先日公募Co-opにてArgoをプレイしたのでそのレポート。使用したバージョンは1.13.144877。 公式サイト
基本情報。Bohemia Interactive内の実験的なゲーム制作部門として設立されたBohemia Incubatorより2016年に”Project Argo”の名称でプロトタイプとしてリリース。 その後名称を単にArgoとして2017/06/22にSteamにて正式リリース。同社のArma 3をべースにして作られたコンバージョン的な位置付けとなり、グラフィックスや基本的なデータ類は共用されている部分が多い。ただし動作にArma 3は必要なく、誰でも基本無料でプレイ出来る。日本語にも対応(やや怪しい部分は有るが)。主な違いは以下の通り。
・5vs5の対戦モードがメイン(2つの傭兵チーム同士の戦闘)
・歩兵戦でビークルは無し
・TPS切り替え廃止
・移動速度の高速化。またスタミナも増加している。
・短時間決着
・XPを稼いでレベルアップ。そこで得たポイントでスキルツリーをアンロックして行くシステム。
とにかく移動に費やされる時間が長いというイメージのArmaシリーズだが、その移動過程を大幅にカットして狭いエリア内での銃撃戦に的を絞った作品。対戦モードは3種類用意されている。目標エリア内に物理的にプレイヤーが侵入しての制圧が必要, 制圧エリアは建物等の遮蔽物で遠くからは見えない事が多いといった設定なので、遠距離から動かずに狙うスナイパーの活躍の余地は少なく、遮蔽物を利用しながらの近~中距離戦が大半というゲーム性にして本家と差別化している。
人気という面では残念ながらプレイヤー人口推移を見ても好評であったとは言い難い。そして既にパブリックのサーバーは数少なく、ある程度人数が揃っているサーバーが各モードに一つ有るか無いかというレベルにまで落ち込んでいる。
サポート状況(2019/07/01現在)。2018/06に公式サーバーが廃止。非公式にユーザーが建てているサーバーでしかプレイが出来なくなっている。これによりXPやランクを稼ぐという事が不可能にされた。これは定番の措置で、非公式サーバーだと内部設定をいじって高速レベルアップを実現するといったチート行為が可能となるため。そこで廃止の代わりに新規プレイヤーでも一律最大のレベル25という設定に変更され、最初からその分のポイントを費やしてスキルツリーをアンロック可能にされている。ツリーのリセットもコストゼロで何回でもOK。
2019/04/04には「近い将来にBohemiaのアカウントでのログインが不可となる」というアナウンスがあった。現在はBohemiaのアカウントでログインする事で運営側保存の個人セーブデータにアクセスし、25Pのスキルポイントを割り振ってのアンロック, 武器類のロードアウト設定&外観のカスタマイズを最大5スロットに保存出来るようになっている。ログインしない人はゲストとしてプレイ可能だが、その場合にはレベル1となり本当に基本的な装備にしかアクセスは出来ない。そのログインが不可にされるという事は個人データにアクセス出来なくなるという意味であり、実施された際には全員がゲスト扱いとなりレベル1となってしまう。つまりスキルのアンロック, ロードアウトの保存, 外観のカスタマイズが全て出来なくなる。
ゲーム自体を削除・停止させるつもりは無いそうで、それ以降でもゲームを楽しめるはずだとは書いており、確かに全員が同レベルなので公平さは保たれている。しかしレベル1では武器が限定的な上にサイトやスコープが付けられない状態となり、全員がそうなっても同じゲーム性が維持されるとは到底思えない。ローカルで全員一律レベル25にするという修正を加えるなら問題は無いがそういった言及は無い。このログインが不可にされた時点で実質ゲームが死亡する恐れがあるので、プレイしてみたい方は早目に試される事をお勧めしておく。
Combat Patrol。これは対戦モードの他に設けられているCo-opモード(ソロでもプレイ可)。元々このモードは対戦モードとは別物となり、XPを稼いでのレベルアップは出来ないという仕様であった。これはこのモードを利用(悪用)してレベルアップを進めようというのを防止する為のデザイン。だがそれだとこのモードをプレイしているだけではレベルを上げる事が出来ず、レベル1のままなのでデフォルトの武器や装備が使えるだけとなりこれでは厳しい。よって対戦モードをプレイしてレベル上げを進めてからプレイするとかになるが、そういった課程が必要となればCo-opだけをやりたいプレイヤーには嫌がられる事になり、実際に無料にも関わらず人気も無い状態となっていた。公式サーバー停止後はレベル25固定とされたのでこの問題は解消されている。
最大で10人まで参加可能なのは大きな利点。プレイヤー側はCloudsチーム、敵AIはFlamesチームというのは固定。ホストがサーバーを起動するとロビーが作成される(パスワード設定可能)。そこから全体マップ画面へと移行。この時点で何を目標とするのかというミッションの種類がランダムに決定される(変えたければ一度ロビーに戻って入り直す)。後はどこか希望のロケーションをクリックすればカウントダウン後に開始される。フレンド同士ならばロビーはサーバー一覧のフレンドタブから探せば簡単。進行中ゲームへの途中参加も可能。
なおこのカウントダウンが残り少なくなってから戻ってしまうというバグに何回か遭遇した。そうなると延々と繰り返しになり開始出来なくなる。その場合にはホストが一度ロビーに戻してやり、そこから再度マップ画面に入り直せばリセットされる。原因は不明だが、どうもホストがミッション詳細などを開いて確認したりすると発生するのではないかという疑念があり
、ホストは何もせずに地点選択などをクライアントに任せてみるというのが一つの手段である。
Bohemiaのアカウントを持っていない人は作成しておく事を強く推奨。ログインしないとゲスト扱いとなりXPを得られないのでレベル1固定で、それだと基本装備しか使えず大きなハンデとなる。特にこのCo-opモードでは遠距離戦が増える為に、サイトやスコープ無しでは敵に命中させるのが困難となってしまう。またアーマーも装着出来ないので死に易くもなる。
それと外観のカスタマイズも重要となる。理由は敵味方の区別がかなり付け難いから。リリース当初は見た目に区別が付け難い上に極力HUDの表示項目を減らすデザインも相まって対戦モードにてFriendly Fireが頻発。そこはリアリティ重視というのもあったらしいのだが、あまりにもFFが多過ぎて意図したのとは違う方向へと向いてしまったので、両チームのユニフォームをCloudsは深緑色に長袖、Flamesは茶色にタンクトップという風に修正している。
しかし鮮やかに色分けされている訳では無いし、様々なアーマーやジャケット類を上から身に付けたりも可能なので、慣れないとそれでも見分けが付け辛かったりする。そして味方プレイヤーの名前表示や(▽等の)タグ付け機能も無い為に、広がって行動すると味方なのか敵なのかに迷いが生じたりで、実際に今回のセッションでもFFが発生していた。更にはダウン状態の味方を起こす際に死体が散乱している所だとどれが味方なのかが判り難かったりもあり。しばらくプレイしていると見分けにも慣れてくるが、外観カスタマイズにて敵がしていない目立つ様な格好をする事で初プレイでもFFの危険を減らす事が出来るので打ち合わせておいた方が良いだろう。
基本的なシステム。ミッションのタイプは3種類と少ない。落下した衛星(Argo)からデータ回収, 敵の輸送車両2台を爆破, 3箇所の端末にアクセスの3つで、最後の物以外は具体的な場所が表示されず範囲円の中を探さないとならない。その地点やゲームのスタート地点はプレイの度にランダムに変化する。
ダウンしてしまった味方は助け起こす事が可能。ただし一定時間内でないとならない(タイマー表示無しだが数分は保つ)。リスポーンチケットがチーム全体で20枚用意されており、助けが間に合わないか自身による強制リスポーン時に消費される。無くなってしまえば復活は不可となり、その状態で全滅すればゲームオーバー。なおリスポーンする地点はランダムで死亡地点の近くだったりもするのでリスキルされてしまうケースも有る。
ミッション目標達成後に脱出地点が表示されるのでそこまで行けばクリア。時間を掛け過ぎると「失敗」と出て脱出せよと表示される様だが、その後もミッション自体は続行可能で達成すれば成功のメッセージも出る。そもそもXPが得られないのでどの程度の成功を収めてクリアするかに意味が無く、どうするかはプレイヤー達次第という設定ではある。
・ビークルには乗れない(敵の援軍車両は来るが、乗っている敵を倒しても乗れない)
・対戦モードに有るエアドロップはこちらでは無し
・デフォルトではTキーでTactical Ping。指した地点に短時間だが赤丸の印を付けて味方に示せる。
・作戦画面の全体マップ上に自由に書き込み可能。右上から色と記号を選択出来る。付けた印はDELで消せる。
・プレイ画面上にミニマップやコンパスの表示機能有り。このマップ上であれば味方の位置を確認も出来る。
・部隊を組んだりは出来ない。また直接的な指示コマンドを他者に対して出す事も不可。
ゲームプレイ。リアル系のミリタリー(タクティカル)シューターは現在では希少な存在であり、またその性質上Co-op対応は多いとは言っても4~5人程度のプレイを前提としている物が多く、大人数でCo-opが可能という作品は少ない。中ではInsurgencyが第一に思う浮かぶがこちらはそれほどマップが広くなく、昔で言うなら初期のGhost Reconの様な広いアウトドアのマップ内を移動しながら進める作品というのはほぼ無い状況である。
その点でこのArgoは各ミッションでの使用エリアは広大とまでは行かないが、結構広いアウトドアでのCo-opが最大10人で可能という設定。また無料で低予算ではあるのだろうが、使用しているアセットやシステム系がArma 3からの流用なので安っぽさは感じられない。グラフィックスもインドアが殺風景で描画も原始的なのは相変わらずだが、逆にアウトドアはかなりのレベルでパフォーマンス的にも悪くない(私がホスト役だったので軽くする為、このページのSSはプリセット5段階の真ん中での物で更に2段階上に設定可能)。
敵AIは優れているというレベルでは無いものの、棒立ちという事はないし臨機応変に伏せたり隠れたりも行ってくるので、ちゃんと銃撃戦を楽しめる程度には仕上がっている。初期の居場所もランダムの為に同じロケーションでも予測は出来ないという点も良し。屋内や屋根の上に居たりもするので注意しないとならない。ただし草木を挟んだ際に視線が透過してしまう様なのでこちら側が不利という問題はあり。それと精度は高くないがグレネードランチャーを乱射してくる性質があって厄介。
戦闘は中から遠距離戦が主体。近距離での撃ち合いはAIの反応速度が早いのでなるべく避けたいというのもあってあまり発生しない。銃の方は純粋に命中精度がリアル寄りで低目の設定なのか、弾が重力で落ちているからそれを計算に入れないとならないのか、それとも敵はアーマーを着込んでいるのでヘッドショット以外は結構当てないとならないのか不明だが、遠距離戦では敵を倒すまでに時間が掛かったりするケースも多い。ただし当然ながら敵の攻撃もそう簡単にはこちらには当たらないのも同じとなる。よって実銃を使用しているが銃器の命中率が高くてダメージも大きいアクションFPSとはまるで違った様相の銃撃戦となる。また命中時に何かエフェクトが表示されたり敵が仰け反ったりのリアクションを取ったりが無く、死亡した際に初めて反応して倒れるという設定なので、当てているという感覚は遠距離戦ではあまり無いという面はあり(追記: 映像で確認してみると体に当たった際に血飛沫のエフェクトは存在する様だが、敵の服装の色との絡みなのかダメージ量にも因るのかプレイ中は気付かなかった)。
総合的に大人数でのCo-op, 慎重に行動する必要があるタクティカル系FPS, 広いマップでアウトドアがメイン, 大量の武器を様々なアタッチメントを付けて使用可能といった条件でゲームを探しているならお勧め出来るタイトル。基本無料という点も敷居が低い。
問題点。お勧めと書いたが、このゲームには幾つかの欠点も存在している。第一に少人数でのプレイには向かない。プレイの度にスタート地点と目標物の有る地点はランダムに決まるのだが、その際に敵グループの配置もランダムである。不味いのは「目標物とそれを護衛する敵グループが配置され、その他の敵グループがランダム配置される」のではなく、全ての敵グループの配置がランダムらしいというところ。つまり目標物の有る場所付近に敵が居るかどうかはランダムとなり、敵に遭遇しない可能性も発生してしまう。そして配置される敵のグループ数は参加人数に応じて調整される為に、少人数でのプレイであるほど発生確率は高くなる。実際に前日の2人でのテストでは目標到達まで全く遭遇しないし、その後の脱出でも見えている敵を迂回すればやはり戦闘無しでクリアというミッションも発生。ステルスで非戦闘でのクリアという意味ではそれも良いのだが、徹底してそういう風に進めるゲームでは無いし、これが何回も続くのでは困った事になる。よって実は開催当日も不安が有ったのだが、7人でのプレイにおいては敵と遭遇自体しないというケースはまず起きない様である。しかし4人程度では敵と全く遭遇せずに拍子抜けという恐れもある。銃撃戦が始まると音を聞きつけて集まってくるという習性がある様なので、敵が居ないならばわざと派手に銃を乱射して敵を呼び寄せ戦闘を楽しむという手もありかもしれない。あるいは目標を無視し敵を探して回るという風にも出来る。
次にミッションにバリエーションが足りない。先に書いた様に3種類だけしかなく、どれも内容としても単純な物ばかり。連続して複数の目標をこなしていくという構成でも無い為に、どれも15~30分程度で終わってしまう(2人プレイだと戦闘が発生する回数が減るのでもっと短い)。初期配置はランダムとは言っても発生する事態に変化はほぼ無く、そうなるとロケーションで変化を付けるしかないが空港とか特徴のある場所は少ない。難易度も固定で、敵の数は増やせないしリスポーンチケットも20枚で固定。よって7人でのプレイではゲームオーバーになる可能性はゼロに近いという印象で、緊張感を出すにはもっとユーザー側での難易度調整機能が欲しい。こういった事からプレイ自体は面白いのだが長続きはせず、3時間もプレイすればもう後は繰り返しになって新鮮さが薄れて来てしまう。カスタムミッションを作成するエディターは提供されているので、これで複雑で面白い物が制作出来れば長く楽しめる可能性は残っているが、本家の様に多数のユーザー制作ミッションがダウンロード可能とかにはなっていない。
他に気付いた点としては、
・復活時に伏せ状態からの起き上がりにて視点が非常に変になる
・階段等で伏せたり屈んだりでは移動がし辛い
・ラグドールを行う物理エンジンが変で死体がグニャグニャと変な風に曲がる
・自分の体の幅が掴み難く、開いているドア等からリーンする際につっかえてしまう
結論として6人以上程度の人数にて、3時間程度の短時間ならば充分に楽しめると言えるだろう。それ以上は似た様な単純なミッションの繰り返しになってしまう為に、少なくとも近い内にまたプレイしたいという風には思えないのが正直なところ。Arma 3の方で存分に楽しめるからもっとやりたければそちらで遊んでくれという意図なのだろうが(広告が頻繁に出て来る)、ゲーム性が大きく異なるのでArgoのシステムでやりたいという希望にはマッチしていない。