*Kane & Lynch 2: Dog Days
第一作はゲーム外のスキャンダルが目立って有名にはなったが、肝心の内容の方が今一つという結果だったシリーズの第二作。制作は同じくIO Interactiveが担当しており、一番の変化はプレイヤーの操作する主人公がKaneからLynchになったという点。前作はマルチエンディングだったが、今回の設定ではその後二人は別れてそれぞれの生活を送っており、リンチの方は上海の裏社会で新たな恋人と共に暮らしていた。そのLynchが初めての大きなヤマを前にして、信頼出来て腕の立つパートナーとしてKaneを上海まで呼び寄せるという所から始まる。なおロゴにある“伏天”とは“Dog Days”の中国語訳で「猛暑の夏の日」の意味。
システム面には手が加えられており、誤動作も発生していたオートカバーからマニュアル操作のカバーに変わった。それと主人公がサイコパスで直情型のリンチになったからなのか、ゲームの特徴でもあったFreedom Fighters譲りの多人数を率いての部隊操作についてはカットされた模様(完全に無くなったのかはまだ不明だが、ちゃんと残っているという情報は聞いた事がない。少なくともメンバー間での武器の交換は出来なくなっている)。戦闘も近距離での撃ち合いがずっと増えており、よりストレートなシューターとしてデザインされているそうだ。ただ業界的にはよく見られるタイプであっても、IO Interactiveとしてはこういう普通のシューティング物は初めてなので、どういう風に変化を付けてくるのかが注目される。
最大の特徴とも言えるのがその独特なビジュアルスタイル。前作からバイオレンスを強調したり, HUDレスにしたり, 映画化前提でのマルチメディア展開を狙ったりと、徹底してそのゲーム内世界がリアルに感じられるようにと力を入れているシリーズだが、この世で最もリアルに見える映像とは何かを突き詰めていった結果、それはYouTube等に投稿されたユーザー制作動画であるという結論に。そこでその投稿動画を視ているかの様な映像表現を採り入れている。
三人称視点のカメラは普段は特に変わりないのだが、撮影者がその場で撮っているかの様な雰囲気を醸し出している。大きな衝撃を受けるとブロック状のノイズが走ったり、スプリント中は追い掛けるハンディカメラ風に画面が激しく揺れたり傾いたりする。(画面が揺れると酔うという人にはキツそうなレベル)。またアダルト関連や残虐なシーンにはモザイクが掛かるという方法で素人のアップロードした動画風に見せるという演出も採用。カットシーンもそういった監視カメラ等のノイズ混じりの映像を多用したりと、言うなればあえて綺麗な映像を避けてローファイな汚いビジュアルを使っており、これは目論見通りに上手く行けば良いのだが、単に汚いとしてカジュアル層には受けない恐れも持っていると言えよう。
マルチプレイではまず前作では出来なかったオンラインでの2人Co-opに対応。非常にユニークなモードであったFragile Allianceはそのまま残っており、このバリエーションのモードを数個追加。それとFragile Allianceをbotとプレイ可能なシングルプレイ用のArcade modeも搭載している。
Eidosという事で今回はスクウェア・エニックスが代理店となり、日本語版も既にアナウンスされている。現時点は公式サイトのロゴにPC版は含まれておらず、PC版は海外版を購入可能になるのかは不明。なおバイオレンス度の強い今作はやはり日本語版では規制されているのだが、その修正内容が「これはダメだろう」という類なのには失望。民間人を一切攻撃出来ないというのは定番なのでまだしも、「モザイク表現の除去、及びそれに伴うグラフィックの修正」(要はレーティングを通るレベルにまで映像を修正してモザイクを外す)とあるのだが、ゲームの基本コンセプトは上に書いたようにユーザー投稿動画風のビジュアルなのだから、モザイクを映像から取り去ったら投稿動画の雰囲気が失われてしまう訳で、それでは何をやりたいのかという根本部分が否定されてしまう。
おそらくレーティングを通せるレベルまでモザイクを強化すると、その下に何が在るのか分からない位になってしまうので、プレイヤーに状況が掴めなくなるという観点からの修正ではないかと想像するが、それならある程度修正した画像にモザイクを掛けてその下に何が在るのか位は分かる程度に調整するとか他にやり方はあるはず。
最後に前作は大きな問題のあるバグの修正を含めたパッチが結局キャンセルされただけに、親会社の変わった今回はサポート体制も重要になってくるであろう。
*XCOM
PCゲームのオールタイムベスト投票等では常に上位に顔を出す1994年発売のストラテジーゲームの名作X-Com: UFO Defense (欧名Enemy Unknown)。その後もX-Comシリーズとしてストラテジー以外でも幾つか制作されているが、このゲームはFPSとしての新作となる。10年ほど前にもFPSゲームとして企画はあったのだが、こちらはその後キャンセルされている。
当然こういったジャンル自体を変えるような大胆な路線変更があるとオリジナルのファンからは反発が出るものだが、今作は舞台をオリジナルとは異なる1950年代のアメリカに設定している点も不評の様だ。その上に制作が2K Marinである事からBioshockとの類似性も指摘されている。
FPSに若干のストラテジー要素をミックスさせるとは聞いていたのだが、現在明らかにされている情報ではちょっと想像していたのとは異なるゲームになっている。プレイヤーは地球軍のエージェントWilliam Carterとしてプレイし、ゲーム全般はFPSとしてプレイされて原作のような生産や管理のI/Fは持っていない。ただし第一に(これもBioshock風と言えばそうだが)リサーチの概念を持っており、ミッションの現場で遺留品を回収したり、現場の状況や敵エイリアン等の写真を撮影して持ち帰る事で、それに見合った分野の研究レベルを上昇させる事が出来る。
だがほとんどのミッションでは目標を達成すれば後はマップ内を自由行動になるという設定ではなく、増援のエイリアンがやって来るので被害を出す前に逃げないとならないという状況にあり、どれだけ粘って情報を収集するのかを判断しないとならない。例えば味方のエージェントとなるNPCは無限補給されないらしく、粘った結果味方を死なせてしまうと後に影響するようだ。ついでにミッションも目的を必ず達成する必要は無く、危ないと判断したら何時逃げるのも自由とされている。
次にミッションの構成とゲーム進行の自由度について。HQでプレイヤーは次に挑むミッションを自由に選択可能であり、上に書いたようにそれを成功させる必要もない。その際にミッションの内容に応じて、それを成功させた場合に何を得られるのかが異なっており、その選択にストラテジーの要素を含んでいる。例えばエイリアンの基地探索やアイテムを持ち帰るタイプのミッションでは、成功すればエイリアン関連の研究レベルが上昇し、そのテクノロジーを利用したSF系武器&アイテムが早く使用可能になる。しかし研究や開発には敵のエネルギー源であるEleriumが必要であり、この回収ミッションも疎かには出来ない。或いは根本的な点として組織には金が必要であり、スポンサーであるFBIの依頼するミッションをこなしてそれも稼がないとならない。
この様にプレイヤーはミッションのリストから、自分の好む部門の発達に関わるタイプを選んで達成する事で、自分好みに組織を発達させる事が可能になっている。なおこれらのミッションは幾らでも自由に選べる訳ではなく、選択制で片方を採るともう一つはリストから消えて選べなくなったり、時間の経過と共に消えてしまう物も在る。つまり全ての部門を幾らでも発展させられるようにはなっていないので、どれを優先するかは良く考えないとならない。加えて選択したミッションやその結果によってその後出現するミッションも変化する様になるので、リプレイ性も非常に高いとしている。
敵の種類やテクノロジーのレベルは、原作とは時代が異なるので大幅に変更されている模様。純粋にFPSゲームとして戦闘が面白いのかどうかはまだ未知数だが、ユニークな要素を備えており期待が出来そうなタイトルと考えている。
*Brink
Enemy Territory: Quake Wars以来のSplash Damageからの新作FPS。今回もクラス制でオブジェクトの達成を目的としたチーム戦だが、その内容には変化が見られる。前作は非対称型のチーム戦であり、システムの全容を把握するまでに時間が掛かるという点から、初心者にはかなりハードルが高いゲームとなっていた。しかし今回は未来都市での二つの対立クラン同士の戦闘となり、両者の持つ能力は全くの同等という対称系のチーム戦。搭乗兵器系もカットされており、初心者に優しく入り易い設定が用いられている。
基本的なシステムはオーソドックスで、既に近年のチーム戦FPSをプレイしている人なら理解は容易だ。オブジェクトの達成を攻防に分かれて競い合う形式で、参加人数は8vs8までの最大16人。足りない分はbotに補わせる事が可能で、シングルプレイとマルチプレイには特に区別がない。2つのクランに別々のストーリーモードが用意されており、それをプレイするのがシングルプレイモードになるが、ゲーム内容はマルチプレイの対戦と同じ形式である。
Co-opとしては8人までが片方のチームに参戦してのプレイが可能。Drop in/Drop Out方式で残りはAIが担当する。対戦モードは常に8vs8なのかは不明。他にも対戦モードが追加される可能性は有るようだ。
キャラクタの外観・装備・カラーはエディターを使って相当細かくいじる事が可能で、三種の体のサイズは移動速度やジャンプ力に影響する。クラスはcombat, engineer, soldier, operative, medicの5種類。自陣とマップ内にはspecial command posts(いわゆるCP)という機械が設けられており、自軍が確保しているならばここでクラス変更や購買が可能になる。 当然このSCPの奪い合いは重要となり、エンジニアはこの装置の機能をアップグレード可能だし、オペレイティブはファイアウォールを構築して敵がハッキングにて奪い返すまでの時間を延長させられる能力を持つ。
経験値システムも持っており、様々な行為に応じて随時加算されていく。貯めたポイントは基本的な能力からクラス別の能力の上昇、或いは24種類存在する武器の多彩な改造にも使える。このゲームでは上げたい能力を実際にゲーム内で使って上げるという方式ではなく、経験値は独立してプールされ何に消費しても自由というシステムを採用しており、能力を上げたいと思うクラスや武器を実際に使う必要は無い。シングルプレイとマルチプレイの区別もないので、シングルプレイでキャラクタの能力を十分にアップさせてからマルチプレイに参戦するというやり方も可能。
戦闘全般はスピード感重視の撃ち合いとなり、目新しい点としてはSMARTと呼ばれる自動コントロール方式が組み込まれている。これはスプリントキーを押しっぱなしにしておくと、自動的に障害物等を乗り越えたりよじ登ったりしてくれるシステムで、身長位の高さの物でも登ったり出来るようになっている。
このゲームの注目すべきポイントとして、近年の経験値システムを導入したFPSで問題とされてきた点に対する一つの解決策を用意している。その問題とは経験値獲得(orアンロック)をプレイ継続のモチベーションとして設定した結果、チームプレイを無視して経験値の獲得の方に執着するプレイヤーが増えてしまったという点である。チームの現状を省みないで、ひたすら自分が求める経験値稼ぎに走るのでチームワークが台無しになるという意味だ。
それに対してこのBrinkでは、まず経験値を特定のクラスや行為と結び付けていないので、特定の武器やクラスに固執するという事は無くなる。更には逆転の発想として、「自分の経験値稼ぎにこだわるプレイヤーには、もっとそれを推奨してしまおう」というシステムを組み込んでいる。どういう方法かと言うと、プレイヤーは常にobjective wheelを参照可能で、ここには現時点で推奨される達成すべき仕事が幾つか表示されるのだが、併せてそれを達成すると得られる経験値が同時に出るようになっており、経験値が欲しいプレイヤーはどの仕事が高い経験値を獲得出来るのかを判別可能である。そこで獲得経験値とチーム行動の優先順位を結び付けるのをコンピューター側でリアルタイムに計算してやり、適切な行為が自動的に選択されるようにするというやり方である。
例えばチーム内にメディックがいなかったとしたら、「メディックにクラス変更する」というオブジェクトを表示して、それに対して高い経験値ポイントを付加してやる。そして一番にそれを達成したプレイヤーに実際にそのポイントを与えるという方法。またはエンジニアによる特定地点での仕事が必要と判断されたなら、エンジニア全員にはその地点での仕事をオブジェクトとして高い経験値と共に表示して達成を推奨し、他のプレイヤーには「エンジニアの護衛を達成せよ」というオブジェクトをやはり高い経験値と共に表示する事で、経験値を求めるプレイヤーが自動的にチームにとって最も優先される行動を行うように誘導してしまう。コンピューター側でどこまで正確なオブジェクトの優先判断が出来るのかには疑問も残るが、上手く機能すれば非常に役立つシステムとなりそうだ。
シンプルで解り易いのでそれなりに人気は出そうだが、反対に奥は深くなさそうなので飽きるまでが早いかも知れない。レベルアップも最高まで行った際に、次のモチベーションをどうするかも工夫が必要だ。狙いである初心者層をどれだけ取り込めるかが鍵となるだろう。
*Spec Ops: The Line
リアル系ミリタリー物の先駆け的存在であるフランチャイズのPCでは久々の新作。制作はこれまでとは違いドイツのYager’s studiosが担当している。
ゲーム自体は三人称のカバーシステムを採用したシューターで、戦闘のシステムには特別変わった点は見当たらない。今回はリアル系ではなく自動回復方式を採用している。プレイヤーは常に3人のメンバーと部隊行動をするとされており、簡単な指示コマンドは出せるようになっている。彼等3人は個性的で実在しているかのように感じられるキャラクタにしたいと話しており、戦闘中の死亡は無い無敵の存在だと思われる。
ユニークな点としては戦場が砂漠地帯に建てられた都市なので砂が多く、大量の砂を崩して敵を倒したり、逆に自分達が被害を受けてしまう可能性も持っている。アウトドアではランダムに砂嵐が巻き起こったりするので視界が絶えず変化し、また意図的にグレネード等を使って煙幕として利用したりも出来る。
特徴はストーリー設定の方にあって、主人公のCaptain Walkerを中心としたチームは、アラブ首長国連邦のドバイにおいて住民の救出ミッションの途中で連絡が途絶えたJohn Konrad大佐とその一行を、今度は自分達が捜して救出する為にドバイへと向かう。しかしそこで目にしたのは狂気に触れて敵と化した大佐の姿であり、Walkerは何が起こったのかを調べて大佐を確保する仕事へと切り替える事になったが、そこには敵の激しい攻撃が待っていたという形で進められる。映画『地獄の黙示録』を彷彿とさせるような舞台設定であり、実際に制作側もそれを意識しているようだ。マップ内にはボロボロにされたアメリカ国旗やアジテーションの落書き、それに首吊り状態の米兵がそこら中にぶら下がっており、ビジュアル面でも狂気を感じさせる作品になっている。
その他プレイヤーのモラルを問うシーンを随所に挟んでいるのも特徴の一つ。幾つかの場面で隊長であるプレイヤーは選択を迫られるのだが、その選択は善か悪かといった単純な物ではなく、プレイヤー自身の持つ道徳観に因るしかないといった非常に判断が難しいシーンが中心となっている。例えば民間人が処刑されそうになるシーンで、その一個人を助ける為に銃撃して自分達の居場所を晒すか、或いは作戦全体での犠牲者を減らす意味ではあえて見殺しにするべきかどうかを判断しないとならない。3人の部下はそれぞれの意見を持つので、どんな選択をするにせよ誰かには信頼される代わりに、他の誰かには敵対するという風になってしまう事になる。
同様に戦闘場所には多数の民間人が留まっていたりもするので、銃撃やグレネードでの攻撃等で直接ではなくても間接的にそれを殺してしまうというケースも出て来る。こちらは被害を与えないような作戦を考える事で、民間人の被害を最小限に留める事は可能らしい。その方が簡単だという理由で民間人ごと吹き飛ばして殺してもゲームオーバーの様なペナルティは無い様だ。そういった行為の選択によってマルチエンディングになったりするのかもまだ判らない。ただ民間人を自由に殺せるならば日本では発売出来ないだろう。
シューティング物としては砂の利用以外には特に面白そうな点は見受けられず。グラフィックスも結構綺麗だとは思うが、特別に凄いというレベルでは無い。やはりプレイヤーのモラル選択と、それによる隊員達の行動の変化がポイントになりそうだ。マイナーな部類ではあるが、ストーリー設定には興味を惹かれるのでチェックはしておこうと思う。