Aliens: Colonial Marines

 都合でしばらくゲームから離れた生活を送っていたのだが、まとめてその間のニュースを追ってみると、長い延期の末、遂に2/12に発売されたAliens: Colonial Marinesの周辺が騒がしかった様だ。今回はその件について経緯を追ってみる。


 PC, Xbox 360, PS3にて発売された同作品はゲームサイトのレビュー&ユーザーの評価が共に大きく落ち込み、MetascoreではPC版が42点となっており、他の機種でも40点台。ユーザースコアはもっと低くて30点台という結果に。ここはユーザースコアに極端な数字が出たりするのでGamespotを見てみたが、こちらでは機種によって差があり、メタスコアよりは上だがそれでもPC版は中でも最低の4.8点と冴えない事には変わりなし。レビューを多数読んでみたが、具体的には以下の様な点が批判されているのが目に付く。


・グラフィックスが今の水準レベルにすら達していない。特にテクスチャーが低クオリティなのが目立つ。更に処理落ちも発生。
・味方のAIが酷い。スタック, 自分の進路を塞ぐ, 弾が通過しない障害物に向かって撃ち続ける, 攻撃を受けても動かない等。
・エイリアンの動きが変。アニメーションがぎこちなかったり、止まった様にもなる。
・エイリアンの出現場所と動き方が予測可能で単調。モーションセンサーの意味合いが薄い。
・全体的にとても簡単で恐怖感が出ていない(最高難易度以外は非推奨)
・一部を除いて非常に単調な展開
・エイリアンのアシッド(酸)にダメージが無く、死体もすぐに消えてしまう
・人間の敵が登場する上にそのパートがかなり多い(全体の1/3程度はそれ)
・Co-opに協力要素やシステムがほぼ存在せず、単に皆で撃って前に進むだけで他のアクションCo-opと似ている



 この様に期待外れの大失敗作という意見が多いという話なのだが、そこから派生して他の面での批判が展開されていく “Gearbox lied about Aliens: From E3 demo to retail product”。Gearbox社CEOのランディー・ピッチフォードによる過去の実演デモとのグラフィックスのクオリティの差異や、公開されているスクリーンショットには実際のゲームには出て来ないシーンが含まれている等に対する抗議である。比較紹介している動画もあり。


 しかしこの手の「製品版をプレイしてみて、そこで初めて搭載しているとされていたシステムやチャプターがカットされていた事に気付く」といった件は残念ながら結構ある事でもあり、嘘を付かれたとの非難は仕方ないとしても、このA:CMだけを特に責め立てるというのは厳しいと思える。





 もう一つは「こんなに批判されるゲームを出しておきながら、まだシーズンパスで儲けようとしているのは図々しい」という批判。A:CMはBorderlands 2の様に、これから夏にかけてリリースされる予定である4本のDLCの割引パックとして、全てをセットにしたシーズンパスを$29.99で販売中である。これもまた今後どういった対応をセガ及びGBXが採ってくるかは不明であり、まだ発売から三週間しか経っていない時点での批判は早過ぎると言えよう。



 ここまでであれば「クソゲーと称されて酷い批判を受けたゲームの中の一つ」として特別な騒ぎにはならなかったと思うのだが、ゲームの発売直後から別の方向へと話題が移っていく事になる。ゲームの制作にTimeGate Studios(初代F.E.A.R.の拡張パック, Section 8等)が関わっているのは以前から明らかにされていたのだが、制作コンテンツの分担状況や制作過程のトラブルを告白する人間が現れたのである(reddit)。


 匿名+詳しい事は守秘義務もあるので話せない、という立場であり、当然ながら裏を取る方法が無いので内容の信頼度には疑問符も付く。しかしRPS(Who Made Aliens? Here’s What We (Sorta) Know)やkotaku(How Aliens: Colonial Marines Fell Apart)が、自分達がコンタクトした元GBXの社員等の別の情報提供者からの話と一致するという記事を掲載したため、一気にその内容が広まった。その他に事前に出ていた開発情報やコメント経緯などはこちらにまとめられており(Development On ‘Aliens: Colonial Marines’ Was A Mess, And Gearbox Might Have Lied About It)、以上を要約すると以下の様になる。


12/05/04 テキサスのプログラマー向け掲示板TexAgs.comに、元GBXの社員mugwurtと名乗る人物が、「実はGBXはA:CMのマルチプレイ部分を制作しているだけで、シングルプレイはTimeGateに外注している。よって良くても平均レベルの出来になるだろう。」と書き込み。


12/06/04 ランディー・ピッチフォードはインタビューにて「80%は自分達で制作している」とコメント。


13/02/11 ランディー・ピッチフォードよりコメント。「TimeGateは全体の20~25%を担当。試作の期間を除くとGBXと同程度の作業となる」。


13/02/12 ゲームがリリースされる


13/02/12 リリースイベントにてセガの担当者に「TGSがシングルプレイのパートを制作したという噂があるが?」と質問した所、「決してそんな事はなく、制作したのはGBXである」と返答される。


13/02/13 上記のredditを初めとする開発状況が明るみになり始める


13/02/25 総合的に現在の情報をまとめた記事がkotakuに掲載される(From Dream To Disaster: The Story Of Aliens: Colonial Marines


 *そして現時点でのA:CMの開発状況はどうなっていたのか?のまとめ


 2006にセガが『エイリアン』の版権を20世紀フォックスより獲得。間もなく同フランチャイズによるFPSとRPGの開発を発表する。そのFPSの開発を担当するのがGBXという事も発表されて、タイトルの方は2008年にA:CMと宣言される。だが2008年にはGBXにてレイオフがあり、ゲームの存続が危ぶまれる声も出始めていた。


 その後も両作の開発は進まず。そして2009年に米セガが財政的な危機に陥り、多額の予算を掛けた両作の維持は困難と判断。Obsidian Entertainmentが制作していたRPGの方はキャンセルされる。2010年にはRebellionよりAliens vs. Predatorがリリース。この作品の為にA:CMの方は延期されると発表されたが、ここから延期のアナウンスが繰り返される様になり、開発状況もあまり表に出なくなった。


 その一方でGBXはどうなっていたのかと言うと、2009年に自社フランチャイズのBorderlandsをヒットさせる。評価も良かった為にGBXはすぐに続編の制作に取り掛かる事を決定した。それにより平行開発は無理と判断し、2010年の末には同じテキサスのTGSに対し、シングルプレイ用キャンペーンパートの制作を依頼する。


 ここでTGSはそれまでに作られていたコンテンツをほぼ破棄して、新たに自分達でキャンペーンを作り直す事を決定する。私が最初に聴いた時は理由が説明されていなかったので破棄した意図が不明だったのだが、後の情報だと破棄したというよりも、そもそも既に出来ているコンテンツ自体が少なかったというのが真相らしい。(なお破棄せずに使える物は利用したという情報も出ている)。2007~2010年までの4年間の間、実はGBXはA:CMに大して力を入れていなかったという意味になる。


 開発状況はGBXとセガの監視下にはあったものの、キャンペーンのパートについてはTGSに任されていたそうだ。これが後に混乱を生む原因となってしまったと言える。


 開発中には問題が幾つも発生していた。一つめはストーリーで、2011年の段階でもシナリオ自体が完成していなかった。GBXとTGSは度々ストーリーを構築し直すという羽目に陥り、結果的に制作したレベルやミッションがストーリーと矛盾するという理由から破棄され続けて時間のロスとなった。またセガのプロデューサーからは「エイリアンの登場を減らして代わりに人間の敵との戦いを増やし、Call of Dutyの様なゲーム性を強めて欲しい」との要望があり、それに反対するGBXとTGSとの調整もストーリー構成の決まらなさ度合いに拍車を掛けた。


 二つ目は「船頭多くして船山に登る」。ゲームプレイをどういう風にするかについてあまりにも多くの意見が飛び交い、発言権を持つ者が多かった為に絞り込みが遅れてしまった。最後にGBXとTGSは制作スタンスが真逆だったので上手く行かなかったという件。GBXは徹底して練り込んでゲームを制作していく方針なのに対し、TGSは納期に完成させる事を最重視してカットする部分はカットするというやり方だった為に、両社の意見が合わないという問題を招いてしまった、。



 批判の的となったプレイアブルなデモについての真相だが、制作はTGSが担当し、そこにGBXが若干の助けを加えるという形で制作された。このデモは「とにかくパフォーマンスについてはどうでも良いから、インパクト重視で綺麗な物にしてくれ」という依頼で制作され、ハイエンドPCを使ってのリアルタイムのプレイデモであった。つまりPS3とXbox 360では最初から不可能なレベルのクオリティとして作られていた事になる。ただしそれ自体は特に珍しい事例ではない。


 問題はそこではなくて、では何故製品のPC版にて最高の設定にしてもそのクオリティが実現されていないのか?である。特別に制作された物なので、グラフィックエンジンとしては未完成であり使えるレベルに無かった, パフォーマンスの改善やバグ修正が間に合わなかった, 後のエンジン自体の差し替えにより製品版のエンジン上では動作させるのが困難になった等、いろいろと考えられるが理由は不明である。もし単にパフォーマンスの問題であるなら、今後パッチによって機能拡張される可能性は残っている(Modでグラフィックスを拡張しようという動きは既に始まっている)。



 2012年5月、2013/02/12に発売と遂に具体的な日付がアナウンスされ、これが延期し続けてきたゲームの最終決定日だと受け止められる。GBXもほぼBorderlands 2の開発を終えた所であった。ここでTGS側からシングルプレイパートの制作を引き継ぐ訳だが、GBXが受け取ったバージョンは到底満足が行く物では無かった。グラフィックス面のクオリティもそうだし、またPS3ではメモリ不足で完全には動かないという状態だった。


 ここがどうも合点が行かない箇所なのだが、管理者としてTGSの仕事を見ていたのであれば、途中で何回か出来栄えや進行具合はチェックされるものではないのだろうか。そうならば不味い方向に行っているのを軌道修正も出来ただろうし、受け取った時点で初めて「これじゃあダメだ」と気付くというのは妙に思える。もしTGS側が進行具合や出来栄えを誤魔化していたならTGSが悪いが、GBXがBL2にかかりっきりでA:CMの管理を怠っていたのならばGBXが悪いという話にもなる。



 この時点でGBX側にはもう時間が残されていなかった。何回も延期をセガに要請しておりもう無理だという判断から、或いは6年経過しても完成出来ないGBXに対してセガが訴訟を起こす姿勢を見せていたという情報もある。そこで全てを自分達の満足するレベルにまでまた新たに作り直すという考えを捨てて、TGSの素材を残しつつ作り替えるという方針で完成を優先させた。発売日を守るにはそのもっと前にコンソール版は審査を通さねばならないし、それまでに一応の完成版とするには冒険が困難だったからである。その結果、「まるで9ヶ月間で作られたゲームの様に見えるのは、実際に9ヶ月間で作られているから」。


 セガとGBXは今回の件に関して、各種メディアの要請には応じず今のところコメントを出していない。それが「全くその通りなので反論出来ないから」と受けとめられ、非難がヒートアップしているという状況である。GBXと言えばHaloをPCに移植した際にも、相当その出来栄えを叩かれていたという懐かしい記憶があるが、今回の非難度合いはそれとは比べものにならないと言えよう。



 (上記の経緯が合っているとして)この一件についてどこが一番悪いのか?。セガとの契約がどんな物だったのかは不明だが、私としては4年間でほとんどコンテンツが作られていないという点はGBXに大きな責任があると考える。それと繰り返しになるが、忙しいとは言え制作をTGSに丸投げして経過を管理していなかったのならばそれも酷い。一方でそういう状況ならばセガが更なる延期を決定するべきであり、未完成なのを知っていて出したのは酷いという考え方もあるが、契約から既に6年が経過している訳でそれを責めるのはどうだろうという気もする。だがTGSに制作が移ってからセガがストーリーや内容変更の要請を繰り返して、それが結果的に制作を遅らせたのであればセガも悪いという話になってくる。或いはセガから人間の敵を出現させる様にしたという決定に怒る原作ファンも多いと思われる。またはTGSが仕事を引き受けるには未熟だったのが原因と考える人も中にはいるだろう。


 実際にはレビューや掲示板等を見る限り、「とにかくクソゲーを出したGBXがクソ」という感じでGBXに批判が集中しているのは確かだ。なお事実とは違う点が在るというなら早目にGBXなりセガはコメントをするべきである。こういった話題を追っているのはゲーマーが中心であり、クソゲーだと怒ったカジュアル層などは反論の時点でもうこの話題には興味を示さない=反論内容を知らないままに終わる。つまり彼等の中ではGBX(セガ)が悪かったという結論のままになる恐れがあるからだ。だがしばらくは今回の騒動を知らない人達がゲームを買ってくれるのに期待して、更に騒ぎを大きくしたくないという考えもあるだろう。



 これからこのゲームがどうなるのかだが、早くも海外ショップではコンソール版は$10ほど値下がりになっており、このまま下降線を辿る事になりそうである。近年はゲームの評判という点において様変わりが感じられる。それはネットを通しての情報量が増えた、もしくはネットでのゲーム情報を頼りにする人が増えているという点。利点としては発売前のプロモーションが有利になり、大作が予約分+リリース直後に大きな売り上げを達成するという事例が目に付く様になった。その反面、ネガティブな意見がメタスコアやamazon等で目立ってしまうと、それに影響されて購入を止めてしまう人が増加するというデメリットを持つ。(最近ではバイオハザード6が初期売り上げのシリーズ新記録を達成したが、その後ネガティブな反応を受けて急激に売り上げが減退して見込みを大きく下方修正というのがあった)。このゲームも同様に初期出荷は相当良かったらしいが、既に売り上げの鈍化が始まっていると言える。


 現在予約販売段階のシーズンパス($29.99)はどうなるか。最悪のケースはこの状況ではもう4本分DLCを制作しても売れないと判断して中止(返金)されてしまうという事態。ただしこれはDLCの制作がどの程度進んでいるのかにもより、既にかなり出来ているなら中止は無いであろう。内容は最初が4人Co-opのホードモードだとアナウンスされているが他は不明。予想としては何とかしてDLCを売ろうと考えた場合、対戦マルチプレイ関連に焦点を絞ってくるのではないかと考えられる。キャンペーンに比較すれば対戦マルチプレイ(エイリアン vs 海兵隊)の方は好意的な評価がずっと多く(これはGBXが制作している)、そちらのユーザー向けに作る方が売り上げに期待出来る。DLCで追加シナリオを出して低評価のキャンペーンの穴埋めをするという方向性もあるが、既にフルプライスでキャンペーン目当てに購入したユーザーからは、有料での追加コンテンツはそれが良い物だとしても「お詫びに無料で配れ」とかで拒絶される可能性が高い。


 長い目で見ると本体価格は早目に下がり続けると考えられるし、50~75%オフセールがダウンロード販売サイトで行われる時期も早まりそう(セガなのでSteamでは日本からは買えないし、現状ではVPNを使わないとアンロックも出来ない模様)。シーズンパス分は夏までに全部出る予定なので、本体とのセット価格で定価$80(PC版)がホリデーシーズンには75%オフの$20辺りで買えるようになっているかも知れない。いずれにしろ安くなれば話題作だっただけにそれなりに売れそうだが、セガにとっては利益が少なくなるのであまり美味しくはない。


 パッチはマルチプレイの方については出る可能性があるが、シングルプレイについてはバグ潰し以外での大規模な物は微妙である。マルチプレイの方は利用者が全員オンラインに繋がっているから配信が有効になるが、コンソールでは非接続のユーザーもまだ多いので適用出来ないケースが出て来るからだ(それとHDの空きスペースも必要になる)。そして非接続のユーザーから、「製品版のディスク自体を修正版と交換しろ」という文句も生まれる為に、「このパッチで治ります」みたいなPRがやり難いという事情もある。一方で「これ以上人と期間を費やしてパッチを作り復活に賭けるよりも、もうこのタイトルは見捨ててしまった方が損害は軽い」と判断されるケースは良くある話で、パッチが出ないままになってしまう恐れも持っている。 



 最後に別件として個人的に期待していたCo-opに関しては、動画なども見てみたがちょっとまだ情報不足である。これまでキャンペーンは主人公の他に3人の仲間が付いて回り、そして各人には役割分担があり(ソルジャー, ヘビー, エンジニア, メディック等)、Co-op時はdrop-in/drop-out方式でAIと人間の操作が切り替わるというL4D風の物だと考えていたのだが違った。シンプルに4人までが参加出来る形式で、各人の武器選択は自由でクラス分担は無し。スキンも選択可能というシステム。よってクラス別に役割分担しての協力システムという感は薄い。普通のアクションゲームのCo-opという印象が強く、特に人間兵士相手の戦闘パートは凡庸という感を禁じ得なかった。


 ダウンした仲間をかなりの短時間で助け起こせる様で、難易度的にどうなのかという疑問も残った。アーマーやヘルスなども誰かが取ると全員に適用されるようである。簡単だという批判のあるシングルプレイでは最高難易度にさえすればスリリングになるという話だが、4人でプレイする際に人数に応じてのスケーリングなどは行われるのかが気に掛かる。


 XP+アンロックシステムを採用しており、経験値によるレベルアップで各種武器やパーツをアンロック。別に存在する獲得ポイントを消費してパーツ類を購入し、カスタマイズや性能アップを図れる。これはかなり複雑で多数の要素を持っている模様。F.E.A.R.3みたいな感じだが、シングルプレイ, Co-op, 対戦マルチプレイのレベルアップが共通化されているのかは不明。これは参加各人の能力差別化の一種として面白そうに見えるが、レベルによる能力差が極端な設定だと、差があるプレイヤー同士でのCo-opには問題が生じる恐れもある。