アクションゲームのタイプ別分類

 今回はFPSを中心に3Dアクションゲームにおける特殊なゲームタイプの分類・整理を個人的にしてみたい。特殊というとちょっと大袈裟だが、スタンダードな形式とは異なる要素を持ち込んでいる物という意味である。



*アンロック型
 対戦マルチプレイにおいて現在主流となっている方式。成績等に応じて経験値(XP)が入り、それが設定値に達するとランク(レベル)がアップする。そのランクに応じて武器, アタッチメント, アイテム(ギア), 特殊能力(Perks)等がアンロックされて使えるようになって行く。複数のクラス別にXPの管理が独立していたり、「チャレンジ」などと呼ばれる独立した各種能力アップ要素(XをY回達成するとその武器の性能が上がる等)が含まれていたりもする。


 このシステムはまず「経験値稼ぎとレベルアップの楽しみにより長時間プレイするモチベーションが生まれ易い」代わりに、「最高ランクまで達してしまった後のモチベーションをどういう風に保たせるか」という問題を持つ。そして最高ランクに達するまでの時間を長大に見積もるほどその問題を回避出来る上に、そこに到達するまでより長い時間プレイしてくれる可能性を持つが、逆にあまりの長大さに諦めて(呆れて)止めてしまう危険も生じるという難題を抱えている。


 次に「ランクアップする事で自分よりもスキルは高いが低ランクのプレイヤーとの戦闘に勝利する確率を高められる」が、逆に「高スキル&高ランクのプレイヤーと低スキル&低ランクのプレイヤーの差が広がってしまう」という問題。この件は各プレイヤーの成績を見て、スキルやランクに関わらず同程度の能力と見られる者を同じサーバーへと振り分けるという解決策がある。しかし“ランクアップ=強くなる”という概念を持つプレイヤーも多い為に、幾らランクアップしてもずっと勝率に変化は無いとなると、ランクアップを頑張る意味が無いとしてゲーム自体を否定される恐れもあり難しいところ。


 ランクアップする事でどれだけ優位になれる様に設定するのか、は非常に重要な事項となる。ランク(レベル)が上の方が絶対的に有利というMMORPGの一般的仕様を採用するFPSはほとんどないと思われるが、ある程度は優位にしないとランクアップに励む意味が失われてしまう。だからランクが高い方が相当有利という風に設定して、低ランク時は勝てないが頑張ってランクを上げれば今度は自分が優位となるというデザインも選択肢としてはありと言えるだろう。実際には折衷案としてスロット方式を採用し、ランクが上がると沢山の武器やアイテムを選択可能にはなるが、装備スロットが限定されているので全てを戦場へと持ち込むことは出来ないと設定。つまりランクが高い方が状況に応じて適切なカスタマイズの幅が広がりその意味では優位だが、戦場に降り立った状態での純粋な戦闘能力はそれ程上がらないという形でバランスをとったりしている。


 チート防止の為に成績がサーバー側で管理される必要があり、それ故にDedicated Serverが自由に建てられないという大きな欠点を持つ。ユーザーにDS用のファイルを配布してサーバーを自由に公開出来るようにするというのはPCのFPSにおける大きな利点だったのだが、これを許してしまうと簡単にレベルアップが出来るようなチートサーバーを運営されてしまう危険がある。よって現状ではランク対応サーバーを建てたいなら運営側が認めているレンタルサーバー会社に申請して、有料でDSを建ててクラン等で使用するという方法しか用意されていない。これはModも同じであり、導入が可能だとしてもそれはXPを稼いだりは出来ないサーバーとして運営するしかなく、それでは人気が出ない。そうなるとModの開発も停滞してしまうのは間違いないだろう。  


 もう一つこの方式の定義として、プレイヤーの基礎能力を上げるという成長要素は(ほぼ)含まれないとする。例えば射撃の命中率, 耐久力といった能力別パラメーターが用意されているのではなく、精度の高い武器やアーマーなどをアンロックして装備し戦闘能力を上げるという形式である。Perksの様なシステムで能力値を上げることは出来るが、それは一時的だし選択も限定的というルール。


 シングルプレイのゲームでは例としてCall of Juarez: The Cartelがあるが、経験値を稼いで武器類をアンロック出来るが、キャラクターの能力自体は上昇しないというこの形式は稀。金を稼いでそれで武器類や何等かの能力を上昇させるアイテムを購入するという方式ならばそこそこ存在しているが、通貨の場合には「経験値と違って購入により減ってしまう」, 「持っている範囲内なら自由に買い物が可能」, 「入手出来る場所を見付けない限り金を持っていても買えないアイテムあり」といった点で、ランクによる固定アイテムのアンロックやチャレンジで狙った物を入手するシステムとは異なる。



*RPG型
 これはRPGの様にキャラクターの能力自体が上がって行くという方式で、経験値等によるレベルアップにて能力パラメーターを上昇させていく。大抵は自分の好みの方向へと成長させる事が可能である。基本的にシングルプレイ用のゲームにて使われる方式となり、No One Lives Forever 2, Deus Ex, などがそれに当たる。特殊部隊物で隊員の能力パラメーターが上がるゲームもこのタイプに含まれると言える。Bioshockの様にインプラントという形での切り替え可能な能力アップを行うタイプも有り。アップグレード可能なのは射撃精度, ステルス能力, ヘルス値, 移動速度等。それと合わせて武器改造の要素を持ち込んでいるゲームも多いが、武器の改造や購買要素だけしか持っていないゲームはRPG型には入れない事にする。


 アンロック要素に関しては導入していない物がほとんどである。シングルプレイのキャンペーンにて途中のある地点で新しい武器が入手出来たり、探索によって普通にプレイしていては見逃す可能性があるアイテムを入手出来たりするのは、ニュアンス的にアンロックとは違うのでこれは含めない。金を稼いで武器類を購入する形式の物も先に書いたようにアンロック方式とはちょっと違う。他にKilling Floorはキャンペーンの概念を持たないが、これも成長要素はあるけれども武器類のアンロック要素は無いのでRPG型とする。


 RPG型の利点はキャラクタを自分の好きな様に成長させられて、自分の好みのスタイルでのプレイをより面白くさせられる点。そして異なるタイプのキャラクタに育てることでリプレイ性が高まるのも大きい。欠点はあまり役に立たない能力を重点的に成長させてしまうと、リセット出来ない限りは不利な状態でのプレイを余儀なくされてしまうところ。またどれだけプレイヤーがレベルアップに尽力するかが不確定なので、難易度のバランスを調整するのが困難という問題も抱えている。成長させ過ぎると簡単になってしまうし、無視すると逆に難易度が増してしまう。



*リプレイ推奨型
 武器やアイテム類の取得やアップグレード状況をリプレイ時に引き継げるタイプのゲーム。昔から主にコンソールのゲームにはクリア時の所持品や能力をそのまま引き継いで、また最初からNew Gameとして始められるタイプが存在する。このリプレイ性の充実を様々な形で盛り込んでいるゲームを指してリプレイ推奨型とここでは呼んでみる。マルチプラットフォームが増えているからPCで発売されるゲームにもこの方式が多くなってきたのは当然ではあるのだが、それでも比率として採用するゲームの数自体が増えているという印象。以下はとりあえず思い付いた該当するゲームのリスト(PC版が出ている物)。


Borderlands
Crysis 2
Dead Rising 2
Dead Space 2
Hard Reset
Hunted: The Demon’s Forge
Painkiller
Red Faction: Armageddon
Resident Evil 5
The Darkness II


 利点その一として、引き継いだ装備&能力により高度な難易度への挑戦が容易になる。例えばMediumはクリア出来るがHardは自分には厳しいというプレイヤーでも、強い状態から始められるので挑戦がし易くなり、結果的にリプレイ性が高まる。それと持っている装備が初回とは異なるので、単なる難易度変更でのリプレイに比較して戦闘の感覚が大きく違った物になるというメリットも生まれる。


 第二にグラフィックス系のコンテンツを制作する負荷は近年より高まっており、多数のロケーションを丹念に作り込むのは費用と時間が掛かるので製作量を限定したい。しかしそれに因って1回の通しプレイ時間が短くなるのはユーザーの不満を招いてしまう。そこでリプレイ時の変化を充実させることで、繰り返しプレイしても面白いというデザインにして少な目のコンテンツでも評価を高めるという狙いを持つ。


 問題点としては、引き継いだ状態で始めるのと新規に始めるのでは差が出るので、両者の難易度調整が難しくなる。Mediumでクリア後の装備引き継ぎでのプレイにてHardが丁度良い難易度に設定してしまうと、いきなりHardから開始する人にとっては難易度が増してしまう。かといってHardの難易度を下げると、引き継ぎでのリプレイ時に簡単になってしまう訳だ。よって引き継ぎでのプレイには新規開始とは異なった設定を用意するという対策を用いるゲームも在る。それに関連して難易度に影響される実績やトロフィーの達成において、引き継いだ方がずっと簡単になってしまう件をどう扱うかという事項もある。


 それとこれは少数派だが、二周目にならないと登場しない要素を持たせたゲームもある。上記のリストで言えばDead Rising 2などはかなり極端な構成であり、一回通してプレイしただけでは全ての用意されたコンテンツにアクセスするのは困難という設定(時間制限等)。このタイプはその分リプレイ時に新鮮さが増すという利点はあるのだが、一方で「このゲームは必ず二周以上プレイしてから評価するように」とは強制できない為、一回で止めてしまったプレイヤーからはコンテンツ不足等の理由で低い評価を受けてしまう恐れがある。



*経験値共通型
 Co-opを導入しているゲームで、シングルプレイとCo-op(物によっては対戦マルチプレイも含めて)にて共通した経験値を稼いでランクアップをすることが出来るタイプ。ランクアップにより武器やアイテムのアンロック(or購入)を行えるのは勿論だが、他にプレイヤー自身の能力パラメーターの上昇を行えるというゲームも存在している(アンロック型+RPG型)。なお上記のリプレイ推奨型でこの性質を併せ持った物もある。


Alien Swarm
Borderlands
Dead Island
Dead Rising 2
Dungeon Defenders
F.E.A.R. 3
Greed: Black Border
Hunted: The Demon’s Forge
Operation Flashpoint: Red River
ORION: Dino Beatdown
Payday: The Heist
Rainbow Six Vegas 2
Red Faction: Armageddon
Resident Evil 5
Saints Row: The Third
Section 8: Prejudice
Shoot Many Robots
The First Templar


 この形式もまたリプレイ性を高めるという目的がメインとなる。クリア後に装備引き継ぎという形では無く、レベルアップで能力を上げてそれをずっと共通して維持できるので、高い難易度への段階的なチャレンジが容易になるというデザイン。またクリア後の引き継ぎとは異なり、ミッション単位でのリプレイや、途中で別モードに移ったりした際にも現在のランクが適用されるので自由度がより高い。そしてランクやスキルが上昇すると戦い方が変わるので、単純に難易度を上げてリプレイするよりも変化が楽しめるという利点も一緒。同時に欠点も同じ様になる。


 特徴としてレベルアップによる能力の差が、下位と上位では大きく開いているというゲームが結構在る。二周目引き継ぎ方式だと極端な差は付け難いので、このデザインを採用するならこちらの形式の方が都合が良い。典型的な例としてPayday: The Heistというゲームがあって、これはインディーズ会社からのゲームで4人Co-op&シングルプレイを行えるのだが、発売時点では遊べるマップ数が6個しかない。高い難易度を設けてもスキルが高いプレイヤーが集まってしまうと短時間でクリアされてしまう可能性もあり、そうなると低評価は免れない。


 そこで低ランクのプレイヤーは射撃精度, リロード速度, 所持可能弾数, ヘルス値等の基本能力がRPGの初期キャラの如く劣っており、更には所持可能武器もアンロックまでは少ないという風に設定している。よってスキルが高いプレイヤーでも低ランクではどうしようもないという状態になり、低い難易度から挑戦しながらランクを上げ、能力が高くなったところで順次高難易度へと挑んでいくというスタイルになる。結果的に少ないコンテンツでもリプレイの時間を相当長く延ばせるという仕様となる。その点から低予算でコンテンツが少な目のインディーズゲームや、専用Co-opモードでそれ用のマップが少ないというゲームでは、ランクを上げながら難易度を段階的に変えて繰り返しクリアして行くというこの方式は採用にメリットがあるし、今後もっと増えそうだという予想も出来る。


 問題はランクによる能力差が大きい場合、上位と下位のプレイヤーが混在するCo-opでは差があり過ぎて、特に下位のプレイヤーにとって面白くなくなる恐れがある。フレンド同士のCo-opでもレベルアップの状況が異なると同じ状況になり、新キャラで最初からプレイする選択も出来ないとなると困った事になる。またCo-opから先にプレイしたりすると、シングルプレイの開始時点で既にある程度ランクが上がっていたりするので、制作側にとっては各難易度のバランス設定がやり辛くなる。



注(該当ゲームのリストは誤りがあるかもしれません)