STEAM NEXTフェス その2

10月1日~7日までSteamで開催されていたSTEAM NEXTフェスは終了してしまったが、多くのデモはそのまま継続して公開されている。今回は続編としてまたホラーゲームに限って感想を紹介。


Ikai
https://store.steampowered.com/app/1315210/Ikai/

デモは以前よりリリースされており、今回の物はアップデートされたバージョンとなる。制作はスペインの3人チームで、理由は不明だがメンバーは日本への造詣が深いらしくその為に日本を舞台にしている。だが日本のホラーのイメージとしては、J-Horror = 映画, そして現代という印象が強く、その定番感を破る為に昔の封建時代を舞台にして、登場するのは日本に古来から伝わる妖怪という設定にしたそうだ。

このデモでは日本の寺が描かれているが、内部の和室のデザインなど特別に奇妙な点は見当たらない。家具類や間取りのリアリティの方はこの時代の一般的な形式を私自身が知らないので何とも言えず。

一方で主人公は巫女の女の子なのだが、高い声質のボイス(英語)には違和感有り。何歳程度の設定なのかは不明だが(視点はかなり低いがそれだけでは推測が難しい)、巫女という設定からしてもっと落ち着いた感じの方が良さそう。日本語ボイスにして各国語字幕でプレイするというのが一番だとは思うが、インディーズだけに金の掛かる事は難しいというのはあるだろう。

特徴となるのが御札のシステム。主人公の巫女は妖怪に対して物理的な対抗手段を持っておらず、御札を使って怪異を撃退するという方式になっている。基本としては御札に書かれている模様に沿って筆を動かして塗り潰すことが必要で、クリックして筆を下ろしマウス(スティック)でなぞり書きする(これ専用の感度設定有り)。その際に一定以上の割合を塗り潰せればクリアだが、逆に一定以上はみ出してしまうと最初からやり直しとなる。

問題はその御札を作成する際に好きなだけ時間を掛けられるのではなく、敵が襲って来るので時間制限があるという点。このゲームでは屈んでステルスモードに入れるが、これは敵が物理的に見えている際の回避手段であり御札作成の時には関係が無い。御札を書く事が出来るのは限定された机のみで(アイコンが出る)、作業に入るとロックオンされて周囲を見る事が出来なくなる。そして書いている際には音が聞こえてくるので、その音を頼りに敵が接近しているのかどうかを判断し(詳細な判別方法は不明)、危ないと判断したら中断して机から離れる。そして安全を確認したら続行するというシステム(別の机に行くという選択肢もある)。遅れると突然敵のドアップ表示となってゲームオーバー。つまり敵は周辺エリアを実際に徘徊しているのではなく、作成を始めた瞬間から敵に発見されている状態での一種のミニゲームとなる(敵の移動ルートを観察し出来るだけ離れた机に行って書き始めるという風には出来ない)。この分析には私の推測も入っているし、他のケースでも同条件なのかは解らない。

なおこのデモは日本の風景をどの程度のクオリティで制作しているのかや、御札のシステムを体験出来るという意味において立派にデモとしての意義を果たしているが、中身自体は10~15分程度と短いし特に面白くはない。あくまでも日本をテーマにした珍しい作品として製品版には期待出来るという段階である。


DarKnot
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怪物に支配された都市でサバイバルするホラー。武器戦闘も行えたりと非戦闘系では無い。ロケーションはインドア&アウトドアをミックス。リニアでは無いゲーム進行となり、プレイヤーの選択やプレイの都度に通るルートや状況は変化する。プレイスタイルも戦闘重視からステルスまで好みで選べて自由度が高い。ただし全体的に高難易度を想定しており万人向けという設定では無い。謎解き重視だがクラフトによるアイテム制作にも凝っている。といった感じのごった煮的な作品。しかし大規模な制作チームでもない限りは手を広げ過ぎるのは収拾が付かなくなって危険という面も持っており、要素は多いが個々は充実しておらずに中途半端に終わる恐れもある。

このデモは開始地点からというのもあるのだろうが戦闘要素については大して体験出来ず(拳銃が有るくらい)。なのでまだ何とも言えないが近接戦にしろ銃撃にしろ迫力が無くて軽すぎという印象で、この重量感の無さは修正しないと大きな欠点とされるのは間違いない。

主にアイテム集めをしたりパズルを解いたりがメインで進められていくが、ルート分岐はこのデモにも存在しており他者のプレイ動画をちょっと探してみると自分では通っていないエリアが見られたりもした。障害を突破する為の解答が一つだけではないという箇所も有るようだ。

8つのパラメーターがステイタスバー(雰囲気に似つかわしくないパステルカラー)として存在しているのだが、このデモにおいては影響度がハッキリとは解らない項目も有り。一撃死といった感じで簡単に主人公は死んでしまうのだが、パラメーターを上昇させれば改善されるのかもしれない。

奇妙な所も結構見受けられて、例えばゲームのシステムを説明するメッセージがすぐに消えてしまうので全部読めないし再度参照する事も出来ない。次に何故か開始時は一人称視点となっており、最初のエリアを脱出するまではそれで固定。そして注目点に視点を向けると強制的にズームされてしまうのでやり辛い。

それとオブジェクトを操作するのにリアルな動かし方を要求する方式なのだが、ネジを回して外すのにマウスをグルグルと長時間回す操作を行わないとならないとか、鍵は差し込んでから実際に回さないと開かないなど、冗長に感じられる面もあり。またこういった操作は使用がコントローラーかマウスのどちらかに限られている環境においては調整が楽だが、両方共に可能な今回の様なケースでは特定の操作がどちらか片方ではやり難いというストレスになったりもする。実際に最初のエリアでは時間制限が加わるので操作に慣れるまでは難しくなっている。

セーブはセーフハウスでおこなう方式。ここまで到達出来ればまだマシなのだが、それ以前では最初のエリアを出て三人称視点に切り替わった場所まで戻されてしまうので、初期のシステム面が良く解っていない(or慣れていない)状態にて何回も死んでしまうと同じ事を最初からその都度繰り返さないとならず苦痛。初期段階ではもっとヒントを出していくべきではないかと感じさせる。

風変わりで癖の有る個性的な作品として注目していきたいとは考えている。だがユニークで面白い点は持っているが、それ以上に欠点が多いとされて評価も売り上げも伸び悩むといった作品はインディーズに多いのも事実。まだ現段階ではその欠点が多く感じられるので努力が必要となってくるだろう。


Self-Delusion
https://store.steampowered.com/app/1590190/SelfDelusion/

探索型のホラーゲームでおそらく戦闘手段を持たないタイプ。最大の特徴はスラブ神話や伝承に登場するモンスターを敵として設定している所で、他のホラーゲームでは見られない多種の敵が出現する。見た目や特性が怖いのかとなるとそうでもなく、それ等の変わった外観や特徴で他では味わえない雰囲気を出すという方を重視している。ユニークさで勝負というホラーゲーム。

今回のデモに関しても特殊な形態で、ゲーム本編はマップを探索しながら進めて行く普通の方式らしいのだが、このゲームの特徴を体験して貰うには短時間ストーリーモードをプレイして貰うよりも、数々の登場するモンスター達を実際に見てもらう方が良いとして別モードでの提供とされている。ホラーゲームとしては他にも在る形式だが「複数の異なる敵が迫って来るマップ内を、規定の時間の間殺されない様にして逃げ切る」というスタイル。たぶん本編クリア後にアンロックされる別モードとかではないかと推測される。

ルールとしては、幾つかの部屋から構成されている2階建ての家の中を逃げ回って朝まで(規定時間)生き延びればクリア(次の夜に移行)。まずはオーブンの中に家の中から探し出した人形を定期的にくべないとならない。オーブンの怒りが100%を越えると家の中に蒸気が充満して息が出来なくなってしまう。

そして4種類のモンスターに殺されない様にする。Lapotはフェイスハガー的な敵で音に気付かずに接近してしまうと顔に貼り付かれてお終い。Kolobokは球形の転がって来る敵で、灯りが付いている範囲(円周)内に逃げ込めばOK。ただし灯りはマッチで蝋燭に火を灯して確保する必要がある。Leshyは突然騒ぎ出すオモチャ類を止めないと家の中に入って来る。そうなったら箱等に隠れて出ていくまでやり過ごすしかない。Antsybalは音を聞いて接近に気を付け、窓際に見えたらそこに有るベルを鳴らす事で追い払える。

しかしこの手のゲームでは皆そうなのだが、単体ならば何とか出来ても複数が同時に出て来るとそれ等全てを同時に防御するというのは相当に難しい。広い家の中を音に気を配りながら走り回って対処する事になるが、ある事をして特定の敵に対処していると他の敵への防御が疎かになってしまうからである。更にこのゲームでは内部が暗いという問題があり、明るさ調整はあるのだが一定の距離以上は明るさに関係なく描画されないという方式になっている。そしてその距離は部屋の中央に居ると隅々まで見渡す事すら出来ないほどに短く、よって部屋の連結構造とどこに何が有るのかを憶えるまでは余計に難易度が跳ね上がるという風にされている。この周囲が全然見えないという設定はちょっとやり過ぎ感あり(高難易度ではそうなるという設定で良いのではないか)。

登場するユニークなモンスター達を体験出来るという意味では良いデモなのだが、肝心のストーリーモードについてはこれだけではほぼクオリティの方が解らないのでその点はモヤモヤが残る。

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