大人は判ってくれない

 海外には多数のゲームレビューを行っているサイトが存在しているが、その中にはちょっと変わった視点からの評価を行っている所も存在している。今回はその様なサイト紹介の第一弾として、子供を持つ親の為のガイドを扱っている所を採り上げて見たい。



 ファミコン世代と言うか、それなりのクオリティを持ったTVゲーム機が登場した頃は、親にとってはTVゲームという物は未知なる存在という感覚が強かった。しかし現在では子供を持つ親の大半はTVゲーム(海外ではVideo Gameと呼ぶ)とはどういう物なのかは、自分が子供の頃にプレイしたりしているので知っている訳で、「TVゲームをプレイさせる事自体が子供にとって危険である」という様な発想を持つ親は少ない。しかしあるゲームの内容が、現在の自分の子供に対して相応しい物なのかどうか、という点については重大な関心事になってくる。


 北米ではレーティングを担当する機関としてESRBが存在しており、最低でも三人の審査員がメーカーから送られて来たゲームプレイのビデオを見てゲームの内容を判定するというシステムになっている。実際のレーティングは、E10+ (10歳以上), Teen(13歳以上), Mature(17歳以上)といった年齢指標と、Violence(暴力), Sexuality(アダルト), Language(言葉使い), Substance(アルコール・ドラッグ・タバコ等)といった個別のセクションにおいて、どの程度の内容が含まれているのかを記載している。


 しかし実際にゲームをプレイしないで正確な判定が行えるのかという疑問は以前から出ているし、細かいガイド区分については実際にはどの様な物なのかまでは判らない事も多い。例えばゲームに詳しくない親が“Mild Blood(穏やかな出血表現)”という記載を見ても、それって実際にはどの程度なのかはゲームの箱を見ても判定し難い。(ESRBに行ってより詳しい情報を参照したりが可能なゲームも在る)。

 それと自分の子供に何を見せたくないかについては、それぞれの親の教育方針や感覚によって様々である。一口に暴力表現と言っても、どういう物が駄目なのかという判定は親によって異なるだろうし、アダルトコンテンツについても「何を持ってエロとするのか」については個人差が大きい分野である。そこでゲームの規制に関連する内容をもっと具体的に知りたいという親の要求に応える為に、このゲームは子供に対してどうなのかという点を詳細にガイドするサイトが存在している



 先に一つ断っておくと、こういったサイトは子供がTVゲームで遊ぶ事を否定する立場ではなく、むしろ時間を守らせて適切なゲームを選んでやれば良い体験にもなるという立場のサイトがほとんどである。TVゲームは害悪なので追放すべきだという敵対的な視点からの評価を行っている訳ではない。このタイプのサイトでは有名なMediaWiseの様に、毎年「子供にやらせてはならないゲーム ベスト10」を公表したり、親へのガイドに「FPSの様な人殺しゲームはやらせるべきではない」と書いたりするサイトは極端な例である。


 具体的に有名なサイトを挙げてみると、まずはCommon Sense Media。映画やTV番組を含めて子供に見せても良いのかについてのレビューを行っている。(この手のガイド系では映画やTVをテーマにしたサイトの方が多い)。自分達独自の年齢レーティングを付けるだけではなく、年齢別対応バーにて細かく赤・黄色・緑での各年齢における安全性を表示。
更に4つの項目別にやはり色分けによる危険度表示と、具体的な収録内容を記載している。ただしゲームの本筋のレビューについては簡素が事が多い。要はそのゲームがどんな内容で面白いのかどうかを親は知りたい訳ではないという意味合い。親と子供の双方からの評価コメントも投稿可能。


 同じく有名なのがWhat They Playで、こちらはゲーム専門。ただしCommon Sense Mediaに比べると簡素となり、レビュー数も少なくガイド自体もそれ程詳しくは無い。しかしアダルト関連コンテンツについては記載が詳細であるという特徴を持つ。

 そしてGamerDad。ゲームのレビュアーとして働いているAndrew S. Bubによる個人サイトで、自身の子供の為に創設を思い立ったそうだ。ESRBのレーティングには問題があるという立場を示しており、必要以上に年齢制限が厳しいと指摘する評価が多目である。現在でも個人サイトとして運営されているが、旧サイトには外部のレビュアーからのガイドが多数掲載されており今でも見る事が出来る。GameCritics.comは通常の詳しいゲームレビューを行っているサイトだが、Consumer Guideという項目を含めてレビューの中に親に向けてのガイドラインが付け加えられている物が多い。



 では実際にどんな風に書かれているのか、幾つかレビューから抜粋してみたい。


 *Need for Speed: Most Wanted    ESRB:Teen(13歳以上)    GamerDad 10+ 


 『ゲームのテーマは違法なストリートレーシングだが、特に内容には問題は感じられない。パトカーの追跡から逃げるシーンも含まれるが、暴走行為で捕まると罰金を支払わされるというのを子供に学ばせるのも良い勉強になる。』


 *Destroy All Humans!     ESRB:Teen(13歳以上)    Common Sense Media  13+


 (宇宙人となって地球人と戦うゲーム) 『このゲームを子供に与えるに当って注意すべき点は、ホワイトハウスを始めとして多くの合衆国の有名な建物を破壊してしまうという行為にある。テロリストによる破壊行為が蔓延するこの時代なので、子供への影響を考えるとこのゲームを与えるかどうかは慎重に考慮するべきだ。』 


 *Blacksite: Area 51     ESRB:Teen(13歳以上)    by What They Play


 『テーマとして政府による秘密の人体実験や、イラク戦争をテーマにしたミッションが含まれており、子供に対しての影響力を考えないとならない。またプレイヤーを驚かそうと突然敵が跳び掛かって来るシーンが見られるが、ホラーゲームという扱いでは無いだけに、その予期せぬショックに対しての子供への影響には注意しよう。 』


 *Gun   ESRB:Mature(17歳以上)      by GameCritics.com


 『主人公はウイスキーのビンの中身を飲み干して体力を回復するようになっており、アルコール類の飲用について繊細な家庭ではその点に留意しておく必要がある。』 


 *Final Fantasy IV (NintendoDS Remake)    ESRB: E10+   Common Sense Media  11+ (ただし11-13を黄色警告)


 『このRPGは低年齢の子供には向かない事を知っておくべきである。ストーリーは愛・裏切り・贖罪といった重いテーマを扱っており深刻過ぎる。また意図せずに平和な村を破壊してしまうシーンが含まれており、この部分は子供に対して慎重な説明が必要となる。』


 *Left 4 Dead    ESRB:Mature(17歳以上)      by GamerDad


 『大量の流血・死体・モンスターが含まれる、非常に暴力的なゲームである。ただし人間を倒すシーンは含まれていない。Matureのレーティングは妥当ではあるけれども、私の意見としては推奨はしないが、テーンエイジャーにプレイさせても良い様に思える。ゾンビを倒すのはありとあらゆるシチュエーションにおいて正しい行為であり、それを子供に教えるのにこのゲームは問題ないだろう。』


 *The Sims 2   ESRB:Teen(13歳以上)    by What They Play


 『ベッドのシーツの中で2人のシム人が行為に及ぶシーンがあり、何をしているのかを子供に聞かれる可能性がある事を想定しておこう。またプレイヤーの制作したシム人は高齢や火事等の事故によって死ぬようになっており、感情を込めて育てたシム人が死んでしまった場合、子供によってはその事態が受け入れられない可能性があるのに注意。』


 *Metal Gear Solid 3: Snake Eater     ESRB:Mature(17歳以上)     by GameCritics.com


  『非常に残酷とは言えないが、敵の兵士を殺す描画シーンが含まれている。一方でこれまでのシリーズとは異なりストーリーはシリアスで良く出来ており、死と戦争というテーマにおいて思慮深い設定が成されている。よって忠誠心・愛国心・裏切りといったテーマについて子供と語り合いたいのならば、このゲームを(レーティング対象外の)子供と一緒にプレイするのも良いであろう。』


 *Tony Hawk’s Project 8    ESRB:Teen(13歳以上)   Common Sense Media  12+ (ただし12-15を黄色警告)


 『他のシリーズと同様に、社会秩序に対する反逆の要素が強く含まれている事を親ならば知っておく必要がある。ゲームの目的として、公共の壁等にスプレーで落書きをしたり、不必要なリスクを冒してわざと骨折する行為が要求される。』


 *Battlefield 1942    ESRB:Teen(13歳以上)     GamerDad 10+


 『流血やゴア表現は含まれていないのでその点は安全。ゲーム自体は私の知る限りでは6歳でちゃんとプレイも出来ている子供もいる。ただし私としては10歳以上の理解力を持った子供に推奨したい。このゲームは実際に起きた戦争をシミュレーションしている物であり、現実には大量の人間がこの戦争では亡くなっている。子供にはゲームと現実は異なるという事を理解させた上で遊ばせないとならない。』


 *Fatal Frame 2: Crimson Butterfly(零~紅い蝶~)  ESRB:Mature(17歳以上)     by GameCritics.com


 『若干のゴア表現を含むが問題はそこでは無い。このゲームの持つ恐ろしい雰囲気は、若い子供達に多数の悪夢を見させる危険性を孕んでいる。もし子供がホラー映画に対して免疫が無いのならば、これを子供に与えるのは避けるべきである。』



 総合的にはESRBの指定は大袈裟過ぎるという意見も見られて、シューティング物の場合には敵が人間かどうか、またその戦闘の設定がどれだけ現実に近いのかがポイントとなるようだ。反対にGTAシリーズの様に、一般人にも危害を加えられる様なゲームに対しては一様に評価は厳しい。所詮はゲームだからという容認は無く、かなり厳しい口調で子供をこういったゲームから遠ざけるようにという警告ばかりである。


 グラフィックス的な残酷描画については、過剰に流血表現の程度にこだわる姿勢が目に付く。アメリカでは日本からの輸出アニメでも出血表現の規制が厳しいという話を聞くが、ゲームについても親の目は同じらしい。どの程度の出血の表現があるのかと流血が周囲に残るのかどうか、それに倒した人間やモンスターの死体がその場に長く残るのかどうかがポイントになるようで、それについて詳しく書いている物が多い。


 アダルト表現については、北米では親はかなり神経質だという話は聞く。日本だとモザイクなのにアメリカでは無修正という事から向こうの方が性表現には開放的というイメージを持つ人もいると思うが、実際には販売に関しての規制は厳しい(アメリカでは地域によってセクシャルなコンテンツについての法律や感覚が大きく異なるのでの一般論になるが)。逆に日本は表現には規制が掛かるが、販売規制については異様に緩いとも言える。普通の販売店にアダルトDVDや18禁ゲームのコーナーが設けられていたり、Amazon等の通販でもアダルト関連のアイテムを簡単に買う事が出来る。また本屋やコンビニで18禁の書籍が扱われていたりもする。しかしアメリカではアダルト関連の商品は一般の販売店からは分離されて専用の店で売られており、普通の量販店や通販等で扱われる事は少ない。よって子供がその辺でセクシャルな表現のアイテムを目にする可能性も日本に比べて低いので、親の側からもそういったコンテンツをゲーム内で見るという事に過敏になったりする。


 例えば女性の胸の谷間が見えたりするのはTeen(13歳以上)でないとアウトと考える人が多く、各サイトのレビューにもそういった露出度については具体的な事例を挙げて情報を提供している。日本だと18禁のゲームに対しては当然親は過敏だろうが、露出度という点では今では少年漫画誌からしてかなり過激だったりするので、暴力表現にはやはり厳しいが、普通のゲームでのセクシャルな表現に対しては甘いと言えそうだ。



 その辺のセクシャルなコンテンツの情報については、こういった親へのガイドサイトでは具体例や感想を示している訳だが、真面目に書いてあるのが逆に変で笑ってしまうような記述もある。例えばDSのDragon Ball: Origins(Teen)を採り上げると、これはWhat They Palyでは的確なレビューとして、『 レーティングでは“Partial Nudity”(部分的な裸体表現)の記載が有る。しかしキャラクターが裸になるシーンは確かに在るが、不味い箇所が見えたりする訳ではない。原作漫画からの有名な1シーンとして、ブルマがドラゴンボール欲しさに老人(亀仙人)に自分から体を見せる箇所が存在するが、表現としては別に問題の無いレベルである。』という様に書かれている。ところが本元のESRBの評価記載だと、『あるシーンでは女の子が老人に対して、自分のパンツを見せるかどうかで言い争うシーン在り。』となっており、確かに間違ってはいないのだが、不必要に卑猥な表現になってしまっていて親の誤解を招く可能性がある。以下にその手の書き方が妙に思える記載を紹介。


*Tomb Raider Underworld       by What They Paly
 主人公のララはセクシーな衣装に加えて過度に誇張されたプロポーションをしている。これらはゲーム中には入念に考えられたカメラアングルから見せられるようになっている。


*Shadow Hearts from the new world   by GamerDad
 女性キャラクタのShaniaが精霊に変身するシーンでは、一度彼女が服を脱いだ後に刺青の様な形で精霊が彼女のボディーに貼り付いて行く。完全な裸の画像は出て来ないが、人によっては非常に刺激的に過ぎると感じられるだろう。オプションからそのアニメーションをカット可能だが、設定まで辿り着くのが判り難くなっており、また服を脱ぐシーンは変更出来ない。


*Fahrenheit (Indigo Prophecy)   by What They Paly
 男女共に裸での性交シーンが登場するが、両者の体は上手く局部が見えないような配置で描写されている。ただしゲーム中に一部だが尻が丸見えになるシーンが在るので注意。


*Soul Calibur IV    by What They Paly
 幾人かの女性キャラクタは在りそうもないような体型をしており、肌の露出度も高い。一言書いておかないとならないのは、女性の体の一部は実際の女性の体の様に揺れるが、現実世界よりももっと明白に揺れるという点。


*Dead or Alive: Xtreme Beach Volleyball    by GameCritics.com
 幾つかの水着は極度に小さな紐やビーズの様な素材となっており、それが魔法の様な力で保持されている。ビキニで胸を揺らす女性が自分の子供には早過ぎると考えるならば与えるのは止めた方がいい。刺激的なポーズが多数含まれるが、具体的な性的行為については一切存在しない。ビーチバレーボールのゲームを探している人は避けるべき。ルールは公式では無いし、対戦要素も希薄である。


*Dark Messiah of Might & Magic     by What They Paly
 レーティングの”Partial Nudity”は女性魔術師Xanaを示している。彼女は非常に露出度の高い衣装を着ており、時には大きく胸が顕わになる様なシーンも出て来る。また彼女の主人公への囁きには性的な暗示表現が多く含まれている。もう一人旅のコンパニオンとしてLeannaという女性キャラクタも出て来るが、こちらはより健全でセクシー度も劣る。



 では最後にこういった性的表現に対するレビューとして、私が傑作だと思ったベスト3を紹介。まずはGameCritics.comよりChi Kong Lui氏によるDead or Alive 2のレビュー。映画「American Pie」の有名なシーンに言及しての評価。(高校生グループが卒業までに何とか初体験を済ませようと奮闘するおバカな青春コメディー)。


 『もしあなたが、子供に女性の揺れる胸やパンツを見せても良いと思うならば、このゲームは買う価値がある作品である。なお私としては思春期の子供を持つ親が、子供達がプレイ中にコントローラー以外の物を触っているシーンに遭遇しないように願っている。』


 続いてはGamerDadからColleen Hannon氏がNinety Nine Nightsのレビュー。怒ってます。

 『最初の問題はオープニングムービーのInphyy(インフィ)である。ムービーは登場キャラクタのモンタージュとなっており、他のキャラクタは意味のあるシーンなのだが、そこでインフィが行っているのは鎧を着る事だけ。その彼女が身に着けているチェストアーマーだが、私は断じてこれをチェストアーマーとは呼びたくない。真ん中が大きく開いていて胸が見えており、守るという役割を果たしていないからである。そしてゲームを始めて気が付くのは、最初に選択可能なキャラクタは彼女だけだという事実。彼女はゲームにおける悪い女性キャラクタの特徴を全て集めたような存在である。私の子供も、私がインフィをプレイして他のキャラクタをアンロックするまではこのゲームをプレイしようとはしなかった。』


 同じくGamerDadからDead or Alive 4のレビュー。Dave Long氏が担当。それはあなたのこだわりであって、親が知りたい情報では無いと思うのだが....。

 『トレードマークである“乳揺れ”は健在であり、何年も見慣れているにもかかわらずプレイ中には目が行ってしまう。だがここでもっと気になるのが、その胸が全方位ではなく上下にしか揺れないという点である。ナムコがこの問題をSoul Calibur IIで解決した以上は、テクモも適切な乳揺れのフィジックスを用いて来ると考えていたのだが。 』



 次回はまた違ったタイプのレビューサイトを紹介する予定である。