E3を終えて Part2

*Medal of Honor


 遂にWWIIを離れて近代戦へと舞台を移したシリーズ。元は自身のフォロワーだったCoDシリーズに今では大きく水を開けられており、今回は逆にそのCoDシリーズに倣っての近代戦への転換となった。サブタイトルも取れてシンプルになり、新たなフランチャイズのスタートとして重要な意味を持つゲームである。率直に言ってこれで転けたらもう後は無いかも知れない。


 現時点の情報はマルチプレイが先行しており、既にβテストも実施されている。前作Airborneではマルチプレイ用コンテンツが充実しておらず大きな失敗に終わったので、今回はマルチプレイの制作をBFシリーズで定評のあるDICEに任せており、ライバルのMWと同様にマルチプレイでの人気確保を優先事項として打ち出している。しかし公開されているゲームシステムやプレイ動画を見る限りはこれといったユニークさや大きな売りが見当たらず、そこそこ人気が出るかも知れないが大ブレイクしそうにはないという印象。シンプルで解り易い感はあるので、コアなFPSゲーマーよりももっとカジュアルな層を狙っている様にも見える。



 シングルプレイの方はあまり情報が無く、アフガニスタンでのTier 1 operatorとしての活躍という設定。歴史の表舞台には出ないようなトップクラスのシークレット・ミッションをこなすエリート中のエリート部隊の一員としてプレイする事になる。実際にそういったミッションに関わった兵士達をアドバイザーに迎えてリアリティを高めるという点を強調して宣伝しているが、そういったゲームは過去にも出ているし、ゲームである以上はリアリティを高めると言っても限界がある。一発でも撃たれれば即死するしセーブも出来ないという位にシビアなリアル系FPSならばまだしも、アクション系では現実の人間とは異なり回復能力があるので当然実戦とは戦い方も変わってくる訳で、現実の戦争における部隊戦術がそのまま適用出来るようにはならない。


 現実に行われたミッションを採り入れる事でリアルさは向上可能だろうが、リアルである事とゲームとして面白いかどうかは別問題である。現実にはこんな少人数の部隊でこれだけ多くの敵を相手に戦ったりはしないというケースでも、アクションゲームとしてはそういう風にしないと迫力が出ないし面白くならないという事情もある。つまりあまりリアルさにこだわると地味な物が増えてしまい逆効果になる恐れもある。
 
 発表当初から「これはMWの真似ではなく、ゲーム性は大きく異なる」と話しており、やはりそこが成功するかどうかのポイントになると考えられるが、具体的にどういう風に違うのかについての詳細はまだ不明。判っている範囲では部隊での行動を重視してアイテム類を受け渡したりの連携システムを採用。そして味方AIの能力を高めて、周囲の仲間をもっと人間らしく振る舞わせる事に力を入れている。他には操作するキャラクタをミッションによって変更するというシステムも明らかにされている。

 普通に成功しても意味が無く、MW並とまでは行かなくても相当成功と見なされるハードルが高いだけに、それを達成出来るのかとなると厳しそうな気も。ただし今年はMWが出ないので通常のCoDの新作であるBlack Opsとの争いになるので、そこで現代戦の好むMWのファンをこちらに引っ張れるかどうかがポイントになりそうだ。個人的にはシングルプレイについては、MoHシリーズの劣勢挽回となる作品として頑張って欲しいと応援はしている。



*Dead Space 2


 保留とされていたPC版も無事発売される事になって一安心。更にレビューでも書いたが1でのマウスによるコントロール問題については、今回は対策チームを作ってちゃんとマウス+KB操作についても考えられているそうである。


 ゲームプレイについては大きなシステム関連の変化は無い模様。プレイ動画を見ても新しい敵の他はほぼ同じに見える。新武器は銛のように撃ち出して敵を壁面に磔に出来る物が公開されている。1に比較してアクションとホラーのどちらをより強化した物になるのかという問いについては、両方共に増すようにするという話。宇宙船内という事で限定されていたロケーションが、2ではより巨大な都市になったのでバリエーションを広める意味では有利であり、その変化の多様さをどこまで実現出来るのかが鍵となりそうだ。他にはデフォルト武器が強過ぎたバランスも修正が必須と言える。


 1は非常に良い出来だっただけにこの2も期待度が高いゲームなのだが、あまりゲーム性が変わっていないという点から新鮮さが足りないのではないかという不安も持っている。80点クラスの評価をクリア出来る確率は高いが、これを1同様に90点レベルに持って行くには新鮮な要素がある程度は必要だろう。


 マルチプレイについてはその存在は確約されたが、独特な物になるというだけで仕様は公開されていない。恐怖感を重視するとなるとCo-opは難しそうだし、通路が狭い場所が多いのも同じく問題になる。対戦モードならばゲームの特徴である部位切断は使いたい所だが、人間同士だとレーティング的にアウトになる恐れもあり。



*F.E.A.R. 3


 制作会社が変わっての第三作目。情報が出て来るに連れて不安感が増しており、今年出る大物タイトルの中では心配度が高い方に位置する。


 全面的に一風変わったスタイルでのCo-opを最大の特徴として押し出しており、前作までの主要登場人物であるPoint ManとPaxton Fettelの2人でのCo-opという形式。銃撃戦に長けており周囲の時間をスローモーションで遅くする能力を持つPoint Manと、念力や憑依といった超能力を使えるFettelという全く異なるタイプのキャラクタを選択可能である。この全然違うキャラクタでのCo-opという点はまあ良いとしよう。


 しかし制作側によれば、「この二人は最終的な目的地点(Almaの居場所)は共通しているが、実際にはお互いが邪魔な存在であり、相手と協力して自分を楽にしようという意図と同時に、相手を殺そうという狙いも持っている。その協力状態にありながら、同時に敵同士であるという状況でのCo-opこそが斬新な要素である。」としているのだが、その敵同士という設定をどういう風に実現するのかが良く分からない。


 スコアが計算されてその点数を競い合う事が出来るそうだが、これは別に初めてのアイディアではないし、そもそも最初から2人のプレイヤーが協力しようという約束をしていれば意味を成さなくなる。Fettelは超能力で壁に空いている見えない穴を探知してそこを通れるので、それを相手に教えずに自分だけで進むという形にして、お互いが一緒になって行動しないようにするのも自由だと言うのだが、それでマップ内をお互いに別々に行動して面白くなるのかどうかは甚だ疑問である。要はお互いを敵対させるのならば何かそこに理由付けが必要になってくるが、そうする為のシステムが存在するのかどうかがまだ不明であり、もし無いのならばあえて敵対しながら邪魔しあってプレイするだろうか?という話になってしまう。


 案として実績で「最初から最後までプレイして、相手よりもハイスコアを稼いだら解除される」といった物を設ければ敵対(競争)させられそうだが、殺伐とするだろうし、達成目当てならば差が大きく開いた時点で諦めて落ちてしまう人が続出してしまうと思われる。単なる協力Co-opの中でも変わっているのは確かだが、敵対要素が上手く機能しないのであれば制作側が声高に宣伝するほどユニークな物では無いと言えそうだ。



 次にシングルプレイの方だが、私としては以下のいずれかの形式になると想像していた。


1.プレイヤーは最後までPoint Manのみを操作し、パートナーとしてAI操作のFettelが随時登場する(AIならばプレイヤーへの敵対行為も実行させ易い)
2.チャプターによってPoint ManとFettelのどちらを操作するのかが変化する
3.チャプターによってどちらをプレイするのかをある程度は選択可能(リプレイ性が高いという情報から)


 だが正解は上のどれでもなく、「プレイヤーは最後までPoint Manのみを操作し、Fettelはカットシーンに出て来るのみで実際のゲームプレイには一切関与しない」という事になっている。つまりこれまでのシリーズと何ら変わりなく、(一部での味方兵士の援護を除けば)主人公のみが最後まで一人で戦って行くので、Co-opはやらないという人にとってはFettelの能力というのは実質何の意味も持たない。おそらく発売後のDLCでFettelを操作するシナリオを売る予定が既にあって、それにはオリジナル版にはそのパートは一切入れない方が貴重度が増すといった狙いも含んでいるのではないか。


 私はCo-opの形式が現在では主流になったDrop-in, Drop-Outシステム(プレイヤーが入って来たら空いているAIの操作を担当し、抜けると即座にAIがその操作に切り替わるので、シングルプレイとCo-opがシームレスにプレイ可能)だと思い込んでいたので、シングルプレイでもFettelがAIとして登場すると考えていたがそうではなかった。よってCo-opの方も2人揃わないとプレイが出来ないのかも知れない。



 シングルプレイはこれまでとは大きな変化が無いという点を、むしろその方が良いと考えるか新味が無いと捉えるかは人によると思うが、2同様に左右へのリーンは出来ないようだし、新たに導入されたカバーシステムも特に斬新な要素ではない(現在のカバーを飛び越えて反対側に降り、即座に逆側にカバーで張り付けるという操作はあるが)。AIを改善するというのも決まり文句なので何とも言えない。2よりもパワードアーマー(EPA)に搭乗しての戦闘シーンは格段に増えており、その代わりに単なる派手な破壊の繰り返しではなく、より戦闘として面白いバランスに仕上げているという話だが、これも実際に見るまでは疑問符が付く。


 興味を惹く新要素としては”Generative Scare”と呼ばれる機能を導入しており、これは恐怖に関わるイベントシーンをランダムに発生させるという物。これまではアルマが出るにしろミュータートが襲い掛かってくるにせよ、それは特定の場所でスクリプトとして起きていたが、これをランダムな場所で発動させられるようになっている。つまりリ以前のプレイ時に体験した恐怖シーンがどこで発動するのか判らず、それがリプレイ時の恐怖感を高めるとしている。これは確かに上手く行けば効果的だろう。

 シングルプレイの要素にあまり変化が無いとすると、初代並みのクオリティに持って行くにはやはりAIの能力を向上させるしか無さそうで、2でも不満が多かった所なのでここを頑張って不安を吹き飛ばして貰いたい物である。これが転けた場合、シリーズがそのまま終わってしまう可能性もあるので。



*Rage


 結局来年発売という話で落ち着いたようだ。納得行くまで作り込むというidの姿勢は良いのだが、開発エンジンのライセンス競争としては製品発売後に本格的に始めるという事なので、Cry Engine等のライバルに後れを取ってしまう危険性は増していると言えよう。


 その新しいid Tech 5ではこれまでのMegaTextureを拡張したVirtual Texturingを導入しており、地形オブジェクト以外のキャラクタ等にもその効果を適用している。その効果は現時点でも素晴らしく、グラフィックスのクオリティは想像以上に高いレベルに仕上がっている。一応知らない人の為にその違いを簡単に書いておくと、ほぼ全ての他のゲームでは、地面, 壁面, 岩肌といったオブジェクトをリアルに見せる為に、高精度のテクスチャやエフェクト処理用のテクスチャを多数重ねて張り付けている。しかし同じオブジェクトには同じ物が張り付けられるので、よく観察すると岩なら岩で同じタイプのオブジェクトはどこに在る物でも同じ様に見えてしまい、リアリティが薄れるという欠点を持っている。


 そこを MegaTextureでは、マップ全体に大きな一枚のシートをかぶせるようにして、そこにテクスチャを直接絵画を描くように書き込んでしまい、ストリーミングで完成した巨大な一枚のテクスチャ用のデータを随時読み出すという手法を使っている。それにより例えば地面ならば、広大なマップ内の全ての場所が異なるテクスチャにより描かれているので、現実世界同様に一つとして同じ模様が繰り返されている場所が存在しない。それがリアリティを生むというのが狙いである。

 例えて言うなら昔の四角いタイルでマップが構成された見下ろし型RPGを想定した場合、昔は岩のマスであれば同じ岩が描かれたタイルがずっと繰り返し使われていた。現在の多くのゲームでは、そのタイルに描かれた岩のグラフィックスをリアルにし、また何十種類と異なる岩の画を用意して並べるという風にしてリアリティを出すという手段を用いている。しかしそれでは結局同じグラフィックスの岩が繰り返し使われてしまうのは避けられず、プレイヤーがそれに気が付いた時点でリアリティは減少してしまう。一方のMegaTextureでは、マップ内に出て来る全ての岩のタイルに二つとして同じ物を使わないという方法で、プレイヤーにリアリティを感じさせるようにしているという訳だ。


 このゲームについてはこれまでのidのゲームとはちょっと毛色が異なり、コンソール寄りのゲームデザインというのもあって実はあまり大きな期待はしていなかった。例えば重要な要素となるレースゲームのパートは特に興味を惹かれる物では無く、賞金等で金を稼いで多彩なパーツをアップグレードしたり新車を購入したりといった部分は、やるなら別の単独ゲームとして作った方が良いのではないかとも思っていたのである。

 FPSのパートの方もコンソールを意識してライトタッチで制作されるような予想をしていたのだが、最近の情報を見るとそうでも無いようで、こちらのパートには興味が湧いてきており、個人的にはここへ来て期待度が上がっているゲームである。


 デザインとしてはオープンワールドの充実に重きを置いており、ストーリーを進行させるトリガーミッションを最短でクリアしていっても良いし、次のトリガーに向かう前に自由に車で走り回って盗賊達と車両戦闘を楽しんだり、レースゲームのランキングで名を挙げたり、サブクエストを請け負ってFPSでの戦闘に明け暮れてもOK。好きな時に必須のトリガーミッションに戻れば良いと風に作られているので、過剰に車でのレースや戦闘を強制される訳では無い。


 敵の種類は人間から巨大なミュータントまで多彩であり、同じ人間タイプでも所属クランによって大きく戦闘方式が異なっている。元軍人で作られているクランならば部隊行動を重視した戦い方をしてくるし、アクロバティックな動きをして直線的に襲い掛かってくるクランも在ったりと、高度なAIよりも多彩なAIという面を重視して、プレイが単調にならないように工夫されている。


 特に面白そうなのは武器の改造以外にも、制作の設計図を取得し材料を集めれば様々なガジェット(小道具)を制作可能な点で、爆弾を積んだリモートコントロール小型車両や、移動式のオートタレット、自動戦闘を行うマシンガン搭載のロボット等を作れる。Bioshockが人体改造によって多彩な能力を自由に選べるのに対して、こちらはテクノロジーによる実際の機械製作を導入しており、その種類が多彩になれば自由度も高まりプレイの幅も広がる。



 長くなってしまったので今回はここまで。