてどの程度レビューで触れるのかはよく悩む所だが、基準としては「レビューでその終盤部分に言及したい要素が有るかどうか」が決め手になる事が多い。D3で言えば地獄でのゲームプレイに特に書きたくなる様な変化は無く、Soul Cubeに付いて簡単に触れさせて貰えばそれでOKなので、あえて触れる必要性も無いだろうとして地獄行きの情報は書かなかった。
逆に触れざるを得ない場合には、ネタバレの色が濃くなっても最低限は書かせて貰うケースも有る。Half-LifeでBalck Mesaから最後に異世界Xenへと向かうというのはその一例で、Xenでは極端に難易度が上がるとか、難しいジャンプ・パズルが増えるのは難点といった批判を書くには、終盤でそういう風に切り替わるという点には言及しないとならなかった。
ボスキャラ一つ取っても難しい。「ラスボスの画像を掲載したり、それとの戦いがどういうものかを書くのはネタバレに当たる」というのは一般的に認識されているガイドラインであり、当サイトでもそういう事はしないようにしている。しかしこれも厳密に考えて行くといろいろと複雑なのが分かる。例えばRPGでは最初から倒すべき”大魔王”といった存在が明らかにされていたりする事は多い。この場合それとの戦いがどういう風になるのかや、その時のゲーム画面の公開はアウトだろうが、最後にはXXと戦うという点は公開しても問題にはならないはずだ。
しかし「実はラスボスと思われていた敵がそうでは無かった(更にその後にボスが居たりとか)」というゲームも有る訳で、そうなると「XXがこのゲームのラスボスである」と教えてしまうのは、”それ以外の可能性を消してしまうと言う意味でのネタバレ”とも取れる事になり、非常にこの辺は微妙である。なので私は通常「最後はXXと戦う」という風に具体的には書かないようにしている。
ラスボスの画像は当然出さないようにしているが、KingpinやSoldier of Fortuneの様に倒すべき敵が最初からストーリー面及び画像としても公開されているゲームも有り、こういう場合は含みを持たせて「最後はXXと戦う」と明確に宣言はしないが、画像に付いては公開してしまう事が多い。或いは「ゲーム開始時点ではプレイヤーには知らされていないが、実はこいつがラスボスである」という人物なら、その画像を載せたりする事は有る。
中ボスクラスやゲーム上で特に強い敵になって来ると判断が難しくなるが、大抵の場合はメーカー側の公開情報を拠り所にする。メーカーの公式サイトやゲームの公式トレーラー(予告編ムービー)等で紹介されているかどうか。またはゲームの箱やマニュアルに記載されているかどうかが判断基準になる。作っている側が公開OKと見なしているという判断を下せるからだ。終盤に出て来るような強力な武器に付いても同じ。
だがその公開基準が制作会社と販売会社との間で一致していない事も有るので、これまた複雑になるケースも出て来る。Painkillerは巨大なボス敵との対戦をゲームの大きな売りにしており、その画像やムービーは発売前にも公開されていた。よってこの場合は制作側も掲載OKなのだと判断して私も載せた。Quake 4での主人公の改造手術の件も同様で、大々的に宣伝されているのでレビューでもその件に付いては触れている。
一方でSerious Sam: The Second Encounterでは、トレーラーに一部中ボスの映像が映っていたが、これは販売会社が作った物で制作しているCroteamではどう考えているのかがハッキリしなかった為に掲載は見合わせたというケースもある。またはWill Rockの様にマニュアルにラスボスまでが掲載されているゲームも有ったが、この場合はさすがにラスボスに関しては載せないという風にした。
しかしこのような制作側からの情報公開を基準にした判断も、プレイヤーの中にはそういった情報を見ていない状態でプレイを始める人もいるので、そこまで考慮するとなるとやはり難しくなる。他に最近の物ではCrysisで微妙なケースが有った。開発の初期段階でプレイ動画として頻繁に公開されていた物が有ったのだが、その後の開発過程でゲームの構成が変わってしまい、三部構成のストーリーのラストのパートがカットされる事になった。その結果当初の予定ではそうでは無かったと思われる、当の公開していた映像のシーンが製品版では最後(厳密にはラス前)に来るという状態になってしまったのである。この場合その辺の画像を載せても良いものかどうかは、かなり悩む事になるだろう。(私は一応載せない方を選んだが)。
ネタバレの基準には、そのゲーム(要素)をどう評価しているかという点も掛かってくる。映画や推理小説でも同じだが、「それをプレイ前の人に隠しておく事は、作品の面白さに大きく関わって来るので重要である」と判断される事項ならば、まずそれを感想等を書く際に明かそうという人はいないはずだ。ゲームではほとんど無いと思うが、映画では「結末は決して明かさないで下さい」というお願いが制作側から行われる事も有る。ただその秘密にすべきと制作サイドが考えている事項が、「面白くない」と判断された場合、ネタバレに関する基準は甘くなって行く。または「これはクソゲーだ」と見なされた場合だと、その人にとってはそのゲームに対する敬意が失われるので、「どうせこんな内容ならネタバレしたって構わないだろう」という風にタガが外れてしまう可能性が有る。一つ最近の実例で紹介してみよう。
昨年コンソールで大ヒット(累計で600万本)を飛ばし、今年になってPCでも発売されたゲームにAssassin’s Creedが在る。12世紀末のエルサレム等の都市を舞台に、プレイヤーは暗殺者教団のメンバーであるアルタイルとなって要人暗殺の任務を遂行して行くという設定のゲームだが、実はこのゲームの真の設定はそういう風にはなっていない。”裏設定”とでもいうべきゲームの真の構造はゲームを始めてすぐにプレイヤーには明らかにされるが、少なくとも私の知る限りではこの裏設定はUbisoft側からは公開されていない。よって彼等の狙いとしては、プレイを開始したプレイヤーを「ええっ!?」と驚かせるような意図が有ったと思われる。
しかし結果的にはこの裏設定は好評だったとは言えず、この様な設定無しの”見た目通りのストーリー”であった方が良かったという意見の方が多かった。だからだと思うのだが、レビューの中にはこの裏設定について明かしている物とそうでは無い物が混在している。普通の感覚だとこういった”制作側が隠そうと意図していたと思われる要素”については触れないのがエチケットだが、今回の様にレビュアーによっては「むしろゲームに取ってマイナスの要素なので秘密にするほどの物ではない」と判断されたりとか、この裏設定を批判したいが為に敢えてそれについて言及したりしているというケースも有るだろう。もしこの裏設定が魅力的で面白い物だったら、未プレイの人に対してちゃんと隠されたと思うのだがそうはならなかった。
なお私個人としてはまだ買ってもいないのだが、既にこの情報に付いては海外のレビュー等で知ってしまっている。今回の件では「まあその裏設定がネタバレされていても、特に気にはならないかな」程度に思っているが、もし私が書く側だったらこのケースではネタバレと判断して書かないと思う。しかし書いている記事に対して、「明らかにこれはネタバレなので書くべきではない」と感じるほどでも無い。けれどもネタバレと思う人も当然いるだろうし、やはりこの辺は難しい。
掲示板等でのネタバレについても触れておこう。そのスレッドがネタバレ要素を語るような場合には、「ネタバレ有り」(英語ではSpoiler)といった記載をそのスレッドのタイトルに含めて注意を促すのが普通でありエチケットでもある。しかし特に海外の掲示板だとPCゲーマーの人口が遥かに多いので、即ち初心者の数も同様に多くなるという傾向があり、それが問題を引き起こすケースも有る。
「ミッション No.Xで詰まっている」というタイトルの場合、これは一目瞭然でネタバレなので特に”Spoiler”の印を付ける必要も無いと思うのだが、逆にちゃんと”Spoiler”と付けているにも関わらず、スレッドのタイトル自体にネタバレ事項が含まれてしまっているという事も有って、本人には悪意は無かったのかも知れないが他の人から抗議されたりという事例も見られる。(更に初心者は削除キーを入れずに書き込んだりするので、不味いと気付いて修正・削除しようにも自分では出来ないというパターンも良く見受けられる)。この辺はこの日本においても、誰にでも関係してくる事なので注意した方が良いだろう。
当サイトのレビューでは比較的詳しくそのゲームについて書く方針なので、それだけ内容の紹介に関しては突っ込んだ部分まで踏み込むようになっている。とは言えネタバレを含んでしまっては未プレイの人に対して問題が発生する訳で、その辺りの調整や判断にはいつも気を遣っている。中にはネタバレは避けるがその事項については是非書きたいというケースで、かなりボカした書き方になって歯痒い思いをする事も有る。
逆に詳しく書いている分、内容を明かし過ぎと感じる人も当然居るだろうとは思っている。この点は万人が納得する様には書けないので、当人はその問題は認識してはいるが完全な対策は無理という事で御了承願いたい。