ダウンロード販売から消えたゲーム

まず最初に、今回は話が長くなったので2回に分ける事にした。メインテーマは「ダウンロード販売で購入出来ないゲーム」であり、それを更に細かく2つに分けている。その中で今回は「ダウンロード販売から消えてしまっており現在では購入出来ないゲーム」の方について語る。

定義としては「ダウンロード販売で一時は売られていた経歴あり」だが、現時点では消えてしまっており買えないゲームであり、未だに発売されていないゲームは除く。それと世界的に(完全に調べるのは困難なので英語圏において)であって「日本からは買えないゲーム」の意味では無いので念の為。

当然話の中心は最大の販売サイトであるSteamになるが、Steamから消えているだけのゲームは対象外。他の公式代理店系サイトでは普通に売っているケース(Steam登録用のシリアルキー以外の販売)はカウントしない。この辺りは売り上げ額の店側と販売会社側の配分比率の契約で同意出来ていないとかが考えられる(多分Steamが最も手数料が高いと思うので)。後はBlizzardやEAの一部作品の様に自社の販売サイトのみでしか売っていないゲームとかも除外。なおいわゆる鍵屋と呼ばれる非公式代理店でのシリアルキーの販売状況については考慮していない。それと突然消えたと思ったら戻ってくるゲームも結構有るので、これを書いている時点でのデータとする。

先に消えてしまった場合の扱いについて書いておくと、既に購入済みでライブラリ内に残っているのであれば消失後もダウンロードは可能である。保証は出来ないが、消失と同時に購入者からもダウンロードが出来なくなったというゲームは聞いた事が無い。私にもSteam, Origin, GOG, GamersGate等複数のサイトにてそういうゲームが何本か在るが問題は無し。ただオンライン専用でサーバーが閉鎖等により実質プレイ自体が不可能になった物については、ダウンロード出来ても意味が無くなるのでどうなるのか判らない。または著作権違反の訴えで店から取り下げられたケースでは、その違反している物をサーバー側に残せるのかという点は疑問である(返金処理の可能性が高そう)。

ダウンロード販売サイトではそのほとんどが「何回でも永久にダウンロード可能」を謳っており、それに反したら返金処理となるだろうから、ダウンロード自体を不可能にするなら店とパブリッシャーどちらが金を払い戻すのかで揉める事になる。よっておそらく販売契約時に「契約が切れてもサーバーにゲームデータは永久に残す」という形で契約しているのだと考えられる。販売契約の切れたリテール版を店からは回収しても購入者各個人からは回収しないのと同じ。

次に販売停止後のシリアルキーの登録に関してだが、これはその後も有効化が可能である。キーの有効化が停止されたゲームと言うのはやはり聞いた事が無い。シリアルキーが売れた時点で店とパブリッシャーには利益が入っている訳なので、それが既に有効化されていようがいまいが関係ないという理屈になる。実際に販売サイトから消えると、まだ有効化されていないキーやギフトの取引が活発になる傾向にある。鍵屋などで消えた後も売っているキーについても、同じ理由から有効化は可能と見て良いはず。

最後にそのシリアルキーの登録期間だが、これはビデオカードのオマケ等で期間指定がされていない限りは、永久に有効という扱いにされているはずである(当該サイトが存在している限りは)。だが注意するべきなのはバンドルサイトでの販売形態。もしくはシリアルキーをダイレクトに貰えない販売形態である。Steamでの直接購入はイコール登録なのでOKだし、他のサイトでも購入と同時にSteam等のシリアルキーその物が受け取れるならば問題は無い。しかしバンドル販売で有名なHumble BundleやIndieGalaの様に、購入後にライブラリ内から「キーを受け取る」というボタンをクリックして初めてキーが貰えるというシステムを採用しているサイトもある。大手でも例えばGamersGateはこのスタイル。なお直接すぐにキーを渡してしまえば良いではないかと思うかも知れないが、バンドル販売サイトでは大量購入によるキーの転売問題という件が存在しており、その辺の絡みで複雑なシステムを採用している所もあるという事情があったりする(詳細は長くなるので割愛)。

では肝心の注意点について。バンドル販売では自社の販売サイトでは扱っていないゲームも含まれていたりする為に、キーを要求されたらすぐに渡せる様にある程度の数をパブリッシャー側から事前に受け取っている。だが販売終了後に一定期間が過ぎるとそれを返却してしまうケースがあり、これが後に厄介な事になる恐れがある。一つは返却後にその権利を持っているユーザーからキーを要求された際に、改めてキーをパブリッシャーに要求する為に発行に時間が掛かる事があるというもので、こちらはまあ遅れるだけなのでマシである。問題は販売サイトから消えた後にキーを要求した時点で、もうパブリッシャーが倒産して無い等でキーが存在しないというケースで、最悪キーが永久に受け取れないというのも考えられる。よってこのタイプのサイトでの購入後は出来るだけ早くキーを有効化しておくべきなのだが、上に書いた絡みで「ギフトとして誰かに送る際にはキーを有効化していない状態でなければならない」というシステムがあり、期間が経過した後に送る相手を決めたりとか、受け取った相手側が有効化せずに長期間放置していた場合などにこの状況が発生してしまう危険がある。

話を戻して、何故今まで売っていたのに店から消えてしまうのか?という理由について。まずは販売期間終了による新規の契約において利益の配分比率で折り合わずというケースがある。或いはもうこのまま売っても儲からないと判断してゲーム会社側が取り下げるというのもあるだろう。

その他の代表的な理由としてはやはり版権物である。そしてActivisionがすぐに連想される。007 James Bond, Star Trek等、その版権会社と契約して期間中に何本かゲームを制作するが、契約が切れたらその作品はリテール版ならば店頭から回収、ダウンロード販売ならば店から消える事になる。様々な映画・ドラマの単発ゲーム化でもこのパターンが多く、契約期間が切れればそのゲームは店から消えてしまう。

続いてはゲームの版権所持者の変更。そのゲームを販売する権利を持った所が変われば、改めてそこと契約を結ばなければならない。これが上手く行かないケースでは消えたままとなる。

ライセンスの問題。これは大抵の場合音源である。ゲーム内のBGMを制作する場合、制作チーム内に担当者がいるなら制作費は給料扱いとなるし、外部発注であっても買い切りならば問題にはならない。だが外部のミュージシャンに依頼するケースでは、販売期間を決めて金を払う契約形態になる事がある。ゲーム内での使用料金が高額になるのを避ける為に、ゲームの寿命(販売継続期間)を考慮して5~7年間とかに限定して安く抑えるという意味である。ところがダウンロード販売が発達した事により、ゲームの販売期間がリテール版の時代よりも遥かに延びるという形に様変わりしてしまい、その為にリテール版時代に結んだ契約が切れてしまうという事態が発生する。当然継続して販売するには新たに使用料を払う契約を結ばないとならないが、それを払っては利益が十分に出せないという判断で販売を打ち切るというケース。

理由は同じだが別の対策を採るというゲームも見られる。近年では有名ゲームとしてGTA: San Andreas(2004)において同様の事態が起きたのを御存知の方も居るだろう。契約していた楽曲のライセンスが切れたのに伴い、ラジオ局から流れる中から契約が上手く行かなかったと思われる17曲がアップデートでSteam版から削除されるという措置が採られている。他だとオープニング等の本編外部で使用される版権対象曲のみを差し替えるといったゲームも在り。しかしゲーム内の通常BGMの場合にはカットしてしまうのは無理があるので、そうしてから売るという訳にはいかない(別の理由でBGMがカットされた状態で売られているゲームは有るものの)。

技術的な理由という物も結構有る。現行のOSやビデオカード等との組み合わせでは動作しないというのが原因で販売が停止されるケース。動かす為のModを制作している有志が居て、それを採用してライセンス料を払い発売という物もあるし、或いは動かす為の設定方法が解っているというゲームも中には有るが、その処理が複雑で一般的では無い, どの程度のPC環境にて成功するのかの検証が困難、と判断されればやはり停止される事になる。

マルチプレイ用のサーバー消失。近年で代表的な物ではGamespyのサーバー機能が完全に停止した為に、これを使用していたゲームでは代替の方法を用意出来なければプレイは続行できないことになる。マルチプレイ専用ゲームでは止まれば終わりだが、シングルプレイを備えているゲームでもシングルプレイオンリーという設定にて販売を続行するのかどうかは販売側の判断次第となる。

何等かのトラブル発生が原因。これは幾つか具体的に例を挙げていこう。大手のゲームでこういった事があれば大きな騒ぎになるが、インディーズ会社なのでゲーム名を聞いた事が無い方も多いと思う。

The Stomping Land これは比較的有名だろう。Kickstarterで10万ドル以上を集めて早期アクセスを開始したが、途中でリーダーが金を持って消えてしまう。雇っていた制作メンバーにも給料が支払われずに開発中止状態に。それに伴いSteamから削除される。
DarkBase 01 あまりにもゲームをクソミソに批判された制作者が切れて、Steamのコミュニティはクソだと宣いゲームの頁にウンコの画を貼り付ける。それが原因でSteamからバンされた。
Journey Of The Light 極めて難しいので誰もクリア出来ないと言うのが売りだったが、実際には最後まで中身が作られていなかったというのが判明し、販売停止と全額返金という措置が採られた。
Paranautical Activity 発売前のValveとのトラブルで怒った制作チームの一人がGabe Newell殺害予告をネット上に書き込んで販売停止に。後にゲームの版権が別会社に譲渡されて、現在ではDeluxe Atonement(贖罪) Editionとして再発されている。 
Houston, we have a problem,
One Night,
Strangers
全て内部データにHalf-Life 2から無断使用した物が含まれていたのが発覚して3本とも販売停止。著作権違反だが現在でもダウンロードは可能。これは対象がValveだからという特例かもしれない。
Afterfall InSanity,
Afterfall Reconquest Episode I
Unreal Engineを使用していたがロイヤリティを支払わず、Epic GamesがSteamに抗議して販売を差し止められる。そして会社は収入源を断たれてすぐに倒産している。ただ経路は不明だが大手でもまだ売っているサイトは在るし、Steamにも内部的にデータは残っていたりもする。

ここからは具体的な作品となるが、何しろ数が多いのでFPS/TPS系のある程度は有名なタイトルに絞って紹介して行く事にする。それと007などの明らかな版権物は除いている。Steamが中心だが、販売状態については見落としがあるかも知れない点をお断りしておく。


*Duke Nukem旧作
3DとForeverを除く旧作品が今年から買えなくなっている。GOGでは3Dも無し。これはDukeのフランチャイズが完全に3D RealmsからGearboxへと移行された影響。よって契約が済めば再発されるはずである。

*Enemy Territory: Quake Wars
*Wolfenstein (2009)
権利がActivisionからBethesdaに移行したので販売が停止されたはずだが、他のゲームは改めてBethesdaから出ているのにこれ等は発売されていない理由は不明。ETQWの方は実質マルチプレイ用ゲームなのでサーバー運営関連の問題とも考えられるが、Wolfensteinの方はそうではないので謎である。

*Mafia
正式に発表はされていないが、多数のミュージシャンによる楽曲を使用しているので、その新規契約によるライセンス料が払えない(or利益が出ない)からという話になっている。

*Mafia II
こちらも同じ理由ではないかとされているが定かでは無い。しかし日本語版だけはまだ売られており(日本語版はIDが別)、これは何故なのか不明。日本語版用に契約したライセンスは別扱いでまだ切れていないからなのか? 買いそびれた海外ユーザーが日本語版を購入して英語字幕にならないと嘆くなど逆の事態が発生している状況である。いずれにしろ購入予定のある方はこちらも消える前に買っておいた方が良いかも。

*Cryostasis
*Vivisector
制作したウクライナのAction Formsは活動を停止しており、現在は2つに
分裂し別々の会社としてモバイルアプリの開発に移行している。その関連で権利が移ったので同社のライセンスゲームは発売停止に。GOGでは新たな権利者と契約の話をしているという書き込みがあったのだがそれっきりで今に至っている。

*Prey
若い方は既に知らないかも知れないので書いておくと、ポータルや重力壁による上下逆転, インディアンが主人公という2006年発売のFPS。かなり前に販売停止になっている。なお珍しい例だがこのゲームはリテール版のCDキーをそのままSteamに登録可能である。なのでリテール版の新品を手に入れればキー登録は行える。ズーが売っていた日本語版だとどうなのか不明。出来るとしてもサーバー側に日本語データが収録されているとは思えず、少なくともそのままでの日本語化は無理だと思われる。

*Ghost Recon: Advanced Warfighter 1,2
ファンサイトが理由を聞いたが明確な返答は得られず。ただマルチプレイがgamespyを使っていたのでそれの停止に伴う可能性が高い。一応公式にはGameRangerにサポートを譲渡しているのだが、VPN利用のサービスは一般的には敷居が高いという判断なのだろう。シングルプレイキャンペーンも含んでいるので、それのみで売っても良いのと思うのだが。

*Section 8
制作会社が倒産している。ただし続編のPrejudiceの方はまだ売られている。よって会社が運営していたサーバーが停止しているのが原因だと思われ、そのPrejudiceの方は今はシングルプレイ専用としての販売。このゲームにもキャンペーンは含まれているのだが、続編に比較して簡易で出来も良くないのでPrejudiceだけを売っていると推測される。

*Clive Barker’s Jericho
デザインを手掛けたクライブ・バーカーとの権利契約が理由の可能性が高いが、昔のUndyingはGOGで売っていたりするので契約料が高額だからとも言い切れず何とも言えない。なお米AmazonならばまだSteam版のキーを売っている。それとAgeia物理エンジン時代のPhysX対応タイトルとして、NvidiaのPhysX最新ドライバとは別にPhysX_System_Software_Legacy_Driverを入れておかないと動作に問題が発生するという件があるのだが、この程度であれば一言記載しておけば良く現行PCでの動作に問題があるとはとられないであろう。

*Stubbs the Zombie: Rebel without a Pulse
Windows 7以降では正常動作しないというのが理由と考えられる。対策はあるのだが初心者には複雑で難しいとも言えるし、治る可能性も100%とはなっていない。

*Soldier of Fortune: Payback
(一番売る必要の無い代物だが)シリーズの中では唯一のダウンロード販売タイトル。これは敵のヒットボックスが大幅にズレるという致命的なバグの為と見て良いだろう。発売当時から在ったのだが、現在ではビデオカードの変化からなのか、どうやら発生確率が高くなっている模様。照準が合うと赤くなるのを利用して、敵の周囲で動かしてやり赤くなったらそこで撃つという方法はあるが現実的では無い。

*Commandos: Strike Force
これは購入可能なのだが、Steamでだけ今は買えなくなっているという特例として紹介。当然他サイトの物は独自のDRMである。不思議なのは他のシリーズタイトルは全てSteamでも購入可能という点。制作会社もパブリッシャーも同一なのだが、これが最後のゲームなので何等かの契約形態に違いがあるのか。

*Second Sight
2005年のゲームだがPsi-Opsと比較される事が多い超能力を使って戦うTPS。ただ既にPsi-Opsすら知らないという方も多いかも。これは権利関係の問題とアナウンスされているが、正確には楽曲なのか別件なのかは不明。

*Shellshock 2: Blood Trails
Rebellionに直接メールを送って聞いた人の話では、「こちらではどうしようもない問題」と返事されたが具体的な内容は書かれていなかったそうである。Core Designが開発していた最中に同社をRebellionが買収して制作を続行。Eidosから出たがその後スクエアエニックスにEidosが買収されるといった複雑な経緯もあり、版権に何か事情があるのかも知れない。

*Infernal
2007年発売のTPSでそこそこ有名。これは珍しい原因で正常動作しないのが理由だろう。上のJerichoでも書いたがNvidiaに買収される前のAgeiaを使用していたゲームでは、途中からPhysXの最新ドライバではなく独立したPhysX_System_Software_Legacy_Driverを入れて対応する様に変わっている。ところがこのゲームが使用しているAgeiaのバージョンに限ってはこのレガシードライバにて対応されていない為に動かない。単にテキストの記述が無いだけでそれを書き加えれば動くのだが、それは一般的にはハードルが高過ぎるという判断だと思われる。

*Blade of Darkness
2001年と古い剣術アクション物だが、一部に絶大な評判を得た反面、その異常な難易度から全般的には高評価を得られず。だが今でも活発にMod制作とマルチプレイが行われているという一部にカルト的な人気を誇るゲーム。GOGにて最新PC環境への対応も考慮されたバージョンが再発された際には歓迎されたのだが、何故か短期間で消えてしまっている。

<16/02/18追記>
*Blacksite: Area 51
*Psi-Ops: The Mindgate Conspiracy
*SWAT 4 (Gold)
*The Suffering
*The Suffering: Ties that Bind
*Tribes: Vengeance

自分で昔記事に書いておきながら忘れていたのだが、SierraやMidwayのゲームの中で幾つかはDirect2Driveにて売られていた経緯がある。一応書いておくとD2Dとはゲームサイトとして有名なIGNグループが経営していたダウンロード販売会社で、昔まだダウンロード販売がそれ程大きなウェイトを占めていなかった頃はSteamのライバルとされていた大手である。ただここは北米在住者しか買えないゲームが結構在り、Steamに比べると日本では利用者が少なかったサイトである。

その後次第にSteamに差を付けられるに様になり、2011年にゲームレンタルで著名なGameflyに売却される。なおこの時にパブリッシャーとの契約の問題からかライブラリの移管が正常に行われない(D2D時代に買ったゲームがGFのライブラリに移されずダウンロードが出来なくなる)という件が大きな問題として騒がれたが、今調べてみたら結局改善はされなかった様である。上記作品(パブリッシャー)はその被害に遭った物らしく、GFに移管後は買えなくなっているし、D2Dで買っていたとしてもライブラリには残らなかった模様(正確な確認は出来ず)。そしてもはや商売にならないと見たのか、Gameflyは2014年に台湾のAtGamesにD2Dの権利を売り渡しており、現在では同社がD2Dの名前でダウンロード販売を行っている。

ただし上記の中でPsi-Ops, The Sufferingの2点は広告機能付きのフリー版がダウンロード配布された経歴あり。またTribes: Vengeance(を含むフランチャイズ全作品)は現在無料で配布されている